閑話:レミールのドイツアンチ日記と大漁のマイハーク港と割と大切なお話
×月〇日α曜日
何なんですかあれは!
蛮族の分際で栄えある皇国に泥を付けるとは!
多少、造船技術が優れているからと!
ですが、ルディアスさまは今日も美しい。
醜く慌てる無能をたったの一喝で収められるそのカリスマも!
ルディアスさまは神がこの世界に造りたもうた……
(以下ルディアス賛歌が続く)
□月△日β曜日
何と、嘆かわしいことにルディアスさまがあの蛮族どもに騙されています!
こんなことがあっていいのでしょうか!
神に祝福されしルディアスさまが……
身の程知らずの蛮族め!
ルディアスさま、ご安心下さい今すぐ私めがその宝石とも見間違うような美しいお目を覚ましてみせます!
◇月▽日γ曜日
対独使節団の一人として選ばれました!
ルディアスさま、もうご安心です!
このレミールめが見事
蛮族の本拠地たるドイツのその実態を白日のもとに曝け出して見せましょう。
そして、ルディアスさまの宝石とも見間違うような美しいお目を覚まして……
私とルディアスさまは永遠の誓を……
あ~あ、だめですルディアスさま
いくらルディアスさまでも最後までは……
そ、そのまずは口付けから……
(以下レミールの妄想が続く)
∞月ω日δ曜日
蛮族の操る船
一体どのような貧相な船が来るか戦々恐々していましたが思ったよりも
い、いえ、思ったよりもほんの、ほんの少しマシな物が来ましたね
た、確かに⤴(声が上ずる)
中は明るく⤴(声が上ずる)
快適(普通に豪華)ですけど⤴(声が上ずる)
ま、まあ、皇城に比べたら犬小屋と一緒ですわね!
そ、それよりもです!
ドイツの蛮族がようやくその本性を現しました!
そう、彼らは何と私のような列強の貴人と文明圏外の蛮族を同じ船に押し込んだのです!
こんなこと許されるわけがありません!
第三文明圏及び周辺国の共同対独使節団などと一括りにしやがって……(# ゚Д゚)
∀月ℵ日ε曜日
お、思ったよりも発展しているようですね⤴(声が上ずる)
ま、まあ、空気が汚いので皇国に全く敵わないのは明白ですが(謎理論)
それに、ドイツとやらでは大陸共通語を扱える人が2割ほどしかいないとは( *´艸`)プフフ
程度が知れますね
それに今日見た東パリとやらも確かに美しくはありましたが何でも元々は別の国の領土というのですから……
やはり皇国は文化にしろ何にしろドイツに勝っているのです!
∑月∬日ζ曜日
ああああああああああ
どうんっているのでかああああああああああ
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
くぁwせdrftgyふじこlp;@:
\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/
ドイツなどという国は■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■
…………
(以下ドイツへの罵倒が続く)
パタッ
ルディアスは目じりを揉みながら手に持つ本を閉じた。
外からは愛しき臣民たちの喧騒が聞こえる。
現在、ルディアスが感じている強烈な頭痛の原因が外の喧騒でないのは明らかだろう。
ルディアスの机の前に立っている者が居る。
皇帝の相談役、つまりは宰相の男、ルパーサだ。
「ルディアス陛下、お疲れのようですね。もうご就寝なさっては」
ルパーサは喧騒と闇に包まれた窓の外を見る。
「はあ……、こんな物を見た後ではいつ夜這いを掛けられるか、怖くて眠れんは」
「た、確かにレミールさまはその~、ど、独特な性格をしていますが……見た目は非常に麗しいですよ」
「はあ……」
特大なため息を付きながら頭を押さえるルディアス、普段の激務も相まってその顔は実年齢以上に老けて見えた。
「こんな物、万が一にもドイツに知られてみろ。国際問題に一直線だ……いや、それ以上にレミールが何かやらかしかねん」
「では、そろそろ正式に召し上げられては」
「そうだな、ルパーサさっさとあいつとの婚約の手続きをしてくれ。後宮に突っ込んでおけばどうにかなることはないだろう」
「おお、ついにご決断されたのですねルディアス陛下。性教育以外では女性を抱いてこなかった陛下が……。このルパーサ感激です」
ルパーサはハンカチで涙を拭いながら言った。
「それにしても、ここまでくると病気だな。また出来たばかりというのに国家保安局の連中もよく働く」
国家保安局、国家戦略局が独断でロウリア王国を支援したことからその後進の組織として組織された。
主任務は防諜や反体制派の監視に暗殺、諸組織の監視と不正の監視など国内の引き締めを行っている。そのため、対外諜報が主任務の国家戦略局はその都合上、生き残ってはいる。
そんな国家保安局、生まれたての組織にも関わらず、すでにあらゆる活躍をしている。
このレミールの日記もその一つだ。
ドイツ視察から帰ってきたレミールの様子がほんの少し変わったのを察知し、ガサ入れをして出てきたのが今回の日記だ。
「こちらの日記、写しですがどうしますか?」
「燃やしておけ」
「了解しました」
はあ……
ルディアスがまた大きなため息をついた。
ルディアスと結ばれることを夢見ていたレミール。
果たしてこのような形で結ばれることを望んたかは定かではないが、結果よければ全てよし、という言葉があるようにレミールもきっと喜ぶだろう。
――――――
クワトイネ公国 マイハーク
ロウリア王国という国が過去の国家になって数か月の月日が流れた。
クワトイネ公国最大の都市であり、国際都市でもあるマイハークではロウリアの話をする者はもう誰もいなかった。
もっぱら最近話題になっていることは、クワトイネ最大の友好国ドイツが先進11か国会議に出ることが決まったという物であり、南方世界からドイツまでの中継地点ともいえる立地にあるマイハーク、そこの商人にとっては大きな商機であった。
しかし、それは酒場の酔っ払いと商人の話であり、その酒場に卸す商品を釣っている漁師にとっては興味のない話であった。
彼ら漁師が話題にしたことは最近の異常な漁獲高だった。
「今日も大量でしたね親父」
「ああ、餌をつけなくても魚が食いつくんだから驚きだ。これなら態々、ドイツからクソ高い最新のボートを買わなくてもよかったな」
「冗談よしてくださいよ、このボートに慣れちまった今じゃあ、前までのオンボロには乗りたくないですよ」
「はは、違ぇね」
クワトイネ最大の都市、ロデニウス大陸最大の貿易都市にして国際都市、このような二つ名を持つマイハークであるが、クワトイネ最大の漁港、という二つ名もあった。
マイハークはその立地上、北の冷たい海流と南の温かい海流がぶつかり合う場所である。そのため種類豊富な魚が獲れる。
また、海流に乗ってきたプランクトンが集まり、それにつられた小魚が集まり、さらにそれにつられた大型の魚が集まるなど、日本で言う東北の太平洋側沿岸のような漁業のホットスポットであった。
「それはいいんだが、なぜか南の魚が多いな」
「大きさも過去一大きいですよ」
「ああ、けど。南のより北の魚の方が油の乗りが良いからな。できれば北の魚に変わって欲しいもんだ」
「おおーい、ドイツのおやっさん」
港の突堤で黄昏て話ていた二人の所に誰かが走ってきた。
「おお、酒屋のところの使い走りじゃないか。にしても、その”ドイツの親父”ってのはなんだ」
「知らんのか、おやっさん。いくらマイハークでもドイツ製のクソ高ボートを買ってるのはおやっさんしかいねぇから皆そう呼んでるよ。てか、そうじゃねぇ、おやっさんから頼まれてた調べものしてきたで」
「親父、調べものって何なんだ」
「いきなりこんな魚が獲れるようになっちまって少し怖くなっちまったから、色んな話を聞ける酒場のこいつに頼んだのよ。で、どうだったんだ」
走ってきた酒屋の男は呼吸を整えると話出した。
「ああ、何でもドイツが数か月前にロウリア艦隊を吹き飛ばしたから、そのせいじゃないかだと」
「そんなわけか、酒屋の、ありがとな」
「こんな何ともねぇよ、また何かあったら聞けよな」
「ああ」
酒屋の男は走り去っていった。
マイハーク港にて毎日のように記録を塗り変える異常な漁獲高、その理由を彼らはロウリア艦隊の残骸と結論づけたが、それ以外にも一つある。
ドイツによるラウリーア地域の大量毒殺。
これにより死亡した人数は2600万人、衛生面からこれら死体はしっかりと処分しなくてはならない。
内陸部などの国際的関心の少ない地域は都市をまるごと火葬すればよかったが沿岸部はそうはいかなかった。
燃やしたり海に流したりすれば、遠洋漁業に出ている漁師や海賊から情報が広がってしまう。
そこで、ドイツは死体をロウリア王国時代の木造帆船に積み込み、訓練のついでに砲撃やミサイルで木っ端みじんに吹き飛ばしたのだ。
そんなことをすれば中に詰め込まれている死体も無事なわけがない、船諸共木っ端みじんになった元人間は母なる海に大量の有機物として還元されたのだ。
それら有機物は海流にのり北上、南進してくる海流とぶつかり、そこで魚たちの体を構成する一部となったのだ。
マイハーク、今ここでは人を食べた魚を人が食べるという風刺的な光景が繰り広げられていた。
―――――――
クワトイネ公国 首都クワトイネ
自然と調和した執務室、そこで頭を悩ませる男がいた。
金髪ロングの髪に長く尖った耳を持つ美丈夫。首相のカナタだ。
彼の間の前には冷汗を流している小太りの男が。
その男はクワトイネ公国の外務卿リンスイ。
「外務卿、確かに今回の件は君の管轄に収まっていたことです。しかし、少々踏み込みすぎですかね」
「も、申し訳ありません」
事の発端はラウリーア地域で大規模毒殺が行われてから数週間後。
クワトイネ公国は己の隣に位置するラウリーア地域の情報を欲していた。
それは仮想敵国のロウリア王国が消滅してからもだ。
例えば、敗戦した煽りを受け、何の事前情報もなしに大量の難民がクワトイネ公国に押し寄せて来たら対応のしようがない。
そのため、クワトイネ公国はラウリーア地域の情報を貪欲に求め、そして見てしまった。
都市の広場に積まれた死体、そこに火が放たれ、都市までもを燃やしつくした。
クワトイネ公国においてこれら情報を収集する組織は二つある。
一つが首相が直接動かす暗部。
もう一つが国内外の情報の収集と防諜を担当する外務省情報統括部。
今回、その情報を手にいれたのは後者の組織だ。
この組織はその名の通り、外務省直属の組織である。
そのため、彼らの収集した情報が最初に開示される部外者は外務省のトップにあたる存在、今回でいえば外務卿だ。
その外務卿、リンスイは送られてきたラウリーア地域の情報を見て、気になってしまったのだ。
彼はドイツ大使館に自ら赴き、直接聞いた。
それが今回の一件だ。
「まず、最初に。私は今回の件を知っていました」
「え!?で、では、どうしt……」
「どうして、伝えてくれなかったのか、でしょう。この情報はドイツの諜報機関が私の暗部を通じて渡してきた情報です。果たして何の意味があるのかは分かりません。私は”見るな聞くな触れるな”といっているように感じました」
そこでカナタは話を区切り紅茶を口に含んで渇きを洗い流した。
「いくらドイツといえども、隣国に隠しきるのは無理だと感じたのでしょう。そこで首相の私を使って何とか情報封鎖をしようとした。だからこそ予想外だった。まさか私の暗部を抜けて君の情報局がそれを知るとは」
「あ、あのような非人道的な行為を見逃したのですか!」
「外務卿、君は勘違いしています。私は人類の守護者ではない。私はクワトイネ公国の首相だ。だから、例えロウリア人が何人死のうが知ったことではないのですよ。獅子が一度見逃してくれたのですから。態々、その獅子の尾を踏みに行く必要もないでしょう」
「クッ」
リンスイは唇を噛みしめ、何もできない悔しさに嘆いた。
そんなリンスイをカナタは普段の温和な表情を崩し睨みつけるような眼光で見て、言った。
「外務卿、今回のことは忘れろ。あと、今回の件が書かれている書類は全て処分し、関係者には口止めを」
「わ、わかりました……」
リンスイは頷くことしか出来なかった。
獅子身中の虫は選別を行う。
ルディアス×レミール
朝田×シエリア
日本国召喚で恋愛ゲー作れそう(小並感)
・この世界線の歴史
1941年10月22日、日米開戦
史実よりも2か月早い太平洋戦争が始まった。
この世界の日本は初手奇襲で真珠湾を攻撃せず、それどころか国際儀礼に従って宣戦布告48時間後に港から艦隊が出航した。
昨年から進められていた日米交渉はアメリカ側の無関心さ、そしてハルノートにより破綻した。一応日本もハルノートが提出された後も粘り強く交渉しようとしたが、それよりも先に国民感情が爆発した。
日本は短期的に太平洋の制海権を獲得し、アメリカの反撃の手段を封じることでこの戦争に勝利しようとした。
日本の宣戦布告を受け取ったアメリカは中国にいる軍が干上がるのを防ぐためマリアナ海溝に向け太平洋艦隊を進めた。
当時、そこには試験演習中の大和と他数隻の駆逐艦と軽巡の小規模艦隊がいるのみであった。
誰もが沈みゆく大和を幻視した。
これが大和の伝説の始まりとも知らずに。
to be continued