万魔殿と風紀委員会の出動が決定した日の翌日。
先生は既にアビドスの指揮へと向かい、戦線を構築していた。
《…見えました。カイザーPMCの軍勢です。数はおよそ一個大隊ほどです》
アコは何時ものように通信と指揮で後方支援を行い、汚名を返上する気でいる。
「ここで戦果を上げて、汚名を返上してやる…!」
イオリも、これまでの失態を取り戻すべくやる気に満ちていた。そんな二人を見て、ヒナが一言。
「…今回、私も出てきてはいるけど、前線には出ないことに決めた」
《「えっ!?」》
その言葉に、イオリとアコは大層驚いた。
「これまでもそうだったけど、正直風紀委員会は私に頼りすぎている。いつまで私が居ると思ってるの?次代を担うのはあなた達、もう私じゃない」
それまで先頭を歩いていたヒナが、踵を返す。
「私は三年生を連れて、先生率いるアビドス組の支援に入る。あの大隊は二年生、一年生に任せるわ」
「で、でも委員長!私たち、委員長みたいには……!」
泣き言を言いかけたイオリの口を、人差し指で塞ぐ。
「私みたいに戦う必要はない。あなた達には、あなた達の戦い方がある。『らしい』戦い方をしてくれれば、それでいいの。……期待してるわ、『次期風紀委員長』の、銀鏡イオリ?」
ヒナは微笑みながら、イオリの肩をポンと叩く。その言葉に、イオリは目を見開いた。
「安心して?私は、あなた達を見捨てるわけじゃない。もう、私がいなくても問題ないっていうくらい、逞しくなったあなた達を見たいだけ。…大丈夫、あなた達は、目の前の敵を殲滅するだけだから。……頑張ってね」
イオリは、思わず泣きそうになった。
であれば、泣き言など到底言っていられない。自分たちに全てを任せてくれた委員長の前で、みっともない姿を見せるわけにはいかない!と奮起する。
溢れそうになる涙を腕で拭い、イオリは声高らかに叫ぶ。
「風紀委員会!!万魔殿と連携を密にし、各員力の限り奮闘せよ!!カイザーに、我々の力を見せつけてやれぇっ!!
その言葉を合図に、まるで地面が揺れていると錯覚するほどの雄叫びを上げ、各々奮起する風紀委員会。十数人の三年生のみを引き連れたヒナは、とても満足そうな笑みを浮かべていた。
《…よろしかったので?》
ヒナに対してのみ通信を繋げたアコが、そう尋ねる。
「うん。…あの子達の頑張りは、私が誰よりも知ってるから。今の彼女達なら、大丈夫。きっと、想像以上の戦果を上げてくれる」
《…信じているんですね、イオリ達を》
「勿論。私に今まで付いてきてくれたんだもの、今度は、あの子達が引っ張っていく番だから」
《…ふふっ。私も、そろそろ行政官としての役目を、誰かに引き継がせたほうが良いかもしれませんね》
「…そうね、きっとそう。もう、頼るだけの存在じゃない。……頑張れ、イオリ。信じてる。…アコ、任せたよ」
《お任せ下さい。ヒナ委員長と同じ…いえ、それ以上のサポートをしてみせますとも》
「…うん。期待してる」
◆
「キキキキッ!北方の風紀委員会は動き出したようだな…!」
「えぇ、銀鏡イオリを先頭にとの情報が………?おや、ヒナ委員長の姿が見えないようですが…」
「…ふっ、銀鏡イオリ達に全て任せた、か…。キ、キキ…ッ!キキキキッ…!!」
マコトは、心底愉快そうに笑う。
「…もう、一人で抱え込まなくなったんだな、ヒナ…。それでいい、それでいいんだ……」
誰にも聞こえぬ声量で、感慨深そうに呟いた。
「マコト先輩、我々万魔殿はどうします?」
第一機甲中隊の主力戦車、【KF51『パンター』】に乗ったイロハが、マコトに尋ねる。
「イロハ率いる機甲中隊は後方待機!サツキ!第二以下小隊を前進させ、風紀委員会と連携をとれ!武装親衛隊各員の健闘を祈る!」
「了解いたしました!全小隊、前進ですわ!!」
武装親衛隊はサツキの号令の下、一糸乱れぬ隊列を組み前進していく。
「イロハ、機甲中隊を先生のいる場所まで移動させるぞ。そのままアビドス組への支援に入る」
「はぁ、わかりました。…しかし、ヒナ委員長やマコト先輩が出るなら、別に総出でなくても良かったのでは?」
「キキキッ!武装親衛隊にも場数を踏ませてやらねばならんからな。私との訓練ばかりでは、面白みにも欠けるだろう」
「…マコト先輩の訓練って、名ばかりの蹂躙劇ですもんね…」
イロハは、心底憂鬱そうに溜息をついた。
「ん?なにか言ったか?」
「いいえ、何も?さ、急ぎましょう」
斯くして戰場は混沌に帰す。思惑はそれぞれ。然して目的はただ一つ。
シャーレの先生に託された、小鳥遊ホシノ救出の援助。
ゲヘナの二大戦力が、アビドスの砂漠にてカイザーを相手に暴虐の限りを尽くす!!
マコト様(ガチ)のバタフライエフェクト。
風紀委員会めっちゃ多い!
万魔殿がいる!
しかも両方なんか強い!!
きっとカイザー君は全てが灰になるんやろなぁ。
火を付けろ、燃え残ったものすべてに。
パヴァーヌ編
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