だから何の感慨もない。
家族なんて、血の繋がらない他人だ。
「……」
ひとりひっそりと物置部屋にいるのを今でも夢に見る。
埃がたまっている、掃除もろくにされていない小部屋。
そこの古いベッドの上で膝を抱える俺の耳に入るのは楽しそうな家族団欒。
…俺は、望まれない子であった。
まだ無垢だったころの母が騙されてデキた子。
だから母は俺を毛嫌いした。
暴力こそ受けはしなかったが、存在を徹底的に無視されて。
それには母を騙した相手の容貌に俺が段々似てきた…らしいということもあったのだろうけど。
『ありがとうお母さん!お父さん!』
…あぁ、そういえば今日はあの子の誕生日だっけ。
きっと、家中、使用人たちもあげてお祝いしてるんだろうなぁ。
そう思うと、今日の残飯は豪華そうだ。
「早くみんな寝ねぇかな…」
*
そんな俺がトレセン学園に入学できたのはもはや奇跡に近かった。
『キミが██████だな!?』
それはあの子の名前だったけど、こくりと頷いた。
トレセン学園のスカウトだというその人は、まだ小学生ながらも公式のちびっ子ウマ娘レースで勝ちまくっているあの子のことを高く評価していたようで。
だからあの子を自分が引き入れて功績をあげようとしていたらしい。
…が、その希望とは裏腹に引き入れたのは俺だったワケだ。
「へェ、俺の名前って"マネーピット"って言うんだ」
「おい」や「お前」すら呼びかけられない空気だったもんだから。
年齢的にはあの子よりもずっと年上の、いわゆる高等部に入るぐらいなのに。
あの子よりも小さくてガリガリだから間違えられたんだろう。
まぁ、家で大事に大事に箱入りにされてるあの子がひとりで外にいる!って、なったと見受けるが(なおその時の俺は腹の足しになる野草を探しにバレぬように家から抜け出したところであった)。
「ははは、草」
んで、ンなことしたから絶縁状叩きつけられました〜!パッパラ〜。
だから学費とこれまで俺を育てる()ためにかかった金返せってよ。
「ンなこと言われても、俺、金なんて持ってないんだよなぁ。はは」
そんなワケで俺は勉強を始めた。
ずっとあの物置部屋で過ごしていたため、ごく一般的な皆様とは違う知識しかない俺は、まずそれを埋めないといけなかった。
幸い、この学園には図書室という最高の勉強部屋がある。
「あ〜……これと、これと……これも」
学園の図書室は広くて、本もたくさんあった。
だから俺は片っ端から本を読んでいった。
知識を頭に詰め込む作業は楽しかった…が。
(…めんどくせ)
勉学には邁進していたが、走ることに関してはまあまあで。
そんな有り様が気に食わない、もっと本気になれと絡まれるのにはさすがに辟易だ。
「俺は金稼ぐためにここに来たんだよ」
だから、走ることは二の次。
『お前みたいなやつはどうせ勝てっこない』
あっ、そっすか。
【金食い虫】:
マネーピット(ウマのすがた)。
家族は血の繋がった他人定期。
またトレセン学園入った以後に初めて本格的に勉強しては学年トップになるぐらいなので地頭はいい。
たぶんなに言われても傷つかなさそう。
家では空気扱いだったから…ね?