あなたの終わりを眠りと共に 作:アメフラシ
遅刻した言い訳をさせていただくと定期試験の時期なのとACT3がセイバーとランサーの戦いで終わってるのでプロットを変更したりしたからです……次回も遅れるかもしれません、本当に申し訳ないです。
「聖杯戦争に集うような英霊であれば間違いなく集結することになる。私たちの目的が聖杯の奪取でない以上は同盟相手を探すために受けるのもありでしょうか……」
「キャスター?」
「いえ、ルール無用の戦いで正々堂々と宣戦布告をする面白い魔術師がいたもので」
キャスターが愉快な性格をしていることをサクラが理解したのは最初の外出の際に理解した。それはサーヴァントというものへの恐怖の消滅とこの現状を異常事態から正常な状態だと理解させるのに十分な効果があったと言えるのかもしれない。
町中華ならば福沢一人で十分でしょうと呟き、ラーメンと半チャーハンのセットを二つ頼んでから慣れた様子で小さい取り皿を要求する主婦の仕草やサクラの洋服は私が編めば良いのではと結界内にいる可愛い兎たちから毛を集めていたりと本人の語るサーヴァント、過去の英雄像とは大幅な解離を見せる彼女に崇拝のような感情は薄れ、ポンコツな姉か母のような感情を芽生えさせたキャスター。それが普段の優しさを引っ込めて獰猛な笑みを浮かべているのを見ると逆に驚いてしまうようになったことは果たして正しいことなのだろうか。
そんな、どうでも良いことを考えるだけの余裕すら持ち始めたサクラはここが特等席だとでも言わんばかりに膝の上に乗せられた状態のまま自身も狐ほどの大きさをした兎を撫でていた。
別世界線の近い未来にて、一時は感情すら欠落することになる彼女とは違うサクラはキャスターやその従者である筋肉の塊と動物たちによる献身的な介護で現世に少しだけ疎いだけの少女となっている。
そんな普通になり始めている彼女とキャスターの語る聖杯戦争の相性は日を追うごとに悪化しているのだが、その辺りは自信過剰な側面を持つキャスターから再三に大丈夫だと告げられていることで表面上は安心はしている。
実際はギルガメッシュにサクラを見逃してもらう方法を全力で考えているキャスターなのだったが、無理そうな時は彼女の記憶を消して適当な一般家庭に潜り込ませるつもりではあるようだ。
さて、状況を進行形の現在に戻すとしよう。
片田舎の儀式で最古の王が召喚されているのだとすれば他の英雄も大概な化け物である可能性が高いことに加えて、無理に召喚に応えたことや現地の民からの認知によって補正が掛かっているのであろう性能の弱体も含めるとアサシン程ではないが下から数えた方が早い状態のキャスターが自信満々でいられるのは無駄に長く生きたことで顔見知りの英雄が多いことに由来する。
単純な話ではあるが聖杯を求める相手なら、それを譲ることを条件に味方に加わってくれるであろうし、一部の善性を持つ英雄たちならばサクラの境遇に同情して味方をしてくれるに違いない。
高望みをするのなら聖ジョージ、ゲオルギウスやマルタのような強力で真っ当な英雄やロムルスやヘクトールのような顔見知りが召喚されていれば良いのだが、それを無しにしてもキリスト教の英雄の数はそれなりに多い。大半が
まあ、サクラのような一般人枠が多ければの話なのだが……聖杯を求めて召喚される聖人がいるわけないんだから性根の腐った魔術師どもが彼らを呼べるはずもない。
「まあ、善は急げとも言いますし」
「出掛けるの?」
「はい……アサシン程度なら迎撃可能ですがそれ以上になると荷が重いでしょうし、今回はサクラも一緒に行きましょうか」
聖杯戦争の第二戦、マッチポンプであった最初の戦いを除けば初戦のセイバーとランサーの戦いは一見してセイバーの不利な状況でありながら、宝具の全貌すら明かしたランサーとその真の力であるエクスカリバーの大火力を明かしていないセイバーとで互角とはいかずとも均衡を保ってはいた。
しかし……。
「双方、武器を収めよ。王の御前である!」
その均衡を破る者が現れた。
絶大な気迫による威圧感によってその争いを止めたのはライダー、その名を征服王イスカンダル。
長い人類史にて世界征服という物語のような大望にあと一歩に迫った英雄、この日ノ本においてはアレキサンダー大王という呼び名の方が通りが良いかもしれないその男が間違いなく聖杯戦争においても最高峰の存在であることは疑いようもない。
けれど、セイバーは名としては同格の『騎士王』アーサー、ランサーは知名度こそないがフィオナ騎士団の一員であり忠義に厚いディルムッド、この程度で気圧されるような英雄ではない。ちなみに適当な猪を数匹突っ込ませれば勝てるランサーはキャスターの主観で同盟相手としてあり得ない存在だと認識されている。
続けて聖杯を譲ることと引き換えに同士として迎え入れることを約束したイスカンダルの言葉を当然のように断った二人の英雄、仕方ないかと笑う征服王はその笑みを崩さぬままに叫ぶ。
「聖杯に招かれし英雄はここに集うがいい!」
なおも顔を見せを怖じるような臆病者は征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬと知れ。
その咆哮を言いきる前に今回の相手の中では一番可能性があるかと魔術による隠遁を解いたキャスターと……黄金の鎧を身に纏った英雄が現れた。
「お先にどうぞ、私は後からで構いません」
「ふん、張り合いのない奴よ」
此度の聖杯戦争の大本命、共に冠位に届く英雄たちは一度視線を交わすと順番を決めたようであった。
「
冥府の王とか名乗らなくて良かった……。
そう安堵するキャスターの姿に驚愕するサクラの目に映ったその英雄は誰よりも輝いて見えた。
キャスターに連れられて訪れたその場所、ただ二人の人型が生み出したとは思えないクレーターに驚き、激しく打ち合う二人のサーヴァントの戦いを視認することすらできずに立ち尽くすしかできないサクラは短剣を宙に振るだけでアサシンらしき存在を消し飛ばしたキャスターとどちらが強いのかと思案することしかできなかった。その場に突如として現れたライダーに関しては声を出すこともできなかったが、その燃えるようなカリスマに影響されたように前に彼女の立ったキャスターに背負われていることでどうにか堪えることはできたようである。
そして金色の王を名乗る英雄、その威光によって完全に蚊帳の外になった二人は、問答を繰り返す金色の王、ギルガメッシュと言うらしい、とサクラも名前を聞いたことのあるアレキサンダー大王がこの場で最も発言力のある存在であることを確認しながら、道中のコンビニで買ったチョコレートの癒し効果に期待してその景色を眺めていた。
やがて一触即発の空気になったところにキャスターがパチンと手を叩く。周囲から集まる視線に怖じ気付きながらもキャスターへの信頼からその身を寄せるサクラ、口を開く魔術師の言葉は聖杯戦争の禁を破る行為でありながらこの場の最強が求めていた言葉であった。
「そこの英雄、アーチャーはギルガメッシュ。古代メソポタミアの王ですよ……なんで私が補足する必要があるんですか」
ギルガメッシュという英雄に冥府の神としての側面があるから頭に入っていましたと語り、ジト目を浴びせるキャスターの言葉にこの場に集うマスターと英雄たちは言葉を失う。最古の王であると同時にこの世の全てを見てきたとされているその英雄が召喚に応じたことも信じ難い出来事ではあったが、それを認知している英雄という時点でキャスターも間違いなく古く強大な英雄の一角であることに疑いはない。
キャスターからの紹介の一瞬だけ気を良くしたギルガメッシュは、逆にそれを知らなかった無知な英雄たちへの苛立ちを深めたのだが、その一瞬を隙と捉えたのだろうか黒い影の如きサーヴァントの出現、飛び込んできたそれを迎撃するために金色の波紋を広げる、被弾しないためにライダーと隣に瞬間移動のような速度で逃げたキャスター、コンマ数秒の出来事にサクラは改めて己のサーヴァントの強さとそれでも敵わないかもしれない敵の存在を知ることとなる……。
「ふう、会って即座に殺されるようなことがなくて良かったです」
「少しばかり気になることはあるが、あれがアーチャーならお前さんはキャスターってことになるな。魔術師でありながら迷わず姿を晒す度胸が気に入った。どうだ、余の軍門に下らんか?」
「キャスターであることはそうですが、まあそうですね。名乗らないのも失礼ですので、真名をモルス、貴方のことも当然知っていますよイスカンダル……それと同盟に関しては受けますが、立場があるので軍門に下ることはできません」
現れたバーサーカーらしき英雄には目もくれず、唐突に隣に現れたキャスターに悲鳴をあげるマスターを無視しながら勧誘を始めたイスカンダルに唖然とするセイバーとランサーであったが、二人を襲おうと武器を振り上げることはしなかった。
「むぅ……となると最後に戦うことになるが」
「いえ、聖杯は譲ります。ですが一応は対等という形にしておいてください。でもないと私の家臣が納得しないので」
それは隙だらけでありながら初撃で倒せなければ2騎のサーヴァントが敵対すること、攻撃の瞬間にお互いが倒されかねないこと……。
「その幼子がお前さんのマスターか?」
「ええ、同盟の際はこの子の庇護を最低条件にさせてもらいますよ?」
「がはは、あの戦いの中で甘味を食うだけの度胸があるなら坊主より見込みがある。どうだ、余と同盟を結ぶ気はあるか?」
「うん、同盟を結びます」
キャスターの背中に背負われた幼子がどうにも気になったからである。明らかに聖杯戦争に望んで参加するような存在ではなく、それでいてキャスターが彼女を洗脳しているような痕跡は見られない。
そもそも、キャスターの名が本当にモルスという英雄であるのなら子どもを騙してまで聖杯を望むような存在には思えない。
つまりは少女は巻き込まれただけの一般人ということになる。それを殺してまで、その拠り所となっているだろうキャスターを殺してまで奪う聖杯というもののなんと空虚なことか。騎士である二人はその葛藤に苛まれている。
しかし……。
「命拾いをしたな、雑種、狂犬」
バーサーカーとの戦いを興味がないと言わんばかりに無視されていたギルガメッシュが怒りの矛先を変えようとした瞬間、顔を歪めて立ち去った。
つまりは影のようなサーヴァント、バーサーカーがフリーになったということである。
「でしたら折角の同盟の記念日、そちらの御二人も共闘と致しませんか?」
マスターである少女をライダーのマスターの隣に下ろし、手にしていた短剣を杖へと変えながらも微笑むキャスターは共闘の証とでも言わんばかりにバーサーカーへと突貫した。
どちらが先?
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