しかもお金いっぱい残してくれるみたいだよ。一石二鳥…ドロップアイテムだね!
この生活が始まって数週間。やっとこさこちらの世界にも慣れてきた。
ほぼ禁欲生活を強いられることと薬の副作用で小さいハゲができたことはとても辛いが、それ以外は上々である。ラーメン作りも板に付いてきたしね!
「坊主!5番テーブル!」
「了解です!!」
この通り、紫関も大賑わいである。聞くところによると、可愛いアルバイトが入ったらしい。うんうん、確かに店員モブちゃんは可愛い。俺もついつい目で追ってしまう。
「おつかれぃ。そうだ坊主、これやるよ。悪いが一人分は自腹切ってくれ。」
水族館のペアチケットを取り出す大将。
「おおマジすか!ありがとうございます!」
たしかホシノちゃんはおさかなが好きだったはずだ。パトロールやら傭兵バイトやらで疲れてるだろうし、ユメ先輩と楽しんできてもらおう。
……自腹切らなくても良くない?普通のチケットと間違えてるのかな大将…
「えー!!チケットあげちゃったんですかてんちょぉ!」
「良いじゃねえか別に。お前水族館とか興味ないだろ?」
「そうですけどぉ…あーん!あたしも先輩と水族館デートしたかったぁ!」
(罪な男だなあいつ…)
「おかえり~!ケイ君今日もお疲れ様…って私こればっか言ってない!?」
「帰るところって感じで凄く嬉しいんでできれば続けて欲しいです。」
「え、えへへ~~?そ、そうかなぁ?な、何だか恥ずかしいねぇ…」
もじもじする先輩、可愛い。
「あー、夢関…その、おか…」
「おか?」
少し照れくさそうにするホシノちゃん。おか…何だ?先生を「お母さん!」って呼んじゃう現象だろうか。
「おかかっ!!」バキィ!
「ケイ君!?」
右頬にストレート。無論手加減はしてくれているが、痛い…何もしてないのに痛いよ~
「ホシノちゃん!今時暴力系ヒロインは流行らないよ!」
「誰が…ごめん夢関、手が滑った」
「滑りすぎでは!?手、ちゃんと洗っておいてくださいね」
「…なんで?」
「いや、俺に触ったら穢れる~ってしょっちゅう言われてきたんで。それにほら、汗も結構かいちゃってますし…」
「ッ…夢関の命令なんか聞かない。洗いに行くのめんどくさいし。」
腹部の痣。執拗に殴られたような、沢山の濃い青あざや、私とのスキンシップを過度に避ける姿から察しは付いていた。でもそんな、そんなのって…
「ケイ君、ケイ君は汚くなんて無いよ。いつも私達の、アビドス高校のために頑張って働いてくれて、お手伝いもしてくれて。そりゃ汗だってかくよっ…」
身体の震えは大きくなり、涙がぽろぽろと溢れ出す。
「やっ、な…ごめん、ごめんねケイ君。一番つらいのはケイ君なのに、なんで私が泣いてるんだろ…」
ホシノちゃんに渡されたハンカチで涙を拭う。こんなにいい子が、虐げられてきた事実に胸が痛む。暴力を振るわれた形跡、『穢れ』という言葉。
恐らく閉鎖的な村社会の中で、長年差別され続けたのだろう。それが当たり前であるように、平然と自分の口から零れてしまうほどに刷り込まれ続けたのだろう。
「ごめっ!わ、私自分の部屋に戻るね…」
ユメ先輩が泣きながら退場する。え…俺のせい、なんだよな?これ。
やっぱりユメ先輩、優しすぎると思うんだよなぁ…そして気まずい沈黙。
ホシノちゃんは俺のことをまだバチバチに嫌っている。パンツ見たしチンコ見せたから当然っちゃ当然なのだが。
「ねえ「あの…」」
「…先、良いよ。何?」
「ありがとうございます。その、大将が今日くれたんですよ、これ。」
「それ…アビドスアクアリウムのチケット?」
「はい。小鳥遊さん、こういうの好きかなって。」
「…嬉しい。あ、ありがと…「なので、是非ユメ先輩とお二人で楽しんできてください。」…は?」
目の前の男が、何を言っているのか理解に苦しむ。
そのチケットは夢関の頑張りへの対価だ。なのに、平然と自分を計算から除外する。
まるで、私達が仲間じゃないかのように。
「ねえ、ちょうど今言おうと思ってたから言わせて貰うんだけど。私達のこと、どう思ってるわけ?」
急にめんどくさい彼女みたいなことを言い出すホシノちゃん。ユメ先輩を泣かせてしまったからか、お怒りの様子。
「どうってそりゃ…命の恩人?」
「他には!?」
「拾ってくれて、高校に住まわせてくれたことには感謝してますし、アビドス復興のために頑張ってる姿は尊敬してます。」
そんなの、私だって感謝も尊敬もしている。しかし、素直な言葉は一つも出てこない。
「……分かった。チケットありがとう、でも行くなら3人一緒ね。」
「えぇ!?いやお金勿体ないですし防犯のアレも兼ねて俺は留守番しておきますよ。」
「雑魚の夢関が残ってても仕方ないじゃん。何の防犯にもならないよ。あとチケット一人分くらい出せるから、あんまり先輩を見くびらないで。」
確かに俺はクソザコだ。もし俺一人の時に何かあってもできることは何もないだろう。
「うぐ…それを言われると辛いですね…分かりました。お言葉に甘えさせていただきます、小鳥遊さん。」
「最初からそれでいい。あと、小鳥遊先輩って呼んでも良いから。」
一瞬ついに仲間認定されたのかと思ってしまった。危ない危ない…
大方ユメ先輩に何か言われたのだろう。大事な人のために嫌いな奴を認めたふりするなんてやっぱりいい子だなホシノちゃん…
自分の部屋に戻ってしまったユメ先輩に、モモトークを送信する。
『ユメ先輩、遅くにすみません。』
『大丈夫だよ!というかモモトーク送ってくれるなんて初めてじゃない?』
『言いそびれてたんですけど、明日3人で水族館に行きませんか?』
『行く行く~!でも、どうしてそんな展開に?』
『大将がチケットくれたんですよ。』
『でもどうしよう…私かわいい服なんて持ってないよ。うむむ…』
『どうせ何着ても似合うんですから悩まなくても良いんじゃないですかね。』
『そ、そう?っていうかケイ君こそ、ジャージとパーカーしか持ってないんじゃない?私の服貸そうか?』
サラッととんでもないことを言ってくるユメ先輩。大将も「集客のためだ」っつって俺にチャイナ着せようとするしなんなんだよ!俺は男だぞ!
『うええ?いや僕男ですし、多分着れないと思います!!』
『ケイ君女の子みたいだし大丈夫だよ。声も高いし!明日が楽しみだね!おやすみ!』
『おやすみなさい…着ませんからね。』
『えぇ~~?』
スマホを充電器に挿し、布団を被る。電気を消そうと立ち上がると、白いシーツにぱたたっと血が垂れる。
慌てて顔を撫でてみると、べったりと手に血が付く。大量の鼻血が、滝のように流れ出ている。
(マジかよ…女子とモモトークするだけでこれって…おい俺、童貞にも程があるだろ!)
ティッシュを鼻に突っ込み、無理矢理眠る。最近、妙に眠りにつくのが早くなっている気がする。疲れてんのかな…?
夢関ケイのヒミツ⑥
ハイバラに貰った方のお金は、怪しまれるのが嫌なのでベッドの下に隠している。
夢関ケイのヒミツ⑦
実は、メインキャラよりモブの脳を焼きがち。
ホシノのヒミツ②
最初こそ怪しんでいたし嫌ってもいたが、最近はちゃんとケイのことを仲間として認めている。
ユメ先輩はそれに気づいているが、当の本人はまだ嫌われていると思っている。
ハイバラのヒミツ②
気持ちの良い取引をしてくれるため、ケイのことを気に入っている。お礼を多めに渡しているが、その分薬の種類や量が多くなった。