真条の目の前にエプロンを身につけた凰が立っていた。
真条は一旦部屋から目を離し部屋の番号を確認して自分の部屋であることを確認する。
「・・・なんで凰がここにいるの?」
真条は当然の質問をする。
「そ、それは・・・・」
凰の反応はいまいち悪い。何か恥ずかしがっているような感じだった。
「あぁ~真条さん~凰ちゃんはこれから私とお部屋交換するのですぅ」
「ちょ!パトラ子!?私から言うつもりだったのに!!」
「凰ちゃん待ってたら日が暮れるですぅ」
パトラ子と凰の会話を聞いた真条はすこし驚いた。
「なんでパトラ子と凰が部屋を交換するわけ?」
「それはでぅねぇ~」
「んだばぁ~~~~~ッッ!!?言わんでいい!!!」
「凰、騒がしいから根止め使うわよ?」
「や、やめて!?」
根止めとは一本拳を口中に突き入れ窒息せしめるという恐るべき奥義である。
のどに入った異物を吐き出せないという動物の本能を利用した決まれば相手はただ死を待つばかりなのだ。
食らったことはないが真条に教えられたことはあるので凰は全力で拒否した。
「まぁ別にルームメイトが変わるのはいいけど凰、貴女ひょっとしてルームメイトとうまくいってなかったの?」
「そ、そういうわけじゃないわよ・・・」
「ならなんでいきなり・・・」
問いただす真条と理由を口にしない凰。
このままでは事態は変わらないとパトラ子は凰を助けることにした。
「まぁ~まぁ~真条さん、乙女心は複雑なのですぅ」
「・・・よくわからないけどまぁいいわ、これからよろしくね凰」
「そ、そうね!これからお世話になるわよ!」
パトラ子から話を聞くととりあえずすでに部屋変更の手続きは済ませてあるらしい。
妙なところで周到である。
(凰ちゃんもライバルが一気に増えてあせってるんですぅ?)
(そ、そうよ!ラムのやつ最近妹が出来たって言うしあたしとしては全然面白くないのよ!)
二人は真条がコーヒーを汲んでいる間に話をする。
理由はまぁこういうことである。
(しかもあのラウラって子もラムから格闘術習ったって話じゃん!そら危機感覚えるわよ!」
(恋する乙女は大変ですぅ)
(こっ!?バッ・・・・そんなストレートに言うことないでしょ!?)
(事実を言ってるだけですぅ~)
「なにヒソヒソ話してるのよ?コーヒー入れたけどあなたたちも飲むでしょう?」
「え、えぇいただくわ」
「真条さん~砂糖2個とミルク2個あるですぅ?」
「もちろんあるわよ、今日は私もそれでいこうかしら」
「あんたらそれもうカフェオレじゃあ・・・・」
三人の団欒はその後もしばらく続いた。
――――――――――
真夜中、誰もが寝静まった頃。
本来ならば誰もいないはずの屋上に真条はいた。
今考えているのは侵略者『ベルサー』のことである。
(初戦はこちらが勝った、しかし機体性能のおかげだと言うことが明白・・・しかも体が機体についていけなかった・・・)
そう、真条が何故あの時血を吐いたのか。
それはシルバーホークの馬鹿げた機動性と自由すぎる動きから来る強烈なGに体が耐え切れなかったのだ。
(人より頑丈だという自信があったのにあのザマ、やはり人間の体では扱いこなすのは・・・)
真条は自分の手をじっと見つめる。
今は月明かりによって目立たないが病的なまでに青白い自分の肌。
一時期は嫌悪もしていた色だが今では両親が残してくれた貴重な身体だとおもうとその思いも消えた。
(いずれ消え去る運命だとしても・・・)
この身体は人間のままでいたい・・・そう思うことは罪ではないはずだ。
世界の全員をベルサーから守るのは無理だ。
ならば自分の手の届く範囲までぐらいなら守りたい。
でももし、人間のままではそれが不可能だというのならば。
(人を捨てねばなりませんね・・・切欠は必要ですが・・・)
彼女がそう思うと空を見上げた。
空では大きな月がその存在を示している。
その周りを小さな星が輝いていた。
(あの何処かに私の両親の星が・・・ダライアスがあるのでしょうか・・・)
ただ一人残された少女は思う。
いつか両親の母なる惑星を見たいと。
悪魔の力、聖なる力、そして愛の力が混ざり合い生み出した惑星を。
少女の願いはいつか叶う時が来るのだろうか?
遠くから銀色の鷹が見つめる中、少女はただ空を見ていた。
コーヒーに砂糖(スティックシュガー)2個とミルク2個は
いつも私がしています。
ていうかそれしないとコーヒー飲めません。