暁美ほむらを(まどほむ的な意味で)幸せにしたい!   作:百合に挟まらない女

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暁美ほむらを(まどほむ的な意味で)幸せにしたい!

 暁美ほむらを幸せにしたい。それはオタクなら誰しもが一度は胸に抱いた事のある願いであり、この世で最も果たされるべき望みだろう。

 もしナメ○ク星の神龍が目の前に現れたら全オタクの99%は暁美ほむらとユーフェ○ア・リ・ブ○タニアと宮園か○りを幸せにしてもらうに違いない。

 

 斯く言う私もその99%の内の一人であった。前世の私はそれはそれは健全なオタクだったのだから然もありなん。

 いつか来たるその日の為に召喚呪文を暗記していたにもかかわらず、残念なことに命尽きるその時までポ○ンガに出会うことは出来なかったが、なんと私は前世の悲願を叶えるチャンスを貰えたのだ。

 

 そう。所謂──転生、と言うやつである。

 

 さて、ここで冷静に考えてみてほしい。命の奪い合いは元より、ゴキ──コホン……害虫一匹殺せないひ弱な少女であった私があの凶悪な魔女共と戦うことなぞ出来るのであろうか、と。

 

 答えはイエス。できるのだ。

 何故ならば私はかの邪智暴虐な宇宙生命体である所の孵卵器(インキュベーター)、つまりはキュゥべえにこう願ったからである。

 

「情動を自分でコントロールできるようにして欲しい」

 

 ──と。

 

 まあつまり、恐怖心を克服したのだ。そしてラッキーなことに、もう一つだけ願い事ができた。この身には今世の私と、前世の(オタク)の二つの魂が入っている……とかなんとか。キュゥべえは宇宙の法則が乱れているとか言って驚いていたけれど、私という異物がこの世界に滑り落ちてしまった時点で乱れまくっているのだから今更だ。

 私は悩みに悩んで願いを決めた。

 

「何が起きても記憶を失わないようにしてほしい」

 

 そう。どうせ今の私一人の力では円環の理となった鹿目まどかの穴を埋めることは出来ない。木っ端魔法少女が一人増えたとて、ワルプルギスの夜を倒す事など出来るはずがない。

 

 暁美ほむらは何度も時間を遡行し世界を繰り返すことで経験を重ね力をつけた。ならば私もその能力に肖ろうと思ったのだ。それに、暁美ほむらの何時でも壊れてしまいそうな弱った心を支える人間が近くにいても良かったのではないかと常々思っていたから。

 

 何処と無く曖昧な願いになったのは、キュゥべえに暁美ほむらの能力を教えたくなかった私の苦肉の策でもある。

 

 繰り返すことが前提なら恐怖心もそのうち薄れたんじゃね? と思わないことは無い。その時は二つ願いを叶えられるなんて分からなかったんだから仕方ないだろ。

 

 斯くして魔法少女まどか☆マギカの世界に『東雲(しののめ)悠里(ユウリ)』という新たな魔法少女が誕生したのであった。

 

 

 

×××

 

 

 

 これで何度目の時間遡行であろうか。目的の世界線にはまだ辿り着けないらしい。暁美ほむらの戦闘技術からいって、そろそろ本編に近付いては来たと思うのだけれど、既に似たような時間を何度も繰り返しているせいで判断が付かない。

 二つ目の願いのおかげでアニメの記憶は残っているが、そもそも願いを叶えてもらった時点で記憶は薄れていたのだから始末に負えない。なぜその状態でイケると思ったんですかね。

 

 何十、何百と魔女を屠ってきた私にはとっくに恐怖心など残っておらず、一つめの願いは『意識しないと表情筋が動かないため基本無表情』という強烈なデメリットだけを残して死にスキルとなっている。強いて言えば、偶に見れる"まどほむ"や"きょうさや"を見てもオタク特有のニヤニヤを見られることなく外見上冷静で居られることだけはメリットだろうか。

 

 因みにほむらは私の二つの能力を知らない。キュゥべえに情報を与えない為もあるが、ほむらに私という異物を強く意識されても困るからだ。ほむらの目的はまどかを救うことであって、延いてはまどかと結ばれること(諸説あり)のはずだ。その純粋な思いだけで生きているほむらに『ずっと一緒に戦ってくれた仲間』は不要と判断したからだ。彼女の胸の内にいるのは鹿目まどかだけでいい。

 決して孤独な闘いに身を投じる暁美ほむらの曇らせが見たかったからでは無い。……本当だ。

 私に百合に挟まる趣味はないんだ。本当だ!

 

 ……転校初日から鹿目まどかに接するように「ほむらでいいわ」と言われてしまうようになったのは、何かの間違いだろうな、ハハハ。

 

 さて、こんな話をしながら日課の魔女狩りを済ませる。但し、私の言う"魔女"にはグリーフシードの落とさない使い魔も含まれていて、今日狩ったのはその使い魔だ。つまり実用面で言えば完全な無駄足である。現時点の佐倉杏子が見たらさぞ馬鹿にしてくるに違いない。巴マミであれば満面の笑みで手を取ってくることだろう。

 そして──

 

「また無駄なことをしているのね。貴女は燃費(・・)が悪いのだから、魔女になるまで待てばいいのに」

「……ほむら。ううん、これは私にとって必要なこと、だから」

 

 わざと情報を隠して思わせぶりな事を言っている訳では無い。巴マミの負担を減らす為、そして私自身の力をつける為にやっているのだ。

 例え使い魔相手だろうと巴マミは戦うだろう。彼女はそれなりに経験豊富な魔法少女であるが心は弱く、また力も私に劣る。

 

 ソウルジェムを二つ持っている(・・・・・・・・・・・・・・)私よりも彼女が戦った方がグリーフシードの消費が多いと判断しただけの事。ほむらには、決して言えないけれど。

 

「貴女はいつもそうやって──いえ、何でもないわ。それこそ無駄な事だもの」

「ごめんなさい。それで、何故わざわざこんな所まで?」

 

 いつもなら魔女の出ない今日は武器の補充にマフィアのアジトへ潜入しているのだが。

 少なくとも、使い魔を狩る私に着いてきたりはしないはずだ。何故なら今日この場には──

 

「また間に合わなかったみたいね、東雲さん」

「ユーリちゃん! ……と、ほむらちゃん? どうしてここに……」

「ユーリ、どうして転校生と一緒に……!」

 

 そう。巴マミが魔法少女体験コースと称して、まだ一般人である鹿目まどかと美樹さやかを連れて魔女退治にやってくるからだ。

 

 正直コレにはかつての私もドン引きしたものだ。相手が使い魔だとしても、一般人には危険なことこの上ない。

 例え二人が魔法少女候補だとしたも以ての外の危険行為だ。巴マミにはかつてそれとなく忠告もしたものだが、彼女の内にある『寂しさによる暴走』は止まってくれなかった。平和主義の私を持ってしても『先にマミさんヤっちまった方がいいんじゃね?』と思ったほどである。

 

 因みに三人と今周の私は既に顔馴染みだ。同級生のまどかとさやかは当然だが、こうして何度か先回りしている内に巴マミには若干のライバル心を持たれている。

 

「ごきげんよう、巴先輩。相変わらず一般人を巻き込んでいるようで感心しませんね。魔女狩りは遊びじゃないんですよ」

「それは……」

「まどかもさやかも。貴女達には心配してくれる家族がいるのだから、こんな危険な事に首を突っ込まない方がいい。魔女狩りなんて、悪魔に魂を売り渡した私達だけがやればいいの」

 

 相変わらず表情筋は動いてないし、感情が乗っていないせいで声色も平坦な私の言葉を聞いて三人が俯く。悪魔に魂を売り渡した、というのは何も比喩では無いのだ。この場では、ほむらにしか伝わっていないのだろうけれど。

 

 正直同級生二人には悪いと思っている。冷たい言い方をしている自覚はあるし、今の甘い夢見る二人には何を言われているかわからないだろうから。ただほむらと同じだけ時を重ねてきた私からすれば、どうしてもほむらの肩を持ってしまうのは仕方の無いことなのだ。

 ほむらはまどか一人のために、何度も挫けそうになりながら踏ん張っているというのに、と。

 

「……行こう、ほむら」

「え、ええ」

 

 若干戸惑った様子のほむらを連れて歩き出す。向かう先は私の家だ。毎日遅くまで好き勝手出歩けるのは巴マミ同様親がいないから。私の場合は事故死ではなく、そもそも用意(・・)されていなかったのだけれど。

 そういえばほむらには家族が居るのだろうか。いや、設定的にはいるのだろうけれど姿を見た事も話を聞いたこともない。もしかしたら海外にいるのかもしれない。気まずくて、これまで聞いたことがなかった。

 

「ただいま」

 

 誰もいない空間に声を掛ける。勿論帰ってくる声はない。ほむらは隣で怪訝そうな顔をしているが、前世からの習慣のようなものだ。無言で帰宅するのも少し寂しいし。

 

「貴女、一人暮らしだったのね」

「言っていなかった?」

「ええ」

 

 そういえばこれまでの長い付き合いで、ほむらを家に上げるのはこれが初めてだ。ほむらだけじゃなく、誰かを招いたこと自体が初めてなのだが。そろそろ始まりそうな本編に、少し浮き足立っているのかもしれない。

 

「……殺風景な部屋ね」

「寝るだけなら何も必要ないからね」

 

 前世では漫画とゲームに囲まれた自堕落な生活をしていたものだが、この世界に来てからはそんな余裕はなかったから。謎技術で一杯のほむらの部屋に比べたら、大抵の部屋は殺風景と感じると思うが。あのモニターどうなってるんだろうね?

 

「それで、何故私をこの部屋に呼んだのかしら」

「聞きたいことがありそうだったから」

 

 深い理由は無いのだ。天敵が二人もいたあの場にほむらを一人残したらロクなことにならなさそうだったから、連れ出しただけ。

 全員が生きて運命の日を迎えられたなら共闘する事になるのだし、本当はもう少し仲良くして欲しいが……これは私も言えた義理ではない。

 

「……東雲悠里、貴女一体どこまで知っているの?」

「……何でもは知らないよ。知ってることだけ」

 

 そう言えば出てたな、と思いつつ軽口で返すとここ数回は見ていなかったジト目で呆れられてしまった。ごめんて。

 

「冗談。インキュベーターの目的と、この街に脅威が近付いていることは知っているよ」

「それに、私の目的も?」

「大凡は。ほむらの邪魔をする気は無いよ」

「知っているわ。貴女は何時だってそうだったから……それだけは信じてるもの」

「っ……それは良かった。他に聞きたいことは?」

 

 好きとか推しとか抜きにして、美少女に真っ直ぐ目を見据えて信じてるとか言われると照れちゃうよね。

 この体じゃなかったら顔を真っ赤にしてたかもしれんよ。心臓に悪いからファンサしないで欲しいね。あ、もう心臓動いてないんだっけ? 魂がないだけだから心臓は動いてるか。知らんけど。

 

「他には特に……ああ、一つだけ」

「ん?」

「貴女、私のことが好きなの?」

「……は?」

 

 暁美さんや、爆弾を落とすのは戦闘中だけにしてくれませんかね。

 私はまどほむに挟まるつもりは無いぞ!!




新作映画が出るようなのでまどほむには幸せになって欲しい。脚本が虚淵?知らん!
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