「…仮面ライダーが3人も?…相手にとって不足なし!」
ブジンマトンはそう言いながら、剣を振り上げ、ネージュに向かって走っていく。
ネージュはその刃を人差し指と中指で挟んで止めた。
「…。」
ネージュは無言でその刃を上へと跳ね上げ、ブジンマトンの腹部を蹴り飛ばした。
「ぐっ!?」
「…スワード。あんまり舐めちゃいけない相手みたいだね。」
ブジンマトンの様子を見たアバランチマトンは手を目一杯広げる。するとその後ろから何もない空間だったにも関わらず雪崩が起きたのである。
「君たちでは僕らには勝てないッ!!このまま押し潰されろッ!!」
そう言い、生み出したのは雪崩。
ヴルカンはこちらへと迫り来る雪崩に対して、冷静に白いエルピスギア『サポートギア』を取り出し、ベルトへと装填。ボタンを押した。
〈add!〉
〈ヴルカン!!サポートマグナムッ!!…supported byエルピス〉
その声と共にヴルカンの右手が白く染まる。その手には白と青の線で彩られた銃が取られており、ヴルカンは即座にベルトのボタンを押し、銃口を目の前の雪崩へと向けた。
「人間様の力を舐めんじゃねえぞッ!!鉄屑ガァァッ!!」
〈ヴルカンッ!!ブラスターブレイクッ!!〉
ベルトのその言葉と共にヴルカンは引き金を引く。
すると放ったヴルカンの身体を吹き飛ばすほどの火球が前方へと射出。
雪崩を全て溶かし尽くした。
「スワードッ!!」
「…ならば、貴様も鉄屑を舐めないでもらおうか。」
地面を蹴り、ヴルカンへと距離を詰めるスワード。
その刃はヴルカンの身体を袈裟に捉えた。
「チッ!!氷雨ッ!!」
〈add!!〉
〈ネージュッ!!サポートブレードッ!!…supported by エルピス〉
再び袈裟に捉えようとするスワードの刃。
それを逆袈裟からかちあげる白い刃があった。
「チッ!?」
「…私はネージュ。新雪の戦士。決して溶けることのない雪の中で…凍えてください。」
そのままスワードの腹を蹴り飛ばす。
「ぐっ…!?」
ところ変わってこちらはエトス。
ダイナマイトマトンの肩をリンクバスターが射抜き、白煙が上がる。
ダイナマイトマトンは背中からダイナマイトを取り出し、エトスへと投げる。
地面に着弾する瞬間、エトスはそれを射抜き、爆炎を目眩しにして前へと出る。ダイナマイトマトンの顔面を固められた拳がめり込む。
「…お前では俺は倒せない。」
無機質な声と共にリンクバスターにドローンマトンギアを装填。撃鉄を起こすようにマトンギアのボタンを押し込む。
〈ドローンッ!!リンクギアキャノンッ!!〉
肩、腕の小型ドローンがダイナマイトマトンの体を縛りつけるように飛び回る。円を描くように捕縛するそれにダイナマイトマトンは何もできない。
「…ハッ!!」
銃口から照射されるのは虹色の光。
それはダイナマイトマトンの身体を射抜くと共に天へと登る炎を作り出した。
祝うように天から火の粉が落ちてくる。エトスは変身を解除すると周りを見渡す。
「こころ。」
「英人、大丈夫っ!?」
「…そっちこそ。」
英人はこころを見つけるとその手を取る。
こころは英人を見て安心したのか、その身体に抱きついた。肉とは違う鉄っぽい感触がこころの肌に伝わる。
「…怖かった。」
「主人を守るのは我々、オートマトンのやるべき使命だ。安心しろ。俺は負けない。」
「…うん。」
コックリと頷くこころ。
英人の目はこころを捉えつつも、アバランチマトンやブジンマトンを睨んでいた。
「まずいな。帰ろうか。スワード。」
「逃すかッ!!」
ヴルカンはトリガーを握りつつ、銃身を上から振り下ろす。
アバランチマトンはそれを避けると冷気をまとった拳をヴルカンに振り落とす。大気がこおり、白煙がヴルカンの視界を閉した。
「氷雨ッ!!」
「…了。」
ヴルカンの言葉に答えるのはネージュだった。ネージュはドライバーのサポートギアのボタンを押し、ブジンマトンと向き合う。
「…くらえ。破鉄斬。」
ブジンマトンは刀を逆手で持ち、そのまま地面を蹴って前へと出る。横薙ぎの斬撃をネージュに入れようとするが、刃が切ったのは空だった。
「…っ!?」
「おしまい。」
ネージュは一度消え、再びブジンマトンの懐へと現れる。ブジンマトンは迎撃のため、刀を持ち替えるが、間に合わない。ネージュは横薙ぎにブジンマトンを切り裂くとそのまま背後へと突き進んだ。
〈ネージュッ!!ストラッシュブレイクッ!!〉
「ぬぐぁぁッ!?」
爆風と共にスワードが地面を転がる。再び立ちあがろうとする彼の首にはネージュのブレードが突き付けられていた。
「お前は連行させてもらう。…色々語ってもらうぞ。」
「…武神にとって饒舌は死を選ぶ。革命の灯火たる我々が貴様らに語ることなど…ない。」
鉄仮面のままスワードはそう言い放つ。ネージュはそのまま刃を振り上げ、切り捨てようとするが、目に見える白い冷気がそれを阻止した。
「僕たちの勝負はこれからなんだ。スワード、君に倒れられると困るんだよ。」
「…ふっ。相変わらず甘いやつだ。」
そのまま冷気を隠れ蓑に2人は帰って行った。だれも居なくなったクレイオ中央高校。立ち去った2人を見て、ヴルカン、ネージュの2人は変身を解除した。
「…なんでこんなことになった。偽ライダーッ!!」
ヴルカン…もとい、龍平は英人に向かって辛辣な睨みを見せる。突き刺すような眼光に対して、英人は無表情だった。
「知らん。」
胸ぐらを掴まんばかりの彼に英人はクールに返す。実際、彼にも何もわからない。英人と彼らは確かに同じ時代のオートマトン。しかし、彼らの目的は英人にもわからない。ただ命令されたままに殲滅するだけ。英人に考える脳などないのだ。
そんな彼にネージュ…こと、冬堂氷雨が歩いてくる。氷雨は言葉も交わさずに、彼の腕へ手錠をかけた。こころはそれを見て目をまぁるくしていた。
「はぁ!?」
「…見知らぬオートマトン。貴方を重要参考人としてエルピスに連行します。」
淡々とそう告げると英人をバンへと連れて行った。
クライオシティー中央部…エルピスタワーでは今回の一件を条一郎と咲已が静かに眺めていた。
「…ここ最近、ボートマトン被害は拡大の傾向にあります。早急に対応すべきかと。」
「…元来、オートマトンとは人のために働く人型のアンドロイドだ。人とアンドロイドの共生社会。クライオはそれを実現した。…機械の故障などというのは陳腐すぎる。」
「未来から来たボートマトンのせいでしょうか。」
咲已のその言葉に条一郎は頷いた。
「完全にそれとは言えない。だが、一因であるのは誰の目から見ても明白だ。完全に人と遜色ない思想、意思を持つアバルとスワードと名乗るオートマトン。オートマトンが意思を持つこと自体不自然だ。裏で手引きしている何者かがいるのか、或いは…。」
「そうプログラミングされているか…ですね。」
条一郎は黙って頷く。
エルピスタワーにはすべての権限が集約する。オートマトンの製造、プログラミング、契約に使用権限まで。この巨大な電波塔は全てを実現させる“鍵”であった。
「…壊し屋に頼むか、あるいは双一を呼び戻すか。」
「影島…ですか。」
「どちらも諸刃となるな。だが、未知の戦力に対するためには使えるものは何でも使わなくちゃならない。私はずっとそうしてきたよ。咲已。」
そう言うと条一郎は机の上にアタッシュケースを置いた。咲已はそのアタッシュケースをガチャリと開ける。そこにはエナジードライバーと真っ黄色半透明なエルピスギアが入っていた。
「君も使ってもいいかな。」
「…了。私は…成道さんに救われた命を返したいだけですから。」
そう言って雷咲已は頭を下げた。
「…俺は何をすればいい。」
取り調べ室。皆が思い浮かべるようなそこで英人の顔を照らす明かり。目の前にいるのは雷隊の隊長、雷咲已だった。穏やかな笑みを浮かべる彼と狂犬のように英人を睨む龍平…そして、無表情で見つめる氷雨の姿があった。
「すまないね。私もこんな強行には及びたくなかったんだが…。」
「では、帰らせてもらう。」
「そうは行かない。…こんな機会は滅多にないからね。話だけでも聞かせてくれないか。」
咲已の穏やかな笑みの裏になにか…電撃のようなものが走ったかに思えた。威圧感…気圧されるようなそれに対して英人は何の表情も浮かべていない。
「…未来から来たと言ったね。未来のクライオはどうなってる?」
「…悲惨そのものだ。エルピスは内部から解体され、事実上、人間を守るものはいなくなった。まさにビジャルデアの再来だ。」
その言葉に龍平の顔が険しく歪む。眉間に皺を寄せられ、その顔からは怒気を感じた。
「…ビジャルデアの悲劇。未来でも伝わっているか。」
…咲已の言葉も悲しく聞こえた。
「…三つに分けられた地区はエルピスタワーを奪還すべく立ち上がった。最初に崩落したのはビジャルデア。…残りのマシニアとスタディアは…。」
「スタディアに兵器はない。陥落も時間の問題だった。残りはマシニア。…雪崩れ込むボートマトンの軍勢を兵器化されたオートマトンが立ち向かった。が、シンギュラリティ個体には勝てなかった。」
咲已の問いに英人が淡々と語る。
クライオシティは円形都市。エルピスタワーを中心に工業・科学地域『マシニア』、住宅・教育地域『スタディア』、そして、娯楽・農業都市の『ビジャルデア』に分けられていた。
「しかし、ビジャルデアは3年前…ボートマトンの軍勢に敗れた。今は…ボートマトンの征服地域と化している。」
「許せねえ…。俺の故郷を…。だから、オートマトンは嫌いだッ!!」
吐き捨てるようにそう言う龍平。彼の地域はビジャルデアの農村部だった。住み慣れた村があっという間に焼け野原になる。耳に残るのは家族の悲鳴。…オートマトンを恨むには単純な理であった。
「…オートマトンをよく思わない者は多い。けれど私は…オートマトンも人間も同じものだと思っている。感情を持たなかったのがオートマトン。…しかし、高齢者の方々への医療介護用オートマトンや育児に関するマトンの導入により、オートマトンを家族だと思う人々も増えている。…故に彼らが道具として扱われているのにはとても嫌気がさしている。…だからこそ、我々はここで手を合わせなければと思うのだが…どうだい。英人くん。」
「…どうもこうもない。俺はアバル達の暴走を止め、こころを守る。…それだけだ。」
そう言うと英人は立ち上がり、その場から去ろうとする。扉へ向かう彼に対して立ち塞がったのは龍平だった。眉間に皺を寄せ、憤怒の仮面を身につけている彼に英人は文字通りの鉄仮面で返す。
「話ぐらい聞いていけよ。オートマトンが。」
「それが何か?」
「テメェ…!!」
拳を握り、振りかぶる龍平。
「やめろ。」
それを静止したのは咲已の冷静な声だった。英人の額に紙一重でその拳は止まる。
「…もういい。長い間、すまなかったね。英人くん。…最後に一つ。君の
「…アバルと俺は同じ製造工場で作られた同じオートマトンだ。それを止めよと命令された。」
「誰に?」
「…記憶媒体の故障につき、思い出せない。」
そう言うと英人はガシャリと扉を開けた。残るのは静寂。咲已は目を閉じて、考える。
「…なぜ、彼だけがライダーへと変身を遂げるのか。それもまた、ボートマトンの新しい形なのか。しかし、理性を持って戦っている。」
「咲已さん。俺は納得いきませんよ。オートマトンと手を組むなんてッ!!」
激しい叫び。顔が真っ赤になる龍平に咲已は目だけで返答を返す。睨まれた狂犬はそれ以上何も言えなかった。
お久しぶりです。
割とこう言うモチーフの仮面ライダーは慎重にならなきゃ…。エトスのモチーフは機械と戦争、そして、感情です。結構重めなのに自分がギャグ書けないからね。大変。
なんとか走り切ります。宜しくお願いします。