大ドイツは異世界でも生存圏を作りたい!   作:ちんすこー

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外伝:知り合いの知り合い=赤の他人

中央暦1639年5月12日

 

ドイツが転移した場所から遥か2万km、そこにムーという国がある。

列強第二位の国力を持ち、この世界唯一といってもいい科学立国である。

また、1万2000年前に地球からこの惑星に転移してきた国だ。

かつては、ムー大陸一帯を支配する国家であったが、たび重なる侵略を受け、現在の領土はその半分程に収まっている。

頂点に国王を置く、立憲君主制国家で、資源をクイラなどの外国に頼っているなど、シーパワーの側面が強い国家である。

 

そんなムー。

この国はその歴史から永世中立を掲げており国土防衛に力を入れている。

その一環で建設されているのが通信所だ。

 

ここの役割はその名に通り軍の部隊間の通信をアシストしたり、本部からの命令を通達したりすることである。

さらに、ムーの航空機などには必ず通信機器が設置されており、通信所が艦船、陸上部隊、航空機の管制を行うことで、三軍を統合した三次元的な作戦行動を実現していた。

これによりムーの本土の防衛能力は爆発的に増加したのだ。

 

そこで巨大な電波が観測された。

 

「……!?なんだこれは!」

 

電波受信器を眺めていた観測員が驚く声を上げる。

 

「どうした!?」

 

すぐさま上司は観測員に聞く。

 

「はい、異常な電波を発見しました」

 

「見せてみろ……こ、これは!」

 

そこには、針が振り切れた受信機があった。

 

「繰り返し送られているようです」

 

「そうか、わかった。貸してみろ」

 

上司は観測員にヘッドホンを貰い、その通信の内容を聞く。

 

『k、り返す、こちら大ドイツ国対ムー外交団である。現在貴国の沖合に停泊中、受け入れを求む。繰り返す……』

 

ムーではありえない程の電波だったからか、異常にはっきりと聞こえた。

 

「すぐに、司令部に通すぞ!」

 

上司の判断は早かった、自分の手には余ると考え、ずぐに司令部に伝えることにしたのだ。

 

このような通信はムーの海岸部にあるすべての通信所観測され、その情報は司令部へと送られた。

只事でないと考えた司令部は政府に情報を伝え、政府は大ドイツ国対ムー外交団の受け入れを決定した。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

薄暗い部屋の中、一人の男が頭を抱えていた。

 

「か、勝てない。勝てる像が見えない……」

 

彼の名前はマイラス、ムー国の技術士官である。

彼の手に握られているのは大和型戦艦に酷似した戦艦のモノクロ写真だ。

 

「グレートアトラスター戦艦……少なくとも主砲は40cmはある、しかも長砲身だ。我が国最新の艦であるラ・カサミでもアウトレンジの攻撃で手も足も出ないだろう。装甲もそれに耐えられるように作られているはずだ……どうすればいいんだ」

 

マイラスがもう一枚の写真を取り出す。

 

「極めつけにはこれだ」

 

恐らくはエストシラントで撮ったと思われる、ドイツのフリングホルニ級戦艦のモノクロ写真だ。

 

「350mに迫る全長、40cmは間違いなく超えているだろう砲、グレートアトラスターよりも長砲身だから、射程もそれ以上か……しかし、見たことのない装備が多いな……」

 

完全に自分の世界に入り込んだマイラスは一人、ブツブツとつぶやく。

 

それから幾ばくかして、扉をただく音が聞こえ、マイラスの思考終わった。

 

「失礼するよ」

 

入ってきたのは上にはカジュアルなセーターを、下にはジーンズを履いた*1、初老の男二人だ。

 

「どうぞ」

 

「どうも、私たちは外務省の者だ、君がマイラス君かな」

 

「はい、ムー統括軍所属情報通信部情報分析課技術士官マイラス特務中尉です」

 

「そんなに、緊張しなくていい、今回は『ムー随一の技術士官』と呼ばれる君に見てほしいものがあってね」

 

マイラスは、はて?何かあったか、と疑問符を浮かべた。

 

「マイラス君、大ドイツ国を聞いたことはあるかね?」

 

「はい、ちょうど先程までかの国の兵器を調べていました」

 

それを聞くと外務省から来た初老の男たちは笑顔を作った。

 

「なら、ちょうどいい。先ほど、そのドイツから外交団が来たんだ。ただ来たならそれでいい。しかし、彼らは飛行場の使用許可を要請してきてね、最初はワイバーンで来るなど何て現場主義な国だと感心したものだが、彼らが乗ってきたのは飛行機械だったのだよ」

 

「え!?」

 

マイラスは驚いてみせたが、その心の内では静かに納得していた。あれほどの戦艦を作れる国が飛行機械を作れない道理などない、と。

 

「そこで、君に彼らの技術レベルを測るとともに我が国の技術的優位を見せつけてほしい。いいかな?」

 

「はい、任せてください!」

 

マイラスは意気揚々と頷くと電光石火が如く速度で外務省の男たちを置いて、部屋の外に出て行ってしまった。

残された男たちはと言うと

 

「彼に場所を伝えていない気がするのだが、大丈夫か?」

 

「きっと、誰か案内するはずだ」

 

「本当に彼で大丈夫か?」

 

「俺に聞くな」

 

二人は大きくため息を付いた。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

ムー国 アイナンク空軍基地

 

アスファルトで塗装されただけの飛行場。そこで、マイラスは眼前にある飛行機械を穴が開く程見つめていた。

 

「これは……プロペラが地面と水平に二つ取り付けられている。垂直離陸を可能にするためか?よくみると可動部がある、この二つのプロペラを前に倒すことで前進するのか!とんでもない技術力だ!君、これはどれほどの速度が出ていたのかね?」

 

マイラスが興奮の収まらない様子で聞くのは、ドイツの外交団が乗ってきた飛行機械をこの飛行場まで誘導してきた飛行士だ。

 

「目算で600は出ていたかと、合流してからはこちらに合わせて300程度で飛んでました」

 

パイロットは悔しそうに、けれどもマイラス程ではないが興奮した様子で語った。

 

「すばらしい!ミリシアルの天の浮舟以上の速度じゃないか!やはり間違っていなかった。化学も魔法に勝てるのだ!」

 

興奮の収まらない様子のマイラス、彼の前に鎮座するものはドイツのシェルバ社が開発製造したC‐415スクレッパー(運び屋)である。

見た目は史実世界のV‐280バローとV‐22オスプレイを足して二で割ったような外見をしている。

この機は前世界で初めて実用的な消音プロペラを搭載しており、近くにいてもほとんど音がしない。さらに、ステルス性能も恐ろしく高く、この機に光学迷彩を搭載したらこの世界ではほとんど発見されることはないだろう。

最高速度900km、巡航高度780kmの高速で人員を運ぶことができ前世界ではドイツの電撃戦ドクトリンの中核の一つを担っていた兵器だ。

 

ムーでは設計図を貰っても間違いなく製造不可能な本機、マイラスはそれにグレートアトラスターやフリングホルニに対して感じた恐怖な不思議と無かった。そこには、童心に帰ったようにはしゃぐ気持ちだけがあった。

マイラスはまだ見ぬドイツという国に心を躍らせながら、ドイツ外交団の待つ控室へ向かった。

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

 

「どうも、私は大ドイツ国外務省対ムー外交団団長ペトルス・アンデルスと申します。本日は貴方にムーのご案内していただけると聞いています」

 

そう言い礼をするのは黒髪をセンターでわけた碧眼の初老の男だ。

マイラスはその隣にいる、茶髪で黒目の若い男に目を向ける。

 

「同じく、大ドイツ国外務省対ムー外交団のミヒャエル・フォン・シュミットです」

 

「今回、案内をさせていただきます。ムー統括軍所属情報通信部情報分析課技術士官マイラス特務中尉です。ところで、あちらの飛行機械のことを伺っても」

 

マイラスたちが現在いるのはドイツの外交団が下りたったアイナンク空軍基地であり、勿論、外交団の乗ってきた航空機もある。

 

「ええ、あちr――

 

「お目が高いですね!」

 

アンデルスが喋ろうとしたところをシュミットが割って入る。

彼は鼻息を荒くして、まるで仲間を見つけたかのように目を輝かせた。

 

「あちらは、我が国の誇るヘリコプターメイカーであるシェルバ社が設計開発製造した機体、C‐415。通称:スクレッパー(運び屋)です。巡航速度は400ノット(780km)、最高速度は490ノット(900km)を誇る垂直離着陸機です」

 

「ほう!垂直離着陸!興味深い」

 

「そうでしょう!けど、この機体のもっともすごい所はそこじゃないんですよ、s―――

 

「ゴホンッ。シュミット君、話が進みません。そこまでにしてください」

 

そう言われてシュミットは自分の行いを思い返し赤面した。

 

「も、申し訳ありません」

 

垂直な見事なお辞儀で謝罪するシュミット。

 

「いえいえ、非常にタメになりました。私も自分の好きなことになると熱くなるタイプなのでよくわかります。では、ご案内いたします」

 

マイラスは二人を連れて一つの倉庫に入った。

 

倉庫に入って三人を出迎えた物は……

 

ムーの主力戦闘機であるマリンであった。

複葉機というドイツでは博物館に行って、ようやく見られるような骨董品であったが、それを間近で見れば十分に人を殺せる、という威圧感を感じられた。

 

「こちらの鉄龍は、ムーで航空機と呼んでいる飛行機械で、我が国最新鋭戦闘機”マリン”です。最大速度は、ワイバーンロードよりも速い時速380km、前部に機銃を付け1人で操縦出来ます。メリットとしては、ワイバーンロードみたいに、ストレスで飛べなくなることや、大量の糞の処理に未稼働時に食料をとらせ続ける必要も事もありません。空戦能力もワイバーンロードを圧倒しています。」

 

そう、説明した後にマイラスは、自分が普段文明圏外国に対してしている説明をそのままドイツの外交団してしまったと気づいた。

やってしまったか、と外交団の方を見ると二人はマリンに釘付けであった。

シュミットは興味深そうに、アンデルスは懐かしそうに見つめる。

 

「ほ~う、複葉機か。今では博物館でも中々見れないぞ」

 

アンデルスは昔を懐かしむように言った。

 

「ドイツにもマリンのような飛行機があるのですか?」

 

「ええ、ある、というより、ありました。私が小さい頃は田舎なら、どこの博物館にでも飾っていたのですが、今では殆ど見れなくなってしまいましてね」

 

「ではドイツはどのような飛行機を使っているのですか」

 

「よく聞いてくれました。ドイツでは複葉機のあとは同じく、レシプロエンジンを積んだ単葉機を。その後は今までのエンジンとは全く違う原理で動くジェットエンジンを搭載したジェット機を使っています。もちろんスクレッパーのようにレシプロの飛行機もありますよ」

 

次はマイラスが興味深そうに頷いた。

 

「そのジェットエンジンとはどうやって動くのですかね」

 

「それについては国交を樹立してからですね。原理の書かれた本であれば我が国の書店でも取り扱っていますから」

 

「それは楽しみです。では、移動しますのでこちらに」

 

マイラスは外交団を連れて再び移動する。

暫くすると、車が現れた。

ドイツの外交団は迷いなく車に乗る。

マイラスは、やはり車を知っているか、と与えられた任務の一つ”ムーの技術的優位を見せつけろ”の達成がほぼ不可能だと諦観の域に入る。

マイラスは何も喋らず淡々と車のエンジンを付けるとアクセルを踏み、移動を始めた。

 

「ドイツにも車はあるのですか」

 

ほぼ確信しているニュアンスを含んで聞く。

 

「はい、ありますよ。基本的に一家に一台以上車を持っていますね。2年前のデータなら約1億8千台の車が走っています」

 

1億8千台!!!

マイラスは叫びそうになった。

 

「そ、そんなに走っていると渋滞などで大変そうですね」

 

「古い市街地などは渋滞がよく起きますが、それ以外なら道が広いので起きません。例えば我が国の首都では片側15車線の道路が交差してますから」

 

マイラスはそろそろ考えるのを止めたくなってきた。

とりあえず、この仕事が終わったら、同僚であると同時に友人でもあるラッサンと遊びに行くことを決意した。

 

アスファルトで塗装された道を進み、とある建物に到着した。

 

「マイラスさん、ここは?」

 

「ここはムーの歴史資料館です」

 

三人はレンガ造りの少し古びた建物に入る。

 

「では、説明を始めさせていただきます。各国の人々には中々信じてもらえませんが、我が国は元々この世界の住民ではありませんでした」

 

「「え!?」」

 

マイラスの突然の核爆弾級の発言に二人とも絶句する。

 

「今から1万2千年前。大陸大転移と呼ばれる現象が起き、ムー大陸はこの世界に転移してきました。これは当時の記録も残っており、我が国では正史としています。そしてこれが転移する前の世界の地図です」

 

マイラスは地球儀を取り出すと外交団に見やすいように机の上に置いた。

二人は見覚えのある物に驚愕する。

 

「な!これは」

 

シュミットが叫んだ。一方のアンデルスも驚きで目を見開いている。

マイラスは今日初めて外交団を驚かせられて喜んでいた。なお、なぜ驚いているかは分からない。

 

「これは……地球!」

 

「え?」

 

「マイラスさん、我が国を説明するのにもっとも良い方法を見つけました。こちらです」

 

アンデルスは地球儀の中でもひときわ大きな大陸の持ち手のような部分を指さして言った。

 

「どういうことですか」

 

「我が国も転移国家なのです。しかも、かなり高い確率でムーと同じ世界から来た。私の指さしているところが我が国のあった場所です。そしてこれが私たちのいた世界の世界地図です」

 

アンデルスはメルカトル図法で書かれている世界地図を見せた。

 

「こんな、事が!まさに歴史的発見ですね。ところであなた方はヤムートという国を知っていますか?」

 

マイラスはそう言いながら地球儀の一角にある小さな列島を指さした。

 

「この国は我が国の友好国だったので……」

 

「ええ、知ってますよ。我が国もその国……今では日本といいますが。そこと国交を持っていました」

 

「おお、それは……」

 

 

その後、ムーの歴史を一通り教え、それが終わると外交団をマイカルにある海軍基地に連れて行った。

 

「アンデルスさん!戦艦ですよ!戦艦!しかも、あのミカサにそっくりの!」

 

ムーの最新鋭戦艦である”ラ・カサミ”それを目にするとシュミットははしゃぎだした。

 

「アンデルス殿、ドイツにも戦艦はあるのですか?」

 

マイラスはフリングホルニのことは伏せて探りを入れてみた。

 

「ええ、最新のになるとフリングホルニ級戦艦が3隻、他にも旧式ではありますが、ゲルマニア級戦艦がモスボール状態で6隻保管されています」

 

「そんなに、ところでそのフリングホルニ級の主砲口径はなんcm何ですか」

 

「52cmです」

 

「52……!?」

 

再び、驚きの余り叫びそうになるマイラス。

 

「先程。シュミット殿がそっくりと言っていましたがドイツにもラ・カサミに似た艦があるのですか?」

 

「いえ、ミカサ級は我が国の艦ではありません。あなた方の友好国であった日本の艦です。130年前、日本がまだ発展途上国の頃、列強が持つ強大な艦隊を打ち破った時の艦隊の旗艦ですよ」

 

「ほう、130年前の戦艦……」

 

130年この重みは大きい、例えば今のムーと130年前のムーを戦わせたらどちらかか勝つかと聞けば誰でも今のムー、と答えるだろう。

技術の進歩は日進月歩であり、それを知っているマイラスはこの瞬間ドイツの技術力を本当の意味で認めた。

 

マイラスからムー政府に提出されたレポートは独ム国交樹立の大きな足掛かりとなり、また、ムーの今までの外交方針を一変させることとなった。

*1
地球であれば、奇妙に思うような恰好であるが、ムーではこれが正装である




・この世界線の歴史

開戦から僅か三日後に始まった海戦。
第一次マリアナ沖海戦

アメリカ側は空母2隻に戦艦5隻を中心とする大艦隊であった。
この時の日本のこの海域にいる大型艦は大和のみであり、いくら大和が堅牢であろうと沈没は免れない。
誰もがそう思った。
太平洋艦隊による攻撃は50機の艦載機による爆撃と雷撃から始まった。

この時、大和や軽巡、駆逐艦らはドイツから輸入したアハトアハトやボフォース40mm機関銃を試験的に搭載していた。
それがこの時火を噴いた。
圧倒的制度で敵機を撃ち落としていくアハトアハトとその弾幕により敵機を叩きおとすボフォース40mm機関銃。
その活躍は獅子奮迅のものであったが、結局は多勢に無勢であった。

日本側、大和艦隊が20機目を落とすころには対空砲の類は爆撃でほぼ全障しており、第二派攻撃も来ていた。
この第二派により大和は徹底的に叩かれ大きく傾くことになる。
この時、太平洋艦隊は大和を沈んだと考え、戦艦部隊を進めた。
これが地獄の始まりであった。

to be continued
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