ブラックバード・ドリーム   作:AC/弟子

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Over the Sun


オーバー・ザ・サン

 

風景が凄まじい速度で前から後ろに吹き飛んでいく。

投げ出された肢体を制御しつつ、ブラックバードが空をきるように飛ぶ。

 

グリッド078の管制室は歓喜に湧いていた。

射出成功、そしてブラックバードが飛行体制に入り空を舞う姿が大きなディスプレーに映し出されていた。

 

「アンタたち!まだ終わってないよ!!」

 

だがその歓喜は、シンダー・カーラの一喝にぴしゃりと止んだ。

 

「ここからが本題だ。……プランAかプランBか、それとも――」

 

ブラックバードが加速しながら高度を上げていく。

 

「……死ぬ気で飛びな。その翼、へし折られないようにね」

 

------

 

風景が前から後ろにカッ飛んでいく。

強烈なGに押し付けられるが、まだ笑えないレベルじゃない。

 

フル武装、弾薬もほぼ満載のACが400キロ近い速度で空を切り裂いていく。

ただ、まだこれでブースターの出力の七割。

脳裏を過ぎるブリーフィング―――“少しずつ慣らしな、でないと吹き飛んじまうよ”とはカーラの言葉。エゲトは少しずつ抑えているブースター出力を上げつつあった。

それに伴いジェネレーター出力も上げていく。速く飛ぶにはそれだけエネルギーも必要になるから。

 

少しづつ、ゆっくり。設計や想定からは「少なく見積っても時速460km以上まで加速出来る」そうだから。

再考に再考を重ねた飛行プランも込で考えれば――更に、更に速く飛び続けられる。

 

もっと速く、もっと速く。逸る気持ちが隠せない、愚かな好奇心が牙を剥く。早く、あの世界へ。そんな事を思った刹那。

 

ディスプレーの片隅に映った一条の赤い光線。途端に鳴り響く「高エネルギー急速接近」の警告表示。全身が粟立つ。高揚してた心に氷水をぶちまけられた様な冷たい感覚が走り抜ける。

 

何かが空を切り裂いて落ちてくる。

ブラックバードの腕の側面から刹那の噴煙、クイックブースト。その真横を、一条の光線が通り過ぎて行った。

 

「……、……航行中の黒いAC、聴こえるか」

「こちらは“惑星封鎖機構(Planetary Closure Administration)”である」

「貴様は現在、惑星封鎖機構の領空域を侵犯している」

「速やかに停止し、引き返せ。複数回の警告は無いものとする」

 

通信に割り込んできた、男性の声。

惑星封鎖機構。アイビスの火以降このルビコン3を監視し、隔離を行っている軍事機構だ。

今ブラックバードが飛んでいる領域は、その領域ギリギリに侵入している。

カタパルトで射出された後、高度を上げたが――そもそも“あのグリッドが存在する高度が、領域から目の鼻の先の高さ”なのだ。

 

飛行プランはこうだ。カタパルトで射出された後、高度を上げる。AC単騎で上がりきれるギリギリの高度まで上昇し、巡航。

 

ルビコン3は、先の大災害「アイビスの火」にてコーラルが惑星に広がり、そして燃えた。

だが全てが燃え尽くされたわけではない。高高度の大気中には、「僅かながら、散り散りに残留コーラル群が残っていることが最近判明」。

 

 

それはブラックバードの飛ぶ高度においても「残留濃度は薄く、点々であるが高高度から降りてきたものが存在する」ことがRaDの調べにより分かっている。

 

大気中に残ったコーラルを巡航中のACで取り込み、ジェネレーターで燃焼させることが出来たならば。一時的、一瞬とはいえ「無限のエネルギーを手に入れられる」。

 

燃え残ったコーラルは何の性質か集まるというのも分かっており、目視で僅かにわかる赤みがかった大気を飛び繋ぎつつ、取り込み燃焼、そのエネルギーでもって加速する。

それを繰り返しながら下降、落ちていくエネルギーで更に加速してトップスピードを目指す。それが飛行プラン。

 

ジェネレーターに極限まで負荷をかけて加速するというプランも最初は提示したが、いざジェネレーターに無理が祟って限界突破(オーバーロード)でもすれば「綺麗な花火」になる。

 

ジェネレーターへの負荷や巡航速度を鑑みたプランが、今現在実行しているプランだ。

そしてその問題点が――どう足掻いても、惑星封鎖機構の監視高度に到達してしまう、という点だ。

 

「……エゲト」

 

無線通信の声の主は、ビアードだった。

ビアードはただ一言、相棒の名前を呼んだ。

――こちらは気にするな。

お前は、お前の心に従え、と。

 

「……巡航中の黒いACに最後通告する。十秒以内に、高度を下げ引き返せ」

 

再び惑星封鎖機構からの無線通信。冷たく言い放つそれに、エゲトは深く笑みを浮かべた。

 

------

 

ああそうさ。分かってるさ。

引き返すなんて選択肢は、最初から存在しないって思ってた。

何度も何度も練り上げたプランの中に「退却」なんて二文字は有り得ない。そんな言葉は犬にでも食わせておけとボス(カーラ)も言っていた。

 

だから。

 

「……こちらブラックバード」

 

エゲトは惑星封鎖機構から通信に応える。

 

「……申し出には感謝する。だが言わせてもらう」

 

俺の夢の邪魔をするな!!(黙って見ていろ傍観者が!!)

 

ペダルを踏み込む。もうすぐ最初のコーラルの滞留地点に差しかかる。

ブラックバードが加速していく。そしてそのまま、残留コーラルの中へと黒い鳥が突っ込んだ。

吸気ダクトから微量ながらコーラルが吸入され、ジェネレーターに火を灯す。

 

コクピットのエゲトには、ジェネレーターの異常燃焼――エネルギー量の一時的な増大という形で、ディスプレーに表示されたそれが視認できた。それを見るや否やさらにペダルを強く踏み込んだ。

 

「ボス!ビアード!プランAだ!」

 

「このまま惑星封鎖機構の攻撃を掻い潜った上で――最高速度を目指す!!」

 

エゲトが叫ぶ。

――引き返してなるものか。

 

俺の夢の邪魔をするのなら。

誰であろうがなんであろうが。

その全てに中指を立てて反逆してやる。

火蓋は切って落とされた。

――もう、引き返す事など出来はしない(賽は投げられたのだ)





……前回の更新から一年以上経過ァ!?!?(すっとぼけ)

お久しぶりでございます、作者です。
コミケ合同誌に参加したり、プロット消し飛んだり、車事故ったり、新車買ったり、新しいゲームをはじめたり、夜渡ってたりとしてました。
まずは更新遅くなってほんっっっっとうに申し訳ございません。アイムバックでございます。

今後もこんな感じの、気の向くままの更新ペースが続くと思いますが弊作品をよろしくお願いします。何卒。何卒。

あ、あと今年の冬のコミケにも合同誌参加という形で出ます。脱稿は済んでおります。そちらも合わせて、何卒よろしくお願いします。
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