IS学園でポンコツとゆく   作:ドニムルラ

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余談
今回までのムネフサと同じ構成でアリーナをやったところ、リング・フレディまではノーデスでクリアできて、以降は六文銭で苦戦しつつもオキーフまでは倒せるようになりました。


白き天使を打て

 凰さん襲来から一日おいた放課後。織斑先生から一夏君と一緒に呼び出された僕はアリーナの真ん中に立っていた。

「松尾。まず飛んでみろ」

「は、ハイ!」

 名前を呼ばれるの自然と背筋が伸びる。この人の前に立つといつも緊張する。主にいつぶん殴られるか怖いって感じだが。

 

「BASHO!」

 胸の前で左手を握りしめ、腕輪形態で待機しているBASHOを起動する。ズシーン! 相変わらず重々しい。

「それがムネフサのISかぁ。なんか、古めかしい?」

「ほっといてくれ」

 実際骨董品レベルだが直視させられるのは辛い。空を見上げてブースターを噴かす。

「ん? 待て、松尾」

 飛ぼうとしたところで織斑先生に止められ、ブースターを切る。何だろう?

「BASHOの右手武装はSMG、MA-E-210エツジンだったと記憶しているが、それはハンドガン………ベイラム製HG-003コキレットか? 何故武装が変わっている?」

 あれ? オールマインドから連絡とか入っていないのかな?

「あの、手続きの記録はありませんか?」

 そう尋ねると織斑先生は小脇に抱えていたパッドを操作して目を動かす。

「少し待て………たしかに追加貸与品の記録があるな。先技め、私を通さないとはいい度胸だな」

 ひえっ。こ、怖い。何か不味いことをしてしまったのだろうか? オールマインド、ちゃんと織斑先生にも話通してよ。

「確認した。手続き上の問題はないが、今度から新しい貸与品がある場合は私にも報告しろ。いいな?」

「は、ハヒィッ!」

 殴られずには済んだらしいが内申点は下がったか? 報告・連絡・相談、きちんとしよう。

「それと、過剰に私を怖がるな。うっとうしい」

「ハイィッ!」

 こ、怖がるなと言われても無理だよ。優しく笑いかけながら抱きしめてくれるとかないと無理だよ。いや、織斑先生の場合、そっちの方が怖いかもしれないな。

 

 ISを起動した後、ウォーミングアップとして空中にランダムに浮いた輪っかの中を潜る飛行訓練をした。相変わらずクイックブーストの教習項目はクリアできていないが、王先輩との訓練とかトレーニングモードとかで飛行訓練はたくさんしているからわりかし簡単にクリアできた。

 

「タイムは21秒6か。旧式のISを纏っているにしては悪くない」

「凄え……ムネフサ、本当に努力していたんだな。今ので確信できたよ」

 ほ、褒められたのかな? 胸がドキドキしてきた。これが成長の喜びだろうか。

 

「松尾。お前はここ一ヶ月近く、脇目も振らず突っ走っていたな」

「ハイ!」

 背筋を伸ばす。

「その成果を見せてもらおうか。織斑、白式を展開して松尾と対戦しろ」

「わかったよ千冬ねえ」

 

 ガツン!

 

 先生の鉄拳制裁が一夏君に叩き込まれる。こ、怖あ。

「わかりました、織斑先生。だ。いつになったら覚える」

「いてて……わ、わかりました、織斑先生」

 頭を撫でながら一夏君は前に出て来て右手首の腕輪を左手で掴み、目を閉じる。

「来い! 白式!」

 瞬間、一夏君は白い光に包まれ、白と青で天使を思わせるヒロイックなデザインのISを纏っていた。

 クソう、かっこいい。何で僕はリベット打ちの箱で一夏君は天使なんだ。不公平を感じる。世代もBASHOが第一世代で白式は第三世代だったか? 性能面でも差がありそうだ。

 

「よし。お前たち、位置につけ。ブザーが鳴ったら戦闘を始めろ」

 織斑先生が手の中のパッドを操作するとアリーナの真ん中から50メートル離れた対称位置に二つのホログラフィーの輪っかが出現した。あそこが位置か。飛んで片方の輪っかの中に立つ。一夏君も反対の輪っかの中に入った。

 

「何だかんだ、ムネフサと対戦するのは初めてだったな」

「全力で来いっ 一夏君っ」

「そのつもりさ」

 一夏君が好戦的な笑顔を浮かべた次の瞬間、アリーナのモニターに三つの信号機が映し出され、音と共に赤い光が付く。

 

 プーッ プーッ プガーッ!

 

 信号機が青くなってブザーが鳴り響いた瞬間、僕はロックオンして発射しながら地面を蹴ってブーストを噴かせる。一夏君に突っ込む。一夏君も同じタイミングで突っ込んできた。

「うおおおおおお!」

 一夏君の手には近接レーザーブレードが一本。オルコットさんとの試合映像を観たけど、あれしか使ってなかったな。射撃武器がないのかな? そこが付け入る隙と見た。

 コキレットの銃口を一夏君に向けてトリガーを引く。スラッグ弾めいた大粒の弾丸が火炎を引き連れながら吐き出されて一夏君に飛んでいく。

 

「うわっ!?」

 ファーストヒットを取った。続けて二発目、三発目を発射する。ピンポン玉くらいでっかい弾丸なんだ。衝撃でのけぞらせてやる。

「くっ! うっ! うおおおお!」

 だが一夏君は尚も突っ込んできた。引いたらジリピンだと考えたのだろうか。このままだと斬られてしまうが問題はない。

「っ! うわっ!?」

 最初にこっそり撃っていた垂直ミサイルが一夏君に降り注いだ。時間差攻撃でタイミングを悟らせないようにしたつもりだけど、勘がいいな。初段は避けられた。あまり誘導性能は高くないので一夏君が右へ左へと蛇行しながら後退し、回避するとことごとく地面で爆散する。

 

「とうっ!」

 地面を蹴って空へ飛び、上空から一夏君へ向けてリトル・ジェムを構えトリガーを引く。轟音を響かせながら飛び出した砲弾は一夏君の辺りに飛んでいく。

「ぐっ! ガァッ!」

 飛びのこうとした一夏君だが地面に当たった砲弾の爆発に少しは巻き込まれたようだ。煙を纏いながら高度を上げて来た。

 リトル・ジェムは反動が大きいがFCSの性能が良くなったおかげで照準のズレがかなり改善されている気がする。悪くないぞ。

 

「このまま畳み掛ける!」

 再び一夏君へ向けて突撃。照準が改善されたと言ってもやはりBASHOの腕は射撃が苦手だ。武器の性能を活かすには近接戦しかない。

「くっ!」

 一夏君は逃げて逃げて逃げ回る。彼を追いかけてアリーナの空を縦横無尽に飛び回る。たが白式のスピードはかなり早く、ブースターを全開で噴かせてもなかなか追いつけない。それどころか距離を離されていく。追いかけながらコキレットやミサイルを撃っても中々当たらない。

 

「ちぃッ!」

 コキレットが弾切れになったので途中でブレーキをかける。リロードタイム。それにこんなに速度差があるなら追いかけたところで意味がないしね。

「そこだ!」

 一夏君がUターンして突撃してくる。だがこの距離ならリロードの方が早いぞ。しかもリトル・ジェムを牽制のために撃ってやる。

 

「うおおおおお!」

「え?」

 トリガーを引く直前。一瞬、一瞬だった。瞬きの間と言うか、それほどの刹那に一夏君が目の前に現れた。

「胴おおおおお!」

「ガァッ!?」

 そして胴体を切り裂かれた。シールドエネルギーが………嘘でしょ、半分以下に一気に消し飛んだぞ!? オルコットさんのレーザーライフル以上の威力じゃないか! なんだあのブレード!?

 いや、それよりもあの急加速だ。教科書で予習して見た気がするが、おそらくイグニッションブースト。エネルギーを一度放出して背中に収束・圧縮してから一気に解放し、爆発的に加速する技だ。こんな高等技能を覚えているとは。

 

「メエエエェェェェン!」

 怯んでいるところに頭に向けて振り下ろされるブレード。これを食らったら確実にやられる。

「くっ!」

 あんまりやりたくないが、この際は仕方がない。僕はクイックブーストで右方向へ飛んだ。

「なっ!?」

 だが若干間に合わずリトル・ジェムが切り裂かれた。メイン火力を失ったがやられるのは回避した。

「うぐっ」

 ちょっとクラッとするがまだ大丈夫だ。僕は更にクイックブーストを二回続けて行い、一夏君の背後へ一瞬で回る。き、気持ち悪くなったが戦わないと。ガラ空きの背中に使うのはコキレット? いや、違う。

 

「背中ァァァアアアア!」

 渾身の左パンチだ。オールマインドいわくBASHOの腕は近接攻撃の適性が高いらしいからこれでも十分な威力になるはずだ。

「ぐあああっ!」

 よし、シールドエネルギーの消費具合はわからんけど大きくのけぞった。そこへ向けてコキレットをありったけぶち込む。この距離なら目が回っていても当たるぞ。

 

「くっ」

 だが仕留めきれずに弾切れだ。リロードのため距離を…………いや、殴る! そのためのBASHO腕だ。そう確信できる手応えがあった。

「止めだ!」

 拳を振り上げ、ブースターを噴かせて突撃する。

 

「うっ………ッ! ルアァッ!」

 一夏君が身体を捻るようにブレードを振って来た。

 

「ぐえ」

 ああ、クソ。油断した。

 

 ◆

 

「さて、反省会だ」

 日もすっかり落ちたアリーナの真ん中。ライトに照らされる中で僕はガタガタ震えながら正座していた。隣の一夏君からの心配そうな視線を感じるが、今はそれどころではない。

 ISスーツが薄着なせいで寒いのもそうだが織斑先生にめちゃくちゃ怒られそうだから身体中、細胞単位で震えている。

「松尾。何故負けたかわかるか?」

「さ、最後の最後で油断したからです……」

「その通りだバカ者」

 厳しい叱責に肩がビクンッと跳ね上がる。

「弾切れになった時点で後ろに引いてリロードしていればお前が勝っていた。武器の特性を理解し、ミサイルで布石を張り、リロードのデッドタイムを潰すように立ち回りをしていたのは見事だ。褒めるべきではないが、無茶な訓練の成果が出たと言うことだろう。だが功を焦るのが現状の弱点だ。身体や技術だけでなく精神も鍛えろ」

「は、ハイ!」

 精神を鍛えるってどうすればいいんだ? 滝行でもすればいいのか? IS学園に滝なんてあったかなぁ。或いは座禅か? 織斑先生に監視してもらって………いやダメだ。喝を入れられるどころか肩を粉砕されかねない。

 

「さて、織斑」

「は、はい」

 続いて矛先は一夏君へ。

「結果的に勝ちはしたが褒められたものではない。ISのスペックは圧倒的にお前が優勢だったが技術力では遥かに劣っていた。ラッキーヒットがなければ確実に負けていた。イグニッションブーストで松尾の虚をついて攻撃を当てたのは良かったがそれだけだ。今度は虚を突き返された。基礎的な技術と咄嗟の判断力を高めろ」

「はい……」

 自分の弟にも手厳しいなぁ先生。いや、弟だからこそか? 個別指導も自らやっているし、これも一つの愛の形なんだろうか。でも一夏君ちょっと落ち込みがちだからたまには褒めてあげてほしい。

 

「さて、今日の指導はここまでだ。内容を2000字程度のレポートにまとめ、明日の昼までに提出しろ。遅れたり、すっぽかしたりしたら…………」

「「絶対に期限内に提出します」」

 本当に怖いこの人。

 

「よし、寮に戻れ。と、その前に松尾」

「ハイ」

「お前は残れ。少し話がある」

 血の気が引く。一体何をされるんだ? そんなに怒られるようなミスをしてしまったんだろうか。一夏君は背中を丸めて小さくなりながらサササッと退散した。た、助けてよぉ。

「さっきも言ったが、過剰に私を怖がるな。それでは教えた事も身に付かなくなる」

「ぜ、善処します」

 優しい一面があるのは知っているんだがなぁ。無茶して倒れた僕が起きるまでそばに居てくれたし、あの微笑みは思い出すとちょっとドキドキするし。

「ハァ……。まあ、今すぐにとは言わん。徐々にでも慣れろ。それよりも、だ」

 織斑先生はパッドを操作してさっきの対戦の様子を見せてくる。僕が一夏君の反撃を食らってクイックブーストで逃げるところだ。

 

「代表候補生は別として、一般生徒でこの技能(クイックブースト)は二年になってから指導されるものだ。どこで覚えた?」

「え?」

 織斑先生、オールマインドの事知っているはずだよね? その中の教習項目の最初の方なのに思いつかないの?

「と、そう言えば、王と仲が良かったんだったな。成る程、あいつ経由か……」

「えっと……」

「まだ仕上がっていない身体でこれを使うのは負荷がかかる。咄嗟の事だからやるなとは言わんが、自分の身体とよく相談しろよ」

 なんだか王先輩の手柄になっているな。まあいいや。別に訂正するほどでもないだろう。

 

「それと、渡したい物がある」

 ささっとパッドを操作する先生。するとアリーナのドックから何かが飛び出て来た。長方形の箱に小さいジェットエンジンがついたみたいな変な機械だ。ISではない。

 箱は僕たちの近くまで来ると垂直に立ち上がりながらジェットを地面に向け、ゆっくりと着地する。近くで見ると大きいな。黒い冷蔵庫みたいだ。

「最初にオルコットとの対戦、そして先の織斑との対戦を見て確信した。お前は近接戦に向いている。射撃が苦手だと言って射撃してくる相手に接近しようとする。織斑も近接攻撃で倒そうとしたな」

 更にパッドを操作すると冷蔵庫の真ん中が割れて左右に開く。観音開き。

「個人の苦手を克服させ、適性を伸ばす事が教師の仕事だ」

 中から出て来たのは、一見すると何に使うのか分からない機械だった。ISのパーツかな? コンセントタップに円柱の缶がくっついたような何かだ。

 

「これはお前の成長に必要な物。なんとか引っ張ってこられた」

 この謎の機械が必要になるのか?

「ISを展開し、左腕に装着しろ」

 戦ったり飛んだり出来るほどでないにしろ動かせはする。言われるがままにBASHOを展開し、その機械を左腕にくっつけた。

 

「あ!」

 

 そして、ディスプレイに表示された情報を見て、僕は感動したのだった。

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