そのために、お勉強。
ある程度の成績に達したウマ娘には、外部の講師を呼んで『資産運用』の授業がある。
稼いでいるといってもみなまだ学生。
レースで勝つたびに、ある程度の賞金が振り込まれるがそんな大金持っていてもどうしようもないと。
よって、稼いだお金をどう運用するかを学ぶのだ。
「……」
その集まりに招集されるようになったエクスクイジットは外部の講師の話を聞きながらその実『ピットくんの方が分かりやすいな』と考えていた。
"ピットくん"-ことマネーピットはエクスクイジットの同室だ。
『守銭奴』と周囲から称されているように、金の話になると目の色が変わり話が止まらなくなる。
「いいですか皆さん!まず──」
講師は熱弁する。
「例えば……」
エクスクイジットはノートにメモを取るふりをしながら『ピットくんならここでこう動くな』と考えていた。
「……という風に、リスクを分散して運用するのが大事なのです!」
結局、講義の内容はほとんど頭に入ってこなかった。
どうせマネーピットに料金付き(同室割引あり)で聞いた方が分かりやすいから。
*
「おう、おけーり」
これから購買に行くが一緒にどうだと誘う友人たちに断りを入れ、寮部屋に入るとそこにはベッドの上にあぐらをかき、壁にもたれかかりながら分厚いよく分からない小難しい本を読むマネーピットがいた。
「どうだった?」
「…ピットくんに聞いた方が分かりやすそうだった」
「ハハ、そりゃあそりゃあ。前、教えた先輩らもあの講師の話分かりにくいってボヤいてたしなぁ」
マネーピットは本を閉じ、そのままベッドの上に置く。
「で?お前は何しに帰ってきたんだ?」
「……ちょっと、聞きたいことがあって」
「おうよ」
エクスクイジットはマネーピットがいるベッドに腰掛けると、ノートを開きながら話す。
「お金って、どうやって増やすの?」
マネーピットはキョトンとした顔をすると、すぐにニヤッと笑った。
「お前……ついに金に興味が湧いたか!」
エクスクイジットはあまりの言いようにムッとする。
だが嬉々としてあれやこれやとノート(きっと教える時に使うものだろう)を勉強机の引き出しから取り出して用意し始めるマネーピットを見て、その怒りもすぐに引っ込んだ。
「…と、ひとまずこんなもんか」
それから数時間。
今から食べ始めると少し遅めの夕食になる…そんな時間に勉強会は終わった。
エクスクイジットは対面に置かれたノートにびっしりと書き込まれた文字を見て、改めてマネーピットが"守銭奴"と呼ばれる理由を知った。
「んで、いきなりどうした?お前は堅実し真面目だからそういった類のは一発で覚えて呑み下すモンだと思ってたが」
「…ん〜、やりたいことがあって」
「やりたいことォ?」
「うん。そうするためには…普通に学んだ通りにしておいたらできなさそうでさ」
「へぇ…。なんか、お前のことだからスゲェことしそうだな」
「かもね」
【金食い虫】:
マネーピット。
金さえ払えば結構何でもしてくれる。
なお一番の稼ぎどきはテスト前だとか。
【この上なく素晴らしい】:
エクスクイジット。
マネーピットの同室であり、"昔"のことを覚えているウマ娘。
どうやらいつか『やりたいこと』があるらしい。