"前"のことは匂わせる方向で…。
今の同室であるエクスクイジットが来るまで、俺は我ながら言うのも何だが結構問題を起こしていた。
掴み合いの喧嘩なんてしょっちゅうだったし、そこそこの怪我をして医務室に行ったことも一度や二度ではない。
エクスクイジットが同室になった当初は、そのあまりの口数の少なさと無感情っぷりに本気で「何だコイツ」と思っていたし、俺が問題児扱いだから「大丈夫?」と周りに心配されているのが我慢ならなかった。
だが、コイツはそんな俺に恐れるでもなく、ただ淡々と俺に接してきた。
「ピットくん」
「ンだよ」
俺とエクスクイジットはクラスメイトで、しかもエクスクイジットの方は学級委員長。
そのためセンコーからも同級生からも『問題児』と見られる俺の世話を押し付けられている。
だから、エクスクイジットが俺に話しかけてくるのは日常茶飯事だった。
「今日は天気が良いから、外で食べない?」
「はァ?何でンなことしなきゃなんねーんだよ」
「良いじゃない。どうせ僕とキミのふたりだけなんだしさ」
そう言って俺の腕を引くエクスクイジットにため息を吐く。
コイツとこうして関わるようになってから分かったことだが、コイツは表情筋がなかなか動かないだけで結構愉快だ。
しかし、同級生連中からはクールで厳格で真面目なウマと見られているようで。
「またそんなん食ってんのか…」
「美味しいよ?」
「いらねぇ」
『誰が買うんだこんなゲテモノ』というような謎商品を好んで買い、舌鼓を打ち満足そうにする姿に『他のヤツらはこんなコイツ知らないんだろうなぁ』と思考する。
「ピットくん」
「あ?」
「キミ、最近ちょっと丸くなったよね」
「はァ?誰が太ったって!?」
「いや、そういう意図じゃなくて……」
エクスクイジットの指摘に思わず声を上げると、俺の反応が意外だったのか少し慌てた様子を見せた。
そんな様子に『コイツもこんな顔するんだな』なんて思う。
「はじめましての頃はもっとキミ、ガリガリだったから…ね?」
「まぁ、今よりひでぇ状態だったのは否定しねぇけどよ」
当時の俺は、そりゃもう荒れに荒れていた。
手負いの野良猫よりも、もっと酷く。
周りはみんなデビューしていく中でトレーナーに匙を投げられる日々。
俺は、出来るだけ長く
「でも、キミは変わったよ」
「そうかね」
そう答えればエクスクイジットは『そうだね』と小さく笑った。
それから少し考える素振りを見せて口を開く。
「僕はね、ピットくん」
「あ?」
「キミに、幸せになってほしいんだ」
「…は、?」
突然そんなことを言い出したエクスクイジットに思わず顔を顰める。
「僕も、頑張るから」
「……おう?」
【金食い虫】:
マネーピット。
普通に日常を営んでいる。
なお友だちは同室のエクスクイジットのみ、とのこと。