真実を知るもの   作:なす水島

23 / 27
「特別でない断髪」

千冬が部屋から出ると凰が居た。

律儀に部屋の前で待つとはよほど真条のことが心配だったのだろう。

 

「あの、千冬先生・・・ラムは・・・」

「大丈夫、とは言いがたいな。体調を崩しているようだから今日は安静にしておくようにな」

「あのラムがこんな短期間で体調崩すなんて・・・」

「まぁ真条も人の子だということだ。完璧なものなんてこの世に無いのかもな」

 

ため息を吐く。

 

「凰もそろそろ自分のクラスに行っておけよ。真条が心配なのがわかるがな」

「あ、わかりました」

 

凰は歩こうとしたときだ。

 

「凰」

「ハイ?」

 

千冬に呼び止められた。

 

「このことは・・・特に真条の状態にはあまり口外するなよ?」

「何でですか・・・やっぱりなにか!?」

「そのことについては何も言えん。だがお前が、お前たちで真条を支えてやってくれ」

「それってどういう・・・」

「話はそれだけだ。さっさと行くぞ」

 

そう言うと千冬は歩き出した。

凰は自室の扉を見る。

 

「ラム・・・」

 

今はどう問いただしても自分に真実は教えてくれまい。

たぶんそれは弱いから。

 

「なら・・・あんたが信用できるぐらい強くなってやるわ・・・」

 

少女はそう決意した。

 

 

――――――――――

 

鏡を見ると映りこむのは自分。

病的な肌をして銀色の髪を伸ばしている自分。

薬の代償。いうなれば戦いの代償でもある。

生命の法則を無視したそれは不自然な肉体の成長を促した。

しかし、真条はそれでもかまわなかった。

何かを守るためには、戦いには犠牲がつき物だ。

ならばその犠牲は自分が被る。

それだけでいいのだ。

 

 

 

真条は鋏を取り出し自分の髪を切る。

 

ちょきん

 

長かった髪の毛がぽとりと落ちていく。

 

ちょきん

 

幸い肉体的成長は少ない。不自然な成長はこれで誤魔化せるだろう。

 

ちょきん

 

これでいつもの自分に戻れる。

爪もしっかりと切って真条はいつもの姿に戻った。

これでいつもの日常に溶け込める。

 

そう思いじっと己の手を見つめる。

違和感が無いわけではない。

しっかりと力をこめて握ってもあまり感覚がはっきりしないこともある。

 

不安も無いわけではない。

このまま薬を使えば遠くない未来必ず肉体は壊れる。

いや、そうなる以前にいずれ肉体の成長が目に見えるときだって来る。

そうなったとき、自分はおそらく日常に溶け込めなくなる。

そうなるときが、一番怖い。

 

「それでも、戦うしかないのよ・・・」

 

真条のつぶやきは誰にも聞こえない。

 

いや、もしかしたらあの鷹には聞こえていたのかもしれない。

 

導きの「シルバーホーク」とはそういう存在だ。

 

千冬を戦いの舞台に招待したのはさすがに恨んだが無理も無いことでもあった。

彼女の能力はこの星でもトップ10に入るほどだ。

おそらくあの鷹は自分だけでは不安だったのだろう。

ベルサーを撃退できるかどうか。

 

千冬は勘違いをしていた。

彼女は自分が拒否したから鷹が真条の元に行ったのだと思っているようだが。

実際は違う。

真条が産まれたときにはすでに鷹は真条の近くに居たのだ。

真実こそ成長してから告げられたが彼女は最初から戦士として戦う運命だったのだ。

 

「だから、この戦いは私が終わらせるべきなのよ・・・」

 

 

 




いろいろ区切りたいので今回めっちゃ短い。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。