大ドイツは異世界でも生存圏を作りたい!   作:ちんすこー

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今更ですがこの世界線の地球の技術は史実よりも進んでおり。
2000年ごろには現在(2023年12月10日)と同水準の技術力があり、それからもさらに技術の発展は加速しています。


戦争前夜

クワトイネ公国首相のカナタは恐怖していた。

 

……いや、これは安心ともいうべきかもしれない。

 

ドイツから対ロウリア戦争を通達されてから1ヶ月間、その準備は全くといって進んでいなかった。

そのため政治部会ではドイツのことを侮る者も出る始末。

カナタはドイツに派遣した使節団の報告からドイツは自分たちが逆立ちしても勝てない存在だと理解しており、ドイツのことを侮る者たちには大きく失望し連日ストレスが溜まっていた。

 

しかし、ドイツが衛星なる物を打ち上げた時から状況は変わった。

今まで民間に割いていたリソースを軍事に突っ込んだドイツの展開速度は異常だったのだ。

 

早朝、港に到着した部隊は昼までに未塗装の道を200kmほど進み、空から降ってくる降下兵なる者は付いた瞬間から基地の建設を始めた。

一日目にはプレハブ工法を用いた多数の建設物が立ち並び、二日目には重機を用い空や陸に対する最低限の防衛設備が完成。

一週間たつ頃には立派な基地が出来上がっており、そこに物資を蓄積するために多数の大型輸送機が駆り出されていた。

 

しかもそれは、一か所なんかではない。ロウリアとの前線であるギムの街から臨海部まで実に60近い数の基地が建設された*1

 

現在カナタは首都クワトイネ周辺に整備されたドイツ国防軍の飛行場にいる。

 

「ギュルトナー殿、この鉄竜……いえ、戦闘機でしたか。この性能はどれくらいなのでしょうか?」

 

カナタは目の前に鎮座する軍用機について聞いた。

 

「はい、こちらは正式名称Meー557ミョルニルです。所謂第6.1世代戦闘機*2に分類されます。簡単にスペックをまとめますと巡航速度はマッハ1.6、最高速度がマッハ4.2、最大搭載量7,200kg、限界高度1万9000mとなります」

 

そう説明するのは、筋骨隆々で白髪の男クワトイネ・ドイツ国防空軍臨時基地司令アードリアン・ギュルトナーだ。

 

余談だが、このMeー557はルフトバッフェの命名規則から逸脱した命名である。

戦間期のドイツの航空機の命名を思い出してほしい。大体が人名か社名である。しかし航空技術の向上により、一つのグループでの航空機の研究、作成が困難になったのだ。

そこで、ドイツは各会社や研究室を招集し互いに情報や意見を出し合わせ共同で一つのまたは、いくつかの航空機を作成させるようにした。そのため、共同研究したものの命名に社名や個人名を使う訳にはいかなくなり*3、戦闘機であればドイツ語での[Kämpfer]の頭文字をとりKー○○としている。

だが、Meー557はそうではない。第5次アフガン紛争の結果はルフトバッフェにとっては寝耳に水であり、その当時は右往左往に大慌てであった。

ルフトバッフェはすぐに航空各社を招集し新たな戦闘機の作成準備を始めた。そんな時、メッサーシュミット社から一通の連絡が入る。

要約すればこうだ。

 

メッサーシュミット社『ルフトバッフェさんの望む戦闘機。うちにありますよ』

 

MeーX、後のMeー557である。

 

ルフトバッフェは多少の改造を加えるもすぐに採用を決定。

しかし、そこにまったがかかる。

要約すればこうだ。

 

メッサーシュミット社『Kちゃう。Meや』

 

ルフトバッフェが独自開発したのならばいいや、とそのように採用しようとするが、ここで再びまったがかかる。

複数の航空機会社からだ。

彼ら曰く、MeーXの設計には多くの各社の技術が使われていたのだ。

ルフトバッフェはどちらにすればいいか迷うが、特段急ぐことでもなかったので両者に話し合いで決めるように言って放っておいた。

 

両者が激しく言い争う時、さらなる介入がやってくる。

 

ドイツ中央政府だ。

 

中央政府は今まで辛酸を舐めさせられていた日本への意趣返しのため、ルフトバッフェに早急な解決をもとめた。

 

これにルフトバッフェの高官たちは頭を悩ませる。

 

いったい、どちらにしたらいいのか?

 

メッサーシュミット社を推せば他の会社からそっぽを向けられこれ以降の共同研究に問題が残る。

一方、他の会社を推したらメッサーシュミット社からの制作許可が下りず、納品が大幅におくれ中央政府からお叱りがくる。

 

今を取るか後をとるか。

 

高官たちの頭皮が薄くなり始めた時、メッサーシュミット社からある物が送られてきた。

山吹色のお菓子である。

 

結果、Meで採用された。

 

高官たちは、国防軍人は裏切らない、と自分達を納得させたという。

 

閑話休題

 

 

「す、凄まじい性能ですね。やはり貴国はすごい。これであればロウリアであろうと鎧袖一触でしょう」

 

カナタはミョルニルの性能に若干引きながらもドイツを煽てる。

 

「ええ、科学も極めればこのぐらいできます。貴国にもいつかこれ程とは言いませんがこれに準ずる物を作ってもらいますよ」

 

「善処するとしか言えませんね。ですが、それまでは貴国を頼ることになるでしょう」

 

「貴国、クワトイネ公国は我が国の生命線。何が何でも守り通しますよ」

 

ギュルトナーはその厳つい顔をカナタに向け、微笑みを作る。

全く似合っていない。

 

「それは、頼もしい。しかし……」

 

カナタが少し言いずらそうに口ごもる。

 

「何か?」

 

「我が国の暗部から最近ロウリアの諜報活動が活発である、と情報がありましてね。貴国の事ですから心配は無用だとおもうのですが……」

 

暫くの沈黙が続く。

 

「ハハハ、ええ。心配は無用です。しっかり、情報は整理していますよ」

 

カナタは安心した顔を作るが、すぐに悩んだような顔つきになった。

 

「情報を整理?情報を秘匿ではなく?」

 

「ええ、もうそろそろ秘匿はしますがね」

 

「つまり隠していないと」

 

カナタは困惑したように尋ねる。

ギュルトナーは頷いた。

 

「いえ、隠すべきものは隠しています。国防軍としては戦略上あまりしたくないのですが、中央政府の指示ですからね」

 

「……ッ!?一体どうして?」

 

「我々は新参者ですからね、この世界のどこの国も我が国の力を詳しく知りません。であるのならば多少教えてあげて力の差を教えるのもいいでしょう。そうしたら余計な労力を割かずに済む。というのが中央政府の考えです。それに万が一、中核技術が盗られても、再現できないでしょう」

 

「納得は出来かねますが、理解はしました」

 

「それに、()()()()()()()()とは仲良くなれそうですからね」

 

「それは、どういう……」

 

「カナタ様、会話の途中で申し訳ありません、お時間です」

 

カナタの従者が言葉を遮り、会話の終了を知らせる。

 

「失礼、ギュルトナー殿。時間のようだ、話の続きはまた今度としよう」

 

カナタは少し名残惜しそうに言う。

 

「ええ、いつでもいらしてください。また私が案内いたします」

 

「それは、ありがたい。それではこれで」

 

そういうとカナタはアウディの高級車に乗り込み基地から首都クワトイネへと向かった。

ギュルトナーはカナタが乗り込んだ車が見えなくなるまで笑顔で見送った。

 

「司令、SAzW(隠密型自立二足歩行兵器)の準備が完了しました」

 

ギュルトナーの元に駆け寄った兵士が言う。

とっくにギュルトナーの顔から笑みは消えていた。

 

「そうか、対人レーダーの整備状況は?」

 

「問題ないとのことです」

 

ギュルトナーは伝令に来た兵士を引き連れて歩きだす。

 

「これで久方ぶりに静かな夜がくるな……」

 

兵士は何も言わなかった。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

クワトイネ公国の首都クワトイネ

その、西にドイツ国防空軍の基地がある。そこから暫く行くと広大な樹海が広がっていた。

 

今まで、この樹海は人の手が入っていないこと、魔物や獣が多くいることから誰も寄り付くことはなかった。

状況が変わったのはドイツが対ロウリア戦争を決定し、クワトイネにて基地の建設を始めてからだ。これに対しロウリアも密偵を放ち、妨害工作をするなどの抵抗を行っており、この樹海はその前哨基地として利用されていた。

 

「にしても、国のお偉いさんは随分とドイツとやらを警戒しているようだが、このガバガバな防諜体制を見てしまうとたかが知れるよな」

 

「よせ、マトゥー。相手を侮ったらそこまでだ。たとえばあの飛行機械、それにあの規模の基地をたったの1週間で作りやがった。お前も見ただろう?」

 

樹海の比較的浅い位置に目立たないように建てられた小屋。夜の暗がりでは余計に見つかりにくいだろう。

そこに二人の男がいた。

ドイツのことを散々に扱き下ろしているのはマトゥー。

それを注意しているのがヘラだ。

どちらも偽名である。

 

「確かに、それは脅威かもしれねぇけど、どうせあれもムーのだろ?同じ列強のパーパルディアがどうにかしてくれるって言ってんだ。大丈夫だ」

 

「むッ、確かにそうかもしれんな」

 

ちなみに彼らはパーパルディアの国家戦略局が独断専行で弾劾され厳しい統制下にいることも、先程の情報はドイツがパーパルディアを通して国家戦略局に指示を出し流したデマだということも知らない。

 

「しかし、そう侮ったらイタイ目を見るぞ。奴らの基地の建設を妨害するために行った連中は誰一人として戻って来ていない。それに最近はほとんど情報が入らなくなった」

 

「つまりは、今まで本気を出していなかったてか、それこそダメだろ。敵を過小評価してはいけないか過大評価もしてはいけない、って言ったのはあんただぜヘラ」

 

突然の正論にヘラは言葉が詰まる。

 

「それに、連中が乗る飛行機械はムーの型落ちで300kmもでないんだろ?たしかにワイバーンよりも圧倒的に速いが速さがすべてじゃねぇ。ムーは奴らにじゅう?とやらも渡してないって言うし、それだったら奴らは300km近い飛行機械に乗りながら弓矢で攻撃すんのか?そんなもん当たらねえよ。つまり、ドイツは対した相手じゃあねぇ」

 

「ムムム、確かに……そうかもな」

 

ヘラは諦めたように呟いた。

 

「そういえば、シャシはどこ行った?」

 

「そういわれれば、小便にしては遅いな」

 

シャシとはこの密偵たちのグループの一員である。

 

「大の方だとしても遅い、見に行ってやるか」

 

マトゥーと一緒にヘラも外に出た。

 

外は2mも離れれば相手を見失いそうになるほど暗い。しかし二人とも訓練された密偵だ、これぐらい何ともない。

 

「どこにいったんだ?」

 

「たしか、あいつはいつもあの木の裏で済ませていた筈だ」

 

ヘラが一本の木を指さし言った。

 

「よく覚えているな、そんじゃ……

 

ゴオオォォ……

 

「な、なんだ!?」

 

「おい、マトゥーあれを見ろ」

 

ヘラの指さす先を見ると月明りを遮るように彼らの上を通っていく巨大な影があった。

 

「確かあれはドイツの飛行機械の一つだ!もしかしたら戦争が始まったかもしれない。すぐに戻るぞ!」

 

「あ、ああ、けどシャシは?」

 

「見てくるぞ」

 

彼らは走って木の裏が見える所まで移動する。

そこにあったのは……

 

「なんだこりゃ……」

 

下半身を露出した状態で首を斬られ息絶えているシャシであった。

マトゥーは突然のことに呆然とそこに立つ。

 

「おい!マトゥーしっかりしろ!敵がいるかもしれn――

 

ヘラの言葉不自然なところで止まる。

それに続いてドサッ、となにかが崩れるような音がした。

マトゥーが恐る恐る振り返るとそこには単眼の濃い緑色の怪物がいた。

 

驚いて叫ぼうとした時、彼の意識は闇の中に溶けていった。

 

 

このような事がこの樹海に限らずドイツ側の情報を得ようと暗躍していた密偵や工作員の数だけおきた。

ロウリアや()()()()()()()()を含む国々はたった一晩でクワトイネにおける今まで構築してきた諜報網を失いこの先情報を得られなくなった。

 

 

 

 

世界に冠たる鷹は機械の目を通して彼らを覗いている。

*1
ちなみに最初は、ロウリアで今まで日本に対して貯めていた鬱憤を晴らしたい国防軍と戦争終結後も国防軍を駐屯させロデニウス大陸に大きな影響を持とうとしていた外務省が結託しクワトイネ公国以外にクイラ王国にも合わせて150にも及ぶ基地を建設する予定であった。その予算の捻出要請を受けた財務省職員がキレて国防省や外務省に凸ってあわや、殴り合いの大げんかになりかねない一触即発の状態になる事件が起きた

*2
この世界の技術力は史実世界を大きく超えており、2020年ごろには第6世代戦闘機が完成していた。第5世代戦闘機をはるかに越える高機動、圧倒的ステルス性能、光学迷彩また、複数の航空機のレーダーから得た情報を統括共有しパイロットに第六感的に伝えることが可能でミサイルなどの回避率が大幅に上昇した。さらにステルス性の向上により、速度をあまり必要としなくなった結果、エンジンの大幅な小型化に成功し大きさをそのままにウェポンベイを増やすことを可能とした。これら第6世代戦闘機が初めて実戦に投入されたのは、日本の第5次アフガン紛争介入時だ。投入前までは、無双を期待されていたが、いざ蓋を開けてみると散々な結果であった。理由は単純に時代に付いて来れなかったのだ。この時アフガンはドイツから大量のドローンとそれを統括するAIを試験的に供与されていた。アフガンはこれらを巧みに使い所謂ドローンスウォーム攻撃を実施した。それは空でも同様に、大量のドローンを広範囲に入れ変わりながら常時展開した。もちろんそれはすぐに日本の知るところとなり、暫くの間航空機を投入できなかった。しかし、痺れを切らした現場指揮官が攻撃を強行、第6世代戦闘機を投入した。そのドローンが普通のドローンであり、その戦闘機の最高速度が旧来のものと同等だったら結果は変わっただろう。しかし、現実は非情だ。ドローンにはRPGの弾頭が括り付けられており、ドローンの管制に従って音速で全方位から突っ込んで来るのだ。この時投入された第6世代戦闘機の最高速度は亜音速であり、その探知機能と機動性をもってしてもとてもではないが避けきれなかった。最終的に大きな被害を受けた第6世代戦闘機は全機本土に引き上げ、入れ変わるように運びこまれたEMP砲(正式名称:指向性電磁パルス照射砲)でドローンを無力化し何とかなった。これらの教訓を得て作成されたのが、第6.1世代戦闘機である。多少のステルス性の低下には目を瞑り、変形翼を採用し機動力のさらなる向上を図った。また、エンジンの出力を強化し超音速の飛行を可能にした。それに際し、エンジンが大型化しウェポンベイを圧迫したが、機体諸共大型化することで対応。これが、ある程度のステルス性と基地や空母での搭載数を犠牲に作られた地球最新の戦闘機、第6.1世代戦闘機である。

*3
例外はある




ようやくロウリア戦だ。

・この世界線の歴史

この世界の日本は当時大蔵大臣であった片岡直温の失言がなかったため世界恐慌と昭和恐慌のダブルパンチを食らうことはなかった。
また、その後の政府の経済政策も順調に進んだことから軍部への支持はあまり集まらず、シビリアンコントロールを維持することに成功している。
そのため、張作霖爆殺事件からの満州事変が起きず(なお張作霖は暗殺されないとは言っていない)。中華との全面戦争もしっかり準備が整ってから行われた。

中央暦1639年4月27日我々はロウリア王国に対して外交団を派遣した。しかし、彼らは我々と話すこともなく蛮国と罵り、挙句の果てには火矢を用いて攻撃を行ってきた。そのため我が国ドイツは国家の威厳を保つための懲罰行為が必要だ。だが結果は見えている。やつらはどのように我が国に貢献してくれようか?

  • ラウリーア国家弁務官区の作成
  • 我が国が管理するほど豊かとは思えん
  • 仲間たちに分け与えよう(分割)
  • ゲルマン人の箱庭を再び(完全併合)
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