呪いで武器を扱う事しか性欲発散できない俺が人型の魔剣でようやく卒業するやつ   作:ギンギン丸

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ハァ……ハァ……

 ようやく馬達の護衛任務が終わったのはそれから1日と少し経った頃だった。時刻は夕暮れの少し前ってとこ。今から新しい仕事を探すには遅い。報酬で懐はそこそこ潤っているし、情報収集も兼ねて酒場に移動することに。

 

 南部のアバランドから更に南部近くの街だ。いうならば此処が他種族との最前線の地だ。友好的なドワーフの国々とも近いが、スケイブンの種族やグリーンスキンと呼ばれる化け物達の国も近い。そいつらに対抗するため人間種族の勇士達も常に駐留している。

 

 そんな兵士達が多くいるってことは稼ぐ場所を求めた商人達も集まり、街もある程度発展している。首都や都市って程では無いけどそこらの村や街なんかよりは店も多い。

 

 適当に道ゆく人に聞いてたどり着いたのは酒場兼宿屋の【緑の仔馬亭】。まぁ基本的にこの世界だと酒場は宿屋も兼ねているのが普通だ。年季は入ってそうだけど煉瓦造りの頑丈そうな店に見える。

 

「泊まりかい? それとも飯か酒?」

「両方で」

「銀貨1枚だ」

「あいよ」

 

 木製のテーブルに出て来たのは豆と肉団子のスープとしっかり焼かれたステーキ肉とたっぷり盛られた蒸したジャガイモ。ジョッキのエールは結構ハーブが効いてて正直そんなに好きじゃない。中央部から大量の物資が送られてくるが保存を重視としてるので濃いめの味つけのものが多いんだ。

 

 体を動かして食う濃いめの味付けの料理の美味いことよ。俺はそれらをすっかり平げて盛り上がっている他の客を見定める。兵士らしき連中は日々戦闘に明け暮れてて、逆に話題や噂に飢えている事が多い。祝福を解く手段や<魔剣>について噂だけでも聞いている可能性があるかも。

 

 追加で金を払って3人組の兵士のもとへエールのジョッキを持って移動。北部出身者だろうか、ガタイも良くて灰色の髪の毛が特徴的だ。つまり俺が祝福(呪い)を受けているコーンの信奉者である蛮族の一番の被害者でもあるってこと。

 

 バレないとは思うけど一応慎重に……。

 

「やぁ兵隊さんお疲れ様。これ普段世話になってる気持ちだ、受け取ってくれ」

「ヒュ〜。コイツはご機嫌だ! 八大神に感謝!」

「見どころがあるな若いの。今日は俺たちが鼠共を一番ぶち殺した一番の功労者だ」

「ああ!」

 

 顔を赤らめてテンションも高い。だいぶ酔いは回っているようで情報を聞くにはちょうどいい塩梅だ。

 

「道理で! 随分強そうな兵隊さんだと思ってたけど俺の目は狂って無かったみたいだ!」

「だっはっはっは! そうだろう!」

「いやぁ、あの妙な武器を持ったスケイブンの頭さえ逃さなきゃなぁ。今頃もっとデカい店で娼婦を何人も抱きながら豪遊出来たってのによぉ!」

「いやここでも十分だろう」

「カーッ。恋人持ちはこれだからつまらねぇ!」

 

 ん? 妙な武器?

 

「兵隊さん。その妙な武器って何のことだい?」

「あ〜。《魔剣》みたいな変な武器持ってたんだよ。振るうたびに土煙や砂が舞い上がって視界が悪くてしゃあなくて逃しちまったんだ!」

「……アンタも背中に背負ってるような奴だ」

 

 突然3人の中でも比較的落ち着いている一番デカい鷲鼻の男に言い当てられて思わず背中の魔剣に手を当てる。見た目だけだと高そうな武器だ。それでも万が一《魔剣》の価値が分かってる奴に狙われるのを防ぐ為に油布で巻いてあるってのに何で?

 

「……どうやらマジみたいだな」

「そりゃ珍しいな」

 

 そいつは軽く目を見開いて葉巻に火をつける。……カマかけられちゃったか。こうなりゃ今更惚けても遅いだろうって開き直った。別にこの人たちと敵対してるわけじゃないし。なんなら人間種族を外敵から守ってくれている英雄だ。

 

「よく分かったね兵隊さん」

「そりゃそうさ。こんな前線で荒くれ者のいる場所で剣を直ぐに抜けないよう布で巻いてるんだ。そんな割に戦い慣れてそうな奴がそれでも隠す武器ってのはよっぽどの代物か《魔剣》ぐらいしか考えられんだろう? それにスケイブンの話で詳しく聞いてきたからもしかしてって思っただけさ」

「あっ」

 

 これは完全に俺が馬鹿だったやつじゃんね……。

 

『……馬鹿』

 

「そいつは酒の肴にピッタリだ。ちょいと見せてくれよ!」

 

 まぁ普通はそうなる。だからバレたくなかったけど今更断って変に争いを起こしたくない。事を起こしてフリーの傭兵と正規の兵士の証言じゃどっちが信じられるかなんて分かりきっている。

 

 油布を縛っている紐を解いてそこから出て来たのはロングソードだ。両刃の剣で若干青みがかった刀身が特徴的なだけでその他は特に複雑な装飾等の飾り気のない得物。しかし歴戦の兵士には誤魔化されなかったようだ。刀身に眠る刃の冷たい光に魅了されている。

 

『……あまりジロジロ見ないで』

 

 単純にモンスターや人を斬る為だけに拵えられた武器。《魔剣》の彼女はこうしてジロジロと見られる機会がそんなに無いので結構嫌がってるみたいだ。

 

 《魔剣》にも銘はあるんだが、(なかご)に彫られた銘を見るのは《魔剣》的にNGらしくよっぽど気を許す関係でもなければ明かさないものらしい。そういう訳で俺も便宜上《魔剣》や《魔槍》と呼んでいる。

 

 そうこうしているうちになんだか抜き身の武器を見せて店内の視線が集中している気がする。あ、今露骨に嫌そうな顔をした店主と目が合った。

 

「……ここら辺で」

「せめて触らせて──いやっせめて一振り振ってみてくれ!」

 

 すごく嫌な顔で無言の抗議をしてみたけどだいぶ酔ってるみたいで通じない。酒場の店主は許してやるからさっさと済ませろと言わんばかりに頷く。視線を《魔剣》にやると嫌そうに柄が震えるのを感じた。

 

『血を見る以外で……私を振らないで』

「我慢してくれよ……一回だけだから」

『……振ったら暫く口をきかないから』

 

 すっかり拗ねてしまっている。しょうがないじゃないか! 俺だって別に好きで見せたいわけじゃないんだけどこの気まずい空気をささっと払拭したいんだ。静かに不満を主張し続ける《魔剣》を無視して決行する。

 

 軽く呼吸して、息を整えて。握りは緩く、しかし決して離さない意識で刀身の重さを活かす。実戦でもあるまいし速度は要らない。

 

 青い刀身の光が振った軌跡に沿って空気に暫く残留するような錯覚を覚える一振り。周囲の人間がヒュッと空気を吸い込んだのが空気で分かった。

 

 酒場の空気がその瞬間に別の場所へと変わってしまったような感覚。

 

 モンスターや多種族に振るうのと比べたら些か脳内の快楽物質は少ない。少ないが軽く腰の辺りから甘く快感が滲み出る。

 

──やはり()い。

 

『ハァ……ハァ……』

 

 火照ったような吐息が《魔剣》から聞こえる。普段は俺もほぼイキかけながら《魔剣》を振っているから彼女の声を真剣に聞いてなかったけど妙に色っぽい声だ。

 

──剣の癖に生意気な。有機物の俺ですら性欲を生身の女にぶつけられないってのに! ……考えたらムカついて来たな。

 

「これで良いっスかね?」

「お、おう……十分だ」

「それでさっきのスケイブンの話なんですけど──」

 

 なんだか酔いが冷めたらしい兵士の人に詳しく聞き込む。どうもここ二週間ぐらい前城壁から4〜6km近くに現れるスケイブンの部隊に《魔剣》持ちらしき奴が現れたらしい。

 

 人間が作り出した《魔剣》製造技術だけど似たような曰くつきの武器・防具は色々な種族にも存在している。スケイブンの種族にも近代兵器に通じるレベルの科学力を持った部族がいるらしい。恐らくそれ関係のブツなのだろう。

 

 

 翌日俺は軍の基地に向かった。正規軍も日夜戦闘していて疲弊している。俺たちのような傭兵も遊軍や先遣隊として常に募集しているわけ。

 

 軽く契約内容について説明した後は基地の隅っこの部屋に案内される。傭兵なんてモンスターや敵対種族を狩っているから許されてるだけのギリギリ犯罪者のような奴らばっかりだ。扱いもぞんざいな事が多いからボロっちい平屋にすし詰めになってるのだとばっかり思っていた。

 

 しかしたどり着いたのはそこそこ丈夫そうな木造りの平屋。いや、端には見張り台も増設された2階建てだ。中には馬の護送で一緒になった傭兵連中もいる。その中で一際目立つデカい奴、タルタリスも酒を呑んでいた。

 

 よぉと軽く手を振ると向こうも振り返して手招きされる。街に着いてからは暫くは互いに別行動していたのだがこんな所でまた会うとは……人に戦闘狂って言える立場か本当に。

 

「とりあえずこっちで飲めよ。──流石前線だ。傭兵でさえ待機中は酒も振る舞われるなんて好待遇なかなか無いぞ」

「まぁそれだけ人手不足なんだろう」

「その代わり給金も良い。アタシらにピッタリじゃないか」

「全くもってその通りだ」

 

 昼頃までは駄弁りながら豆でも食って飲んでたが、昼頃になると正規軍の兵士から今夜スケイブンの陣地近くまで先遣隊として派遣される事が告げられた。当然酒は没収。口寂しさに俺はタルタリスにスケイブンの中に《魔剣》持ちらしき奴がいるらしいなんて話をしたところ思いのほか興味津々だった。

 

 今まであんまり俺の《魔剣》を欲しがっているような視線を向けて来なかったのでちょっと驚いた。やっぱり傭兵として良い武器は欲しいんだろう。そこそこ付き合いは長いので手に入れたあかつきにもし武器種が被ったら譲ってもいいな。

 

「それより聞いたかよ。傭兵部隊の中に魔術師がいるぞ」

「へぇ。そりゃ珍しいな」

 

 魔術師は才能と豊富な知識が必要なので人間種族の中では使える奴はかなり少ない。元々俺はさっぱりだけどコーンは魔法の籠った呪具や武具を除いて憎んでいるといってよいぐらい嫌いらしい。そんなコーンの祝福(呪い)を受けている俺も当然使えない……悲しい。火とか雷とか俺も出してみたかったよ……。

 

 そんな魔術師でも戦闘に使えるレベルの術師になると直ぐ軍にスカウトされるので在野の魔術師ってのは驚くほど少ない。軍隊でも大体一軍に1人か2人いるって程度の少なさだ。在野でいるとしたら魔術を深く研究する世捨て人か子供の(まじな)い程度の奴だろう。

 

 だから傭兵の魔術師に対する期待ってのはほとんど無い。タルタリスは俺が胡散臭い話でも聞いたような顔をしているのに気づいたのだろう。詰め寄って来た。ちょ──おま、そんな近づくと胸の触感が──匂いが!?

 

「疑ってんな? アタシも気になって話してみたけどなかなか期待出来そうな奴だったよ。──待ってな今連れてくるから」

「お、オウフ……」

 

 心の中のマイサンが鎌首をもたげる。武器を振るいた(マスをかきた)くなって来た。

 

 しばらくして建物の奥からデカいタルタリスの後ろからやって来たのはローブを身に付けた女性だった。近づいてくると身長がなかなか高いことがある。流石にタルタリスほどじゃないが180は越えているだろう。つまり俺よりデカい。

 

 体の線が浮き出る革防具に上から紺のローブを羽織っている。野生味のある美人のタルタリスと比べて理性的な美人って印象だ。目は細く、紺色の長い髪の毛に隠れて見えないがなんとなくエルフっぽい。混ざり者か、傭兵ではありがちだ。

 

「こいつはヨロズ。戦闘狂だがまぁそこまで悪いやつじゃないよ」

「酷い紹介をされたがヨロズだ。タルタリスの話は話半分に聞いてくれ」

「……エド=ナです」

 

 そうしてエド=ナさんはだんまり決め込んだ。紹介してくれるって聞いたから話は出来るんだろって思ってたがこの反応は予想外だ。不思議そうにタルタリスに目線を合わせたけど奴も不思議そうにしてた。2人の間では話も盛り上がっていたのだろうか?

 

「ま、まぁよろしく! 出来る魔術師使いって聞いてるぞ」

「……ええ」

 

 そうしてスタスタと帰って行く後ろ姿を眺めながら小さくため息。

 

「……大丈夫か?」

「……アタシも分かんなくなってきたよ。さっき話した時は普通だったんだけどね」

「嫌だぞ俺は後ろから範囲魔法に巻き込まれるの」

「それは大丈夫じゃないかね。なんでも単体魔法専門で軍では扱いづらいって理由でこっちに来たらしいから」

「ほへ〜」

 

 基本的に軍同士での戦闘ではやはり広範囲に影響を及ぼせる魔法が求められている。敵のロード相手とかなら単体魔法の使い道もあるだろうが、質が数を凌駕する事はそんなに多くない。基本的に欲しいのは範囲魔法の使い手になるだろうな。

 

 あまり良い出会いにはならなかったけど魔術師がいるかどうかはコト戦闘において大きなアドバンテージだ。期待しよう。

 

 そうこうしているとすっかり夜もふけて来た。傭兵なんで正規軍と違って揃いの武具では無い。革防具には薄くロウを塗って、金属製防具は行軍時に音が鳴らない様に布を詰めてるやつもいる。オーソドックスな剣やタルタリスのような金砕棒、弓やボウガン、西の帝国でも使われている銃器を整備する静かな音が室内に響く。

 

 正規軍の兵士から出発の号令がかかる。

 

 さぁいざ戦闘(オナニー)だ──

 

 

 

 

 

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