多々走らねば、生き残れない!!   作:芦毛スキー

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何も考えずに。
───まだ、そうあれた頃の話。


走ればいい

そうして。

俺の上に乗るヤツが変わった。

見るからに若い。

んで、俺に触れる手つきもちょっとぎこちない。

行け!っていっぱいシバいてくるヤツじゃなかったら誰でもいいよ。

だから俺のことを買った御方はコイツを指名したのかね?

まだ反抗もできなさそうな、いたいけなのをさ。

 

(はえ〜)

 

で、だ。

その若いのは、…まぁ〜あんま上手くなかった。

変なところで前に行かせようとするし、バシバシ痛いし。

けど、一生懸命なのが伝わってくるから、……許してやらんこともないって。

それに、変に確立してるヤツよりもまっさらなヤツを自分のやりやすいようにどうこうする方が楽だしな。

 

それからはえっちらおっちら。

色んな場所に運ばれては走って金稼いで。

また他の場所に行ってえっちらおっちら。

そんな、何年も何年も数えきれないほどそんな生活続けてるうちに、だんだんと難しくなってきたんだ。

たまに、どこの誰だか知らねえけれどスゲ〜のがゴールしたのを見たりとか。

けどそのたびに上のコイツは俺の走りで一喜一憂してくれて。

だから。

 

『────!!』

 

あの御方が、怒っている。

一方、俺の上のヤツは…怒られている。

ひどい言いようだ。

でも、はじめましての時から甘ちゃんのまま変わらない上のはペコペコと頭を下げる。

…それが、嫌で。

だから。

 

(もし、勝ったら)

 

───上のヤツは、怒られないで…。

 

(済む…、のか?)

 

 

マネーピットというウマが語られるにおいて、ある"大きな不幸"を除き、ひとつの話の焦点となるのは、彼が18番人気から勝った、かのG1である。

そのレースには、そのレースを引退試合とするエクスクイジットがおり。

しかもそのエクスクイジットは、そのレースを勝てば、かの【皇帝】を超えるという触れ込みであり、クラシックは棒に振ったものの古馬以降はずっと、G1は負け無しであったから。

 

『な、なんと…これは大波乱……』

 

レースが終わったあと、場を包むのは恐ろしいほどの静寂。

エクスクイジットが勝つのを見越して、盛大な広告を出し、盛大な引退式を行う予定であったのに。

 

『18番人気の…マネーピットが、勝ちました…』

 

次に聞こえるのは落胆の声。

『せっかく見に来たのに』とか、『金返せ』とか。

祝福なぞ、ない。

マネーピット(しょうしゃ)にかけられる、祝福なぞ───。

 

『あぁ、次だ。次のレースを、考えないとな…』

 

歪んだ笑み。

与えてはならない者に与えられた幸運。

その幸運がマネーピットを壊すのだと知る者は、その時は、まだ…。





どこかの世代ではある。
でも【金食い虫】自身が他を覚える気がないのもあって詳しいところは不明の模様。

【金食い虫】:
マネーピット。
上の人はまぁそこそこ。
なので上の人が怒られないように…と勝ったらこう。
運が悪い…のは生まれつきですね。

【金食い虫】の上の人:
【金食い虫】と出会ったころは新人だった。
【金食い虫】に色々と仕込まれ、まぁまぁな騎手に。
とはいえ、まぁまぁな騎手なので件のG1ではただ【金食い虫】のなすがままにしがみつくしかなかった人。
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