「何故だっ!何故ゲヘナがアビドスなどという矮小な学園に味方するっ!!」
カイザーPMCの理事は怒り狂っていた。最早、激昂などという言葉すら生温いほど。
「ほ、報告!北方に展開していたデカグラマトン大隊、ゲヘナの風紀委員会相手に苦戦!相当に押し込まれており…!!」
「で、伝令!西方の大隊、ぱ、万魔殿の武装親衛隊によって半壊状態とのこと!!組織的な抵抗が不可能です!!」
「南方と東方はどうなっている!!」
「と、東方の大隊は北方の援護に向かっておりますが、南方の部隊は『ファウスト』を名乗る謎の生徒率いる部隊の牽引砲によって足止めを喰らっており…!!」
「クソがぁあああっっ!!」
ダァンッッ!と机を強く叩く。状況は最悪、対先生を想定した布陣だったというのに、あまりにも
「ただの学生風情が…!!中央、先生の様子は!」
「アビドスの生徒率いて猛スピードで件の場所へ向かっておりますが、周囲に他の勢力は見えません!」
「よし!ならば直ぐに潰せ!アレを潰せば恐らく瓦解する!そうなれば我々が優位に立てるはずだ!!私直々に手を下して──」
prrrrと、カイザー理事に通信が入る。
「何者だ!今こっちは…」
《クックック…。随分と、大変なことになってしまっているようですね、カイザー理事?》
「…黒服!」
黒服。ゲマトリア所属と名乗る、正体不明の異形。
「黒服っ!!これはどういうことだ!!貴様の言う通りに布陣した結果がこれだ!話が違うではないか!!」
《クックック…。申し訳ありません、正直私としてもあまりに計算外でありまして…。よもや、ゲヘナからここまで増援が出るとは思いませんでした》
「チィッ…!だが、まだ希望はある!先生を潰す、協力しろ黒服!」
《…申し訳ありません、少々事情が変わってしまったもので。私共は、カイザーとの協力関係を切らせていただきます》
その言葉に、カイザー理事は一瞬放心してしまう。
「…な、にを」
《様々な要因を鑑みて、これ以上カイザーに協力するのはリスクがあまりにも高いと判断しました。ああ、このホットラインも今後は使用不可になりますので、ご容赦を》
「ま、待て!!き、貴様ぁっ!ここまで来て私を裏切るのか!!」
《諮らずしもそうなってしまいますが、悪気はありません。あくまでも貴方とはビジネスパートナー、リスクがリターンを上回ってしまえば、関係など持つほうが危ないでしょう?…では、健闘をお祈りしています》
「お、おい!黒──」
プツッと、通信が切れた。
「…おのれ」
カイザー理事は、わなわなと震える。
「おのれ、おのれ、おのれおのれおのれおのれおのれ、おのれぇええええっっ!!!」
最早、我慢の限界だった。
「全戦力を旧校舎へ集結させろぉっ!全力を持って先生を殺す!!」
☆☆☆☆☆
小鳥遊ホシノを救出するため、囚われていると予想される地点に来たアビドス対策委員会と先生。そこには、かつてのアビドスの校舎が埋もれている場所だった。
そして、対策委員会と先生を待ち受けていたのは、カイザー理事と動かせる全戦力のPMC。砂狼シロコが一人敵を請け負おうとしたが──。
「ここは私たちに任せて、先に行きなさい!!!」
そこに現れたのは、便利屋68。対策委員会を助けるため、社長の『
(言っちゃったあああああああ!?)
…尚、本心は相当にビビり散らかしていたのだが。
先生達は、その場を便利屋の面々に任せ、ホシノの救出に動く。
「はぁ……、こうなったら仕方ないか」
便利屋68の課長を務める『
「い、勢いに任せちゃったけど、この後はどうしたら……!?」
アルは自分の発言に思いっきり後悔しており、攻めるか逃げるかを迷っていたのだが──。
「キキキキッ!!カイザー相手にあれだけの啖呵を切るとはなぁ!中々豪胆じゃないか、便利屋ぁ!!」
「は、羽沼マコトぉぉぉぉ!?」
そう、万魔殿議長、羽沼マコトその人だった。
「…初めまして、かな?カイザーPMCの理事よ。我がゲヘナの生徒が、随分と世話になったそうじゃないか」
「…貴様が、羽沼マコトかぁっ!貴様のっ!!貴様のせいで!私の計画がすべて台無しだっ!!生きて帰れると思うなよ!!」
マコトを見たカイザー理事は、怒髪天を衝く勢いで激昂し、カイザーPMC全軍に総攻撃命令を出す。
だが、マコトは余裕の表情を崩さない。
「キキッ!私ばかりに注視していていいのか?
マコトがそう言い放った瞬間、飛来音がすると同時に爆発が起こる。その元凶は、遅れて戦線に到着したイロハ率いる機甲中隊の砲撃だった。
「マコト先輩と便利屋に当てないように。総員、砲撃開始」
イロハの号令と共に、5輌のKF51が130mm砲をカイザーに叩き込む。その火力に、大した抵抗もできず薙ぎ倒される兵士たち。
…また、もう一人の存在も忘れてはならない。
「…全部、蹴散らす」
マコトと行動を共にしていたヒナもまた、カイザーの兵士を軽々と撃ち抜いていく。戦闘が開始してからわずか数分で、カイザー全戦力の6割が壊滅状態となっていた。
「…何故だ」
「何故貴様らのような学園が、矮小なアビドスに味方する!?貴様らに何の得がある!?アビドスは終わった学校だ!砂に埋もれ、人は去り、滅亡を座して待つだけの哀れな学校だ!こんな状況になるまで、何処の学園も手を貸さなかった!連邦生徒会ですらだ!何故今になって動いた!!答えろっっ!!」
それは、カイザー理事の悲痛な叫びだった。夢も野望も打ち砕かれ、最早再起できぬであろう男の慟哭だった。
「何故、か…。貴様のような大人には、分からんだろうな。よく聞いておけ、カイザー理事。世の中にはな、
「……シャーレの、先生か」
それだけ呟くと、理事は力が抜けたかのように膝から崩れ落ちる。
「…私は、あのように非力なお人好しに負けたのか……」
「貴様の敗因はたった一つ。─シャーレの先生という存在を、見くびり過ぎたことだ」
マコトは吐き捨てるように言うと、既に抵抗の意思をなくしたカイザーの戦力をまるで気にも留めぬとばかりに素通りし、先生が向かったであろう方向に歩き始める。ヒナやイロハの機甲中隊もまた、カイザーなどに興味をなくしたかのように歩く。
あとに残ったのは、動くことの出来ぬ理事と無惨にも壊滅したカイザーの兵士たちだけ。
──prrr。
─ザッ、ザザーッ──
《こ─ら大─所属偵─隊!理事──急の報──!》
─ザッ、ザザザッ─
《かの存──急接─!予測─達地─、ア──ス旧校─!!》
マコト様(ガチ)のバタフライエフェクト。
カイザー、ほぼ完全に御臨終。
次回、アレ。
パヴァーヌ編
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