1986年6月12日8時52分
六軒島に向かっている船に、譲治、秀吉の二人が甲板に出て会話をしているのだが、見慣れない人物が海を眺めていた。白髪で、白いスーツを来ている男性である。年齢は若く、譲治より少し下くらいだ。スーツには片翼の鷲が刺繍されている。
「父さん…あの人は…」
「わしも見掛けんで…」
譲治と秀吉が、謎の男性に動揺している。すると、見られているのに気づいた男性が、声をかけてきた。
「あの…私に何か?」
「いえ、六軒島に来訪者が来ているので…すみません。」
譲治はすぐに謝罪するが、男性は気にしていないようで、笑みを浮かべたままだ。
「私は十八と申します。貴殿方は、右代宮家の者でよろしいですか?」
「はい。僕は譲治といいます。」
「わいは秀吉や。十八はんは、六軒島に何のようなんや?」
秀吉に聞かれた十八は、笑みを浮かべたまま海を眺めている。暫くして、出た答えが…
「私は元使用人です。六軒島に来た理由は、手紙で呼び出されましてね。」
「……見せてもらっても?」
「構いませんよ。」
スーツの内ポケットから、片翼の鷲が描かれている封筒を取り出して、譲治に手渡した。手紙が入っていて、内容は…〈10月1日から5日までの間、使用人として、仕事を依頼する。〉と書かれていた。
「今日は打ち合わせでもと思いまして、源次さんと約束が…」
「そうですか。」
「そう言えば、戦人君は六軒島に来るのでしょうか?」
十八は戦人の知り合いなのか、譲治は疑問に思っていると、秀吉が譲治に代わり質問した。
「十八はんは、戦人君との関係はなんや?」
「私は戦人君の兄と言ったようなものです。私は兄として、慕われましたから。」
(なんとなく、戦人君と雰囲気が似てるような…身長も同じくらいだし。)
十八と戦人を見比べながら考えている譲治。秀吉が煙草を取り出すが、十八に言われた。
「申し訳ありません。私は煙草が苦手でして…」
「それは、すまんかったな。お酒は飲めるんか?」
「煙草とお酒が、苦手でして……すみません。中に戻りますね。」
十八は少し、手摺に掴まりながら船内にもどった。船が苦手なのだろう。綺麗な海を見たくて、甲板に出たが、怖くなって戻ったのだろうと譲治は予想した。
「お酒と煙草が苦手とは、珍しいわ。」
「父さんは煙草とお酒は、控えないと駄目だね。母さんに、相談しておくよ。」
「譲治!?それは勘弁してな。それより、譲治はやりたいことを見つけたか?」
「蔵臼伯父さんに、いろいろと学べてるから…結構面白いよ。」
「譲治は勉強家やからな。無理せずに、頑張るんやで!」
船が六軒島に到着すると、ふらついている十八が船から下りてきた。やっぱり、船旅は苦手のようだ。譲治が持っていた酔止め薬を取り出すと、十八に差し出した。
「良いのですか?」
「戦人君も船が苦手なんです。」
「……ありがとうございます。」
譲治、秀吉、十八は、六軒島を歩いていると、うみねこに出迎えられながら、屋敷を目指していると、薔薇庭園に到着した。
「久し振りに来ましたが、薔薇庭園は凄いですね。」
「確かに、立派なもんやな。」
「少し、広くなってるね。」
「屋敷に行きましょうか。」
秀吉、譲治、十八は、屋敷に到着したのだった。