第一話 高度育成高等学校
目が覚める。
睡眠から覚醒しぼんやりとした意識のまま、周囲を見渡す。
静かなバスの中は少し混雑しており、今時の高校では珍しい赤い制服を見に纏った若者が多い。なんとも派手で目立つ制服である。ちなみに俺も赤い制服を身に纏っていたりする。
ぐるりと周囲を確認し終えた時、ふと隣の席に座る女の子と目が合った。俺と同じ赤い制服を着ていることから、同じ学校に入学する生徒だとすぐにわかった。
「あ、おはよ。よく寝てたね」
「え、あ、どうも」
いきなり挨拶を交わしてきたので少し混乱する。覚醒したばかりの俺の脳みそでは会話は厳しい。
そう思い込んで、バスの外に視線を向けて逃げようと思った。
『あの子、あんたのことキープって言ってたよ』
過去の苦い思い出が頭をよぎる。
でも、俺は前を向くことを選んだのだ。それが俺の取り柄だし、今まで己の心を支えてきた根底である。
俺は彼女と会話することを選んだ。
「俺の名前は佐崎涼。同じ高校みたいだし、仲良くしてもらえると助かる」
「私の名前は松下千秋。こちらこそ、三年間よろしくね」
「それにしても、三年間親とも会えず外との接触を一切断つっていうこの高校、珍しいというか、すごいよな」
「ねー、でも、このパンフレットに書いてある通りだと希望する進学、就職先ほぼ100%で応えてくれるって書いてあるのは本当なのかな?」
松下との話で出てきた進学希望、就職先ほぼ100%で応えてくれるという学校の謳い文句。
高度育成高等学校。
それは、日本政府が主体となって運営している社会へ貢献する優秀な人材を育てる、という理念のもと作り上げられた日本屈指の名門校。
生徒たちは外部からの連絡、接触の一切を禁じられる代わり、学校の所有する60万平米を超える敷地内にある映画にゲームセンター、ショッピングモールにジムなどのあらゆる施設が完備されている。まさに政府が作り上げた最高の楽園。
排出する生徒はどれも日本の未来を支える優秀な人材ばかり。
そんな場所になぜ俺が、と当時中学生だった俺はびっくり仰天。親に喜ばれ、親戚に喜ばれ、友人にもてはやされた。まぁ、その後色々合ったけども、そんな名門校に入れて嬉しく思ったのも束の間。
すぐに胸に疑問が湧いた。
なぜ、成績もさして飛び抜けて優秀でもない俺が、こんな名門に?
「やっぱり、100%っていうならすごいいいところ行きたいよねぇ。海外の一流大学とか!」
「夢がでかいな、もうちょい謙虚な方がいいんじゃない?」
「そういう佐崎君は、もう少し夢を見なよ? 100%だよ?」
どうやら、彼女は100%という謳い文句に浮かれてしまっているようで微塵も怪しいとは思っていないようだ。俺がおかしいのかもしれない。
しかし、彼女とはよく会話が弾む。会ってまだ十分くらいしか話してないが、少し相性がいいのかもしれない。ただ彼女が会話上手なだけかもしれないけどね。
「いや、そうだな。100%ね。なら俺は、不動産とかかな。親父のところで働きたいよ」
「へぇ、お父さんが取締役だったり?」
「そ。まぁ、親父は俺が何しようと自由にしろスタイルだけど」
「ふーん」
なにやら彼女の目がきらりと光ったように見えたがきっと気のせいだろう。
俺は少しこの学校に感じた疑わしさを探ることにした。
「松下は頭脳明晰だったりするんですか?」
「えー、どうだろ? 普通くらい?」
「ご謙遜なさらず、話してみてくださいや」
「何その口調。んーと、確かオール4かな、最後の成績は」
なんとなく彼女について少しわかった。事なかれ主義。その中身はできるのにやらない。そこにどんな理由があるかは正直全くわからない。
本当に記憶が曖昧なのか演技なのはともかく、彼女は優秀な部類に入るだろう。
「佐崎君はどのくらい────」
「おっと、着いたみたいだぞ」
高度育成高等学校前、とバスの電子掲示板に表示される。
会話を途中で遮ったからか、少し不満そうな顔をする松下は唇を尖らせる。
「ちょっとひどくない?」
「お、もうすぐだぞ…………。わかった、ごめんて。だからその目をやめてください」
「はぁ。まぁ、聞かれたくないなら無理に聞かないけどさ」
そんな会話をしながら、バスから降りる。
目の前に広がるのは壁のような柵? に囲まれた巨大な敷地。そして、降りたバス停のすぐ近くにあるトラック二台ほどは余裕で通ることができるであろう巨大な門。
「迫力あるな」
「ね。これからここで三年間、親とも友達とも会えないんだよね………」
そうだ、三年間この敷地内で暮らす。なんとも想像できないものである。
今まで一人暮らしもしたことがないのにいきなり一人で全てできるのか、という不安もあるし、ホームシック的な寂しさもある。
「でも、今日からここが俺の住むところ。なら、本気で真っ直ぐに、真面目に生きてやるさ」
「何それ、座右の銘?」
「そんなとこ」
俺ならきっとやれる。
未来への自分への期待を胸に俺は門を潜り抜けた。
#
松下と共に学校への道を歩く。
高度育成高等学校は、東京湾の海の上にある。
東京湾の割に淀んでいない綺麗な海水が日光に反射されてキラキラと光っている。海の彼方まであるんじゃないかと思ってしまうほどの水平線を見ることができる。
「海の上にある学校って、どんだけの費用を国は出してるんだか」
「んー、でも妥当じゃない? この学校の卒業生は全員少し調べれば出てくるくらいには有名で名の知れてる人たちなんだよ」
「それほど優秀な人材を生み出すには、これくらいの施設は必要ってことか?」
「だと思うけど」
松下と話しながら、この敷地内の景観をざっと確認してみる。
パッと見る限り、三割くらいは運動場とかに使われていて、学校の範囲として二割、残りが娯楽やらショッピングモールとかそんな感じである。
気づけば学校に到着していた。
「クラスどうだった?」
「私はDクラス。佐崎君は?」
「俺もDだ。松下とは何かと縁があるみたいだな」
改めてこれからよろしく、と挨拶しながら教室へと向かう。
学校の中は、やはり広かった。
一クラス四十人ほどの教室は椅子と机が余裕を持って配置されている。
他の高校についてはわからなかったので、比較対象はないが、どこもここまで広いものじゃないだろう。
「あ、連絡先だけでも交換しとこうよ」
「了解」
自然な流れで連絡先を交換したが、高校生活初日で女子の連絡先をもらうとは幸先が良いのではないか? いや、別に彼女が欲しいとかそういうわけじゃないけどさ。
などと、誰に言い訳してんだ、と心の中で呟く。
「じゃ、私席あっちだから」
「おう」
俺は松下と別れてから自分の先に向かう。
俺の席は一番後ろから2番目、廊下から二番目だった。
後ろの席には赤髪のいかつい男が不機嫌そうに携帯をいじっている。
「よう、俺の名前は佐崎涼。これからよろしくな」
「……須藤健だ」
ややぶっきらぼうとも取れる自己紹介に苦笑しつつ、俺は須藤と会話を続ける。
「結構ガタイいいんだな、ものすごい鍛えていると見た。腕触ってみてもいいか?」
「お、おう、なんだよいきなり」
やはり男とは話しやすいな、と思いながら遠慮なく須藤の上腕二頭筋を触らせてもらう。
ガッチリと鍛えられた二の腕は並の高校生より一回り大きく、素晴らしいものであった。
俺も鍛えてはいるのだが、やはりここまで太くはない。
「おぉ! すごいな、スポーツやってるのか?」
「おう、俺はバスケ一筋だぜ」
「そりゃ、かっけぇな。俺もバスケしてみたいって思ってたんだよ」
「いいな! 一緒にバスケ部入ろうぜ!」
「ごめん! 考えとくわ!」
先ほどまでの不機嫌さが消えた須藤を尻目に教室の四隅に視線を向ける。四隅にそれぞれ四台の監視カメラ。
いくらなんでも過剰すぎる数だ。まるで、生徒の一挙手一投手を監視するかのような……………。
そう思考を巡らせた時、教室に入ってきたのは俺にとって衝撃の人物であった。
「櫛田………!」
思わず俺の口からこぼれた彼女の名前。
櫛田もこちらに視線を向けるとその顔には様々な感情を読み取ることができたが、複雑すぎて理解できない。
櫛田桔梗。
それは、俺にとって中学の禍根。
少し苦い思い出だ。
しかし、彼女がこの高校だったとは知らなかった。
自分の眉間に皺がよっていくのを感じる。
「えっと、人違い、じゃないかな?」
「あ、あぁ、そうだな。悪い」
そういうと、櫛田は自然な動作で自分の席へ向かって行った。
「おい、あの可愛い子と知り合いなのかよ」
須藤が興味津々に櫛田のことを聞いてくる。
「いや、人違いだったみたいだ」
「なんだよ、てか、めっちゃ可愛くね? 胸もデケェし」
とんでもなく失礼でデリカシーのないことを言っているが、まぁ間違ってはいない。
しかし、あの可愛い容姿の中身は須藤の想像を裏切る腹黒いものだろう。
それに、俺は間違いなく櫛田と名前を言ってしまった。その場にいて聞く人によればすぐに人違いじゃない、ということに気づくことはできるだろう。
幸い、まだクラスの三分の一程度の人数しかクラスにはいなかったため、そんなにすぐにはバレないだろう。
俺は中学の時ある女子と付き合っていた。中二に告白されて一年ほどで振られた。
今はもう立ち直ったが少しだけ引きずった失恋の記憶。
それだけなら、ありふれた男女の別れであるが、中学3年の冬に事件は起きた。
櫛田桔梗。
クラスのみんなは彼女が可愛くて誰にでも優しい天使のような女子という印象を抱いていたはずだ。
それが崩れたのはクラスの崩壊と同時だった。
櫛田がクラスメイトの悪口をネットで呟いていることが発覚したのだ。
それはそれは酷い言いようで本当にあの櫛田が? と疑ってしまうほどの罵詈雑言が書かれていた。
しかし、櫛田であるのは間違いなかった。過去の呟きを確認してみると全て、特定のクラスメイトに対する愚痴や不満が一致していたのだ。
それがわかってから櫛田は暴走した。
詳細は省くが、櫛田は中学三年間で築き上げた信頼、その信頼から得たクラスメイトの秘密を全て暴いた。
俺は思い知った。
人はこれほどまでに醜く脆いものなんだと。
クラスは阿鼻叫喚。
ある少女は泣き出し、ある少年は友達を殴った。
明らかにクラスには大きな亀裂が走った。
俺の友人たちも櫛田に秘密を暴露され、俺はその友人たちの本性を知ってしまった。
もちろん、俺にもその諸刃の剣は向けられた。
どうやら、俺が一年ほど付き合っていた彼女は俺のことをキープだと言っていたらしく、二股していたのだとか。
もちろん傷ついた。
彼女のことは好きだったし、彼女も俺のことが本気で好きだと思っていたからだ。
もし俺がその時、未だ彼女と付き合っていたら立ち直ることはできなかったかもしれない。
しかし、俺はこの事件が起きる前、薄々櫛田の本性を察していた。
一度二人きりになったことがあったのだが、その時櫛田という人間を初めて理解した。いや、あんなことになってしまい未然に防げなかった俺は理解したつもりになっていただけだった。
全てを暴露した櫛田はスッキリしているようにも見えたが、それと同時にさまざまな感情が入り乱れているようだった。
俺はその時の櫛田の表情から櫛田の気持ちを理解しきることはできなかった。
クラスのほとんどが人間不信に陥り、学校への登校を拒否し、クラスは機能しなくなった。
苦い思い出だ。
もし、彼女のことをもっと理解できていたら、あんなことにはならなかったはずだ。力不足だった。
俺の人生での失敗の一つである。
そんな思い出の中心にいる櫛田が俺と同じ高校で同じクラス。
まだ心の整理はつかないし、どう接すればいいのかわからないが、自分の中でけじめをつけなければならない。
そう考えていると、いつの間にかクラスは生徒たちで溢れていた。それぞれぎこちなくはあるものの同じクラスメイトとして親睦を深めているようだった。
ちょっと出遅れたかな。
俺は話しかけたそうに、あるいは話しかけられたそうにクラスメイトたちをみている明るい茶髪の男の子に話しかけようと立ち上がった。
それと同時に始業のチャイムが鳴ると教室の扉が開いた。
入ってきた人物は生徒ではなかった。
生徒とは違う黒いキッチリとしたスーツに身を包んでいる女性。
若々しく見えるが、表情は大人びて見え凛々しいその顔は美人であった。
きっとこのクラスの担任教師なのだろう。
「全員席につけ」
その美人教師の言葉によりクラスは静まり返った。
「私の名前は茶柱佐枝だ。今日からお前たちの担任として、共に学ぶことになる。担当は日本史だ。よろしく。そして、この学校に学年ごとのクラス替えは存在しない」
クラス替えは存在しない、か。
少し珍しいがそこまで変でもないか。
その後、Sシステムの説明を受けた俺は配られた資料を眺めながら頭の中で整理する。
・ポイント制
学校含め敷地内では現金ではなく、学生証、もしくは携帯に付属する学校専用のアプリにプライベートポイント(ppt)と呼ばれるポイントが振り込まれそれを利用して現金の代わりとする。いわゆる◯ay◯ayだ。
これを利用することで、敷地内のものはなんでも買えるらしい。言い換えれば、買えないものはない。まぁ、公共の福祉の範囲内だろうけど。憲法は通用するだろうし。
・10万の支給
高校生に10万円を渡したようなものだ。もちろん、生活するためにある程度のお金は必要だが、これはいくらなんでも過剰だと俺は思う。
それに、毎月、月初めにポイントが支給される、という点に関しても違和感を感じる。
このことでクラスが少し騒ついたが、茶柱は不敵に笑う。
「驚いたか? 学校はお前たちを実力で評価している。この10万は入学祝いのようなものとして受け取って欲しい」
日本政府主体の学校はすげぇや、と思うだけなら簡単だがこの茶柱とかいう先生は、実に疑わしい。まるで俺たちを値踏みするような、視線を向けてくる。
「以上だ。質問のあるものは?」
俺は迷わず挙手した。
「なんだ佐崎」
「先生、Sシステムの説明をもう一度お願いします」
「なんだ、聞いてなかったのか? 現金の代わりに携帯やカードでこの敷地内にあるものならなんでも購入可能とするシステムのことだ」
それ以上は説明が面倒だったのか俺から視線を外してしまう。期待外れだ、という視線を受けたようで少し不服だが、俺はもう一度挙手する。
「もう一度、Sシステムについての説明を」
俺の言葉でクラスメイトたちが少しざわつく。
「はぁ、佐崎。お前に耳はついているのか? もう一度言う、現金の────」
「次のポイントの支給される日は?」
「………5月1日だ」
「本当ですか?」
「ああ、嘘はないとも」
ニヒルに笑う茶柱。
「どうも、ありがとうございます」
「………それだけか? 他にあるものは………いないな。一時間後には入学式だ。良い学生ライフを送ってくれ」
拍子抜け、といった表情を浮かばせる茶柱を尻目に、俺は思考を巡らせる。
茶柱のその態度がわかりやすい。
きっとあれ以上聞いても答えてはくれなかっただろうし、あの茶柱の目は野望のような俺への期待を感じた。あれ以上聞くことはリスクだ。
茶柱がいなくなった教室は少しずつ喧騒を取り戻していた。
俺が先生に二度ほど質問したのが影響したのか続々と俺の周囲に人だかりができ始める。
「なぁなぁ! なんで同じこと2回も聞いたんだよ、もしかして記憶力悪いのか?」
「んー、まぁちょっとこのシステムが不思議だったから聞いただけだよ」
「ねね! 佐崎君はこの後暇? 入学式の後みんなで買い物に行くんだけど、一緒に行かない?」
「お、いいのか? じゃあ行こうかな」
「おい、ずりぃぞ! 俺も行く!」
「え………うん、いいよ」
少し嫌そうな顔が表に出てるぞ、金髪のギャルよ。
それにしてもこの学校、名門を謳う割には一見平凡なクラスのように見える。
見た目で判断するのはどうかと思うが、本当に優秀なのだろうか、特にこの池と言うやつとか。
明らかに女子からの視線が厳しい。
入学初日から向けられるものじゃないぞ。
「みんな、少し聞いてほしい。これから僕たちは三年間を共にするクラスメイトだ。少しでも早く仲良くなれるように自己紹介とかどうかな?」
前の方の席に座っていた優しそうな男がそう提案した。
「賛成ー!」
いの一番に賛成したのは軽井沢。
少し話してわかったが、気の強いギャルって感じだ。
だが、気の強い奴ほど自分の弱さを隠す、いや、自分の弱さを隠すために強がっているのか、そんなところか。まだよくわからん。
「じゃあ、僕から。僕は平田洋介。部活は中学から続けてきたサッカーをするつもりだよ。よろしくね」
なんとも爽やかな自己紹介だ。
このクラスでの自己紹介を提案しただけあってクラスでの影響力は高そうだな。
平田が自己紹介したことにより、完全に自己紹介をする流れとなった。
端から次々と自己紹介するクラスメイトたちの名前は頭の中にインプットする。40人は少し多いが、クラスメイトとの親睦を深めるためにはある程度趣味とかも覚えなければならない。
順調に自己紹介が進み、櫛田桔梗へと順番が回ってきた。
快活に笑うその表情からは、自信に溢れているように見える。容姿端麗でスタイル抜群。クラスの男子のほとんどは彼女の自己紹介に釘付けだ。
「私は櫛田桔梗と言います。
天使のような笑顔を貼り付ける彼女にクラスの男子たちはこぞって拍手をして、女子からも惜しみない拍手が送られた。
それにしても中学からの友達は一人もいない、か。
完全に無かったものにしたいのか。それともこの自己紹介を通して俺にバラしたら潰す、という釘を刺したのか。
わからない。
彼女の表情からはそれを窺い知ることは不可能だ。中学よりも数段レベルの高い高度なポーカーフェイスを身につけている。
あれは、尋常じゃないほどの負担を彼女に強いるはず。中学の二の舞はごめんだ。早めに手を打たなければな。
そうこうと考えているうちに俺の番がやってきた。
「俺は佐崎涼。俺も同中は一人もいないぼっちだ。趣味は筋トレ。仲良くしてくれると嬉しいよ」
俺にも惜しみない拍手を向けられてゆっくりと腰を下ろす。
ちらりと櫛田の方に視線を向けたが、やはりその胸の内を覗くことはできない。
「次、須藤だぞ」
「ちっ、こんなガキみたいなことやってられるか。やりたいやつだけやれよ」
須藤はぶっきらぼうにそう言い放つと席を立とうとするので、須藤の腕を掴む。
「おい須藤」
「んだよ!」
「お前の上腕二頭筋見せなくていいのか? あれは素晴らしいものなのに、女子にもモテるかもしれないのに」
「そ、そうか?」
「そうだよ、上腕二頭筋。絶対モテるって」
「お前馬鹿にしてるだろ!」
須藤をなんとか丸め込んでいる間に、一人の女子生徒がクラスから出ていった。
あの目は完全に俺らのことを見下している目だったな。まぁいいか。いつか、同じクラスなんだから話す機会もあるだろう。
「わーったよ! ちっ、俺は須藤健。よろしく」
無事須藤の自己紹介を終えると、俺とのやりとりで須藤への警戒心を解いたクラスメイトたちは軽く須藤のことをいじっている。
須藤健。彼は俺の目から見て、何か可能性を感じた。勿体無い、と思った。そう感じたやつとは、俺は仲良くしたいのだ。
自己紹介の途中、高円寺とかいうなんかすごい傲慢と自由を混ぜ合わせたナルシストのような大物? もいたが、割愛させてもらう。あれは俺も見たことのない人種だ。
そして、自己紹介は最後へと回った。
俺が話しかけようとしていた人物は声をかけられるとビクリ、と震えた。かと思うとガタン! と勢いよく立ち上がった。
「えー、綾小路清隆です。…………えっと、趣味は………えっと、特にないです。…………えー、よろしくお願いします」
途切れ途切れの自己紹介は誰が見ても失敗したと思うだろう。現に彼にはまばらな拍手が送られている。
だが、俺は彼から何かを感じることはなかった。いや、実際には自己紹介が失敗に終わったと自覚しているようでしょんぼりと落ち込んだ空気を感じたが、何か、人としての感情の起伏がおかしい。偽っているわけでもなく、本音や建前を感じさせない。チグハグで不気味。
でもまぁ、そういうやつはたまにいる。話してみると実はいい奴だったりもする。まぁ、ちょっと変なやつとか多いけども。
綾小路清隆。仲良くなれそうな気がするな。
もうすぐ、入学式か。
きっと、これからの三年間はあっという間だろう。
この三年間をどのように生きるかは、俺次第。
ここがどんな学校だろうと、失敗しようと挫折しようと諦めずに愚直に立ち上がり、挑戦させてもらう。
それが俺なりの充実させる人生の歩き方だ。
続きをあんまし考えてない作品ほど、続きを描きたくなる。
なら、この作品も………。
でも、結局は評価次第!!!