多々走らねば、生き残れない!!   作:芦毛スキー

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キミへの話。



◆書きもの

執筆業ってのは、思った以上に大変らしい。

 

「お〜、よしよし」

 

フラフラと互いの部屋に繋がるドアを開けてやって来たエクスクイジットの頭を撫でてやれば「一緒に寝る」と抱き上げられたので渋々従う。

 

「トイレ行きたくなったら叩き起してくれていいから。いつもと同じにね」

「…あぁ」

 

ノックで起こすのと、叩き起すのとではどちらがより効果的か。

それを試す機会は、もう少し後になるかもしれない。

 

「おやすみ」

「うん、おやすみ」

 

翌日から数日間、エクスクイジットが執筆に勤しんでいる間、俺は俺で仕事をこなした。

ネットでできる採点業務とかそういうの。

たまに息抜きと称してエクスを外に連れ出したりもしたけれど、基本的には同じ部屋で黙々とペンを走らせる彼女を見守っていた。

 

(また『うがー!』って言い出したら連れ出すか)

 

そんな事を思いながら、俺は俺で黙々と仕事をこなしていく。

エクスは執筆に集中できるよう、俺は邪魔にならないよう配慮して。

そうして過ごす事数日、ついにエクスが書き上げた原稿を俺に手渡した。

 

「読んで」

「おう」

 

受け取った原稿用紙の束をパラパラと捲る。

文字数はそこまで多くないけれど、内容はなかなかに濃い物だった。

 

「……なるほどな」

「どう?」

 

確かにこれは突っ返されたら「うがー!」と叫びたくもなる代物だろうと思う。

精魂込めたというのはこういうものなのだろうなと、その原稿を何度も読み返しながら俺は口を開いた。

 

「これさ、何すればいいの?」

「うん?」

 

エクスの書いた文章は、確かに面白い。

けれどそれはあくまで素人目線での話であり、プロの目から見ればまた違うのだろうなと。

 

「俺は素人だし、プロの編集者でもないから何したらいいか分かんない」

「……」

 

エクスは少しだけ考えてから、こう答えた。

 

「じゃあ、話して」

「話すって……何を?」

「この文章、どうすれば良くなるかとか、ここが良かったとか…。話してくれると嬉しいな」

 

そんなの、わざわざ頼まなくてもやってやるけど。

そう思いつつ頷いてやれば、彼女は少し寂しそうに笑って言ったのだ。

 

「なにせキミのために書いたものだから。…本当は、他の人にみせたくないんだけど」

「ふぅん?」

「でも仕方ないよね。書かないと生活できないし」

「…なら、お前トレーナーにでもなりゃあいいんじゃねぇの?」

「あれはあの子たちにねだられるから渋々で…。教えるのは不得手なんだよ僕。キミとは違って」

「なに言ってやがる、学級委員長サマがよ」

「昔の話だよ、そんなの」

「へーへー」





【金食い虫】:
マネーピット。
読むスピードが速い。
きっと興味を持てば何だって読むタイプ。
とはいえ、毎回「書いたよ!」って見せられて感想を求められるのには四苦八苦しているとか。
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