迂闊だった。
勝った気でいた。
いつもの決闘ではアレでカタがついていた。
だが思い出せ。
今お前が身に纏っているのは何だ?
それはISだ、力であり鎧でもある。
ならば相手もそれを身に纏っていることを忘れるな。
この高い授業料を無駄にしないためにも。
――――――――――――――
「はぁ・・・はぁ・・・」
爆煙が立ち込める空間で私は自分の現状を確認した。
真条さんから受けた空手の技の威力は強烈でしかも的確に突いてきた。
もし私がISを身につけていなかったら間違いなく気絶していたでしょう。
いや、それですめば軽いほうですわね・・・最悪の場合は・・・
ですが、ISの絶対防御のおかげで私は健在。
シールドエネルギーはかなり減らされましたが相手の隙を突いたミサイルにより。
試合は決したかに見えました。
しかし、忘れてはいけません。
まだ試合終了のブザーは鳴っていないのです。
――――――――――――――
自分の未熟さにほとほと呆れ果てる。
相手を完全に倒していないのに勝ったと思うとは。
経験に頼りすぎた。
こんなことでは到底この先待ち受ける戦いに勝てはしない。
思い出せ―――――
戦いに必用な感覚。
嗅覚、触覚、視覚、痛覚。
全てをフル稼働させろ。
「ぐ・・・くはぁ・・・」
爆煙が晴れた、オルコットさんが良く見える。
私はあの時放たれたミサイルを見た瞬間手足を使い亀のように防御したのだ。
おかげで直撃には変わりないのだが、それでもまだシールドエネルギーは残っている。
「・・・・見事な攻撃です、オルコットさん」
「それはコッチのセリフですわよ、真条さん」
お互い残りのエネルギーが少ない。ならば次の攻撃が最後の攻防になりそうだ。
「・・・・・・いきます!」
私は一気に決めるべくオルコットさんに向けて走り出した。
「させません!」
オルコットさんはそうはさせまいとライフルとビットによる複合攻撃でこちらを仕留めるつもりだ。
だが、そうはさせない。私は跳躍した。
「とぁっ!」
そして私にレーザーを放とうとしたビットを踏み台にしてさらにオルコットさんに接近した。
「随分な無茶を・・・っ!!」
オルコットさんは私を迎撃しようとライフルを構えている。
このまま突っ込めば行けば私は狙撃されそのままゲームセットでしょう。
そのまま突っ込んだならばだ。
「・・・・シッ!!」
私は即座にブレードを展開しそれをオルコットさんに投擲したのだ。
ブレードを打ち撃ち落とさなくてはオルコットさんの敗北は決まっている。
だがそれは間に合わない。なぜなら標的を即座に切り替えられるほど私の投擲は遅くはないからだ。
だがこれで終わるなんて考えるほど私も楽観視はしていない。
「・・・・何のまだですわ!!インターセプター!!」
流石ですね。
オルコットさんは咄嗟に自分のライフルを盾にしてブレードの投擲を防ぎました。
そしてショートソードを持ち出し私に特攻をしてくる。
ここまで来たらお互い小細工など必要ないのだと理解しているのだ。
「受けてたちますよ!セシリア・オルコットさん!!」
「倒してみますわ!真条ラムさん!!」
彼女が一振りすれば私が二度突きを放ち、私が二度突きを放てば彼女は彼女は4度剣を振る。
接近戦なら私に分があるかもしれません。
ですがそれは試合開始直後の話。
彼女の攻撃により機体のあちこちにガタがきており思うように動けないのだ。
オルコットさんも接近戦の技術はまだまだであるがその気迫は十分にある。
だからこそ負けられない!
「これで、終わりですわ!!」
オルコットさんの剣が私に向かって振り下ろされる。
その速度はコレまでのどの攻撃よりも速い。
避けられない。
それほどの速度。
防御など無意味。
それほどに重みがある。
ならばどうするか。
「そうは、させません!!」
私は打鉄の左腕を前に出し振り下ろされる剣に当て表面だけを斬らせた。
剣の軌道はほんの少しズレ受け流すと同時に移動してた私に当たる事はなく空を斬った。
「今だ!!」
私はすかさず彼女のこめかみに肘撃ちを振り下ろす。
「がっ!?」
まともに命中し彼女はよろけ始めた、だがまだ生きている。
次の行動など起こさせない。
「せいっ!」
前蹴りを放つ、防御された、偶然かもしれないが彼女の下ろした腕が伸びきる前の足に引っかかり上手く威力を半減したようだ。
「だがまだ私の攻撃は終わっていない!」
そのまま相手の上方へスラスターを使い移動。
そしてそこから一気に相手に向けてブーストを吹かす。
「だりゃああああああああああああっ!!!」
全体重。推力を拳に乗せて放つ。
渾身の一撃。
今、自分がもてる全てを込めた拳だ。
避けられるはずもなく。
「――――きゃああああああっ!!!」
セシリア・オルコットは地面に叩きつけられたのだ。
『それまでだ』
アナウンスがアリーナに響き渡る。
『勝者、真条ラム!』
観客の大歓声が聞こえる。
この瞬間、私の戦いは勝利を収めたのだ。
――――――――――
負けましたわ。
代表候補生であるこのセシリア・オルコットが。
ISにあまり乗ったことがないという真条ラムに負けましたわ。
本当なら悔しくて悔しくて仕方がないはずなのに。
何故か私の気分は晴れ晴れとしたものでした。
「不思議ですわ・・・」
そう呟いたときでした。
ドスンッ!
私の近くで何かが落ちるような音がしたのは。
見てみるとそこには・・・
「ごめんなさい、オルコットさん・・・少し手を貸してくれませんか?」
うつ伏せに倒れてる真条さんでした。
「ど、どうしました真条さん!? 何処かお怪我でも!?」
「いえ、そういうわけではなくてどうやら打鉄に無理をさせすぎたみたいです・・・とっても重いんです」
ISがこうなるほどに酷使していたなんて・・・それほど死力を尽くした戦いだったのだと理解しました。
だからでしょう、こんなにも気分が晴れ晴れとしてるのは。
互いに全力を出してお互い満足いくまで戦ったのだ。
私達の心にあるのは・・・
「真条さん・・・」
「なにかしら?」
真条さんに肩を貸しつつ私達はピットに戻る。
「試合、楽しかったですわね・・・」
「・・・そうね」
楽しかった、本当にそれにつきますわ。
「あ、IS壊したから織斑先生に怒られるかも・・・」
「真条さん・・・私救急箱もってきますわ・・・」
勝ってしまった。
引き分けにする予定だったんだが・・・
真条さんが最後にやったのは某太い男がやった「怪物の猛反撃」です。