ブラックバード・ドリーム   作:AC/弟子

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Fifth Unexpected


フィフス・アンエクスペクテッド

小さな小さな極秘計画のスタート、あれから二ヶ月半ほど経過した。

だが、ここに来て、大きな事件が起きることになった。

 

――二人だけの計画だったはず。そのはずだったのに。

 

「……どうして」

「どうして“ボス”がここに居るんです!!??」

 

エゲトは思わず叫んでしまった。

今いる場所は、ビアードがこっそり使ってる隠しガレージだ。

ガレージ内のACハンガーには、既に外装パーツが組み上がった軽量二脚のACがある。

 

「どーしてもこーしても……ビアード、説明してないのかい?」

 

やれやれと呆れたような溜息をこぼす女性。この女性こそがRaDの頭目、“シンダー・カーラ”。

数年前にRaDに加入し、圧倒的な実力やカリスマ性であっという間にRaDのトップに上り詰めた女傑だ。

 

二つ名である“シンダー”、灰被りは半世紀前の未曾有の大災害の生き残りを意味するらしいが……彼女の見た目はどう見ても、三十代後半のようにしか見えない。それを深掘りしようとすると死ぬとか、ドーザーの妄言とか、色んな尾鰭がついてきている。

 

それに付けてもその実力は確かだ。ACの操縦技術も折り紙付き、その上乗機“フルコース”は全てのパーツが彼女の手製で更にかなりの性能を誇るモノなようで、傭兵支援システムのランク付きとしても知られている。

 

そんなRaDの頭目が、プロジェクト・ブラックバードの秘密の中心地点にいるのだから驚きもする。

 

「それが、だなァ……」

 

非常に申し訳なさそうに頭をかきつつ口を開くビアード。それは、つい数時間前の出来事だった。

 

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「さぁテ……」

 

グリッドの端でいつものようにコーラルを服用し、ぽーっと遠くを眺める。エゲトがゴミ拾いから帰るまでまだ何時間かある、その間にガレージで例の機体の案を詰めなければ。そう思案して立ち上がった時だった。

 

「―――やぁ、ビアード」

 

背後から女性の声がかかり、思わず肩を跳ねさせ振り返る。

恐る恐るに振り返ったそこには、RaDの頭目たるシンダー・カーラの姿があった。

 

「ボ、ボス……どうしたんデ?」

「私もちょっと一服をね。まぁ付き合いな」

 

着流した上着のポケットから煙草を取りだし火を付けて、ゆっくりと煙を吸い込んで吐き出す。

 

「ここは良い場所だね。グリッドから下の景色を一望できる」

「へ、ヘヘ……そうですネェ……」

 

緊張してしまう。それはそうだ、滅多に姿を表さないRaDのボスが目の前でタバコを吸っているのだから。

 

「……ところでビアード、アンタ、私に何か隠し事してないかい?」

「………………ハ?」

「とぼける必要は無いさ、チャティが気になるモンを見つけてね」

 

紫煙を吐き出し、再び煙草を咥えて煙を口に含んでカーラは続ける。

 

「エルカノからなにか受け取って、それをどこかへ持ってったってのを聞いたのさ。ついでに、アンタの相方……」

「エゲトって言ったね?アイツの最近のゴミ拾いも、どうも合わない点が多い。持ってきた量と出された量が一致しなくてねぇ」

 

ビアードの脳内でアラートが鳴りまくる。

 

「……正直に言えば、今なら許さないこともないよ」

 

低い声で脅される。

少し前だ。

RaDに所属してたイカレ野郎が、資金の大半とカーラの秘密道具を持ち逃げして“ジャンカー・コヨーテス”に流れたという話。

あれと同じ疑いをかけられている。

 

「……やましい事はないんですヨ、ボス」

「だったらなんで青い顔してるんだい?そういう顔は笑えないよ」

 

ひ、と小さく声を上げてしまう。能面の様な顔。確実に怒ってる顔だ。

 

「……エゲトが帰ってきたラ、改めて説明してモ……?」

「…………いいだろう。納得できる説明じゃなかったら、その時は……分かってるだろうね」

 

吸い終わったタバコを踏み消して立ち去るカーラ。

ビアードには、踏まれたタバコが、もしかしたらの自分たちの姿に思えてならなかった。

 

 

------

 

「……ってワケヨ」

「説明になってないからなこのヤク中!?」

「ヤク中じゃねぇって何回言わせりャ」

 

「アンタたち」

 

三人しかいないガレージの中に、カーラの低い声が響いた。

 

「喧嘩なら他所でやりな。それともグリッドから蹴り落とされたいかい?」

 

真剣な眼差しだ。これはヤバい、二人にそうわかるほどの鋭い眼光。

 

「……ボス、端末のハックは終わった」

「ご苦労、チャティ。さて」

 

いつの間にやらカーラは片手にしていたタブレット端末をガレージの端末に繋いで中を調べてたらしい。端末からは抑揚のない男性の声がする。

それを聞いたカーラは頷いて答えて、近くにあったパイプ椅子にドカッと座る。

 

「……申し開きを、聞かせてもらおうかねご両人?」

 

------

 

「…………なるほどぉ?」

 

それから数十分が経った。

エゲトとビアードの口から説明された、プロジェクト・ブラックバード。

ルビコンで最速のACを作るという計画の話。

最初は訝しげに眉間に皺を寄せていたカーラが目を丸くしたと思ったら、段々と前のめりになって話を聞いていた。

 

「つまりあんた達は、他のドーザーに横入りされたくなくて、二人でこっそり、隠しガレージまで使って、コレを?」

 

親指でクイ、と示す漆黒の軽量二脚AC。

 

「……はい」

「それもエルカノから初期ロット買い込んで?今は金が足りなくてガワだけ組んで小康状態?中身も兵装も決まってない??」

「……そう、なりますネ……」

 

カーラが話に食いついてはいる。だがこちらとしては冷や汗が止まらない。

計画が潰れるならまだ良いが最悪自分たちの命がない。エゲトもビアードも、そう直感しているからだ。

 

「…………っ、は」

 

だが、当のカーラは違った。

次の瞬間、カーラが大声を上げて笑っていた。

 

「……っ、ははは、はははははは!面白い、笑えるじゃないか!」

「無武装で最速出しても面白くないから武装状態で挑戦するだって?それは最高だ!っは、ははははは!チャティ、笑えないかい!?」

「ボス、笑えるな。俺は笑うことは出来ないがな。それと、二人とも唖然としてるぞボス」

 

端末からの応答にも構わず笑い続けるカーラ。

唖然とするエゲトとビアード。

そして、RaDの頭目が一頻り笑って、口を開く。

 

 

「…………全く、全くもう!最高に笑えるじゃないか!」

その言葉は、救済の言葉であった。

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