色んな魚が泳いでいる。
群れて泳ぐもの、我が一番だと早く泳ぐもの、誰にも左右されず一人で泳ぐもの。
少女はガラスに手を当てながら楽しそうにソレラを眺めている。
その少女を後ろから眺める大人が二人いた、少女の両親である。
優しい瞳で少女を見つめているが時折申し訳なさそうな目をしていた。
少女はその事に気づいていない、ただ純水に水槽を見つめていた。
――「真実を知るもの」――
とある道場で二人の人間が戦っていた。
片方は男性でボロボロになった胴着を身に纏い荒々しく、しかし的確に動いていた。
その拳から繰り出される技は当たれば相手の意識どころか命すら断てるほどの迫力があった。
片方は女性で胴着を着た人物の攻撃を一つ一ついなしながらカウンターを狙いつつ攻撃をしていた。
攻撃の数は少ないものの速さを持った技は普通の人間なら避けられない代物である。
そう、普通の人間ならばだ。
「―――ッッッ!?」
女性の攻撃をいとも簡単に避けた男はそのまま女性のこめかみめがけて肘打ちを放つ。
男の放った肘打ちはまともに当たり女性は悶絶しながらも大きく飛びのいた。
「・・・・痛いですよ、竜馬さん」
「ったりめーだろうよ。痛くしてるんだからよ!」
竜馬と呼ばれた男はそういいながら構えを解いた、戦いの終わりの合図だった。
この男の名前は流竜馬。
空手家であった父の跡を継ぎ空手界に並ぶものなしと評される男である。
数年前までは各地を旅していたが今では父の道場を譲り受け師範となっていた。
「真条よー。お前は受身に回りすぎてるっての、もう少し攻めたらいいだろうがよ、ビシバシってよぉ」
「竜馬さんみたいに積極的にいけたら苦労しませんって・・・」
真条と呼ばれた少女は自分のこめかみを押さえつつ満足そうな顔をしていた。
彼女の名前は「真条ラム」
銀色の髪に不健康な程に白い肌を持つ少女である。
そして彼女こそがこの話の主人公なのである。
「ともあれ今日もいい勉強をさせていただきました。ありがとうございます」
「んな肩ッ苦しいお礼なんぞいらんわい。お礼ならこう・・・水とかをだな・・・」
竜馬の言葉に真条はただただ呆れるしかなかった。
「また水道止められたんですか・・・よく生きてますね?」
そう、「また」なのだ。
この男、流竜馬は空手の師範代でありその実力は世界でも並ぶものは少ないと言われるほどである。
なのにこの男は何故水が止められるほど収入が無いのか?
それは至極簡単なことだった。
流式実戦空手はあまりにも実戦的過ぎてついてこれる門下生がいないのである。
門下生がいなければ資金が入ることなどまず無い。
彼の強すぎる空手は人を引かせるには十分すぎるほどの力があったのである。
「まぁその辺のヤクザボコって金巻き上げるかなぁ。あ、勿論正当防衛だぜ?」
だがこの男はタフであった。
「そんなことするよりも決闘でもしてお金稼いだ方が楽なんじゃ・・・」
「見世物になる気はさらさらないんでねぇ」
「だと思いましたよ・・・」
真条は呆れつつも道場から出る支度をした。
明日から学校が始まるのだ、竜馬との稽古も当分なくなる。
故に彼女は今日ここに来たのだ。
「しっかしお前がIS学園に行くとはなぁ・・・興味なかったんじゃないのか?」
竜馬は不思議そうに尋ねた。
『IS』
世界の軍事バランスを崩壊させた究極の兵器。
この兵器の登場により世界情勢は混沌としているが、各国の目的はいたって単純。
「如何にして他国より優れたISを作るかである」
おかげで世界はまた冷戦時代に逆戻りとなっている。
まぁ核戦争よかマシという人も少なからずいるのだが。
真条はそのISの技術を学べる「IS学園」というところに入学したのだ。
場所は日本、学園と言いつつ各国の干渉を受けないというスタンスを取っているため
ある意味では国家かもしれない。
すると真条は荷物をまとめながらも竜馬のほうを向いた。
「最初は無かったんですけどね。ですがまぁ、気まぐれで行くのも・・・と思いまして」
そういわれて竜馬は納得した。
彼女は気まぐれでかなりのマイペース人間だ。
例えば「明日はカレーを作ろうかしら?」と言った翌日の献立がいつの間にか熊鍋になることも珍しくないほどの自由人間である。
そんな真条の性格をよく知っている竜馬からすれば今回もただの気まぐれなのだろうと当たりをつけた。
「まぁなんにせよお前が居ねえと稽古に付き合う人間がいなくなるからよぉ、休みの日は来てくれねえか?」
「隼人さんがいるじゃないですか」
「アイツは最近研究やら何やらで忙しいんだとさ」
友人の話をしつつ荷物をまとめた真条は立ち上がる。
「それでは、お世話になりましたわ」
真条は深々と頭を下げ出口へと向かった。
「んじゃまたな、あんまり周りを振り回すんじゃねえぞ」
竜馬は笑いながら真条に手を振った。
外、空は明るくいつか見た水族館の水槽のようだった。
「・・・帰りましょう」
真条ラムはゆっくりと歩き出し帰るのである。
―――遠くから彼女を見つめている存在がいる。
その存在は銀色の鷹であった。
この自然界ではあり得ない存在こそが彼女の運命を変えた張本人なのだ。
銀の鷹から真実を告げられた少女の戦いはまだ始まらない。
というわけで始まりました。
これからどうなるかは正直分からないです!
だってルームメイトすら決まってないんですもの!
誰がいいんだろう・・・