鎌倉武士×島津武士÷2=フェン軍
と思ってください
中央暦1639年 9月22日 フェン王国東海岸
ドイツ本国のある大陸、パラディス大陸から西に行ったところにある四国程度の大きさの勾玉型の島、そこが今回の独パ合同軍事作戦を実施する場所であり、そして哀れなフェン王国の所在地であった。
そんなフェン王国の首都アマノキの沖合に鉄十字を掲げた船団が現れる。
その船団の先頭を行く2隻のZ87級多機能駆逐艦。
彼女らの持つ2つの127mm単装速射砲が吠える。
残念ながらフリングホルニはいない。一番艦は今までの無茶な運用が祟り長期間のドック入り、三番艦は定期メンテナンス中で、二番艦は派閥と金銭的問題で不可能だった。
自慢の対地ミサイルは使わない、高いからだ。
節約作戦とも呼ばれる今軍事作戦は、後に策定される、圧倒的低文明戦闘ドクトリンの参考となった。
ミサイルの代わりに単装砲が敵を耕す。
容赦はなかった。市街地に、ビーチに、商店街に、そして城に。
僅か30分にも満たない砲撃の末、アマノキは瓦礫の山になる。
そして、砲撃の終了を合図に強襲揚陸艦から大量のタグボートが吐き出される。
ドイツ国防海軍特殊制圧部隊、現実世界のアメリカで言うNavy SEALsに近い組織だ。
彼らの展開は素早かった。
海岸線に上陸すると、彼らはヘルメットに装着されたヘットセットゴーグルに映し出される熱源反応を作業のように撃っていく。
草むらに隠れる者、砂に埋まり機を伺う者、玉砕覚悟で海岸に殺到するサムライたちをドイツ軍は圧倒的技術力をもって制圧した。
それが終わると市街地に足を踏み入れる。
国民の全てが剣士として育てられる超戦闘民族の集まりであるフェン王国、その首都となるともちろん抵抗は想像を絶するものとなる。
しかし、相手が悪かった。
「チェーストッ!!」
バンッ
サムライの雄たけびとほぼ同時に聞こえる銃声、それがアマノキ一帯で木霊した。
あらゆる戦闘技法を習得したドイツの精鋭に時代遅れな刃が届くことはなかった。
さらに、強襲揚陸艦からヘリが飛び立つ。
数機のヘリに乗せられた精鋭たちはかつて天守閣のあった場所にラぺリング降下で降り立った。
そんな彼らを最初に迎え撃ったのは、やはりサムライたちであった。
「剣王さまの仇!!」
王城と共に散ったフェン最強の剣王を胸に刻んだサムライたちが、ヘリから降りたって間もないドイツ軍に熱いラブコールを送りながら殺到する。
彼らドイツ軍に与えられた命令はアマノキに存在する敵対的存在の排除。
命令に忠実であるように教育されたドイツ軍にサムライたちの思いは関係なかった。
全戦闘員は装着しているヘットセットゴーグルに映し出される拡張現実。
そこに映し出される、部隊間でデータリングされた情報に従って彼らは撃ち続ける。
現代技術によって補強された制圧能力で、屍の山ができるまで時間は大してかからなかった。
海岸線と王城から現代技術を身に着けたドイツ軍によって、挟撃を受けたアマノキが制圧されたのは、艦砲射撃が始まってから僅か3時間後のことであった。
制圧が完了した後、アマノキにもう一つのドイツ軍部隊がやって来た。
陸軍総司令部の傘下にある524普通科連隊。
彼らは移動展開軍から
彼らが上陸した頃にはアマノキには戦うことのできない女子供や老人といった非戦闘員しか残っていなかった。
地球の一般的な文明国なら保護している所であるが、相手はユダヤ人とスラブ人をウンターメッシュと言って数千万単位で殺したドイツ軍。国際法をダース単位で破り、倫理感を劣等人種と共にガス室に押し込んだドイツが、そんなことを気にするはずがなかった。
非戦闘員?女子供?
そんなのは関係ない。
ドイツ軍は泣き叫ぶ子供を、子供だけはと懇願する女や老人をガス室に詰め込んだ。
彼ら彼女らは意味も分からず極楽への片道トラックに乗せられ、文字通りあの世へと消えていった。
フェン王国の人口が70万程度と言ってもここアマノキは首都、いまだに数万単位の人口がある。
ガス室は毎回満員の状態で運用され、そこに残された大量の死体は、そこらにいる現地人を使って処理させた*1。
それらの作業も日が沈む前には終了。
たったの数時間でアマノキにあったフェン政府は崩壊した。
―――――
フェン王国 西海岸
ドイツ軍が順調にアマノキを破壊していた時。
その逆の海岸に列強の軍団が現れた。
「竜騎士長!!」
パーパルディア皇国海軍第二艦隊の艦隊司令アルモスは旗艦ミールの上で竜騎士長に話しかけた。
「はッ!」
「皇軍は強い!」
「存じております」
「なぜだと思う!」
「総合力だと思います」
「その通りだ!圧倒的力を持つ戦列艦もさることながら、艦隊の中核たる竜母艦隊がいるから強いのだ!どんな戦列艦の砲よりもこの竜母は長大な攻撃射程を持つ。つまりはアウトレンジから一歩的に攻撃できるのだよ。騎士長、私が思うに制空権を手にした者が制海権、制地権を制する!」
「先進的な考えだと思います」
「そうだ。だからこそ、今まで誰も私の考えを理解することが出来なかった」
後世にパーパルディア空母打撃群の父と呼ばれることになるアルモス。
彼の考えをまとめた著書“制空”は、パーパルディア軍人の愛読書となるが、その考えが受け止められたのはつい最近であった。
「ドイツを嫌う皇国軍人はかなりいる。しかし、私はそうは思わない。なんだって彼らのおかげで私は艦隊司令になれたわけなのだからな」
アルモスは所謂、天才という奴であった。
その才能は艦隊司令にたるものであったが、今までの常識から大きくかけ離れた彼の思想は出世を遠ざけた。それでも、艦隊副司令まで上り詰めたのだから、彼の才能は本物なのだろう。
彼の思想が認めらたのは、ドイツとの交流が本格的に始まってからであった。
ドイツからもたらされた地球の戦史は皇軍首脳部に大きな衝撃を与え、今までの思想を一新させた。
その最中でアルモスの考えも認められ、彼は艦隊司令なったのだ。
「そして、今。私の考えが正しかったと証明された」
アルモスが見る先には燃え盛り、沈もうとするフェン王立水軍の残骸と、それをライトアップする、轟轟と燃えるニシノミヤコがあった。
もちろん、どちらともワイバーンロードによって燃やされたモノだ。
「まさにその通りだと思います」
「そういえば、陸軍は上陸したのだな。であれば、あとは消化試合だな」
そう言って、アルモスはコーヒーを口に含んだ。
その時、一人の通信兵が走ってきた。
「どうした?」
「申し上げます!陸軍の先遣部隊が壊滅したと報がありました」
「なに!何があった!」
「はい、前線の情報によると、敵は市街地や森関係なくあらゆる場所に隠れていて、こちらが近づいてから奇襲するという戦法を取っているようです」
それだけではない、フェンのサムライたちは、あらゆる場所にブービートラップや毒矢、落とし穴*2を仕掛けていて、パーパルディア皇軍の派遣部隊は凄まじい勢いで死傷者を増やしていた。
「ふむ、ゲリラ戦というやつか。確か、上陸前にフェン軍のやつらは都市ごと燃やしたはずでは?」
「はい、前線司令部でも本職の軍人の数は少く、大半が農兵と推測しています。ですが、フェン王国は国民全員が剣術の指導を受けているため、連携はともかく、個々人の練度は大して変わらないそうです」
「それは厄介だ。ふむ、そうだ。ニシノミヤコにはまだ女子供はいるだろう」
連絡兵はアルモスの問に一瞬首を傾げるもすぐに返答した。
「は、はい。元々の人口が多いのでそれなりには……」
「結構、私にいい考えがある……」
―――――
ニシノミヤコ郊外の森林部
すでに時間帯は夜。
それにもかかわらず、ニシノミヤコ周辺は異様に明るかった。
それもそのはず、ニシノミヤコ各地で火事が発生しているのだから。
そんなニシノミヤコから少し離れたところ。
そこで草木に隠れて皇軍の隙は伺っていた農兵は、皇軍兵士が構える盾を見て目を疑った。
「あいつら、とんでもないことを!」
彼が見たのは、恐らくニシノミヤコに建っていたであろう家屋を使って作った急造の盾、そしてそれに張り付けにした女子供であった。
その情報はすぐに近くにいる剣士*3に届けられた。
「そうか、意外だな」
「どういうことでしょうか、剣士さま」
「やつらが人質を使うということは、やつらも人質を取られる恐怖を知っているというわけだ」
「ま、まさか」
農兵は剣士のしようとしていることを想像して絶句する。
「今すぐ、捕虜と弓兵を連れてこい。あと、火矢の準備もな」
農兵は頭を捻った。捕虜なら何に使うかわかる。しかし、弓兵と火矢は理解できなかった。
「い、一体?」
「ほら、お前が早くしないから、他のに先を越されてしまった」
そう言って剣士が指さした先には、肉の盾を使って前進する皇軍に向かって火矢がとんでいた。
「人の体は結構油がある。それに奴らの盾、あれは木製だ。なら火矢で射ってやればよく燃えるというわけだ」
「は、はは」
農兵はもう笑うしかなかった。
フェン軍は冷静に対応したが、その一方の皇軍は大混乱に堕ちいていた
「あ、あいつら。悪魔だ!」
「自国民を何だと思っている!」
自国民を肉の盾にしても容赦なく打ち込んでくるフェン軍に皇軍は恐怖した。
元々、皇軍の作戦では夜に持ち越しての戦闘は想定していなかった。事実、皇軍は全陸上戦力を同時に上陸させ、展開させたのだ。その為、戦略予備がほぼ枯渇している状態であった。
そこで、皇軍は少しでも余裕を作るためにフェンの大軍を補足し、撃滅することを企画するも、ゲリラ戦を仕掛けられ失敗。
その結果、ズルズルと戦闘は長引き、気が付けば日も暮れていたのだ。
けっして、皇軍首脳部が無能だったわけではない、そもそも、彼らはゲリラ戦というものを知ってはいたが、その対策が出来ていなかった、時間がなかったのだ。それに野戦で大量の敵軍を撃滅する幻想を捨てきれなかったというのもある。
例えば、史実の旧帝国海軍も艦隊決戦主義を追いすぎたがために、後方のシーレンの防衛をおざなりにし、その結果、艦隊決戦どころではなくなってしまったという事例もある。
それが現在、フェン王国に上陸した皇国軍でも同じことがおきていたのだ。
それに彼らは運が悪かった。
まず、この日はほぼ無風であった。
そのため、フェン軍が放つ矢は風に流されることなく、皇軍に直撃したのだ。
では、反撃しようにも敵が何処にいるのかわからない。
火矢を使っているため、一瞬だけわかるが、その火矢は気が付けば自分の脳天をぶち抜いている為、即座な対応が出来ずにいた。あと、フェン軍は一発撃ったらしっかり移動するため攻撃が大して効かなかった。なんなら最初の内は火矢の火が確認出来た場所に、突撃した皇軍がトラップに引っかかり、全滅するということもよく起きていた。そう考えると無理な攻撃も出来なかった。
フェン軍は火矢の扱いがかなりうまく、火矢で肉の盾を燃やしたら、出てくる皇軍に向かって、ご丁寧にも糞尿を塗りたくった矢で攻撃してきたのだ。阿鼻叫喚の地獄である。
ニシノミヤコが燃えているのもマズかった。
皇軍はニシノミヤコから郊外に侵攻しているため、ニシノミヤコの炎で影ができるのだ。
結果、その影を目印にフェン軍に攻撃されていた。
では、自慢のマスケット銃で応戦しようにも、マスケット銃の射程はフェン軍が使っている和弓擬きよりも小さかった。
マスケット銃の有効射程が40m*4、対する和弓擬きは140mもあるのだ。
一方的にアウトレンジ攻撃を受けて終わりである。
それに、すでに日が暮れているため、ワイバーンロードの航空支援も期待できなかった。
見れば見るほど皇軍が劣勢に見えるが、彼らを最も苦しめているのは火矢でも糞尿を塗りたくった矢でもなかった。
それは……
「チェ―ストッ!!」
市街地の曲がり角から飛び出してきたサムライ。
その刀を皇軍兵士は咄嗟にマスケット銃で受け止めようとした。
「う、うおーー!!」
バキッ
グサッ
「う、嘘だろ!マスケット銃ごと脳天をかち割りやがった!!!」
友軍の皇軍が驚きのあまり叫ぶ。
驚くのも当然だろう、なんせマスケット銃の筒の部分は鉄製なのだ。
それを叩き割るのだから、その膂力は恐るべきものだ。
そんな光景がニシノミヤコ全体で見受けられた。
後のパーパルディアで『チェスト』という猿叫が死の呪文として創作物でよく出るのはこのためである。
何処からともなく聞こえる猿叫、その度に一人の皇軍兵士が死ぬ。
遠目から見える小さな火の玉、それは皇軍兵士から盾を奪い、死に追いやる。
まさに、地獄絵図。
血と汗と泥と炎と糞尿にまみれたニシノミヤコ。
その戦いは依然終わらない。
可哀想なフェン王国、少しだけ可哀想なパーパルディア皇国
・この世界線の歴史
日本による宣戦布告、それと同時に国際周波数に流されたハルノートの内容とそれに対する日本政府の反応。
マリアナ沖海戦の結果。
これらを受け、日本の世論は沸騰した。それはもう、沸騰した。
この時期の日本の志願兵と工場の生産効率が一時期的に増えたことからもそれがわかる。
一方のアメリカは、沈黙した。
そもそも、アメリカは原住民を虐殺して奪った土地に出来た国だ。その反動がどうかは分からないが、アメリカでは正義が尊ばれる。
では、今回の戦争は正義か?
と聞かれればYesとは言いずらいだろう。
なんなら、一部の正義を愛する者たち(ナチのシンパ)が集団ストを起こしたり大規模デモを行ったりしていた。
つまりはアメリカ世論は大混乱となったのだ。
この隙を日本が見逃すはずがなかった。
この時期のアメリカには主に東機関を中心とする諜報機関が大量に潜入。
後に大きな影響を与えることとなる。
to be continued