IS学園でポンコツとゆく 作:ドニムルラ
凰さんと喧嘩して早数週間。その間、僕と彼女は顔を合わせる度に喧嘩して罵り合った。先週は一夏君も参戦したが彼の「貧乳」の一言で壁を破壊していた。僕との喧嘩の時より激しかった。
織斑先生に「うるさい黙れ」と凰さん共々ぶん殴られてしまった時もあった。自業自得とはいえ初めて織斑先生からの折檻を受けた僕はショックでしばらく元気が出なかったので、今まで以上にトレーニングに打ち込んでやっとクイックブーストの教習項目をクリア。
クイックブーストに続いてイグニッションブースト、ラピッドスイッチなんかの項目もクリア。初級項目は全てクリアできた。報酬として飛行制御系のブースターとマシンガンをもらった。これでちょっとは元気になった。
『おめでとうございます。初級教習項目を全て達成したことによりアリーナ、ログハントプログラム、OSチューニング、ショップが解放されました』
しかも何らやれる事が増えたらしい。腕輪から投影されるホログラフィーには四つの新たな項目が映し出された。
アリーナって、学園のIS闘技場とは違うんだよな?
『アリーナは戦闘技能検証プログラムです。現在に至るまでの国家代表候補生、国家代表者、その他企業所属のテストパイロットの戦闘技能とISを再現した仮想敵と戦闘をする事で利用者の実力を測る事が目的です』
おー、これは凄いんじゃないか? 戦闘技能の検証以外にも例えば次に対戦する相手を予習とかできるんじゃないか? ちょっとズルい気もするけど、オールマインドって織斑先生もおすすめするくらい広まっているサービスだし、他の人たちも同じように相手の予習しているだろう。
『また、倒した仮想敵のランクに応じてOSポイントを提供します』
「OSポイント?」
『OSポイントは後述するOSチューニングとショップで利用する物です。詳しくは当該項目で説明します』
ざっと確認してみると、ISが競技用とされる以前のパイロットデータまである。ランクS1、つまりオールマインドの格付けした中で最強のパイロットは勿論織斑先生だ。お、オルコットさんと一夏君のデータもある。オルコットさんがDランクで、一夏君がEランク。僕は………Fかぁ。まあ実績らしい実績ないからね。
「ちぇっ。ログハントプログラムっていうのは?」
ホログラフィーの画面が切り替わり、色々なISと………MTが表示された。MTナンデ?
「オールマインドは常に進化を続けいていくシステムである必要があります。そのために利用者各位にはデータ採集の協力をお願いしています。ISやハイエンドMTとの交戦データを提供していただく事でその内容に応じてデータポイントを加算。ポイントが一定量に達したところでハンターランクが上昇し、報酬としてオールマインド製のパーツを提供します。更にこちらでもOSポイントを獲得可能です』
へー、オールマインドってパーツの開発もやっているんだ。これだけ手厚くISパイロットを支援してデータ収集しているんだから、ISの一つや二つ作っていてもおかしくないのかな。どんなパーツなのか楽しみだ。
「OSチューニングっていうのは?」
『OSチューニングはアリーナで取得したOSポイントを用い、ISを改造する項目です』
「改造?」
『ISには利用者の特性に合わせて自身を改造する機能が備わっています。シフトチェンジがこれに当たるわけですが、OSチューニングは部分的ではありますが意図的にISの改造を行う事ができます』
ISが自分に合わせてくれるとはいえセカンドシフトはタイミングが不明だ。自分で改造するのは失敗もあるかもしれないが方向性が見えやすくなるという利点がある。これも凄いぞ。
「名前的に何となく想像つくけど、ショップっていうのは?」
『OSポイントとの交換でISパーツの貸与を行ないます。ラインナップは第一世代から最新の第三世代まで。常に最新のカタログを更新しておりますが、ハンターランクやアリーナランクに合わせて貸与品に制限がございます。その点は留意してください』
教習項目クリアでパーツが貸与されるやつの延長上みたいな感じかな? ISパーツとかバカみたいに高価な品が猛者たちの再現とはいえデータを倒しただけで貸してもらえるとは。
「ずっと気になっていたんだけど、こんなにサービスが手厚いのに利用料金が無料って、オールマインドはどうやってお金稼いでいるの?」
『当プログラムは複数の企業へ収集したデータを基に新たなパーツのコンセプトの提案、それに伴う技術提供を行う事で収益を得ています』
なるほどなぁ。パイロットは技能向上が図れる、企業は新製品の開発ができる、オールマインドはそうやって金儲けする、WIN-WIN-WINな図式になっているわけね。
早速アリーナに挑戦、と言うか様子見をしてみよう。もうそろそろ二時間経つし、明日はクラス対抗戦の日だから早寝しておきたいし、宿題やらなくちゃだしそんなに時間はかけない。
「えーと、Fランクの僕より一つランクが上の人じゃないと挑戦できないか。オールマインド、お願い」
『かしこまりました。それでは、身体を横にして楽な体勢をとり、出来るだけリラックスしてください』
いつもの指示通りにベッドに横たわる。
『スキンバリア、展開。バイタル解析……正常。脳波の取得と肉体からの隔離………完了。接続開始』
世界が0と1に分解され、再構築されていく。
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目の前に広がったのはいつものトレーニングルームだがいつもと違う者が立っている。ぱっと見だと打鉄に見えるが、何だか色が派手だ。全体的に白色なのだが所々赤色が挿してある。日本国旗に見えるデザインだ。そしてそれを纏うのは眉を吊り上げた女性。
『戦闘技能検証プログラム「アリーナ」へようこそ』
オールマインドのアナウンス。
『最初の対象はIS名 打鉄・零式。識別名 岩本 直美 ランクF23』
ディスカバリーチャンネルで見た事がある。現行の日本の量産機である打鉄の試作機で、パイロットの岩本さんと一緒に紹介されていた。
『検証を開始します』
その宣言がゴングとなり零式が刀を構えて突っ込んできた。なるほど流石の勢い。流石は我が日本が誇る打鉄の試作機だけはある。
だが打鉄・零式には現代のIS戦にあたり無視できない欠点が存在する。
『食らえ!』
コキレットを連射して発砲して迎え撃ち、五発当たった。打鉄・零式は仰け反りながらも体勢を整えて再度突っ込んでくる。
『ふっ!』
切り付けられる直前上に飛んで回避。リロードも並行して行い、空中で反転して背中に向けてリトル・ジェムを撃つ。爆発! 零式が大きく仰け反った。これはチャンスではあるが、一夏君との対戦での失敗は繰り返したくない。今回は引き撃ちに徹する。
零式はまた刀を構えて突っ込んでくる。ここまで突撃しかしてこないんだから察しがつくだろう。零式には射撃武装が搭載されていないのだ。ISによる近接格闘におけるポテンシャルを検証するためのテスト機体だったので武器は刀一本。一夏君と同じだ。
結局、射撃武器も持たせて対応力を上げた方がいいと言う結果が出たので現行の打鉄にはライフルが搭載されている。
岩本さんは近距離戦ならかなり強かったらしいが、逆を言うと近距離線戦に持ち込ませなければ容易い。この頃はイグニッションブーストやクイックブーストのテクニックがなかったそうだから現代戦では通じないのだ。それを反映してかこの再現AIもイグニッションブーストもクイックブーストも使わない。
まあ、消化試合ですよ。近づかないように付かず離れずの距離からペシペシ撃つだけ。余裕で勝てた。織斑先生からもらった物使う必要がなかったな。
『検証完了。お疲れ様でした』
視界が01分解されていく。
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現実に戻った僕は上半身を起こしてオールマインドを覗くとOSポイントが増えていて、アリーナランクもF24からF23に上がっている。
岩本さんは決して弱いパイロットではない。モンドグロッソに出場した時の成績は良かったし、代表候補生こそ退いたものの今は自衛官になっていてブルーインパルスのIS部隊に入っているらしい。ただ当時の技術は今は通用しないと言うだけなのだ。
FランクはおそらくだがISが競技として使われ始めた発展途上の段階、そのパイロットたちばかり。しかし油断してはいけない。再現AIが相手とはいえ常に全力で、実戦に挑むつもりで臨もう。
時計を見るともうすぐ九時だ。宿題やって寝よう。