ブラックバード・ドリーム   作:AC/弟子

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tenth Steps, with you.


テンス・ステップス、ウィズユー

 

相対する二機のAC。

 

「……初めましてビジター。私はオーネスト・ブルートゥ」

 

先に口を開いたのはブルートゥだった。火炎放射器とチェーンソーを下ろし恭しくミルクトゥースを一礼させる。

 

「RaDの皆様と貴方が素晴らしい試みをしようと言うのを耳に挟みましてね。不肖ブルートゥ、こうしてお祝いに――」

 

ブルートゥが祝いの言葉を口にしようとした刹那。その真横スレスレを一発の弾丸が轟音と共に通り過ぎた。

その弾丸の出処は、ブラックバードが手にした“LR-036 Curtis(リニアライフル)”の弾丸だった。

 

「御託はいい」

俺の夢の邪魔をするな(とっとと去ねクソ野郎)

 

底冷えするような低いエゲトの声。その声にブルートゥは笑みを浮かべながらも身体を震わせる。

 

「えぇ、えぇ。では先ずは――」

「おもてなしをさせて下さい、“ご友人”」

 

その言葉を皮切りに、コヨーテスのMTが一斉に銃口をブラックバードに向け、襲い掛かる。

 

「MT6!小型5にBAWSのデカイの1ダ!」

 

エゲトのヘルメットから響くビアードのオペレーション。

 

「本命はあのクズダ、温存しろヨ!」

「分かってる」

 

頭がスっと冷えていく。夢を邪魔されたことより先に思考したのは、ここを確実に的確に最適解で最小限の労力で切り抜ける事。

一先ずは先行したチャティのサーカスの合流を待つ。

 

ブースター起動、装備された「RaDの試作型ブースター」が火を吹いてブラックバードを横っ飛びに加速させる。

 

「っ、つ」

 

――速い。自分の想像以上に。シミュレーターでは感じれない加速Gがエゲトを揺さぶる。

“少なくとも、チャリオットよりは数倍キツイ”。そう頭の中で思考しつつトリガーを引く。

 

右手にはベイラム製リニアライフル、左手にはエルカノから送られてきたニードルガン。

左背部ユニットには二連装八発拡散ミサイル、右背部ユニットはハンガーユニット化し、拡散型ハンドミサイルを装備。

 

戦闘面を意識した構成、元々の自機であるチャリオットをある程度意識した作りだ。

 

「おいなんだァアイツ!?速ぇ―――」

「クソが捉えきれねぇ!な―――」

 

ジャンカー・コヨーテスのMT達が次々と葬られていく。鉄杭を撃ち込み、電磁加速された弾丸が貫き、拡散ミサイルが爆散させていく。

黒い影が動き、揺らめき、その度に鉄塊が生み出される。

 

そして数分の後、とうとうMTは全滅し残るはACのみとなった。

 

「……帰るなら、今のうちだぞクズ野郎」

 

ニードルガンを真っ直ぐにミルクトゥースに向け、言い放つエゲト。この程度ですごすごと帰る相手じゃない。それは分かってる、だがそれでも。

 

 

「……えぇ、そうですね。……ですが」

「私は貴方と踊りたいのです。……踊って頂けますか?“ご友人”!」

 

ミルクトゥースが背部のブースターと拡張ユニットを起動。アサルトブーストによる急接近から左腕の大型チェーンソーを振りかぶった。

 

その動きに対してエゲトが瞬時にペダルを踏み込み、クイックブーストでブラックバードを後退させた。寸前の空間を無数の刃が削り取り、背筋を凍らせる。

 

更にそこからミルクトゥースの左肩に搭載された拡散バズーカがブラックバードに銃口を向けた。

 

瞬間的にペダルを踏んでレバーを思いっきり倒す。根元から折れるんじゃないかってくらいに倒すと、左方向に鋭くクイックブースト。息の詰まる近距離戦。普段味わうことの出来ないひりついた感覚にエゲトは小さく笑みが漏れた。

 

「っ……は」

「はは、ははは……!!」

 

速い。とかく速い。シミュレータで慣れたと思っていた、そんなことは無かった。結論から言うと、エゲトは自分が考えている数倍ブラックバードが速く感じた。

これなら行ける。見える。緊張で狭かった視界が開けて透明になっていく。集中出来る。

 

 

「……ああ、素晴らしい、素晴らしいステップですご友人……!」

 

近距離戦に持ち込まれ、銃火を掻い潜り、時には受け、火炎放射器を放ち、僅かな隙にチェーンソーや拡散バズーカ、ミサイルを織り交ぜながら。

幾度も幾度も攻撃を仕掛けながらもブルートゥはその敵ACの動き(華麗なステップ)に何かを感じた。

 

「貴方の動き、そう」

「分かります、イメージです!見えますよご友人!!」

「タンゴ?ワルツ?いや、それのどれとも違う!」

「貴方のその情熱的な、そのステップ!まるで――」

 

「そう、フラメンコ!!」

「弦と打の入り交じった熱を帯びたそのステップ!素敵ですよご友人!!」

 

段々とミルクトゥースのAPが削れていく。確実にダメージが蓄積し、警告表示がディスプレーに現れるがそんな事よりも目の前の黒い鳥の動きに、戦いに引きずり込まれていく。

 

じわりじわりと、決着の足音が聞こえてきた刹那。二人だけの舞踏の中に一発の大口径弾が通過した。

 

二人の間を通過したそれを始まりにばっと距離を離すブラックバードとミルクトゥース。

 

弾の放たれた方向を見ると、軽量型タンク脚部のACが銃口をミルクトゥースに向けていた。

 

「すまないエゲト、遅くなった」

 

声の主はカーラの腹心“チャティ・スティック”。その左手にしたメリニット製バズーカを放ち、二人の戦いに乱入した。

 

「……救援、助かります」

「気にするな、ここであのクズを殺すぞエゲト」

 

前衛で斥候をしていたチャティの地雷処理が終わっての乱入、二対一の形となった。ここで一気に叩き潰して――叩き潰すのが、目的だったか?

エゲトは戦いに夢中になっていた。無自覚のうちに。

でもそうじゃない。目的は違う。

 

「……これはこれは不利になりました」

 

ブルートゥがコクピットの中で心底驚いたように、だが安堵も見せつつ呟いた。あのままでは高速戦闘に圧殺されるのがオチだと思っていたからだ。

 

「ご友人、貴方の飛翔を間近で見れないのは残念ですが……ここは、退却させて頂きます」

 

ダメージも激しい、リペアキットは今回持ってきていない。故にこれ以上の戦闘は敗北で終わるだろう。それはいけない、楽しめない。贈り物は素敵だが、今はまだその時では無いのだから。

 

「逃がすと思うか、ここで――」

「チャティ」

 

チャティは逃がすつもりゼロ、ここで殺すと言わんばかりに今度は右手のグレネードを構えた。だがそれはエゲトの声でピタりと止まる。

 

「……とっとと帰れクズ野郎」

 

エゲトが息を整えつつブルートゥに言い放つ。俺の目的は、目標は違う。空を飛ぶ事だ。ぶっ飛ばすことだ。だからこれ以上の消耗は無意味だし、ブラックバードに何かあったら遅い。

 

「感謝致します、ご友人」

 

ブルートゥがミルクトゥースの腰を折り深々と頭を下げる。

そして向き直ると共に、エクスパンションユニットを展開。

 

「あぁ、一つだけ。一つだけ言葉を送らせてくださいご友人」

「……“イカロスの翼”にご注意下さい」

 

イカロスの翼。その言葉と共にクイックターンで背を向けたミルクトゥース。背部からのアサルトブーストで、飛び去り撤退した。

 

―――戦闘終了。

生き残ったRaDの面々は、漸くここで深く息をつくことが出来た。

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