あぁやっぱりか。
この人にはバレるんだろうなぁ。
なんとなくそう思っていた自分がいた。
所詮付け焼刃でやってた事だしうまくいくとは思ってなかったし。
でも最初からバレてたんじゃさすがにショックかなぁ。
それだけ人を見ているって証拠なんだけどね。
やっぱり本国に帰らないとダメなのかなぁ・・・
――――――――――――
実習が終わり人がまばらに帰ろうとしていたときだ。
「え~っと・・・シャルル・ロウチェスターさんだったかしら?」
「僕の名前はシャルル・デュアノだよ・・・真条さん、だったよね」
真条はシャルルに声をかけていた。
初めてシャルルを見たときからとっくにわかっていた男装。
何故そうなったかを彼女は問いただすのだ。
趣味でやるならもっとうまくやるだろうし何より男装をしているという自覚があまりにも無いのだ。
一夏から男としての同意を求められたときも一瞬何のことだがわからないといった表情をしていた。
となると十中八九自分の意思で男装をしているわけではないと真条は当たりをつけた。
「あぁ~そうそう、デュアノだったわね。ちょっと話があるんだけどいいかしら?」
「え、まぁべつにいいですけど・・・」
「なら少し落ち着く場所がいいわねついてきなさい」
そう言うと真条はシャルルの腕をつかんでぐいぐいと進んでいく。
「んなぁ!!!あんの転校生なにラムに手をだしてるのよ!?」
「落ち着け凰とやら!マジョラムお姉さまがシャルルの腕をつかんでいるだけだ・・・うらやましい!ぐぎぎ!!!」
なんか変な声が聞こえるが気にしない。
――――――――――――
場所は真条が良く特訓に使う校舎裏の大木だ。
ちなみに織斑先生には「足首が痛い」と進言したら休むようにと言われた。
山田先生をISごと蹴り飛ばしたのが効いているのだろう。
付き添いでシャルルを連れてきたというわけだ。
まぁ足痛いというのは嘘なんだが。
そういえば、と真条は思う。
織斑先生は自分にはあまり厳しくないような気がする。
出席簿で叩かれることなんてほとんど無い。
ほかの人はバシバシ叩かれているのにである。
そのことを不思議に思いつつも真条はシャルルへと目を向けた。
シャルルは大木にくくりつけてある丸太やロープが気になる様子だ。
「なんか不思議なところだね・・・・なんで丸太があるのかなぁ?」
「あぁ、私が特訓でくくりつけたわ」
そういうとシャルルはとても驚いた顔をしてきた。
「特訓て、真条さんはなにをやってるの?」
「まぁ簡単に言えば格闘技ね。特訓は、そうねあそこの木の枝に丸太がくくりつけてあるわよね」
「う、うん」
「それにめがけて思いっきり飛んで!」
真条は丸太に向けて思いっきり跳躍し。
「キャオラッッッ!!!」
正拳突きを放ち丸太を粉砕した。
「まぁこんなところね」
「へ、へぇ・・・す、すっごいよ真条さん・・・」
シャルルの顔色が若干悪いがそんなことはどうでもいい。
「ところでシャルルさん」
「う、うん。どうしたの?」
「あなたがここに来た理由はなんでしょうかねぇ。二人目の男性IS操縦者ではないシャルルさん」
「ッッ!!」
シャルルは顔をこわばらせた。
目は見開き若干呼吸も荒くなった。
「まぁ大方あの一夏さんについてのことなので細かいことはどうでもいいですけどね」
「・・・いつからわかってたの?」
「うん?それはもう最初からよ」
「最初から・・・ですか・・・」
「えぇ。だって声質から歩き方、仕草や身体つきまでどれをとっても男性って感じじゃないのよね」
「そう・・・ですか・・・」
シャルルは暗い顔をしてうつむいた。
その瞳は世の中を諦めているという雰囲気を漂わせている。
「それで、あなた自身はこんなことを望んでやってるわけ?」
真条の濁った目が真っ直ぐとシャルルを見つめる。
その瞳はまるで深海のように黒く、吸い込まれそうだとシャルルは思った。
「そ・・・れは・・・」
経営が危ないデュアノ社のためだ。
はいとしか言えないはずだ。
でもなぜか、真条に見つめられているとそれが言えなくなる。
言葉が出ないシャルルを見て真条は確信した。
「そう・・・望んではいないのね・・・」
「・・・・」
シャルルはゆっくりとうなずいた。
「こうするしか・・・僕には生きる方法が無かったから・・・」
シャルルはゆっくりとだが事情を話してくれた。
自分がデュアノ社の社長の愛人の子供であること。
そのことにより母が死んだことによりデュアノ社に引き取られるが、本妻との関係は最悪で居場所が無かったこと。
会社の経営難を回復させるために世界で二人目のIS男性操縦者としてIS学園にいきあわよくば織斑一夏のデータを入手すること。
「それで男装していたということね・・・考えが短絡的過ぎるわね。そんな会社に果たして未来なんてあるのかしらね?」
「でも、仮に一夏のISを動かせる特性を解明したデータがでれば・・・」
「ただでさえコアの数が限られてるISに男が乗れたとしても絶対数が足りないんだから意味無いでしょうに。まぁどこぞの天災は自分の分は増やしてるみたいだけどね」
「じ、じゃあ僕がやってることって・・・」
「そ、まったくの無駄な努力ね。デュアノ社は目先の利益だけで後のことをまるで考えてないの」
「そんな・・・!」
シャルルはもはや絶望しているのだ。
心を凍らせ機械的に今回の計画をこなしているとはいえ。
その心の奥底にあるのは肉親に褒められたいという心なのだ。
たった一人の肉親。
それに愛されたいと思うのは至極当然のことだった。
「戦線から遠退くと楽観主義が現実に取って代る。そして最高意志決定の段階では、現実なるものはしばしば存在しない。戦争に負けている時は特にそう」
「え・・・?」
「要するにもう遅すぎるのよ。それにIS部門が不調なだけで経営危機に陥るようでは企業としてはもう終わりよ」
「そう・・・なんですか・・・」
シャルルは体の震えが止まらない。
もしデュアノ社が潰れてしまったら自分はどう生きていけばいいのだろうか?
ひょっとしたらその辺の道端で野良犬のように死んでしまうのだろうか?
怖い。
ただそれだけがシャルルの心を占めた。
「生きたい?」
「え・・・?」
「なんのしがらみも無く、自分の人生を謳歌したいとは思わない?」
「・・・・」
何を言われているかわかるがどうしろというのだろうか?
これから自分は破滅を待つ身だと言うのに。
「あなた、私の家族になる気はないかしら?」
時が止まったように感じた。
目の前の少女は一体何を言っているのだ。
だけど、頭では理解できないが心の奥底には光が差し込む感覚がした。
「いいの・・・?」
「いいわよ?だって私も真条家に預けられて両親が失踪したから真条家になったわけだしね」
「えっ!?」
真条は何とでもないかのようにケロっと答えた。
目の前の少女は捨てられたのだ。
なのにこうも自由に生きている。
自然とシャルルは真条という存在に憧れを抱き始めた。
「父親との縁は切れてしまうけど、それでもいいのならね」
「僕は・・・・」
悩む。
この人と家族になること。
それはきっととても素敵なこと。
自分に暖かい光を注いでくれそうな未来が見える。
けど。
父親との縁が切れるのは・・・戸惑う。
たった一人の肉親なのだ。
そう簡単に決断はできないのだ。
「わからないよぉ・・・僕、私は・・・・どうすればいいのさぁ・・・」
限界まで達した心は折れ涙を流してしまう。
「父さんに僕を見てほしいよ・・・でも、もうあそこに戻るのは嫌なんだよぉ・・・」
自分をただのISの部品ぐらいにしか見てくれないあそこにはもう戻りたくない。
「でも、それでもあの人は僕の父親なんだ・・・ヒグッ・・・期待したっていいでしょう・・・」
止まらない。
涙も。
言葉も。
心も。
もうシャルル自身どうしていいかわからないのだ。
とめどなく流れる涙を止める方法がわからない。
壊れそうな心をつなぎとめる方法なんてわからない。
そばにいてくれる人がいるなんてわからない。
そのときである。
シャルルの体は突然暖かさに包まれた。
気づけば目の前に真条がいた。
このぬくもりは今彼女に抱かれているのだと理解した。
「そう、それでいいのよ」
「え・・・」
「肉親との縁なんて簡単に切れるわけ無いわ。心のどこかで必ず愛されたいって思うもの」
「・・・・うん」
「だから、今は悩みなさい。答えなんてすぐ出せるはず無いのだから・・・」
「うん・・・うん・・・」
「でもこれだけは教えて」
「なに・・・?」
シャルルは疑問に思いつつ真条の言を待つ。
「あなたの本当の名前。あるのでしょう?シャルルという偽者ではない本物のあなたが」
その言葉を聞いて自体中に熱がこもる。
うれしい。
本当の自分を見てくれる人がいた。
涙が止まった。
壊れそうな心がつなぎとめられていく。
「シャルロット・・・・」
「そう。シャルロットね、よく似合っているわよ」
もし、この人の家族になったら。
この人はそばにいてくれるのだろうか?
いろいろあって遅くなった!!
追記・シャルの苗字間違えてた!死にたい!けど修正はしません!