ブラックバード・ドリーム   作:AC/弟子

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Eighth Chaos Partytime


エイス・ケイオス・パーティタイム

……一週間という時間は余りにも早く過ぎた。

“光陰矢の如し”。そういう諺が東洋にはあるなとエゲトはぼんやりと考えた。

 

今彼らは、決戦の地である廃棄されたグリッドへと向かっている。大型のAC運搬用トレーラーにブラックバードを乗せ、エゲト、ビアード、カーラの三人と数名の技師、護衛にチャティ・スティックのサーカスと、数機のMTという構成。

 

“割と厳重な警護体制だよな”なんてまたぼんやり考えつつ、ガレージスペースを兼ねたトレーラーの荷台コンテナの中で揺られつつブラックバードを眺める。

 

仰向けに寝かされて安置されたブラックバードは、僅かな非常灯のみのコンテナの内部でも存在感があった。

座っていた体制から立ち上がり、歩み寄ってそっと撫でる。

 

「……マリッジブルーじゃあるめぇシ、どーしたよそんな顔して」

 

背後の扉が開く音がして、ビアードが姿を現した。エゲトはちらりとそれを一瞥して頭をブラックバードに向ける。

 

「……終わるんだな、って」

「終わるゥ?馬鹿言えまだ始まってもねぇだロ」

「そうじゃないんだ、なんていうかこう……意外と短かったなって」

 

ACを仰ぎ見つつ呟く。ほんの些細な独り言から始まってしまった計画が、成就の形を迎えて終わろうとしていたのだから。

 

 

「ビアードの言う通り始まっても無いかもしれないけどさ」

「楽しかったぜ、ホントに」

「……だからこそ、終わるのがもったいないって言うか」

「…………虚しい、のかな」

 

終わればまた元通りだ。

何一つ変わらない日常へ戻っていく。またゴミ拾いになるのか。

今までこの時のためにやってきた事たちが頭を過ぎり消えていく。思い返せば思い返すほどに、全て輝いて見えるような気さえする。

終わって欲しくない、まだ浸っていたい、そんな事を考える。

そんな独白を壁にもたれて腕組みして聞いているビアードが視界の端に映る。

 

「……でもさ」

「終わらせなきゃいけないよな」

 

でも、それでも。

終わらせて次へ行かないといけない。

その“次”が、どんな世界だとしても。

 

「せめて、悔いなく笑って終わらせよう」

 

「……そーだナ、それでイイ」

 

ビアードは首を縦に振る。

 

「少しでも迷ってんならぁよ、その頬引っぱたいて分からせてやろうと思ってたゼ」

「……悪いな、心配かけて」

 

「大丈夫だぁヨ、お前はただ飛べば良イ」

「コイツを使って、テメーの夢を叶えりゃイイ」

「その後のことなんかそれから考えロ」

 

エゲトを真っ直ぐに見据えて激励するビアード。

色んなことを乗り越えて今がある。乗り越えた事が輝いて見えることもあるだろうが今はそれを振り返るより前だけ見てろ、と。

 

 

「またアタシ抜きで逢瀬かい?お熱い事だね」

 

開いたままの扉から次に入ってきたのはカーラだった。

女郎蜘蛛のエンブレムが肩に刻まれたジャケットを着流したいつも通りのスタイルだ。

 

「最終確認と行こう。アタシ達は廃棄されたグリッドに向かう。到着したらビアードに立ち上げを付き合ってもらいな。ブラックバードが起動したら待機。ビアードはアタシ達に合流して先にグリッド内に入り、そこの管制室へ入る」

「管制室を立ち上げたらこちらから通信を入れる。ブラックバードでエレベーターに入ってグリッドを上がり、カタパルトに向かう」

 

「――あとは悠々自適、超高速の空の旅さ」

 

下調べでは廃棄されたグリッドはどうやらACや輸送機の中継地点としての機能を持ったものらしく管制室や回転式発着場、射出用電磁カタパルトを備えている。

 

奇跡的な事にそれらの機能は生きている。電力もグリッド内のジェネレーターを起動すれば問題ないと先遣隊からの報告を受けている。

 

「……アンタたち二人ともよくここまでやりきったね」

「アタシから言うことは何もないよ」

「いや、敢えて言うのならばそうだね」

 

「……“鳥”になってこい」

 

カーラからの言葉に頷くエゲトとビアード。決戦は近い、そう思っていた瞬間だった。

 

 

「……ボス、異常事態だ」

 

タブレットから発せられた抑揚のない声――チャティからの通信。

 

「先行していたが、正面方向に大量の地雷を検知した。これから吹き飛ばす。トレーラーを停止してくれ」

「……おかしいね。先遣隊の情報と違う」

 

カーラが呟く。先遣隊からもたらされた情報ではこの辺りに他のドーザー達はおらず、また廃棄グリッド内も人の立ち入った痕跡がないという話。撮影した画像でもそれを確認していた。

 

道中に関しても障害になりそうなものもないと。だとしたらこれは、恐らく。

いや、“間違いない”。

 

「……チャティ、護衛隊!戦闘態勢だ!」

 

カーラの一声がトレーラー内に響き渡る、それと同時だった。

 

「……こちら後方護衛!ボス、MTの軍勢!」

「数と所属は!?」

 

「小型が多数、BAWSの四つ足が一!所属は――」

「――“ジャンカー・コヨーテス”!!」

 

三人が顔を見合せた。カーラのタブレットには、後方に控えた護衛MTからの画像が映し出されており、敵方の小型MTの装甲板に描かれている犬のようなコヨーテのエンブレムが映し出されている。

 

「……何でコヨーテスの連中がここにいるんだヨ!?」

 

ビアードが驚いたように叫ぶ。然し更に続いての事だった。

 

 

「……ようこそ、カーラにご友人の方々!」

 

男性の声が、響いた。

その声に目を丸くして、次の瞬間には怒りを映し出したのはカーラだった。

 

「貴方方が素晴らしい催しをするというのを“偶然”耳に挟みましてね」

「我々もそのお祝いという事で馳せ参じましたよ」

 

カーラたちの返答を待たず、男性のゆったりとした声が辺りを支配した。

その声に続いて後方部隊からの報告が飛ぶ。

 

「……ボス、ACが一機!ありゃあ…………!」

「“ミルクトゥース”だ!」

 

「私からのサプライズ、楽しんで頂けましたか……カーラ?」

 

――オーネスト・ブルートゥ、急襲。

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