別に代わりはいくらでもいる俺のアーカイブ   作:菱野 モチ

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そろそろ死んじゃいそうなケイ君。


姦し水族館デート

「…何でそんなカッコしてんの、夢関」

 

「何も言わないで下さい。」

 

いつものジャージ姿とは異なり、女物の服を着ている目の前の男に問う。

元々髪が長めなのもあり、よく似合っている。

しかし本人は不服そうだ。恥ずかしそうに胸元に手を当てている。

 

「何恥ずかしがってるのケイ君!すっごく可愛いよ~!やっぱり先輩のコーディネートに間違いは無いでしょ?」

 

「胸元が余るって言っただけなのに詰め物までされると思わないじゃないですか…」

 

「ホントはスカート履いて欲しかったんだけどな~」

 

「…まあ、上下ジャージよりは良いんじゃない?似合ってはいるし…」

 

「小鳥遊先輩まで!」

 

「はい多数決~!ケイ君今日一日はそれね!」

 

「えぇ…」

 

 

 

 

「夢関、弁当買わなかったの?」

 

「これ一本で満足なんですよ。最近食欲もないですし…」

 

「ふーん…」

 

「あーっ!ケイ君またそんなの食べてる!もーっ!これあげる!」

 

「んむぐ…」

 

駅弁のおかずであるエビフライを口に突っ込まれる。バーの味と混ざって割と最悪だが、エビフライ自体はしっかりと美味しい。

 

「ありがとうございます。」

 

「次はちゃんとお弁当買いなさい!これは先輩命令です!」

 

「……っす…」

 

「コラ!」

 

頭をぐりぐりやられる。例の一件から、余計にスキンシップが増えたような気がする。

そんなに気を遣って貰わなくても良いんだけどなぁ…

 

 

 

 

 

「…でね~?ちょっとケイ君聞いてる!?ケイ君が聞いてくれなきゃ私後輩二人の前でブツブツ独り言言ってる不思議系先輩になっちゃうんだけど!?」

 

「もちろん聞いてますよ?モノクロームの美少女が聖痕まみれの満身創痍でいくつもの愛とモノアイが、二つの心で大暴れしてるんですよね?」

 

「ねぇちょ…ちょっとケイ君?大丈夫?」

 

「手軽な闇には光の剣で現人神にはお引き取り願いたいですよね」

 

「寝ぼけてるんですよ…そりゃっ」ガツン

 

突然意味が分からない言葉の羅列を口から垂れ流すケイ君の脳天に軽めのチョップを入れるホシノちゃん。古いテレビじゃ無いんだから…

 

「痛っ!?な、何すんですかぁ!」

 

「戻った?」

 

「すみません、ちょっとボーッとしてました…で、何の話ですっけ?」

 

「ホントに大丈夫なのケイ君…眠かったら着くまで寝てても良いよ?」

 

「それじゃ、お言葉に甘えさせて貰いましょうかね…ふわぁ…」

 

(欠伸可愛いな…)

 

 

 

 

 

「もう寝たかな…よしっ!」ヒザマクラー

 

「何してるんですか先輩…」

 

「私達以外にお客さんいないし、大丈夫かな~って。ちょっとでも質の良い睡眠取って欲しいし!」

 

「確かにそれだけ駄肉が付いてれば、寝心地は良さそうですね」

ユメ先輩の豊満ないろいろを睨み付け、ほぼ悪口な冗談を言ってみる。

 

「ひどい!…ちんちくりんなホシノちゃんよりマシですよーだ」

 

「んなっ…それは禁止カードでしょう!!」

 

「しーっ!ケイ君起きちゃう!」

 

「………」ブッスー

 

言いたいことは色々あるものの、夢関の睡眠を邪魔するのも気が引けるので黙る。

最初は警戒していたが、しばらく一緒に過ごしてみて分かった。夢関は底抜けのバカなのだ。人のためを思って、人のために行動する。そんな人間だ。

そんな彼とつるむことはまあ…悪い気はしない。彼が来てからアビドス高校の雰囲気が明るくなったのも、気のせいばかりではないだろう。

 

「うんうん、ケイ君ノリ良いしね~」

 

「ナチュラルに思考を読まないでください」

 

「でも最近、なんだか疲れてるみたいだよね。頑張りすぎてるのかな…」

 

確かに、最近話しかけても反応が返ってくるのが遅い。頭を抱えるような仕草が増えているのも気になる。

 

「…今日が良いリフレッシュになると良いんですが…」

 

「良いこと言ったねホシノちゃん!よーし!楽しむぞー!!」

 

自分が言ったことも忘れ大声ではしゃぐユメ先輩。

 

「うおっ!?」

 

その声に驚き勢いよく身体を起こす夢関。膝枕されていた状態でそんな動きをすれば…

 

「ひゃあっ!?」ムニュ

 

対消滅してしまえば良いのに。

 

 

 

 

その後、駅に着くまで夢関は土下座を崩さなかった。

 

 

「とうちゃーく!!…ケイ君大丈夫?おでこ痛くない?」

 

「…はいっ!大丈夫です!」

 

「またボーっとしてるし…すけべ」

 

ジト目でこちらを睨むホシノちゃん。一体どれだけ株を下げれば気が済むんだ俺ェ!?

 

「ちちち違うんですよ!決して邪な思いがあってやったワケじゃ…」

 

「どーだか、結局大きいのが良いんでしょ。これだから男は…」

 

「いや俺は貧乳派です。大きいのもそりゃ、嫌いでは無いですけど…」キッパリ

 

「そう…なんだ。変態だね。」

 

正直に答えた結果、この引かれようである。全く目を合わせてくれない。ひぃん…

 

「ケイ君の好みは置いといてさ、取り敢えず水族館行こうよ!ね?」

 

「…良かったね、ホシノちゃん♪」

 

「そういうつもりで言ったわけじゃ無いですから!」

 

「んふふ♪先輩は応援するよ!」

 

「もう…」

 

何を言っているのかは分からないが、内緒話に花を咲かせている二人。大方俺の悪口やろなぁ…(前世いじめられっ子並感)慣れたものと言えど、この二人にやられると辛いものがある。まあホシノちゃんのパンツ見て、ユメ先輩の下乳に顔を埋めてしまったのだから当然と言えば当然である。

 

 

 

「さかなーー!!」

 

「ちんあなご~」

 

「はしゃぎすぎですよ先輩…夢関も」

 

「先輩これ見てくださいよ!めっちゃデカい蟹いますよ!」

 

「おいしそ~!あっ見て!マンタがいる~!!」

 

子供のようにはしゃぎ回る二人を見てため息を吐く。

しかしかくいう私もまた、テンションが上がってきているのを感じる。

広大な海。沢山の魚。自然の一部をそのまま切り取ったような、この不思議な空間が好きだ。アビドス復興に夢中になりすぎて、こんな感動を覚えるのは久しぶりだった。

 

「ホシノちゃん!ケイ君!ちょっとこっち来てみて!」

 

「はいはーい。ほら小鳥遊さん、行きましょう」

 

「ほらこれ!凄くない!?」

 

「おぉ…」

 

ユメ先輩に連れられた先は、水槽の中央が透明のトンネルのようになっており、360度見渡せるようになっていた。

海中を散歩しているような、味わったことのない感覚。頭上でイワシが群れを作って泳いでおり、銀色の太陽のように見えた。

 

「なんであんなに集まって泳ぐんだろう?窮屈じゃないのかな?」

 

「目が回りそうですよね~」

 

二人して口をあんぐりと開け、イワシの群れを眺め続けるユメ先輩と夢関。

前々から思っていたが、この二人、似ている。特にお節介なところとか…

 

「…外敵から身を守ってるんですよ。他にも理由はあるらしいですが」

 

「へ~…詳しいんだねホシノちゃん!イワシ博士だ!」

 

「あんまり誇れない称号ですね…」

 

「じゃあ水族館博士になりましょう小鳥遊先輩!あの魚何て言うんですか?」

 

「あれはミナミハコフグ。あんなに可愛いのにちゃんと毒があって…」

 

「ホシノちゃん、あれは!?」

 

「あれはオジサンですね。2本のヒゲで餌を探すんですよ…」

 

 

 

 

「疲れた…」

 

「凄いねホシノちゃん!ホントに水族館博士になっちゃった!」

 

「イルカショーも凄かったですね。最前列で見れたのはラッキーでした!」

 

「ホントにね!ドクターフィッシュのやつも面白かったよね!」

 

「夢関がモテモテだったやつじゃん」

 

「ちゃんと毎日シャワー浴びてるんですけどねぇ…あ、ちょっと俺トイレ行ってきますね。」

 

「はいはーい」

 

「電車の時間あるから、早めにね。」

 

「了解っす!すぐ戻ります!」

 

 

 

 

「ッグ…ゲホ!ゴホゴホッ!」ビチャビチャ

 

洗面台を紅く染める俺の血液。今朝から喉の辺り…それかもっと奥が痛むと思ったらこれだ。思考がはっきりしない時もあるし、いよいよ死が近づいてきているようだ。

 

「あ゛ーきっつぅ…」

 

ハイバラさんに貰った、症状を軽くする薬を飲む。これ、あまりにもすぐ効きすぎるからヤバそうなんだよな…気にしない気にしない…

 

まあ俺が死んだとて、悲しむ人なんて…いや、ユメ先輩は優しいから悲しんでくれるかもしれない。ホシノちゃんは…むしろせいせいするんじゃないだろうか。

 

「早く戻らなきゃな…」

 

来るときは気づかなかったが、正面が土産物店になっている。このまま帰ろうと思っていたが…

 

 

 

 

「…夢関、遅い。」

 

「すみません!まだ時間大丈夫ですよね!?」

 

「まあまあ…うん、あと30分くらいあるから間に合うよ。」

 

「良かったです…はいこれ、先輩方にプレゼントです!」

 

「え~嬉しい!何だろ~…メンダコだぁ!」

 

メンダコのマスコットが付いたストラップを嬉しそうに振り回すユメ先輩。

 

「私のは…クジラ?何で私がクジラ好きって分かったの?」

 

同じシリーズのクジラマスコットを眺めるホシノちゃん。しまった!原作で先生には言ってたけど俺には言ってねえじゃん!絶対キモがられてるな今。

 

「何となく、好きかな~って。」

 

「そう…ありがとう、嬉しい。」

 

「ねねね、ケイ君は何にしたの?」

 

ずずいと距離を詰めてくる先輩。

 

「え…僕の分は買って無いですけど…」

 

ピタッと動きを止め、真顔になる二人。また何かの地雷を踏んでしまったのか俺?

 

「…買いに行こう、夢関の分。」

 

「そうだね!」

 

「えっちょ…電車…」

 

「関係ない。走れば間に合うでしょ。」

 

「そうだよ!私達仲間なんだから、ケイ君だけ仲間外れなんて嫌じゃない?」

 

「いや俺は別に…」

 

「夢関がどうとかじゃない。私達が嫌なの。分かったら早くついてきて」

 

「は、はい…」

 

 

さんざん迷った挙句、俺のストラップはドクターフィッシュに決まった。誰が買うんだこんなの。

 

電車もどうにか間に合った。二人のスピードで走れば余裕で間に合ったのだろうが、俺が居たせいでギリギリになってしまった。

 

「ゼヒュー…ゼヒュー…コホコホ」

 

「夢関、体力なさすぎ。もっと鍛えたら?」

 

「うう…」

 

「あはは…楽しかったね今日!私、水族館なんて行ったの初めてかも!また行こうね!」

 

「そう、ですね。」

 

私にしては珍しく、先輩の言葉に素直に頷く。

今日は本当に楽しかった。一人で行った時よりも、何倍も楽しかった。次は他の地区の水族館に行ってみても良いかもしれない。

 

次もまた、三人で一緒に行けたらいいなぁ…

 

 

 

 

 




次は二人で楽しんできてね!『夢関ケイがログアウトしました。』

ドクターに好かれるケイ君。身体はもう…?

ケイ君はどう死ぬのか。

  • 看取られ病院死
  • 迷惑かけたくないから砂漠で野垂れ死に
  • 誰も知らん内に保健室で冷たくなってる
  • どうせ死ぬしパーツになって売られるか!
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