ゲームスタート
1986年4月5日8時52分
東京にある高層ビルの最上階に、蔵臼と朱志香が来ていた。朱志香の服装は、普段着とは違い、学生服で来ている。
「朱志香。この場所に、連れてこられた理由は、わかるか?」
「………一応わかるぜ。」
少し、暗くなっている朱志香の表情に気にする様子がない蔵臼は、ネクタイを確認して、息を出すと、話始めた。
「朱志香には、婚約者がいるのだよ。今日は話し合いだけだが、今年の10月6日には、六軒島を出てその人と一緒に暮らしてもらう。」
「………そうかよ。」
蔵臼からの無情な発言に、朱志香は平気そうな表情で乗り切った。
「さあ。行こうか…」
重い足取りの中、婚約者相手がいる部屋に入るのだった。
1986年4月10日10時
東京駅にいる朱志香は、人通りの多い商店街を通り、待ち合わせの場所である喫茶店に到着した。季節は春なのだが、異常気象の原因で、若干暑いようで、相手が来るまでの間にアイスティーを注文する。
「遅いぜ。もう過ぎてるぜ…」
朱志香がアイスティーを飲みながら、待ちくたびれていると、ジャケット姿の戦人が走って喫茶店にやって来た。待ち合わせの相手は、戦人のようだ。
走ってきたため、少々疲れているようだ。そんな戦人を笑いながら、メニュー表を見せる朱志香。
「譲治の兄貴から聞いたぜ。六軒島から出るんだってな?」
「父さんが勝手に決めたことだぜ。私は嫌だったのによ…」
朱志香の父、蔵臼は事業に失敗して各地に投資するが、失敗の連続であった。その上、他所からの借金もあり、窮地に追い込まれたのだが。朱志香を婚約者として、迎え入れれば借金を肩代わりするという。その男性は朱志香より5歳上で、会社の社長をしている程だ。
「いくら六軒島から出たくても、父さんの生け贄は嫌だぜ…」
「………悪い。朱志香、聞かなきゃよかったかな?」
「戦人は悪くないぜ。悪いのは、全部父さんだ……」
朱志香と戦人の間に息苦しい雰囲気になっていると、息抜きをするために戦人を誘ったのだ。朱志香は悪いことを忘れるため、戦人と一緒にゲームセンターに向かった。
1986年4月10日12時50分
ゲームセンターで一通り遊んだ朱志香と戦人は、お昼を食べるため、近くにある喫茶店に入った。お客は少ないので、近くの席に座りメニューを決める。
「何とかならないのかな?」
「どうしたんた。朱志香…」
「破綻にならないかな…」
朱志香は戦人の手に触れているが、それを気にする様子がない戦人に、少し機嫌が悪くなる。
「……死ねば破綻になるよな。」
小声で呟いた朱志香に、戦人は手をつねったので、痛みが走った朱志香は、戦人を見る。
「そんなこと…言うんじゃねえ!」
「戦人……」
いきなり、怒鳴ってきた戦人に動揺している朱志香。死ぬ発言に怒った戦人は、冷たい水を飲んで冷静になると、落ち着いていった。
「朱志香…死ぬなんて、言葉は二度と使わないでくれ。」
「…………わかったよ。今日はありがとな戦人。いつもは、学校以外で六軒島から出られないから、普段通りで過ごせないし…」
「良いぜ。俺も楽しかったしな。高校での朱志香は、真面目らしいじゃんか。」
朱志香は高校では、生徒会長をしている真面目な面があるが、普段は男勝りな言葉遣いで、母の夏妃に注意されている。
「………そろそろ帰るか。朱志香…」
「船の時間もあるし…わかった。」
船着き場に到着した朱志香と戦人は、青く透き通した海を眺めながら、船を待っている。
「8月は疲れるから嫌だぜ。」
「何がだよ?」
「文化祭だよ。演劇しなきゃならないんだぜ…」
「朱志香は演技とか手品得意だったよな。髪も束ねたら印象変わるしな。」
「やめてくれよ!?シェカにも言われて、るんだぜ…」
「ある意味似た者同士だよな。二人は…」
楽しく雑談している内に、船が船着き場に到着したようで、朱志香は六軒島に帰っていった。