呪いで武器を扱う事しか性欲発散できない俺が人型の魔剣でようやく卒業するやつ   作:ギンギン丸

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……ふぅ〜ッ♡ふぅ〜ッ♡

<グリーンスキン>

 

 その名の通り緑の肌の怪物。ゴブリンやオークなんかが有名だろうか。荒っぽくて低知能の印象は彼らの名前から受けるイメージ通りなんだけど、よくある女性を攫って孕ませて繁殖するようなやり方では奴らは繁殖しない。

 

 この世界の奴等は地面から()()()

 

 まるで植物のように……ってか正しくは菌類と生物が合わさった生き物だ。奴らの体表から緑の胞子が飛んで地表に付着して増殖、それが地下で奴らの形になって動き出すってわけだ。そんなヘンテコな繁殖方法な割に動き出した後は普通の生物のように肉なんかを食って栄養を摂るっていう本当にわけわからん生き物。

 

 帝国の南部、ワールドエッジ山脈を超えた先のバッドランドには奴らが大勢いると聞く。昔から人間や特にドワーフなんかは手酷い被害を受けていたけど、最近はそこまで大きな出現報告は聞かなかった筈だが……。

 

(何でこんな場所にいるんだ……?)

 

 ゴブリン10体とオーク2頭。

 

 先遣隊にしては少ない、斥候? それだったらまぁ納得出来る。そもそもはぐれかもしれないしな。どちらにしろ人間の生存する領域に欲しい隣人では無い。

 

 昂って来たしここで狩るか……。

 

 相手の防具は所詮スケイブンの雑兵レベルのもの。注意するのはオークだ。錆の浮いた斬馬刀を軽く振り回している。だいたい180cm〜2mちょいぐらいの身長で正面きっての力勝負ならまず普通の人間は勝てない。見た感じ1頭は2mを超えているだろう。

 

 ヘンテコ生物的ポイント2。オークは強者との戦いに勝つことで強く、デッカくなる。デカさは奴らの強さをわかりやすく表す指標ってわけ。2m越えの奴らの強さは普通のオークよりもかなり強いってことだ。

 

『オークの血は……不味い』

「スケイブンの血よりかマシだろ」

『そうかな? ……そうかも』

『アタシは何でも良いけどね』

 

 ゴブリンはビビりなので狙うならオークからか。デカいほうは直ぐにヤれそうにない。もう一頭の通常サイズのオークが狙い目。奴さえ倒したらゴブリン共は逃げまわるだろうから残った強い奴と愉しくお楽しみの時間だ。

 

 樹上から機を窺っていると、潜んでいる辺りでゴブリンの一匹が鼻をひくつかせ始めやがった。そんなに俺の臭いはキツかったのだろうか。一匹がそんなことしてるもんだから他のゴブリンも醜悪な面を更に歪ませながら集まって来やがった。

 

 こうなってしまえばいつ気付かれても不思議じゃない。だったらその前に出て行くしか無いな。ゴブリンの集団の中央に俺は飛び降りた。鉄板入りのブーツでそこそこの高さからのスタンプにまず一匹をぺちゃんこにする。脳漿が弾け飛んで近くのゴブリン達に降り注ぐ。

 

「Eeeeeek!?」

「Gasp」

「──よっとぉ!」

 

 驚いてるゴブリンを薙ぎ払うように《魔槍》を振るう。穂の部分はあえて当てずに柄で吹き飛ばすイメージ。とりあえず邪魔なゴブリンは後回しにして一頭のオークが最優先だ。

 

 斬馬刀持ってるデカい奴は早速俺に気づいて大きく太い脚で地面をドスドス踏みつけている。オークがよくやる威嚇と強さアピールの習性。優秀で強いオークだからこそこういった習性からは逃れられない。

 

 まぁ知ってさえいれば単なる隙だらけの行動だ。その間に俺は一気にもう一頭のオークに駆け寄る。こっちはまだ驚いてはいるようだが戦闘本能は鋭いようで先端が折れ曲がったチョッパーをバットのスイングのように振り回した。錆びた鉄の塊が目の前に迫って来る。

 

 明確な命の危機を体が察知してアドレナリンがドパドパ噴き出して来やがった。

 

 まともに受けても俺の筋肉じゃ受け止めきれずに弾き飛ばされる。大事なのは力の流れ。異種族ってのは基本的に人間より力が強い。それこそタルタリス程の馬鹿力でも無ければまともに打ち合うってのは狂人の沙汰だ。

 

 傭兵の間じゃそういった異種族の力を逆に利用した戦法だったりが発達している。傭兵の多くが盾持ちってのがその表れだ。俺は武器を振るう=性欲発散の為に盾を持つことは無かったがそういった技術を教わった事はある。

 

 一歩引いて、振るわれるチョッパーを受け止めずにあえて振るう方向に加速させるように《魔槍》で押し出してやる。オークは思った以上にあっさり振り抜いてしまった自分の得物が深々と地面に埋まってしまっていた。

 

「Uga!? 何でダ……?」

 

 隙だらけの首元に《魔槍》を突き刺す。穂先はあっさり喉を突き破りビシャっと返り血が降りかかった。噴水のように血が溢れて供給元のタンクが萎びてゆく。

 

『う〜〜〜ん……サイッ……コウッ』

 

 命ある者を、強き者を自分の手で打ち据える。

 

 この瞬間ばかりは何度味わっても飽きが来ない。普段なら賢者タイムに突入するところだがまだメインディッシュは味わっていない。

 

 直ぐに抜いて、もう一頭のオークに構える。鉄製のファールカップをグググッと押し返す逸物に落ち着けと言い聞かせた。

 

 地面にズシンと崩れ落ちながらコヒュッ……ゴロロロロと喉を鳴らす死に寸のオークを見向きもしないでデカい方のオークは斬馬刀を頭上に振り上げる。一頭のオークを倒して逃げまわると思われたゴブリンも妙に大人しく、遠巻きからこっちを見ていた。

 

(コイツ……強いな)

 

 血の匂いとグリーンスキンの臭いで鼻が麻痺して来た。あんまり時間をかけると近くのスケイブンか別のグリーンスキンを誘き寄せてしまうかもしれない。

 

「ニンゲン……美味そうダ」

「お前もか……奇遇だな」

「キ、キグウ? 訳が分からなイことを言うナ!!」

 

 流石にそこまでは賢くないか。しかし戦闘に関しては並の戦士では敵わないほど勘が良い。侮るってのは勝利から一番遠い感情。今は唯目の前の相手に集中する。

 

 動く。フェイントをかけながら足取りは軽やかに。穂先を左右に揺らす。

 

 比べて相手はどっしりと構えながらジリジリと距離を詰めて来る。フェイントなんて概念は奴に無い。振るうとしたら必殺の一撃だ。

 

 この様子見は長くは続かない。格闘技とは違う。小さなダメージの積み重ねなんて悠長な展開は真剣勝負では起こり得ない。

 

 重要なのはどちらが先に一撃を当てるか。

 

 2m超えの上背と斬馬刀によるリーチの長さは俺の《魔槍》のリーチとさほど変わらない。しかし俺の最長有効距離での攻撃は致命打にならない。向こうは俺を一撃で倒せるにも関わらずね……。

 

 普通なら相手の大振りを待つところだがあえて真っ直ぐに行く。《魔槍》の距離まであと1m……50cm……0!!

 

「馬鹿メッ!!」

 

 斬馬刀が俺の首を刎ねようとやって来る。この距離だともう反らせたりは出来ない。空気を切り裂いてやって来る凶器を俺は空を仰ぎ見る様に首を逸らして躱した。

 

 見上げれば夕焼けと夜の中間のような淡いピンクの光。美しくも、背筋がゾッとするような不吉な光にも見える。微かに雲の切れ目から深緑色の月(モールスリーヴ)が覗いていた。一分一秒に千金の価値がある戦闘中にも関わらず、そんな風にゆっくりと観察出来てしまっている謎。

 

 つまり──絶頂。

 

 俺は無意識に《魔槍》でオークの太ももを斬り裂き、返す刀で《魔剣》をいつの間にか振り抜いていた。正気になって確認するとオークの顔は真っ二つになってそこらに転がっていた。降り注ぐ血の雨を反射的に手で防ぐ。そうして呆然と今起きたことを俺は理解出来ないでいた。

 

 過程を楽しむはずの戦闘(オナニー)がいつの間にか終わって(絶頂して)いたことに愕然としながら、それでも快感で震える膝に蕩ける脳。身体は正直だ。

 

(何だ……今のは? 斬った? 俺が? いつの間に……?)

 

『……アッハ♡……アハハハハハ』

『…………ふぅ〜ッ♡ふぅ〜ッ♡』

 

 駄目だ。《魔剣》と《魔槍》はラリってて事情を聞こうにも意識がはっきりしてない。分からない……今何が起きたんだ?

 

 周囲を見るとゴブリン共が震え上がっている。ビビったら直ぐ逃げるコイツらが動かないでいるなんて珍しいモノを見た。

 

「ちょうど良い……何が起きたか教えてくれよ、なぁ!?」

「ギャギャ……」

 

 息を合わせたように残った5匹は駆けてゆく。

 

「ちょ──待てよ!」

 

 勿論待つはずも無かったゴブリンたちを捕まえても、奴らはハッキリとした答えを返さず震えるばかりだった。仕方なく処理してると奴らの胸元から何かの皮で出来た紙みたいなのがひょろっとはみ出てるの気づく。

 

「何だこれ……砦の絵か?」

 

 皮をなめした紙に炭で絵が描かれている。随分へたっぴだが城壁の特徴的には俺たちがいた砦ソックリだ。そこから少し離れた場所には森の絵も。さらにその奥、ギザギザの線がおそらくワールドエッジ山脈だろう。ワールドエッジ山脈のふもとにはオークやゴブリンの群れが多く描かれている。

 

 ん? オークやゴブリンの群れから砦に向かって矢印も書いてある。

 

 ……この森の絵ってもしかして今いる場所のことか?

 

 ──ひょっとしてマズイやつかこれ。

 

 

 恐る恐る森から顔を出してワールドエッジ山脈の方を覗くと、だいぶ日は暮れているが蠢く軍勢の影が見えた。地鳴りと遠吠えが4〜5km先のここまで伝わってくる。幸いまだ行軍中では無さそうだ。あの数、500……いや1000は超えている。2〜3000って所ぐらいか。

 

 耳を澄ますと他のオークやゴブリンの唸り声も近くから聞こえる。他の斥候隊か……。

 

(スケイブンの襲撃の他にこの数のグリーンスキンの襲撃まで来たら流石にあの城砦じゃ耐えられそうに無いぞ……直ぐに帰って知らせないとッ)

 

 なるべく音を立てずに、そして素早く。一応匂いを辿れないように腰の皮袋の非常食は全て捨てておく。あとは森の苔を首と脇、そして防具の上から擦り付けて匂いも上書きだ。

 

 まさか俺のただの自己満足(オナニー)がこんな事を知る羽目になるとは……。

 

 なるべく帰途を急ぐがもうすっかり日は暮れてしまって足元がよく見えない。湿気と謎の俺の無意識な戦闘、グリーンスキンの軍隊を見た動揺でいつもより汗が出てる気がする。視界が塞がる。煩わしい。

 

 苔で滑って思いっきり転けてしまったりとなんやかんやあってようやく城砦が見えて来た。

 

「ん?」

 

 城壁の前に大量に転がっている影がある。酷い臭い……死体だ。近くに寄ると人間も僅かにあるがスケイブンのものが殆どだと分かる。こっちも襲撃を受けたのか。篝火に照らされて俺の姿が城壁の上の兵士の目にも映ると弓と銃口が一斉にこちらに向けられた。戦闘の後の所為かピリピリしてるのが空気で分かった。

 

「動くなッ! 何者だ!?」

「あ、すみません。傭兵のヨロズです! 先日の先遣部隊の隊長さん……えっとヘンケン隊長に伝えて貰えれば身分を照会して貰えると思います!」

「……傭兵!? 何故こんな時間に外を出歩いている! こっちはスケイブンの襲撃を受けていたんだぞ!! ──ったくしっかり働いて欲しいもんだ」

「……すみません」

 

 そうして小走りで隊長の元へ行く兵士の後ろ姿を見送りながら俺はどう隊長にグリーンスキンのことを伝えようかと思案を巡らせていた。果たして1傭兵の発言何処まで信じて貰えるか……。

 

 深緑色の月(モールスリーブ)の怪しい緑の光に照らされるとどうもネガティブな考えしか浮かんで来ない。

 

 ようやく帰って来た兵士曰く、城門は敵を警戒して開かれないようなので投げられたロープをよじ登ってようやく俺は人類の生存圏に戻ってこれたという実感に浸っていた。

 

(まぁ此処もいつまで保つか分からんけど……)

 

 

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