魚が群れを成して泳いでいる。
でも自分達が住んでる水槽はあまりにも小さすぎた。
だから魚達は別の水槽を探す。
自分達がずっと留まりたくなるような水槽を。
でもそんな水槽が合ったとしても魚達は泳ぐのをやめないのだろう。
それが魚達の生き方なのだから。
そして次の水槽を魚達は見つけた。
それはまだ遠く、でももう少しでたどり着く水槽。
――――――――――――――――
ここはアリーナのピット。
いよいよ今日が戦いの日なのだ。
私は今日のために特訓や情報集めなど様々なことをしてきた。
例の跳躍格闘や自分に飛んでくるボールに書いてある数字を読む動体視力の訓練。
ISを借りれなくても自分の糧になる訓練をひたすら繰り返してきた。
「真条さんいけますですぅ?」
パトラ子が私に声をかけてくる、心配してくれているのだろう。
今、私の体はIS「打鉄」に包まれている。
日本武将の甲冑を思わせる機体を纏っているのだ。
「・・・完璧、とまでは行きませんが今ある力を全力で出し切れば道は開けるでしょう」
やはり私は若干緊張しているようだ、初めてのISでの決闘。
試験の時にも戦ったがアレは試運転と準備運動みたいなものだ。
お互い本気じゃなかったしそもそも戦う意思もあまりなかった。
だが今回は違う、相手も私もお互いを倒そうと息巻いているのだ。
油断すればそれはすなわち敗北に繋がるのだ。
そんな緊張感溢れる戦いが私を待っているのだ。
それはとても楽しいこと。
それはとても怖いこと。
嬉しくて楽しみで怖くて、これから行われるのは地獄とは程遠いもののはずなのに不安に思う自分がいる。
「ふふ、こんなに初めてだらけの戦いなんて久しぶりね」
こんなに緊張したのは決闘をやり始めた頃以来だ。
そうだ、私はISに関しては初心者なのだ。
ならば全力でぶつかろう。
私にはそれをする権利と義務があるのだ。
「真条さんたのしそうだね~、オルコットさんとの戦いがたのしみですぅ?」
「えぇ、これからどうなるのか・・・非常に楽しみですわ」
私の相手はセシリア・オルコットさんだった。
おそらくIS慣れしている人間と戦い慣れしている人間をまずはやらせようというところか。
勝てる見込みはある。だが負ける見込みもあるのだ。
どうなるかは自分次第。
「時間よ、いきますね」
「ファイトですぅ!」
私は勢い良くピットから飛び出した。
―――――――――――――
「お待たせしました」
ピットから勢い良く出てきた真条さんは、地面へと着地し私を見ながらそういいました。
「訓練機なのですわね。貴女は日本では有名な方なのではなくて?企業から声の一つや二つかかりそうなものなのですが・・・」
「まぁその手の話は蹴りましたしねぇ」
私の疑問に答えた真条さんは少し笑いました。
「決闘なんてやる人間は基本的には自由な時間が多いほうがいいのですよ」
「その分戦えるから・・・ですわね」
「そういうことです」
そういいながら真条さんは準備運動を始めましたわ。
一体何をしているのでしょう・・・このセシリア・オルコットを前にしての余裕な態度。
その態度に少しカチンときますがここは冷静にならなければいけませんわ。
なにせこの人は私が代表候補生と知りつつ戦おうとしているのですから。
―――――――――――――――
「いっちに、さんっし・・・」
私はISを纏いながら準備運動をしている。
傍から見ればかなりシュールな絵になっているだろうがこちとら結構必死だ。
何せISが何処まで私の動きを再現できるのか分からないからこうして間接の可動域をチェックしているのだ。
うん、腰部に多少の引っかかり。パーツ同士で若干の干渉を起こしていますね。
もう少し調べれば可動域の把握は完璧ね・・・ですが。
『試合開始!』
そうも言ってられないようですね。
すぐさま横へステップをする。そして私が先ほどまでいた場所にはレーザーが降り注いでいた。
「さすがはストリートファイターですわね、戦いの勘はIS戦でも十分に働くようですね」
オルコットさんが私を真直ぐ見据えながら言葉を発していく。
「ですがいつまでも地上にいましては私を討つ事などできませんわよ!」
次々と飛んでくるレーザー。私はそれを地上運動で交わしていく。
痛いところをつく、いまだに空を飛ぶというイメージがないので最初からベタ足だったのだ。
今オルコットさんは高さ5メートル辺りの場所で滑空している。
当然届く距離ではあるが・・・まだ早い。
まだ間接がISに慣れていない。いま跳んでも相手を倒す拳は打てないだろう。
後数十秒ぐらいでコツはつかめそうだが・・・
「行きなさい!ブルー・ティア―ズッ!!」
「・・・ッ!!」
やはり出してきましたか、BT兵器。
簡単に言ってしまえば脳波で動くビットですね。
味方にすれば単純火力の向上となり頼もしいですが敵になると嫌なタイプです。
なにせ一対一だったのが一気に多々対一になるのですから。
「くぅッ!」
「このブルー・ティアーズの前にいつまで持ちこたえられるか見ものですわね!」
先ほどとは桁違いのレーザーの量。
完璧に避けることは難しく所々掠ってしまう。
だが歩みは止めない。
オルコットさんのライフルがこちらを狙っている。
5
咄嗟に避けようとしたがビットのレーザーが逃げ道を塞ぐ。
4
オルコットさんの顔が笑っている。
3
ならば私は思いっきり跳躍した。
2
すかさず狙いを修正したオルコットさんが引き金を引く。
1
レーザーは狙いを寸分違わず私に向かってくる。
だが・・・
「ハァッ!!」
私は近くにあったビットを思い切り蹴り跳躍軌道を修正した。
「なっ!?」
オルコットさんは驚愕している。
なにせ必勝のパターンを破られたのだ。驚きもする。
「・・・よし、コレがISですか」
身体がISに慣れた。ここからが反撃開始だ。
「いきます!」
先ほどまでの走りとは違う10から0まで一気に突っ切るダッシュだ。
いつも慣れ親しんできた動きだ、これならいける!
オルコットさんは私の突然の動きの変化に戸惑っているようだ。
ならば遠慮なくその隙を頂く!
「スラスター・・・全開!」
私は打鉄のスラスターを『地面に向けて』起動させた。
大きな砂埃が立ち視界が一気に悪くなる。
ハイパーセンサーがあるとはいっても、人間最初に頼るのはやはり目だ。
見えなくなった相手を眼で探そうとするものだ。これは生物である限り変えようのない本能なのである。
敵の位置は覚えている・・・跳ぶなら今!
砂埃を起こした後一気にダッシュしオルコットさんの位置まで接近し。
――――跳躍した
「―――、!」
オルコットさんの驚愕した顔がもう目の前にある。
チャンスは最大限に活かす。
腹部への正拳突き、命中。
すかさず丹田・鳩尾・喉笛に突きを打ち込む。
速さ、破壊力、いつも自分がやってきたことがそのまま腕に伝わる。
怯んでるところに下顎へ上段付きを放つ。
「正中線・・・五段突き!!」
私の拳は全て命中した。
跳躍格闘の特訓の成果が今まさに発揮されたのだ。
しかし私はやはりISに関しては素人のようだった。
普通の人間ならば既に気絶しているであろう攻撃を与えて油断していたのだ。
「ま・・・まだッ!!」
そう、これはIS戦だ。
ISには絶対防御があることを失念していたのだ。
「ブルー・・・・・ティアーズッッ!!!」
突然私は爆発につつまれた。