1986年10月2日11月
島外から離れた東京にいる霧江、留弗夫は、ビルの屋上にあるベンチに座り、缶コーヒーを飲みながら、溜め息をしている。そんな留弗夫に、霧江はライターを出した。
「少しは落ち着いたら留弗夫さん。」
「霧江。そうなんだがな…」
なんだか、何かを言いたそうにしている。だが、煙草を持ったまま黙る留弗夫。
「……蔵臼兄さんに何かあったの?」
「…姉貴から言われたんだがな。親父が既に、亡くなってるかも知れないんだと。」
「本当なの?」
絵羽から聞いた情報を霧江に言って、溜め息をしながら話を続ける。
「この情報の元は朱志香ちゃんらしい。」
「朱志香ちゃんが?」
「【親父は朱志香ちゃんに少し、甘かったからな。若い頃の昔話をするくらいだからな。】」
昔を思い出しながら、苦笑をしている留弗夫に、ライターを差し出して、煙草に火をつける霧江。
「そうなると、蔵臼兄さんからお金は貸して貰えそうにないわね。」
「どうなんだろうな。信用が一番だが、今は…信用よりもお金が信頼できる。嫌な世の中だよ。」
「俺だけじゃ…解決しねえな。」
1986年10月2日17時15分
都内にある居酒屋の個室に、霧江、留弗夫、秀吉、桜座が集まっているが、絵羽は用事があるのかいないようだ。
「秀吉さん。姉貴の言ってたのは…」
「絵羽の言った通りや。と、言っても…朱志香ちゃんが言ってたんやがな。」
「蔵臼兄さんはどうして、隠したのかしら?」
桜座の疑問に、皆が話し合う中で、霧江が1つの仮説を言った。
「蔵臼兄さんは借金をしているんじゃ…ないかしら?」
「兄貴が借金?」
「でも、裕福なのになんで?」
留弗夫、秀吉が、動揺しているが、可能性としては、否定できないし、証明することもできない。悪魔の証明である。
「でも、どうやって白状させるんだ?」
「難しくない?」
作戦を考えてはいるが、中々思い付かない。小腹がすいているので、適当に食べながら話し合う。
「親族会議で、兄貴に親父に会わせてもらわねえとな。」
「私達も、急場でお金が必要よね。蔵臼兄さんは…貸してくれるかしら?」
「どうだろうな。最悪…殴る覚悟はいるな?」
拳を握る留弗夫は、秀吉、楼座、霧江を見て、作戦の成功を願った。
「………この作戦でいくしかないな。」
「問題がなければ、成功するわ。」
1986年10月2日17時
六軒島のゲストハウスにいる戦人も、金蔵の生死を疑っていた。忘れがちだが、【戦人と譲治は碑文の謎を解いている】その証明として、【金塊のある貴賓室で、写真を撮っている】のである。
(これ切り札として、祖父様のことを白状させれば………でも、朱志香に何て…伝えればいいんだ?)
溜め息をしていると、使用人の郷田が、戦人のいる客室に訪れた。運が良い戦人は、とあることを聞いた。
「郷田さんが使用人になったのは、去年ですよね?」
「はい。4月頃です。」
「だったら、祖父様の顔を見たことがありますか?」
「失礼ながら…【一度も…お会いしたことがないんです。】挨拶に伺いたいのですが…」
郷田の発言に、さらに疑惑が深まっていく。軽くサラダを頼むと、出来上がるまで一眠りするのだった。
この会話を聞いていたベアトリーチェは、機嫌が悪そうな表情をしている。
「妾が金蔵に授けた黄金を横領する者が、存在しているとは…妾も、調べるしかないか。金蔵が生死を…」
ベアトリーチェは姿を消した。