1986年10月1日14時
約10年振りに六軒島に帰ってきた戦人は、屋敷に入ると、朱志香に出迎えられた。なんだか少し泣きそうな表情である。
「朱志香…久し振り…」
「戦人の馬鹿野郎!何で、今まで……」
「悪かったな。朱志香…」
泣きながら抱きつかれている朱志香に、戦人は頭を撫でながら、ゆっくりと離れる。近くに夏妃が見ているからだ。
「夏妃伯母さん。お久し振りですね。」
「戦人君も久し振りですね。10年振りですか?」
「そのくらいスッね。」
朱志香は夏妃に見られていても、戦人の手を握り離さなかった。
「……………今はいいです。4日と5日は、六軒島に?」
「泊めて貰えたら…嬉しいんですが…」
「大丈夫ですよ。ゲストハウスの部屋があります。」
戦人は夏妃にお礼を言って、一旦荷物を置くためにゲストハウスに向かうのだが…
「…………やべ。」
「どうしましたか?戦人君。」
「俺………ゲストハウスの場所知らない。」
少し抜けた戦人を見た朱志香は、ゲストハウスの場所を案内すると決めたが、夏妃から「予習でもしていなさい。」と言われて部屋に戻った。
「そうですね。紗音を呼んできますね」
「お構い無く……」
夏妃が紗音を呼んでくるまで、持っていた密室殺人ミステリーの小説を読んで、待つことにした。
暫くすると、紗音とシェカが外から帰ってくる。戦人を見た瞬間。駆け寄ってきたが、戦人はシェカのことが、見えていないらしい。
「紗音ちゃん…か?久し振りだな。」
「…………お久し振りです…戦人様。」
(私には、反魔法毒素など…効かないはずじゃ…)
シェカが心で叫んでいるが、戦人には見えていないし、聞こえてもいない。
(シェカ様。紗音です…)
紗音がシェカの心に、念話魔法を発動して、話し掛ける。
(紗音さん?どうして、戦人君は私が見えないんですか!?)
(幼い頃の戦人様は、まだ魔法毒素などは無かったのですが…魔法抵抗力エンドレスナイン所持者でして、魔法完全否定の結界を無意識に展開しています…)
紗音の説明に、シェカは動揺している。
(エンドレスナイン…?)
(簡単に言えば……戦人様には、愛がないから魔法が視えないんです。)
(愛がないから……視えない……)
シェカは何も言わずに、姿を消したが、戦人は紗音と会話している。
「ゲストハウスの場所に、案内してくれないか?」
「畏まりました。戦人様…」
戦人はゲストハウスに向かった。
1986年10月1日16時
ゲストハウスの客室で、読書をしながら寛いでいる戦人は、昔の記憶を思い出していた。10年前の思い出を…
(あの時の子とは、あれから会いに行けなかったな。俺が原因なんだよな………)
溜め息をする戦人は、本を台に置いておく。客室から出て、散歩に向かうようだ。
(何処から行くかな。あの森に行くか…10年振りに…)
戦人は思い出のある、森に向かっていった。
ゲーム盤の裏側の世界では、シェカが姿を現して、人間界と言えるゲーム盤に並べられている駒を動かしていた。
「……やっぱり、魔女は不自由ですね。戦人さんの完全魔法否定結界に、阻まれてしまいます。もう……駄目なのかな……」
シェカは駒をゲーム盤に戻して、姿を消した。