あなたの終わりを眠りと共に   作:アメフラシ

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研鑽と少年期

 

「ふう、さっぱりした♪」

 

『へび~』

 

「あ、今日は蛇か」

 

『やぎ~』

 

「あ、山羊も」

 

『らいお~ん』

 

「え、ライオンも……って、これキマイラって奴?」

 

 

 前回の11歳から2年経った私は既に13歳、体は成熟し、いつでも旅に出ることができるようになった。今はヘスティア様が数か月後に依頼を受けて欲しいと神託をくれたため、それまではこの私塾で待機である。

 

 そんな私、モルスの朝は早い。

 祖母の加護が十全に発揮される早朝太陽が昇る前に目を覚まし、身支度を済ませる。

 川辺で顔を洗い、寝間着を脱いで着替えるのだが、この時に出来るだけ大きな声で歌うことを忘れてはいけない、ケイローン先生(賢者は味気ないと言われた)にも、カストロ兄さん(そう呼ぶように言われた)にも口を酸っぱくして言われたのだが、地上には同性愛者が多くいるため例え男が相手であったとしても簡単に肌を晒してはならない……らしい。勿論、女であったとしても駄目であるし、女神であるのなら論外、アポロンとゼウスはもっと論外とのことだ。

 その事と歌うことにどのような因果関係があるのかと疑問に思うことは正しい、これに関しては父が知らぬ間に与えてくれた加護のようなものだろうが、私が歌うと、正確には旋律を刻むと周囲の生き物は眠りにつく。先生レベルの理性を持つ存在なら正当に評価を行うことができるらしいのだが、危険な野生の獣たちや理性が存在しない一部の相手なら問答無用で安らかな眠りを与えることができる。魔眼と併用すれば周囲一帯の音が眠り、時が止まったような感覚に陥るという使いにくいが強力な能力だ。

 そんな眠りの力に引っ掛かった今日の獲物はキマイラ、火を吐く力のない弱い個体でありながらそこそこの強さを持つ魔獣らしい。らしい、というのは私がその力を体感していないからであり、伝承で聞いたベレロフォンが退治したキマイラのような恐ろしさは微塵も感じられないからだ。すーすーと眠っている姿は猫科の生き物のそれだし、顎の下をごしごしすると気持ち良さそうに喉を鳴らす可愛らしい生き物の何を怖がれば良いのか、私は疑問すら覚えている。

 ちなみに常連の強そうなワイバーンくんと綺麗な銀の角を持つ鹿さんは起きている時に背中に乗せてくれたりする。どの子たちも恐ろしい外見にどこか愛嬌のある可愛らしい子たちばかりだ。

 

 

「イアソン、朝だよ」

 

「……」

 

「寝てるなら返事してね」

 

「……」

 

「よし、起きてるね」

 

「寝てます……」

 

「返事ができるなら起きてるね」

 

 

 それが終われば、次はイアソンを起こす。

 何をすることもなくいつの間にか起きている先生を起こす必要はない、既にそれぞれの目的のためにこの塾から旅立った兄弟子たちも同様に起こす必要はない、しかし、もうすぐ少年期を終えて青年期に入るギリギリのこの男だけは起こす必要がある。この男、イアソンは現状は穀潰しのニート、いくら出生が王子であったとしても、家事の手伝いもせず、先生の教えを聞き流すようなクソガキである。家事をしないのは許す、けれど先生の教えを聞いていないのはアウトである。

 故に、私は彼に厳しく接している自覚がある。その事に文句を口にしながらも最後は従うことの多いこの男との生活が楽しい日常になり始めていることも自覚している。

 カンカンと鍋を打ち鳴らしながら布団から這い出てきたそれを掴んで、先生の元へ運ぶ、三人での朝食の時間が始まった。

 といっても、何か特別なことがあるわけでもない。イアソンに好き嫌いをしないように注意し、作法に気をつかいながらパクパクと食物を口へ運ぶだけだ。日によっては先生から今日の予定や小テストのようなものが渡されるのだが、今日は何もない。昨日、寝る前に言われた課題を提出して鍛練に備えるだけである。

 

 

「槍の適性は……恐ろしい程ないですね」

 

「……そしたら盾も」

 

「はい、小型の丸盾なら何とか……」

 

 

 それが終われば簡単な座学と腹ごなし程度の運動が行われる。今日は様々な武器を扱えるようになろうという内容だったが、私は槍のようなリーチの長い武器の扱いが絶望的なほど苦手である。槍といえばギリシャの花形、穂先での斬撃と刺突、それが使い物にならなくとも頑丈な棒として扱える戦場で使うなら最も信頼のおける武器なのである。

 それをまともに扱うことができない理由というものが私の性質に由来する。私という人間は前世から観察というものが得意である、相手の動きや目線の先を観察し、予測し、模倣する。これだけなら強者の槍を模倣すればと思うかもしれないが、私という人間は模倣から応用することがある程度得意であったとしても、人間の器官で行えることならば得意だが、それ以上になるとどうにも上手く扱えているような気がしないのである。

 槍というものはそれで攻撃することが前提の武器であり、人間の器官でそれに対応するものは存在しない。無理に考えれば腕を槍に見立てることはできるが、私の中の常識がそれを拒むのだ……私に尻尾のような器官があれば話は別だったかもしれないが。生前に武術の師範代などから読み取った知識や体の使い方は無手での戦いを常とする空手や柔道、ボクシングやサバット等、武器を日常的に持ち歩くことを必要としない知識によるものばかりであった。

 故に、パンクラチオンは上手くとも棒術はまるで扱えず、即座に投擲して無手で戦った方が強いまである。また、防御も複数を相手にするなら受けたら終わりだと思い、回避を優先するため盾というものが重りにしかならない。ボクシンググローブの代わりとして棘のある相手や硬い敵を殴るのには使うのだが。

 しかし、その知識は悪いことばかりではない。前述の通りにパンクラチオンは得意であり、爪として考えて扱うのなら短剣は使える、靴に刃物を仕込むなどすればただ相手を蹴るだけで致命傷を負わせられる可能性もある。

 別に武器がなくとも戦うことはできると、それができる方が便利だと励ましてくれた先生の言葉は温かいものだった。暗器を持ち歩くことについて肯定された時には流石に驚いたのだが。

 結果、軽く体を猫背にして短剣で斬りかかる暗殺者のような戦い方を習得したのは、王道の英雄たちを排出してきた先生に申し訳なく思えてしまった。まあ、本人は学ばせる機会のないと思っていた知識を弟子が受け継いで嬉しいと語っていた。

 

 

「少し見せすぎましたかね」

 

「パターン化することができると、少し手緩い訓練になってしまいますよね……」

 

「こうも習得が早いと師としては少し残念です。喜ばしいことではあるのですが」

 

 

 その次は本格的な運動、今日は目を隠しての訓練であったが、その内容は日によって変化する。

 先生が魔術で生み出すスパルトイ?という骸骨を撃破しろという直接的な戦いの腕が求められるものから、ある種類の鳥を捕獲しろという狩猟者の力が求められるもの、材料を山から調達し、料理をするような変わり種も存在する。

 目隠しに関しては既にマスターしたといっても傲慢には当たらない程度に熟した。弓で攻撃する相手なら最低限の動きで回避し続け相手の息切れや苛立ちを待つ、近付いてきたのなら両の腕に握った短剣で攻撃し、腕に括っている小さな丸盾によって防御する。どちらも二つずつあるため死角は極めて小さい、その死角を狙ってくるとわかっているのなら対策は容易なことである。

 長々と話したが、これに関しては免許皆伝とまではいかずとも腕が錆びないように行っている側面が強い。半分遊びのような形で行うことのできるこれは、数ある修行の中でも楽しい部類に入る、そのため先生は辛い鍛練の翌日にこれを持ってくることが多い。

 

 その後は昼食を挟んで、午前の訓練が終わっていないのならそれを、終わっていたのなら座学に取り組むこととなるが、ここは割愛でいいだろう。

 

 

「ここは?」

 

「……なんで俺が!」

 

「出来なかった自分が悪いんでしょ。王様になるならこのくらいできて当然、スパルタみたいな王政ならともかく、アテネみたいな民主化の波がある今はこのくらいできないと、指揮とか船を動かすのは得意なんだから、その時みたいにね」

 

「あれは……俺は王になる男だからな。軍隊を指揮する技術は当然必要だ、必要だから学んだに過ぎない」

 

「船は趣味じゃん、それに『これも』必要でしょ?」

 

「……」

 

「それと、俺ってのは良くないね。イアソンは腕っぷしの強い王様にはなれないだろうし、高圧的に接しても反乱を起こされるだけだよ」

 

「なら、なんだ、私にでもすれば良いのか」

 

「うん、それが良いんじゃない?」

 

 

 それが終わったらサボっているイアソンを見つけて勉強をさせる。イアソンはやればできるのに面倒だからやらないタイプの人間だ。それでいて、体が戦いに向いているのならともかく、貧弱な体なのに勉学が好きではない。こんなことを学んで何の意味があると愚痴を吐いて逃げようとする。ケイローン先生も鍛えてもらうことを望まれた人間ではなく、ただ預かっておくことを頼まれた人間を相手にやり過ぎることはしない。

 とはいえ、授業を聞いていなければ理解できない問題に回答できていることもあるから、耳に染み付くくらいにしっかり勉強させているのだろうが。

 ……まあ、私とてやる意味がないという思考がわからないと思うような天才というわけではない。ごく稀に意味のわからないことを学ばせてくるのは確かであるし、前世の勉学なんてそれを披露する社会に出ることなくこちらへ飛ばされたため真に勉学の必要性を理解していることはない。

 しかし、最低限の知識がなければ泣きを見ることになるというのは妹が集めてくる漫画の知識で知っている。

 況してや、王様になろうとする人間が基礎だけで足りるとは思えない。

 これでいてイアソンは善性だ。

 誰もが平等にとか、幸せにとかの夢物語を本気で願っているし信じている。だから私も復習がてらその夢の一助になれるよう机に肩を並べているのだ。

 努力が必要な人生を努力が嫌いな人間が歩むことを選んだのだから嫌と言ってもやらせる。それがこの男の未来に繋がると信じて。

 

 

「今日も良い日になりました、お婆ちゃん、お爺ちゃん、ヘスティア様、ありがとうございます」

 

 

 その後はイアソンが寝たのを確認して焚き火をしてヘスティア様に祈りとお菓子を捧げる。祖母と祖父への感謝も忘れずに行えば一日が終わる。

 

 どうだろう、私の古い日常は君の興味を引けているだろうか……だとすれば凄く嬉しい、これ程の喜びは人生にて何度味わえるのかわからないものだ。

 しかし、これでは少し退屈だろう。だから今日は非日常の話をするとしよう、あれはそうだな、ギリシャ一番の英雄が、まだ二つ目の試練を終えた頃の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、先生、ここにいたんだ」

 

「ああ、モルスでしたか。そういえば昨日伝え忘れていましたね」

 

 

 ある日の朝方、いつもケイローン先生が瞑想をしている広間に彼がいなかったことから彼の住み家である洞穴に向かった日のことであった。

 今日は、昨日に絞りすぎたことで今日は回復にあてなければならないイアソンを寝床に置いて出てきたため一人だったのだが、先生の洞穴の奥から大きな気配を感じた。

 まるで、ある日の巨大猪のように自分の存在を隠すことなく垂れ流すそれに圧倒されていた私は先生の言葉に更に大きな驚愕を覚えることとなった。

 

 

「ああ、ケイローン。彼が今の弟子だったか?」

 

「ええ、紹介します。彼はヘラクレス、先日ヒドラを退治した本物のヘラクレスですよ? ヘラクレス、彼はモルス、眠りの神ヒュプノスの息子にしてテッタリアの魔猪を仕留めたヘスティアの使徒です」

 

「え……え……」

 

「ああ、俺はヘラクレス、昔にケイローンから指導を受けていた、そうだな、お前の兄弟子だ」

 

「あ……あ……」

 

 

 私の頭の中を廻ったのはどうしてという感情だった。私が二十一世紀の日本から転じて来た人間であるということは既に周知の事実であるだろうが、私はこの場所を異世界だと思っていた。何故ならば魔術があり、ケンタウロスや神々が実在するのだから。地名などが知っているものであったことやギリシャ、スパルタなどの致命傷になりそうな真実を受け流していた私だったが、ここでヘラクレスという爆弾が現れた。

 ヘラクレスオオカブトの名前の由来であるその英雄の存在は、日本史専攻でギリシャ神話について無学である私であったとしても当然知っている。となればこの世界はやはり地球ということになってしまう。

 

 私がこの世界が地球である可能性を恐れているのは、シンプルな答えだ。

 私の前世がバタフライエフェクトのような何かで消滅するかもしれないことである。この世界が地球であること認めてしまえばその不安が顕在化し、私に襲いかかるように思われたからだ。

 私にとっては、今生も、前世も、平等に美しいものであり、失いたくないものであった。それ故に、異世界という新しい世界で生きる今生も、それなりに幸せに過ごすことのできていた前世も、消えて欲しくはなかったのだ。

 ああ、これを確信してしまった自分はどうなってしまうだろうか、消えてなくなるのだろうか、恐怖とそれに付随する諦めが深まり、自然と口が開かれる。

 

 

「この世界は……地球だったのか……」

 

 

 確かめるように禁断の言葉を呟いた私の意識は、深い深淵の闇へと消えていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ここで終わるつもりでしょうか?』

 

 

 声が聞こえた。 

 

 

『ただの思い込みをそこまで恐れて』

 

 

 聞いたことのある声が聞こえた。

 

 

『ここに踞るのが答えでしょうか?』

 

 

 声は酷く残念そうに私に語りかけた。

 

 

「違う」

 

 

『ええ、それで良いのです』

 

 

 声が聞こえた。

 

 

『抑止力の妨害は私たちが上手く導きましょう』

 

 

 ひさしぶりに聞いた声だった。

 

 

『貴方は今までのように相応に生きれば良いのです』

 

 

 声は楽しそうに私に語りかけた。

 

 

「ありがとうございます、モイラ」

 

 

『いえ』

 

 

『我々もこの物語の続きが気になりますので』

 

 

『定められぬ道を行く者よ』

 

 

「はい」

 

 

『『『目覚めなさい』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫でしたか?」

 

 

 目が覚めた。

 太陽は動いていない、時間はほんの少ししか経過していないようだ。

 

 

「いえ、少し眩暈がしただけです」

 

「なら、大丈夫ですかね」

 

 

 先生は少しの心配の後に口を開いた。

 

 

「珍しくヘラクレスが来てくれたことですし、彼と試合をしてもらおうと思いましてね」

 

 できますか?

 

 

 先程、叔母から死の淵から救出してもらったばかりだというのに、先生は私に死刑宣告を言い渡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、モルス、準備はいいか?」

 

「……はい、大丈夫です」

 

 

 結局、私は先生の善意を断ることができなかった。それは自らの研鑽のためであり、手加減しているとはいえギリシャ最高の英雄に相応しい相手と殺されることなく戦えるというのなら学びになると判断したからである。

 ただ、戦えば消し炭になることは確実だが、愛用する武器を使わず、質量の小さい枯れ木の棒を武器として、それが折れたのなら試合終了という条件は破格だった。

 私はそれに加え、体を温めているヘラクレスを一時間観察する許可を貰うことにした。

 それを全て終えて私はギリシャ最大で最高の英雄の前に立っている。

 

 

「それじゃあ、始めるぞ」

 

 

 最初に動いたのはヘラクレスだった。

 2mを超える巨体からは信じられない速度での踏み込みで地面を抉り、走り出したその体は並みの獣であれば触れただけで消し飛ぶだろう。振り下ろされる棒切れが魔剣に思えるようなその動き、近寄れば死ぬ。

 

 

 が、私は迷わず懐へ飛び込む。

 

 

 虚をつかれた巨体は勢いのままに私へ向かう、ヘラクレスは私を殺さないために横へ飛ぶだろう?

 そこで消えた速度、合わせるように短剣を横凪に一閃する、たかが薄皮一枚、されど薄皮一枚、自らの体が細腕の人間に傷つけられたことに驚き更に動きが鈍る。そこに再び一閃、圧縮された筋肉から勢いよく血が飛び出るがすぐに塞がる、ダメージはないと言っても良いだろう。けれど、ダメージを与えたという事実に意味がある。彼は警戒するようになるだろう、自らを仕留められるような一撃を。

 予測したように後ろへ飛ぶヘラクレスは今度は一転して足を止めて待ちの姿勢を選んだ。

 棒切れでのみ攻撃という枷、私が棒を狙ってくるのかと思っていたのだろう。だから先手必勝を選んだ、耐久力のない振り回せば自壊する武器のデメリットを瞬殺することで補うため。

 しかし、相手は自分に正攻法で勝とうとしている可能性が高い、となれば迎撃かカウンターの一撃を狙う。一撃で相手を仕留められるのだから焦る必要はない。

 経験の薄い、ネメアの獅子とヒュドラの退治は殺すことが求められた、手加減しての相手が触れたら死んでしまうような相手である場合の戦い。

 

 

「面白い……!」

 

 

 本気にはさせたら駄目だけど、無警戒なのも策にはめることができない。そんな思考のままに相手の考えを読む、反応からして全て当たっている……。 

 構えたままのヘラクレスへ石ころを投げたり、暗器を飛ばしてみるが流石に我慢強い。

 根を張った巨木のように動かないそれに痺れを切らしたかのように飛び込む。

 引っ掛かったなとでも言わんばかりに横凪に振られた棒切れ、当たれば即死するそれに回避は選ばない。

 

 

 魔眼。

 

 

 その攻撃が最も下に到達した瞬間に瞳を大きく開く。手加減をしていても、油断していないヘラクレス本人を眠らせることは叶わない。

 しかし、父から聞いたアポロンの矢を地に伏せさせた魔眼の力があれば……

 

 「                  」

 

 棒切れが地面に炸裂した。

 当然、ヘラクレスの力に耐えられず棒切れは自壊する。手加減をしていても地面に叩きつけられたのなら簡単に壊れるだろう?

 

 

「はっ!? ……ハッハッハッハ!!!」

 

 

 ヘラクレスが私を殺すつもりがなかったこと、対人能力は現在だとそこまでなところ、手加減の比重、魔眼の初見殺し、圧倒的に有利な勝利条件。

 

 どれが欠けていたとしても勝利は不可能だった。

 英雄ヘラクレスに勝ったとはお世辞でも言えない戦いの結果は……。

 

 

「モルス、お前の勝ちだ!」

 

 

 私の勝ちに終わった。

 何故か自分のことのように喜んでいるヘラクレスの背中を叩いての祝福、かなり痛かったがこれも勝利の喜びを薄れさせることはない。

 

 こうして私の非日常は幕を閉じた。

 余談だが、これだけの条件でも勝てると思っていなかったケイローン先生が見せた驚愕の表情は今まで見たことがない程大きく口が開いていた、その事をアルゴー号に乗ったヘラクレスと大笑いすることになる……。

 ああ、また皆で旅に出られるような未来が訪れると私は嬉しい。

 

 叶わぬ願いは小さな島の空に響き渡った。





 運命の三女神は蛇足だったかもです。

どちらが先?

  • 一話完結のギリシャ異聞帯
  • 短編のオケアノス
  • 幕間の二人
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