未だ紛争が終わらぬ中東方面。
ここで不可解な戦闘が起こっていた。
ある兵士はそのときの話をこう語る。
「はい、その日は敵軍と鉢合わせしましてね。ですが何分広いところで会ったばかりにお互い決め手に欠け膠着状態になったんですよ。その時相手側のほうから一気に兵士が大勢走ってきたんですよ」
「ですが様子がおかしかったんですよ。なにせ彼らは必死に走っていたからです。地理的にもこちらの軍に特攻というわけでもありませんでした。」
「はじめは脱走兵かと思ったのですが、すぐに理由がわかりました。彼らの後方からものすごい数の戦闘機が飛来していたのですよ」
「その後はもう地獄でしたね。空から降り注ぐ無数のレーザーやらミサイルでもう死体ばっかりで・・・あの時は駄目かと思いましたよ」
「その時です、無数の正体不明機に飛び込んでいく光が見えたのは、あれはたぶんISだったんじゃないかなぁ?」
「そのISは一気に敵を撃滅するとまた遠くへ飛んでってしまいましたね。謎のISではありましたがその時生き残った兵士は私を含めて救いの女神だと思いました」
「何のために戦っていたかはわかりませんが相手を粉みじんになるまで破壊するのはよっぽどの恨みがあるんじゃないですかねぇ?」
――――――とある兵士のインタビューより―――
「ラム~ラム~おきなさいっよ~!」
ここは真条ラムと凰の自室。
そろそろ起床時間だというのに真条がなかなか起きないのだ。
凰の食事はすべて真条が作っているので真条が起きなければ凰の胃が満たされることは無いのだ。
別に凰も作れないわけではないがやはり想い人の手料理は食べたいものなのだ。
「しっかしあんたがあんまり起きないなんて珍しいわね?」
そう、真条は凰が起きる頃には料理どころか大抵の身支度は済ましているのだが今日はその真条が寝ているのだ。
「もしかして、体調が悪い・・・とかだったりしないわよね・・・?」
トーナメントのときも真条は風邪を引いていた。
真条を知る自分としては信じられないぐらいことではあった。
彼女はその病的なまでに白い肌とは裏腹にとても健康的で病気などまずしたことがないと言っていたし周りの人間もそういっていた。
もしかしてまた体を壊したりしているのか心配になってきた。
「ちょっとラム・・・大丈夫なの?」
凰は不安になり布団を頭まですっぽり覆っている真条の布団をずらした。
「顔色は・・・いつもどうりね、体調も悪くなさそうだし・・・あれ?」
普段とあまり変わりないと思っていたがある変化に気付いた。
「ラム・・・昨日までこんなに髪長かったかしら?」
いつもはショートボブぐらいの長さで肩までなかったはずだが今の真条は肩ぐらいまで髪がかかっている。
「・・・なによこれ」
人の髪がたった一日でここまで伸びるなんて殆ど聞いたことがない。
例外もあるにはあるが真条はその例外ではないことは一緒に過ごす前から知っている。
今、真条の体には何らかの変化が起こっているのだ。
「・・・・う・・・?」
凰が考え込んでいると真条の目が開いた。
その目は寝起きだからか焦点が定まっておらず、黒い瞳はいつもよりも虚ろに見えた。
その瞳に凰は言い知れぬ不安感を感じた。
「真条!大丈夫!?」
「・・・・あ、凰・・・ね・・・なに、が?」
真条の返事は寝起きなのを考えても明らかに声に覇気がない。
「真条、体調悪いの?何なら千冬先生よぶ?」
「ひつ、よう・・・ないわ。ごめ・・・今日は、ご飯は食堂で、食べてきて・・・」
「明らかに調子悪いじゃない!まってて、今呼んで来るから!」
そういうと凰は急いで部屋から出て行ってしまった。
「・・・」
真条は手を動かしベッド近くにある手鏡で自分の顔を見た。
そこにはいつもとは違う髪が伸びた自分。
手を見る。
まるで2週間は放っておいたみたいに爪が伸びている。
「これが・・・副作用か・・・」
真条がそうつぶやくと扉が開いた。
「真条、凰から様子がおかしいと聞いて来たんだが大丈夫か?」
千冬先生が来たのだ。
凰が呼んできたのだろう。
今自分の体のことを聞かれるのは少々厄介だ。
さて、体調が悪いと言ってはやくお帰り願おうか。
「大丈夫、ですよ・・・今は眠いから変に、見えたのでしょう?」
「お前は寝起きはいつもそんなに苦しそうなのか?それに私の記憶ではお前の髪はそこまで長くはないぞ」
千冬先生の鋭い目がこちらを見る。
もともとそんな言葉でごまかせるとは真条も思っていなかった。
「はぁ・・・凰、少し真条に話があるんだ。悪いが席をはずしてくれないか?」
「え・・・・まぁ千冬先生がいうならしますが・・・とりあえずラムのことお願いしますね」
「あぁ、あんまり心配はしなくていいぞ」
そう言うと凰は部屋から出て行った。
出て行く直前に見せた本当に心配している顔が真条の目に映った。
「さて、真条・・・」
「なに・・・かしら?」
千冬先生が難しい顔をしている。
何かを言うべきかどうか、迷っているようにも見える。
「・・・・」
長い沈黙。
時計だけが音を鳴らす空間。
まるでこの寮の中にいるのは自分と千冬先生しかいないような。
それほどの静寂。
「真条・・・」
そしてその静寂は終わり。
「お前が戦っているのは何だ・・・?」
「!?」
真条は驚愕する。
次回は千冬さんとの対談だ!
仮面の下の涙を拭え!