1986年9月25日12時
屋敷で、昼食を食べた後で朱志香、シェカ、源次の三人が、薔薇庭園を歩いている。
「シェカ様…お久し振りでございます。」
「源次さんも、お元気そうで、なによりです。」
シェカは、魔女ではあるが、反魔法毒素などは効かない体質を持っており、人間が来ても消えることはない。
「シェカはいつ頃…戻ってきたんだよ?」
「先月です。久し振りに、戦人君に挨拶しようと思ったんですが…」
「……………」
「事情がありそうですね?」
暗い表情の朱志香を心配しているシェカは、何もないハンカチを取り出すと、一瞬にしてハンカチから大量の飴玉を出した。
「どうですか?朱志香…」
「ありがとう。少し…元気が出たぜ…」
「それは、よかった。」
「シェカ様、朱志香様。郷田がデザートを作りましたので、食堂にお願いします。」
源次は、屋敷の食堂に向かっていった。
「どうする?」
「【郷田さんのデザートは、2年振り】だから…楽しみですね!」
「食堂に行こうぜ!」
シェカと朱志香は、思い出話を語り合いながら屋敷の食堂に行く。すると、夏妃がシェカを見掛けて声をかけた。
「シェカさん。お久し振りですね。」
「夏妃様も、お元気でよかったです。薔薇庭園がさらに美しくなってました。」
「嘉音の賜物です。仕事効率も良く出来ています。」
シェカに笑みを浮かべている夏妃だったが、朱志香を見る表情は厳しい。食堂に行こうとしたら…
「デザートを食べたら、予習でもしていなさい。朱志香は、次期当主の娘なのですよ。」
「………悪いけど【私は当主になる気はないから。勝手に決めないで!】」
「朱志香!?」
夏妃に呼び止められるが、朱志香は止まるつもりはないようで、食堂に向かった。
「夏妃様。私は朱志香の気持ちも考えた方が良いと、思います。部外者な私が言ったらおかしいですが…」
「【シェカさんは元使用人】でしたが、今は部外者です。余り、口出しされたくありませんね。」
「私の悪い癖です。申し訳ありません。夏妃様……」
シェカは夏妃に、一礼すると、食堂に向かった。
1986年9月25日15時
屋敷の玄関ホールを掃除している紗音と嘉音は、少し疲れたようで、休憩をしている様子である。
「姉さんは、譲治様と一緒に行けばよかったじゃないか。」
「嘉音君はお嬢様と?」
「僕は無理だ。【お嬢様は…戦人様と一緒になる方が幸せだから。】」
「戦人様が…お嬢様と?」
嘉音の言ったことに、余り理解できていない様子の紗音。嘉音は、掃除を再開しながら紗音を見る。
「………そうだよね。【戦人様は約束したんだけどな。】忘れちゃったかな?」
「姉さんは…戦人様を?」
「幼い頃の話だよ。【初恋の相手は、戦人様】だったけど、今は譲治様と一緒にいたい。」
紗音が思い出話を嘉音に語るのだが、納得がいかない様子の嘉音は、掃除を終わらせると行ってしまった。