IS学園でポンコツとゆく 作:ドニムルラ
「何これ? スパムメール?」
メッセージを開くと勝手に僕のことを登録しただとか出てきた。怖いんだけど。後になってから「百万円支払え。払えなければフォルダの画像をばら撒く」とか脅迫されそうだ。
だけど……………ISって世界最高の技術の結晶だよね? スパムメールなんて入る余地あるか? もしかしたらISの専用機持ちは自動的に登録されるシステムなんかな?
(覗いてみるか。やることないし)
少しでも不穏な気配を感じたら速攻で閉じて織斑先生に見せよう。このポンコツは少し惜しいが変な登録されるのも嫌だし最悪クーリングオフも頼もうかな。ああ、でもそうしたら貸与品をおかしくしたって怒られるかな? 嫌だなあ織斑先生にぶん殴られるの。僕はまだ一度も殴られた事ないけど、織斑君とか篠ノ之さんとかほぼ毎日殴られている組はものすごく痛そうにしているし。
『本システム、オールマインドは専用ISを有するパイロットに向けた支援プログラムです。豊富なデータを基に提案型AIが最適な訓練カリキュラムや機体構成の提案を致します。また、ISに搭載された感覚同期機能を用い仮想空間で現実さながらの操縦シミュレーションを行う事ができます』
なにそれ凄い。ISってそんな事もできるの? 未来って思っていたより早く訪れるものなんだなあ。しかし仮想空間かあ。どんな技術なんだろ? それ系の本とか読もうかな。
『また、基本的な操縦に関する教習も行っております。専用機を有しているパイロットならば必要性は低いでしょうが、教習項目を一つ達成するごとにISのパーツが貸与されます。基本のおさらいとしてご活用ください』
あ、これ凄い助かるかも。僕は基本が何もできていないからちゃんと勉強できるのはありがたいな。と言うか、教習受けるだけでISパーツ貸して貰えるって破格すぎない? 基本的に最新技術の塊だから物凄い高いはずなのに。僕のBASHOに搭載されているSMGエツジンは元々軍用MTの武装だったのをIS用に設計し直した代物で、純粋なIS用の武器と比べては安価だがそれでも一丁数百万円くらいするらしいのに。
『更にISのカスタマイズ、カラーリングの変更、名称変更やエンブレムの登録手続きなど、利用者のこだわりを反映させることも可能です』
オプションも充実している感じかな。
『それでは、利用規約をご参照し、同意の上本登録を完了してください。完了した後、貴方の専用機にアプリがインストールされます』
「……………」
悩む。死ぬほど悩む。IS学園は世界最先端の教育制度が整っている筈だが、やはり手取り足取りと言うわけにはいかない。僕以上に勉強熱心な人がわんさか集まっている場所なので、先生方に質問や教導を頼めないタイミングが多々あるし、アリーナなんかの設備もいつでも使えると言うわけではない。自習もしているが正直伸び悩んでいる。
そういった、若干詰みかけている僕からしたら支援システムは魅力的だ。仮想空間に性能は未知数だがパーツの貸与、何より考えるのが面倒になり始めた僕にはカリキュラムの提案はありがたい。
登録しようかなぁ、でも一回先生や他の専用機持ちの人たちに相談した方がいいかなぁ。
「…………取り敢えず、一旦保留で。ヘイCOM。オールマインドのメールをブックマークしておいて」
『了解』
今日は寝よう。久しぶりに心のざわつきが小さい気がするし、久しぶりにゆっくり眠れそうだ。織斑先生にも課題だって言われたし………。
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「織斑先生、質問があるんですけどいいですか?」
「松尾か。どうした?」
「昨日、オールマインドっていうISパイロットに向けた支援システムからメールが届いたんですけど、これって登録しても大丈夫ですかね?」
「オールマインドか。複数のIS関連の企業が合同で開発したシステムだな。腕を磨きたいなら登録して損はないだろう。問題ない」
「ありがとうございます」
「しっかり励めよ、思春期」
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「ヘイCOM。ブックマークしてあるオールマインドのメッセージを開いて」
『了解』
「ええと、規約は………………………………………………………………………………………………………………………………特に問題なさそうだね。先生からお墨付きも貰ったし、登録っと」
『登録完了。ようこそ、松尾ムネフサ。オールマインドは貴方を心より歓迎いたします。全てを我々にお任せください』
「頼もしいなあ」
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◆
保健室で一夜を明かした僕は保健医さんにお礼をして寮の部屋に戻った。そういえば今日は休みだったな。せっかく登録したし、早速オールマインドを利用してみようかな。
豪華なホテルみたいな一室。大きなベッドが二つあるが僕は一人で使っている。生徒数が奇数だから誰かが一人になるのは仕方がないとは思うが、何故僕なんだ? 同性同士、僕と一夏君が同室になるのが普通だと思うのだが………。その一夏君は篠ノ之さんと同室らしい。あの人、美人だけどちょっと怖いんだよなぁ…………竹刀を振り上げて一夏君を追いかけ回しているのを見たことがあるし。
(そうだ、オルコットさんと一夏君たちに謝らないと……)
理不尽に怒鳴りつけて気分を害ちゃったしなあ。このまま放置なんて人間的にあり得ないから謝らないと。
「ヘイCOM。一夏君にメッセージお願い」
『了解。形式を選択し、内容を入力してください』
「ええーと……チャット形式。一夏君、おはよう。今大丈夫かな? 送信」
今は午前10時。起きてはいるだろうが、反応してくれるだろうか? なんて少しドキドキする寸前で既読が付き、爆速でコールが鳴った。
「わ、た、た、た。COM、通話開始」
『了解。織斑一夏へ繋ぎます。ーーームネフサか!? 身体は大丈夫か!? 気分はどうだ!?』
出るなり大声が響いた。耳がキーンとしたのでちょっとボリュームを下げてもらう。
「い、一夏君声が大きいよ! あー、えーと、うん。体調は、もう大丈夫。昨日はぐっすり眠れたからね。あと、ありがとう。君が運んでくれたんだって? それと…………、ごめん。心配かけて」
『はぁ〜〜〜〜〜。いや良かったぜ本当に。倒れているムネフサを見つけた時は本当に肝が冷えたからな…………。まあ、元気そうでなによりだよ』
胸を撫で下ろしているだろう声。
「うん。それで…………ちょっと会って話したいんだけど、いいかな? それと…………できればオルコットさんを連れてきてくれないかな?」
一夏君とオルコットさんは決闘騒動の後から何故か急に仲が良くなっている。と、言うよりはオルコットさんが一夏君を追いかけているように見えるかな? まあそんな感じだからもしかしたらアドレスを交換しているかもしれないし、そうならアポを取ってもらえるかも。
『セシリアを? ああ、わかった。あいつの都合を聞いて、良さそうなら連れて行くよ』
想定通りだ。
「ありがとう。フロントの談話スペースで待っているのでいいかな?」
『わかった。そこで待っていてくれ』
「うん、ありがとう。それじゃあ後でね」
『ああ、後でな。ーーー通話終了』
僕は軽く身支度をして部屋を出る。緊張するなぁ、一夏君は怒ってなさそうだったけどオルコットさんはわからない。もしかしたら僕に謝ってきた日以前の態度に戻ってしまうかもしれない。
「ふぁ〜〜〜ちょっと寝過ぎちゃった。って、松尾君!?」
「わあーっ!?」
フロントに向かう途中、ある一室の扉が開いたかと思うとめちゃくちゃラフな、殆ど下着みたいな格好の鷹月さんが出てきて叫んでしまった。
「ご、ごめんなさい!?」
クルッと背を向けて見ないようにしたのだが、肩をガシッと掴まれてクルッと回されて対面させられた。
「松尾君大丈夫!? 倒れたって聞いて皆んな心配したんだよ!? 怪我はない!? 熱は!? この指何本に見える!?」
矢継ぎ早に言葉をぶつけてくる鷹月さん。か、顔が近いし、た、谷間…………いやいかん! 紳士的ではない!
「だ、大丈夫! 大丈夫だから! ま、前隠して!」
「え? あ、ご、ごめんね!」
バッと手を離した鷹月さんは一瞬で部屋に戻る。そして十秒くらい経ってからまた出てきた。上にパーカーを着ている。
「あの…………松尾君? その、本当に大丈夫?」
「あ、はい。保健室の先生から大丈夫だって言ってもらえました。ご心配をおかけしました」
安心するようにと伝えて鷹月さんはホッとしたのだが、その後にモジモジし始めた。何か言いたげで言い出せない感じで…………ああ。
「あの、昨日は突然叫んですいませんでした」
「えっ!? あ、ああ。ちょっとビックリしたけど、松尾君、最近ずっと思い詰めた顔していたから、多分疲れていたんだよね?」
「あ、はい。まあ、保健医さんからも、過労と寝不足って言われました」
「やっぱり! もう、頑張るのはいいけどしっかり休まないとダメだぞ?」
鷹月さんは人差し指を立てて言ってきた。怒られてしまった。
「はい。以後気をつけます」
「素直でよろしい! それで…………この後、ちょっとどうかな? 松尾君と一度ゆっくり話してみたかったんだよね」
お、女の子からのお誘い。
「えーと、すいません。一夏君と約束をしていて…………それが終わってからでもいいですか?」
「う、うん! 勿論! そ、それじゃあ終わったら連絡ちょうだい! またね!」
鷹月さんは部屋に戻っていった。
(ちょっと話しすぎたかな? 一夏君待たせていなければいいんだけど)
僕は足早にフロントへ向かう。