1986年9月26日9時50分
朝食を食べ終えた朱志香は、本来なら学校に行かなければならない。だが、悪天候のため船が出せず、学校に行けなくなったのである。仕方ないため、部屋で予習をするのだが集中できなくなり、思い出のある森に来たのだ。来ていたのは朱志香だけではないが。
「シェカと戦人も来たのかよ。」
「俺は10月後半までは、六軒島にいるしな。」
「私は休憩時間だから、暇なの。」
戦人、シェカ、朱志香が楽しく会話していると、小さな黄金蝶が朱志香の肩に止まる。その存在に気づいた朱志香とシェカは、気づいていないフリをして、会話を続ける。
(戦人には、黄金蝶が見えないのか?)
(戦人君は、黄金蝶が見えないみたい。)
暫く会話していると、雨が降りそうになりゲストハウスに入ると、戦人は仮眠するようで、いとこ部屋に向かった。シェカと朱志香は、肩にいる黄金蝶に声をかける。
「ベアトリーチェ。質問があるんだけど……」
黄金蝶が光だして、ベアトリーチェが姿を現した。朱志香とシェカを見て、笑みを浮かべている。
「どうしたのだ…朱志香。シェカは久し振りである。」
「戦人は黄金蝶が見えないみたいだけど、何でなんだ?」
「うむ。戦人は反魔法毒素の結界を常に、展開させている。それゆえ、妾の存在を見る聴くことが、出来ぬのだ。昔は妾の存在を視ることが出来たみたいだか…」
ベアトリーチェは、過去の思出話を笑いながら語っている。
「紗音はベアトリーチェが見える?」
「うむ。紗音とは茶飲み仲間でな。結構、妾の悪戯に協力してくれているぞ。噂話や怪談話などでな…」
ベアトリーチェの魔法で、特殊な空間が発生すると、テーブルにお茶菓子、紅茶が用意された。
「話を続けるが、妾の魔法は余り、人間が少ない時こそ、魔法の効力が発揮しやすいのだ。」
「……人間が多いと、魔法は使えなくなるから?」
シェカの仮説に、驚いたベアトリーチェは笑いながら頷いている。
「魔法は、人間の反魔法毒素に弱いのだ。魔法を信じる人間には問題ないが、信じぬ者には、魔法を視ることができないのだ。信じていても、視ることができぬ人間もいる。」
紅茶を飲み、魔法の説明をしているベアトリーチェに、朱志香は考え込んでいるが、魔法の理解が余りわかりにくいようで、頭を悩ませる。
「朱志香には、難しすぎたようだな。魔法とは、出来ることしか出来ない。絶対に不可能な現象には、魔法は出来ない……出来ることしか、魔法は使えない。例外もある…大勢の人間の協力があれば、ある程度の魔法が使える…時と場合によるがな…」
「魔法が使える相性とかあるのか?」
「相性…朱志香の場合だと…シェカと紗音は、相性が抜群である。無論、魔法的な相性だ。残念ながら戦人は、魔法的に相性が悪い。」
魔法を少しだけ理解できた朱志香だが、わからないことがひとつだけあった。
「魔法を使うのに、何か準備とか要らないのか?」
「媒体となる道具、魔法を使うならば、小さな魔法ならばまだ、少なくてよい。強力で広範囲になると、対価や代償が必要になるからおすすめしないぞ。妾は帰るとしよう。去らばだ…」
ベアトリーチェは姿を消した。