ブラックバード・ドリーム   作:AC/弟子

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Fly away,
――Scorched Sky.


フライアウェイ、スコーチド・スカイ

 

「……やっと着いたな」

「ああ、ここがお前の終着点で、始点だゼ」

 

オーネスト・ブルートゥの襲撃を退け、辿り着いたRaDの一団。その目の前に大きくそびえ立つ廃棄されたグリッド、通称“グリッド078”。

資材の運搬や出荷などを目的とされた、カタパルトや小型カーゴランチャーを備えたグリッドのひとつ。

 

「……よし始めようか。アタシはチャティと共にサーカスで乗り込む。無事な連中は着いてきな!安全確認とグリッドの始動が済んだら連絡する、エゲトとビアード、MT数機はその場で待機だ」

 

カーラが着々と斥候の準備を始め、指示を飛ばす。間もなくして斥候部隊がグリッド078へ。

ビアードは襲撃の時と同様にブラックバードの立ち上げに入った。当初の予定とは多少変わったがコヨーテスの襲撃があったから仕方の無いことだ。

 

エゲトはブラックバードに乗り込み、コクピットの中で呼吸を整える。

――緊張する。とうとうこの時が来た。

夢を終わらせて、次へ向かうための大切で大きな一歩。

刻一刻迫る勝負の時が、エゲトの心を無にしていく。

 

ゆっくりと深く呼吸。長く、時間を取った呼吸。

彼が傭兵として生きる上で身につけたことだ。

いついかなる時も冷静に、そして確実に事を成す。

シミュレーションの経験を反芻して、精神を研ぎ澄ます。

 

(……いいや違う)

(終わりなんかじゃない)

(始まるんだ、ここから)

 

ここが本当の、スタートラインだ。

ゆっくりと目を開き、もう一度深く呼吸して椅子に深くもたれ込む。

ギチ、と人工合成皮革のシートが音を立てた。

 

------

 

グリッド078から遠く離れた山岳部。

くすんだ黄色のACが、立膝を着いて鎮座していた。

その上で、遠く見えるグリッドを眺める長髪の男――オーネスト・ブルートゥ。

その手には、手のひらサイズの小さな箱が握られていた。

 

「……ご友人、貴方は」

「それが無謀と分かってて、誰にも謳われぬ物語(アンサング)だと分かっててそれでも尚……飛ぶのですか?」

 

手のひらの中に握られた爆破装置。

ブルートゥがRaDの飛行計画を知った後、グリッドに仕掛けた大量の爆薬を起爆させるためのもの。

それが押し込まれれば、かつてない贈り物となる。だがそれは。

 

「つまらない」

「ただの悲劇、それで終わってしまうのは、本当に本当に、……不憫だ」

 

起爆装置のロックがかかってることを確認し、足元に落とすと一瞥もくれずに踏み潰す。入念に何度も、足を押し付けるようにして粉々に砕く。

 

「……さぁ舞台は整いましたよご友人」

「貴方の物語が、悲劇か喜劇か……この目で、しかと見定めさせて頂きます」

 

ゆっくりとコアの出っ張りに腰掛けて、双眼鏡を手にして覗き込む。

今の彼は、ジャンカー・コヨーテスの襲撃者であるブルートゥではない。

ただの一観覧者である、オーネスト・ブルートゥであった。

 

 

------

 

一方、グリッド078では、着々と準備が進んでいた。グリッド全体の立ち上げが終わり、起動したブラックバードがカタパルトへのエレベーターへ滑り込む。程なくして隔壁が封鎖され、エレベーターが動き出す。

 

風景が上から下へ流れていく。どんどん高度が上がっていく。それと共に、乗り込むエゲトの集中力も研ぎ澄まされていく。

その間も、しっかりと深く呼吸を繰り返す。通信機器のイヤホンからは引切り無しに立ち上げメンバーたちの確認の声が入ってくる。

 

ノイズとは思えない。ただ、機械のようにひとつずつ確認していく。

 

「……AP良し」

「リペアキットフル搭載良し」

「弾薬……八割」

「各部損傷無し、アクチュエーター系良し 」

 

確認の声にひとつずつ返す。ここまで来て何かあれば無事には帰れない。

暫くすると、轟音を立ててエレベーターが振動と共に止まり、背後の隔壁がゆっくりと開く。

 

ブラックバードがゆっくり振り返ると、そこには廃棄されたであろうコンテナや残骸が乱雑に押しのけられた一本道。その先には待機状態のカタパルトが鎮座していた。

 

「……エゲト、聞こえるかい?カーラだ。余りにも酷かったんで軽く掃除をしておいた」

「グリッドの生きてる電力のほぼほぼをそのカタパルトに流してる。一回限りでぶっ壊れるがどうせ廃棄グリッドだ、遠慮なくやるよ」

 

カーラからの声に頷き、ブラックバードを進ませる形でそれに応えた。

静かに発射する物質を待つカタパルト。所々錆びたり欠けたりしてるのがカメラからわかる。一度きりの命、それでも全力をかけようとするそれに足を載せる。

 

「ブラックバード確認、カタパルトギアロック」

「電力送電開始、30秒」

「ブラックバード、体勢を」

 

 

「――了解」

 

答えるエゲト。ブラックバードが中腰の体制を取り、構える。

 

「エキスパンションユニット展開、EN充電開始」

「了解。カタパルトチャージ20秒」

 

背部の複雑な機構が寸分違わず展開し、放熱開始と同時にエネルギーの充填を開始した。

ディスプレーに広がる灰色の曇天。今からこの中に飛び込む。そう考えると背筋が震えて口角が上がる。もうすぐだ。

 

「エゲト」

 

回線が切り替わるノイズが走り、通信機から聞き慣れたビアードの声が聞こえてきた。

 

「ブッ飛ばしてこイ」

「……サンキュー、ビアード」

 

ただ一言、それだけで充分だ。

エゲトからも短く感謝を伝える。

 

「カタパルトチャージ10。カウントダウン」

「9……8……7……」

 

「ブラックバード、離陸体制良し」

「了解。6……5……」

 

「4……」

 

さぁ、始めよう。

 

「3」

 

最初で最後、一発限りの大勝負。

 

「2」

 

プロジェクト・ブラックバードの幕が開く。

 

「1」

 

 

 

「…………ブラックバード、テイクオフ!!」

 

ぐん、と強く加速Gがかかる。意識が飛びかけたが問題は無い。シートに思い切り貼り付けられるような加速と、次の瞬間には最大以上に充填された電力でカタパルトが弾き飛ばされる。

 

風景が前から後ろに凄まじい速度で消えていく。移り変わる。

―――そして。

 

漆黒の翼が、曇天に投げ飛ばされて。破裂するような鋭い音を立ててアサルトブーストが起動。

 

ブラックバードが、ルビコンの空へ飛び立った。






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更新遅れて大ッッッッッッッッッッ変申し訳御座いません。(スライディング土下座)
夏コミの原稿書いたりGBBBB行ってたりアパラチアに帰省したり影の地で死んだりしてました。
これからもこんなペースになりますがよろしくお願いします。
あ、冬コミ原稿書いてます(吐血)
あとナイトフォール組んでます。最高かオイ。
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