ドイツとパーパルディアの外交交渉は最初こそ順調に進んでいたが三日目にもなると唐突に停滞し始めた。
理由はドイツ側が提示した条約案にあった。
表面上こそ対等を押し出しているドイツ。
それは、条約案にも出ていた。しかし、一部皇国にとって到底飲めないのもがあった。
ドイツ側の領事裁判権である。
ドイツ側からしたら、貴族やら皇族やらが存在する国でアーリア人でゲルマン人な自国民が不敬罪やらなんやらで処刑されたらたまったものではないからである。
そんなわけで、外交交渉が停滞してから凡そ5日、事態を重く見たルディアスが政府高官を招集し御前会議を開いた。
「ではエルト。いったいなぜ交渉が停滞しているのか、そして、なぜドイツはそれを提示しているのか言ってみよ」
「はい、陛下。今回の外交交渉の最大の問題はドイツ側の領事裁判権についてです。ドイツ側いわく、我が国にある貴族や皇族に対する不敬罪や一部刑罰がドイツ側からしたら前近代的であり、あまりにも倫理観(アーリア的でゲルマン人なドイツ国民にのみ適応するものとする)に反しているから、とのことです」
「ふざけるな!文明圏外国家の分際で!」
そう声を荒げるのは一部過激派である。
「騒々しい、静かにせよ」
ルディアスは止めてはいるもののその顔は苦虫をダース単位で嚙み潰したようであった。
また、その他の参加者も一様に眉をひそめて不機嫌顔を作り。珍しく参加していたレミールなんかは顔を真っ赤に染め上げ握りこぶしをプルプルと震えさせていた。
「続けさせていただきます。ドイツ側もこの事態に慌てたのか、代替案として我が国と共同で両国間の国際法を作成し、両国でこれを適用してはどうか、と提案してきています。これについて我々のみでは決めることができませんので陛下に決めていただきたく思います」
それを聞いたルディアスは顎に手をあて暫く考えると。
「わかった。では、そのように進めよ。それと、その国際法ができるまでしばらく時間がかかると思うがその間はどうするのだ?」
「できるまでの間は両国間での許可を得ていない一般人の渡航を禁止するとのことです」
「ふむ、ではその間それ以外の条項は効力を発揮するのだな?」
「はい、その通りです」
「そういえば、アルデよ先日、貴様にドイツからの軍事技術支援の内容を伝え、どれが欲しいかまとめよと言ったはずだ。どうなっている」
ルディアスはの言葉を聞き答えようとするアルデ。
しかし、それを遮る存在がいた。過激派の政府高官だ。
「少々お待ちください陛下!」
「何だ?」
それに対してルディアスは会話が遮られたと憤慨したが表には出さなかった。
「技術支援とはどういうことですか?我が国は列強の一つであり、先進国であります。今更、文明圏外国家から取り入れることなどございません!」
過激派の政府高官が一口に言い切るとルディアスは彼らをバカにするように笑った。
「貴様らは帝都の沖合に止まっている船を見たはずだ、あれを見ても同じことを言えるのかね?」
「い、いえ、それは……」
「そういうことだ下がっていい」
たったその一言で彼らのキャリアが終了した。過激派の面々は顔を真っ青にして会議室を後にした。
言い終わるとルディアスはこれからどのように過激派や領地を持つ貴族たちに対処するか考え深くため息を付いた。
「すみません、陛下。よろしいでしょうか」
突然話を遮られたアルデは居心地が悪そうに言う。
「ああ、申してみよ」
「はい、では。先日いただいた資料を基に軍部高官を集め会議を行いました。まず、陸軍からは、Kar98を採用したいと、他にも戦車やヘリコプターなるものがありましたが導入コストが高すぎるとのことです。空軍からは研究機として一機のみ飛行機械を購入したいと、海軍は機関とドイツの持つ砲の技術を欲しているようで、それらを要求しています」
「わかった、それにしても、不思議だ。なぜドイツはまだ国交を結んですらいない国に兵器を輸出しようとしているのだ」
ルディアスの疑問はもっともだ。
しかし、理由はとても単純なもので。今までドイツは兵器輸出大国として地球で存在感をもっていたが、こちらの世界に転移したことで貿易相手が喪失、結果ドイツの軍需産業は大打撃を受けた。政府はこれを放っておくことができる訳もなく、少しでも販路を得るために接触できた国には兵器や技術の有償提供を行っているのだ。
「陛下、発言よろしいでしょうか」
「カイオスか、何だ申してみよ」
「これはつい昨日、ドイツ側から提出された要求なのですが……」
カイオスは緊張から冷汗を流し、言葉を途切れさせてしまった。
「どうしたカイオス。続けよ」
「はい、何でもドイツはロウリアに対して懲罰戦争を行うそうで、それに際し我が国の国民の避難とロウリアに対する支援の停止を要求しました」
―――――――
クワトイネ公国 マイハーク
「カナタ首相、突然の会談にも関わらずご参席いただきありがとうございます」
そう言うのは眼鏡をかけた細身の男、ドイツ外務省クワトイネ臨時駐屯外務官のアードマン・レートリッヒだ。
「いえいえ、それで突然の会談の申し込みでしたが、一体何があったのですか?」
ドイツとクワトイネは一週間ほど前に外交関係を結んでおり、すでに一部ではあるが食料の輸出が始まっていた。また、クワトイネの仲介でクイラ王国ともすでに国交を結ぶことに成功している。
そして、数日前、ロデニウス大陸で一番の人口と国土を持つロウリア王国とも接触したがそれは散々な結果に終わった。
カナタは恐らくこのことだろうと推測している。
「はい、先日我が国がロウリア王国に対し駆逐艦隊と外交団を送ったことは御存知かとおもいます」
「ええ、存じています」
「では、話が早いですね。その際に、ロウリア王国は我が国の駆逐艦に攻撃を行いました。幸い、死傷者も出ず駆逐艦の塗装が一部剥がれただけで済みましたが」
カナタはやはりそれかと思い、最近話し合われている相互防衛協定の話と推測した。
「そのような事が、大変でしたね」
「ええ、これについて、我が国では大々的に報道され反ロウリアの世論ができてしまいました。今では
駆逐艦の塗装が剝がれたぐらいで話が飛躍しすぎだと思うかもしれないが、いまだに選民主義から抜け出せず、さらにそこに異世界転移が起きたことでドイツの世論は元々右派だったのがさらに加速した。ドイツからしたら、まともな文明も持っていない蛮族がなにをするんだ、という感じであり、我々の感覚に例えれば、自分よりも明らかに劣っているアリかなにかに嚙まれたから踏みつぶすのと同じ感覚なのだ。
「我が国としては相互防衛協定が整っていない現状、貴国の領域に軍を進める訳にもいきません。ですので、カナタ首相に対ロウリア戦争時に使用する基地の建設や我が軍の駐屯を許可をいただきたく今会談を打診いたしました。もちろん、対ロウリア戦争が終わればそれら基地は撤収するか再利用するか決めることになります」
突然の話に面食らったカナタであったがすぐに再起動する。
「え、ええ。わかりました。さすがに今すぐ決めることは出来ないので一度政治部会に持ち帰らせていただきます」
「わかりました。存分に話し合って決めてください」
アードマンはそういうと席を立ち、扉に向かって歩き。
ドアノブに手をかけたところで止まる。
「あ、そうそう。もちろん色よい返事を期待していますよ」
・この世界線の歴史
この世界の日独は互いに密に連絡を取り合っていた。そのため、近衛文麿内閣が『欧州情勢複雑怪奇なり』といって総辞職することもなければ、ドイツ国防軍の将校がアメリカ参戦に発狂することもなかった。
あと、これにより技術交流が活発に行われ、日本の大幅強化にも繋がった。
中央暦1639年4月27日我々はロウリア王国に対して外交団を派遣した。しかし、彼らは我々と話すこともなく蛮国と罵り、挙句の果てには火矢を用いて攻撃を行ってきた。そのため我が国ドイツは国家の威厳を保つための懲罰行為が必要だ。だが結果は見えている。やつらはどのように我が国に貢献してくれようか?
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ラウリーア国家弁務官区の作成
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我が国が管理するほど豊かとは思えん
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仲間たちに分け与えよう(分割)
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ゲルマン人の箱庭を再び(完全併合)