きゅっとして土管   作:ちりめん山椒

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思った事を書き出すと、何が言いたいんだお前はと自己嫌悪したくなる事があります。考えを相手に伝えるって難しいですね。


学校は怪談界の大御所

 吉田にボコられてから一月ほど、あのバタ足クソタマゴに勝つ為に呪術そっちのけでマリオと特訓してた。ワンジャンプ権を行使するのはマリオさんなんだぞ。足場が勝つなんてあってはならない。その気持ちを胸に抱いて再選を挑んだ。

 

今まで乗り捨てしてすいませんでした。 

 

 またボコボコにされました。そんなクソトカゲ…失礼吉田と今日も放課後に駄弁っていると、最近よく噂されている怪談の話になった。

 

「なぁ小雀。お前『校舎奥の奇声』って聞いたことあるか?」

 

「あ〜なんか最近噂になってるやつ? 特別教室のある棟の奥から『Help me』『Au Secours』『Aiuto』とかって聞こえてくるって。全部意味は『助けて』らしいな」

 

「それそれ。あの棟学校ができてから今まで一回も改修工事してないらしいんだよな。と言うかしたくてもできないんじゃないかって言われててよ」

 

「できないぃ? なんだそれ、そんな話聞いたことないけど」

 

「上の兄貴から聞いた話なんだけどな。兄貴がまだ小1だった頃に1人の女の子が行方不明になった事があったらしいんだよ」

 

「え、うち学校曰く付きなの…?」

 

 

「後から分かった事らしいんだけど、その女の子同じクラスの子たちから虐められてたらしくてさ。行方不明になった日も特別教室の奥の階段に呼び出されてたらしい。でもその呼び出しはイタズラで、実際には誰も行かなかったらしいんだけど…。次の日その女の子は登校してこなくて親からの連絡で行方不明が発覚したらしい。今でも行方不明のままなんだとさ」

 

「…それが例の棟を回収できない理由とどう繋がってんの?」

 

「その事件があったあと、同じような事が起こらないようにって棟の改築の話が出たんだよ。それで建築会社に依頼して下見に来てもらったりしてたんだ。その時に来てた建築会社の人が1人行方不明になった。棟の奥から『助けて』って聞こえたんだと。

2人で来てた建築会社の人は、1人が様子を見に行ってもう1人が人を呼びに行った。人を集めて棟の奥に向かった時には先に向かったはずの人は何処にもいなかったってさ。そんな事があったからあの棟は未だに改築出来ずにいるってわけ」

 

「吉田なんでお前そんなに詳しいんだ? 明らかに子どもが知ってるような情報じゃねぇだろ」

 

 めちゃくちゃ解像度の高い内容を話す吉田。俺はそんな吉田に疑わしい目を向けると、周りを気にするそぶりを見せてから声を顰めて理由を話してきた。

 

「その人を呼びに行ったのが俺の父さんなんだよ。兄貴から聞いた話と父さんから聞いた話、そして今回の怪談の噂。同じ場所でこんなに話題が出るなんて明らかに何かあるでしょ。という事でさ…」

 

 確信を持ってそう言ってくる吉田を尻目に呪霊だろうなとあたりをつける。人を行方不明にできるって事はそれなりに等級が高そうだなぁ。祓いに行くか…? でも今まで四等の蠅頭や高くても夜中の山中に出てきた3級くらいの河童みたいなやつとしか戦った事ない俺がそこそこ広まってる噂の主に勝てるかわからないよなぁ。正直に言うと関わりたくはないけど、目の前のバタ足クソタマゴ使いは本当に向かってしまいそうな気概を見せている。ほっといたら1人で勝手に突撃してしまいそうだ。…仕方ねぇなぁ。

 

「分かった分かった。お前真相確かめに行きたいんだろ? でも夜中に入る算段あるのかよ」

 

「そこは抜かりない。この学校古いから出入り口とかにしか警報システムついてないんだよ。だから何処かの窓の鍵開けておけば中入れんだわ」

 

 それでいいのか学校よ…。小学生にすら対抗策考え付かれるくらい粗雑だな。

 

「なるほどね。じゃあ行くのは明後日の土曜日にしよ。学校から帰ってきてまた学校行くのしんどいし」

 

「サンキュー! ありがとうな小雀! んじゃ俺色々準備するわ! 本当に危ないかもしれないから武器になりそうな物見繕ってくる」

 

 そう言って吉田はランドセルを引っ掴んで教室を出て行った。途中廊下から「走るな!」と担任の怒声が聞こえたので吉田は捕まったのだろう。南無。

 俺以外に教室に姿はなく、他に残ってたクラスメイトもいつの間にか帰っていたようだ。時刻は午後6時。下校時間ギリギリなので、そろそろ吉田を捕まえてた担任が来るだろうから、俺もランドセルを背負って教室を出る。教室の扉を閉める時に取っ手を少し引っ掻いてマーキングを付けておいた。

 

「なんだ紅笠もいたのか。もう下校時刻は過ぎてるから早く帰りなさい」

 

 そう後ろから声を掛けてきたのは担任の澤村先生。いつもオレンジ色のジャージを着ているので遠目からでも認識できるくらい目立つ。聞いたところ同じジャージを10着以上持っているらしい。ジョ○スかよ。

 

「今帰るよ澤村先生。あっ、そうだ。澤村先生最近噂になってる『校舎奥の奇声』って話知ってる?」

 

「ん? いや、知らないな。どんな噂なんだ?」

 

「…俺も人が話してたのをチラッと聞いただけだから分かんないんだよね〜。だから先生に聞いたんだけど」

 

「ほー。ま、この学校の七不思議とかそんな感じなんじゃないか? 俺が小学生の時にも似たようなのいっぱいあったぞ。夜の学校のトイレで鏡を叩くと引き摺り込まれるとか季節外れの桜の下には死体が埋まってるとか音楽室から毎夜ギロの音が響いてくるとかな」

 

「やっぱりどの時代にもそんな怪談があるんだ。…あれ? なんか最後おかしくなかった?」

 

「そうか? こう言った話は大抵夜が舞台なのばっかりだからな、巻き込まれたくないなら早く帰るこった」

 

「はーい。それじゃあせんせいさよーならー」

 

「すごい棒読みだな…。はいさようなら。また明日な」

 

 そうして家に帰ってからNPCバタ足クソタマゴ相手に練習をしてると時計は10時を示していた。そろそろ準備するか。

 

 左手の小指に呪力を込めて、目の前に土管を生成する。この土管は今までコツコツ貯めてきたアイテムブロックやその中に入ってたアイテム達を詰め込んであるストレージ土管として使ってる。取り出し方は出したいアイテムを思い浮かべながら直接手を突っ込むか、土管から射出させるかの2種類。

 今回取り出すのはスーパーキノコと木の葉の二つにする。スーパーキノコは身体能力と呪力の量と質の強化。木の葉は狸になれる。狸になれる。大事な事なので2回言った。獣になるからなのか五感が強化され、動きが俊敏になるので、屋内で有用だと判断した。後は懐中電灯などの小物を用意し、動きやすいようにジャージに着替えて準備を終える。親は共働きで夜遅くにしか帰ってこないので気にしない。

 右手の人差し指に呪力を込め、ワープ土管を生成する。後は土管に入れば学校へと行けるだろう。目的地に向かう前に、今一度考える。

 自分の力を過信してる訳じゃないけど、俺に噂の主を祓えるだろうか…。まだ一度も見た事ないけど呪術師が来ていつの間にか解決してくれるんじゃないか。何も自分がいかなくてもいいじゃないか。そんな考えが次々と浮かんでくる。俺は直前になって怖気付いていた。

 だってさ、前世があったって術式を持ってたって俺はただの十歳の子供なんだぜ? そんな奴がアニメや漫画みたいに化け物相手に大立ち回りできるかって。前世で命の奪い合いなんてした事ない奴が異世界行ったら当たり前のように殺せるのか? 異世界主人公達はどっかイカれてると思う。

 でも今回はやってやる。友人の命がかかってるからな。俺を足蹴にして画面内に吹っ飛ばすような奴だけど、精神年齢の違い故に周りから孤立してた俺を救ってくれたいい奴なんだ。好奇心旺盛で危険な事に首突っ込もうとしてるけど…。

 闘う覚悟を今一度決める。俺もここら辺の常識イカれてくれてたら怖がらなくて済んだのにな…。

 

「よし、それじゃあ行ってきます」

 

 そう言って俺は土管に吸い込まれて行った。余談だけどこの入る時の『ニョッニョッニョ』って効果音どうにかならんかな…。気が抜けちゃうよ。




あんなり気にした事なかったけれど、異世界転生した人たちはなんですぐに魔物とか動物とか殺せるんだろうか。命の危機に枷が外れたりするのかな。
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