貢ぐだけ。
ただ、漠然と。
幸せにしたいと、エクスクイジットはそう思ったのだ。
不器用だけれど、その実とてもやさしい───マネーピットというウマ娘を。
彼女は自分のなすことに対価を要求するが、それは彼女のそれまでの労力に鑑みると微々たるものでしかなく。
等価交換の"等価"がまず分かっていない。
だから、彼女が幸せになる為にはどうすればいいのか、考えに考えた。
「……」
エクスクイジットは、マネーピットの"終わり"を知っている。
…いや、察するしかなかったという方が正しい。
夜な夜な「痛い」やら「ごめんなさい」やらとしくしく泣き魘される彼女を、エクスクイジットは知っている。
「だから」
だから。
「僕は、キミに幸せになってほしいんだ」
「……そうかい」
マネーピットの返事は素っ気なかった。
しかしエクスクイジットには分かっている。
彼女は素直じゃないのだということを。
「ところでピットくん」
「……なんだよ」
エクスクイジットはマネーピットのことが大好きである。
車椅子生活になった彼女ためのバリアフリーな家を建てたり、家具を誂えたりするのは当然で。
もちろんエクスクイジットはマネーピットに何不自由ない生活を送らせるつもりだし、彼女の望むことは何だって叶えてあげたいと思っている。が、
「こんな…服買わなくていいよ」
「えぇ〜?この服も似合うと思うけどなぁ」
欲がない。
マネーピットにはホンッッッットーに!…欲がない。
そもそも娯楽から嗜好品までそう興味を示さない。
食事は栄養さえ摂れれば何でもいいと言うし、服だって動きやすければそれでいいと適当なものばかりだ。
故にエクスクイジットはマネーピットの好みを徹底的にリサーチした。
そしてマネーピットに似合う服を片っ端から買い漁り、着せ替え人形の如く彼女に着させて楽しんでいるのである。
「こんなフリッフリなの……俺には似合わないよ」
「そんなことない!ほらほら、このワンピースとかすごく似合ってる!」
「……そ」
またエクスクイジットの趣味もいつしかマネーピットに貢ぐこととなり。
「これ、似合うと思うよ!」
「……ん」
マネーピットがその服含め、贈られた物の値段を知ることは生涯なかったという。
「似合ってるよ!かわいい!」
「はいはい」
褒めちぎるエクスクイジットを適当にあしらうマネーピットだったが、その表情はまんざらでもない様子である。
「ピットくん!」
「……はいはい」
*
こんな自分に貢いで何が楽しいのかと思わなくもないが。
(まぁ、)
「似合ってるよ〜!」
(コイツが楽しいなら…いっか)
【金食い虫】:
マネーピット。
貢がれて生活している。
いちおうはそこそこ苦言を呈するが最終的には押し切られる毎日。
なんか最近舌も肥え始めた。…気の所為?