社交界から数日が経ち、魔王サーゼクス・ルシファー様の紹介で俺はある方と修行をすることになった。
………なったはいいんだが、うん、死ぬ。冗談抜きで死ぬ。
そう、俺は今どこにいるかと言うと雪山だ。
察しのいい人はわかると思うんだが、俺はドラゴンと追いかけっこ改めて生死をかけたサバイバルをしていた。
「ほら、早く動いて。躱せなけば凍りつきますよ」
そう言いながら背後のドラゴンが氷の
「凍りつくっていうそれ食らったら普通に死ぬっ!?」
俺はギリギリで回避しつつ、牽制で小さな火球を作り出してドラゴンに向かって撃ち込む。が、威力が弱すぎるのか直撃してもノーダメ、無傷だ。
「何ですか今のは?それでは牽制にすらなりませんよ!」
「っ、またブレス!マジでやばい」
相手の攻撃手段はブレスのみで連射はしないという縛りはあるものの、素人に毛が生えた程度の実力で子供のこの体では長時間雪山で走り回るだけでもかなりのハードワークだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、やばい。寒い。それに疲れで頭が回んなくなってきた。やばい、死ぬっ」
俺はドラゴンから一心不乱で逃げ回りながら一日中追い回されていた。
何故このような経緯になったかと言うと、俺はサーゼクス様に頼んで出来れば実戦形式で修行をつけてもらえる人を頼んだのだ。
俺は思ったのだ。ハイスクールDxDの世界に置いて近接戦闘が弱いのは致命的ではないかと、振り返ってみると作中に登場するキャラの多くが近接戦闘に秀でている人が多い。
素手で戦う主人公のイッセーやサイラオーグは勿論、木場やゼノヴィアの様な近距離で戦うキャラでなくとも、才能マンなヴァーリや天界のジョーカーと呼ばれるデュリオですら、格闘戦に長けたイッセーと思いっきり殴り合いをしている事実。
その事が頭に浮かんだ時、俺は恐れた。
勿論、中距離や遠距離から魔力で砲撃をするのだって強いんだろうが、近接戦闘できませんでは肝心な時にやられる打たれ弱いタイプになんではないかと……
だからこそ、魔力を使った鍛錬と並行して自身の体を鍛えることが大事だと思った。
そう考えてからは早かった。普段から筋トレはしていたが、あくまでも基礎的な能力をあげるトレーニングだけではすぐに限界が来る。より本格的に鍛えられるよう実戦形式で修行をつけてくれる人を探して貰えるように俺はサーゼクス様にお願いをしたところはサーゼクス様は二つ返事で快く了承してくれた。
そして俺が修行相手として紹介して貰えたのが元龍王であるタンニーン。
とはいえ、まだ齢一桁でしかない俺を直接鍛えるのは冗談抜きで死ぬ可能性があるため、俺は週一のペースで、タンニーンの治める領地で部下のドラゴンに丸一日追い回されることが当分の修行となったのだ。
しかし、自分で頼んだもののマジで辛い。心が折れそうだ。
かなり手加減してもらえてるとはいえ、なれない足元でドラゴンに丸一日追い回されるのは、物理的にも精神的にもキツい。
途中、休憩を挟むとか食事の時間の確保とかくれるとかそういう問題じゃない。マジで辛い。うん、
「特訓するって言ってもよくそんな大変な方を選ぼうとするにゃん」
「でも頑張ってる兄様はとてもステキですよ姉様」
「そうは言っても白音、こんなボロボロじゃいつまでも持たないわよ」
俺の様子を見て呆れた様子の黒歌とそれをすかさずフォローする白音。これまでもちょくちょく会いに来てた甲斐もあって、二人とだいぶ打ち解けて来て俺も嬉しい気分だが、正直今はそれを喜べる元気もない。
「はぁ、はぁ、マジできつい。死ぬかと思った」
「お疲れ様です兄様」
そう言いながら倒れてる俺の頭を白音が優しく撫でてくれる。
それに白音の兄様呼びにも癒される。俺一人だと確実に挫折してただろうけど、これなら俺も頑張れる。
「それでルキウス、経緯はとにかく、急に修行をつけてもらうなんてどういう風の吹き回しなの?」
「どうしたの黒歌?俺と鍛錬はイヤイヤじゃなかったの?」
「確かに無理やりやらされるのは面倒だったけど、急にドラゴンと修行するなんて言われたら何があったか気になるのは当然にゃん」
「うーん、何でって言われても半分は成り行きだからなんとも……」
俺は苦虫を噛み潰したような顔をしていると「何それ?」と興味無さげに黒歌が一瞥する。
「でも、兄様は凄いです!ドラゴン相手に一日中戦える人は中々居ないです!」
「うーん、あれは追い回されただけだから戦いですらないと思うけど……まぁ、同じことやれって言われたら多分みんなやらないだろうね」
「ふーん、で、その追いかけっこ次もやるのかにゃ?」
「ん?やるよ。確かに死ぬほどキツイけど、実際前より強くなった気がするし……」
俺は自分の掌に作り出した風でささやかな渦を生み出し、それを更に圧縮してビー玉サイズの球体を作った。
「なんだかんだであのドラゴン、ちょくちょく
「そういうそっちはどうなの?仙術と妖術の修行してるんでしょ?」
「こっちも前よりできるようになったけど、ルキウス程ぶっ飛んだことはしてないにゃん」
「私はまだ全然です……」
どうやら、黒歌は順調で白音はまだまだらしい。
「白音はまだ修行し始めたばっかなんだろ?あまり黒歌と比べすぎちゃダメだぞ。自分のペースで少しずつできるようになればいいさ」
俺は慰めるように白音の頭を優しく撫でる。
すると、気持ちいいのか喉を小さく鳴らしている。
こうしてみると、見た目以外も結構猫っぽいんだな猫又って
俺達はその後も他愛のない会話を続け、平穏な時間を過ごしていた。