ボーダーに設置されたC級隊員のランク戦用のロビーは、想像以上の大きさだった。
「随分広いわねぇ」
「C級にもある程度の待遇は与えられてるのか」
レオはゆったりとくつろぐC級隊員の姿を見てそう呟く。
ロビー全体は大きなライトで照らされ、柔らかな光で満たされていた。ロビー中央にはフカフカのソファーと丸いテーブルがいくつも設置されており、そこに集う若者たちが賑やかに笑い声を響かせている。
ロビーの正面には、三階の高さに達するほどの巨大なモニターが壁に埋め込まれており、その画面にはどの個室が空いているかが一目で分かるように数字と色分けで表示されている。モニターの光が青白く輝き、ロビーにいる者たちの視線を引きつける。
「なんか半分以上空いてるわね。思ったよりみんなランク戦はやってないのかしら?」
「どうでもいいだろう。いる奴をぶちのめすだけだ」
「それもそうね」
アリスは興味をなくした様子で視線を回す。
部屋の壁には細い廊下が作られていた。階段によって各階層に上がることができる。各階層の廊下は壁に沿うようにして続いており、2階、3階共に同様の構造だ。廊下にはずらりと小さな扉が並んでいる。扉にはそれぞれ数字が記されており、1階には101から150まで、2階、3階も同じ形式で番号が振られていた。扉の先にある小さな個室は、仮想戦場へと続く待合室となっているようである。
ロビーの中には、12歳から20歳くらいまでの若者たちが溢れている。彼らは皆、白地にオレンジのラインが入った訓練生用のジャージを着用している。ソファーに座って談笑する者、階段を駆け上る者、モニターをじっと見つめる者、皆が和気藹々とした雰囲気の中で過ごしている。
この空間には緊張感や重苦しさはなく、むしろ若者たちが青春を謳歌するかのような活気に満ちていた。
「さっさとやっちまうか」
「そうね、早めに終わらせたいわ」
レオ達は別れて適当に空いている個室に入った。
C級ランク戦のやり方は簡単だ。基本的には仮想戦場での個人戦。個室にはテーブルと椅子が用意されており、とりあえずその椅子に腰を掛けた。
パソコンの隣にあるモニターには武器とポイントが表示されている。
弧月 890
バイパー 2560
アステロイド 1440
アステロイド 650
弧月 1226
スコーピオン 1756
弧月 997
メテオラ 2130
スコーピオン 1688
と言った具合だ。コレが今C級のランク戦に参加している隊員達だ。ざっと見て100人くらいはいるだろう。好きな相手を選んで対戦を申し込んでも良いし、逆に挑まれる場合もある。対戦をやめたければただこのブースを出れば良いだけだ。
「3000超えてる奴はそこまでいないんだな」
レオの保有ポイントはかなり上位に位置しているようだ。ランク戦はポイントが高い相手に勝つほど多くのポイントを貰える。
「チッ、どいつに勝っても渋そうだな」
思わず舌打ちが溢れる。自分より低いポイントの相手に勝ったところで大したポイントは手に入らないのだ。逆に負けたらごっそりポイントが持っていかれる。まあもちろん、負ける事など想定していないが。
「……ん?」
と、その時、レオに対戦の申し込みが入った。相手は1316ポイントを持つ弧月使い。レオは訓練の時と同じ銃のトリガー。込められた弾はアステロイド。
「さて、やるか」
レオは銃を手のひらで弄びながら笑い、OKを出す。するとすぐさま換装体は仮想戦場へと転送された。
目を開け、辺りを見渡す。
一見して普通の住宅街にしか見えない。これが現実には存在しない仮想空間だと言うのだから驚きだ。
レオが転送されてから数秒としないうちに対戦相手の男が転送されてきた。歳の変わらない少年だ。少年は此方を見てやや驚いたような顔をすると、
「は、はろー?」
と、拙い挨拶をしてきた。
「日本語でいい」
「あ、そりゃそうか……じゃあ、よろしくお願いします!」
「ああ」
適当に挨拶を返して銃を構える。まずはこの戦闘というのがどういうものなのかを分析したい。
「行きます!」
そういうと少年が切り掛かってくる。トリオン体になり速度が上がったとはいえ単調な動きだ。格闘技を経験し、何度も対人戦経験のあるレオにとっては取るに足らない動きである。正直、拍子抜けもいいところだった。
避けられたと理解し返す刀で切り払おうとする少年の攻撃を銃で受け止める。的確に柄の部分に銃身をぶつけて受け止めると、相手の腹を蹴り飛ばした。蹴りや殴打などの打撃で相手のトリオン体を傷つける事は難しい。だが相手を怯ませたり、突き飛ばしたりする事は可能だ。
大きく後ろに後退した相手に銃口を向け、アステロイドを発射した。相手は咄嗟に避けようとしたが避けきれず、その体に大きな風穴が空いた。そしてすぐにベイルアウトした。勝者はレオだ。
「あれ……思ったより……」
レオはあまりにあっさりとしすぎた決着に違和感を覚える。コレだと銃のトリガー使いが強すぎるのではないかと、そして一つの推論に辿り着き、今度はアステロイドを使うものに戦闘訓練を申し込んだ。すぐさま再び仮想空間へとやってくる。
レオの対戦相手は若い少女だった。
「よろしくお願いしまーす」
「ああ」
レオはまず、少女に仕掛けさせた。銃を構えた少女が真っ直ぐに此方に狙いを定めてアステロイドを発射する。
レオはそのフィールドを素早く駆け回り、銃弾を避けながら建物の影に身を潜めた。
「なるほど、理解した」
己の銃を見つめながらそう呟く。
ボーダーが開いていた祭りの会場にて言われた“貴方は才能がある”という言葉の意味をしっかり理解した。
「弾の威力が全然違う」
トリオン量。
入隊試験の前、検査を受けた結果、レオはトリオン量が非常に優れていると言われた。ボーダーに入ったばかりで分からないことが多い為推測になるが、銃のトリガーを用いた場合、弾の威力はトリオンの総量に比例するのだろう。でなければ少女との弾の威力の差に説明がつかない。
そうと分かれば話は早い。
時間をかける必要はない。さっさとつまらないC級ランク戦を終わらせてB級に上がるべきだ。レオはビルの影から飛び出して銃を構えた。
「やっと逃げるのやめたな!イケメンが逃げ腰はダサいぞ!」
「逃げてない。勝手に決めつけるな」
構えた銃口から容赦なくアステロイドを発射する。少女は即座に身を翻すが、想定以上の威力で左腕が吹き飛ばされた。焦り、慌てて今度は彼女が建物の影に身を隠そうとする。だがレオは躊躇なくその建物を撃ち抜いた。強力な弾丸は容易く建物の壁を抉り、あっという間に少女を炙り出した。
「人を煽っておいて逃げ腰はみっともねぇぞ」
「くっそッ!」
咄嗟に反撃しようと銃を向ける少女の体はしかし、発砲するより先に穴だらけになった。
「悪かったな、どうやらレベルが違いすぎるらしい」
レオは口角を釣り上げて笑った。思っていた以上に、このトリオンというものの才能がある。待合室に戻って、レオは椅子の上にふんぞり返る。その顔には耐えようにも耐えきれなかったと言わんばかりの笑みが浮かんでいた。
「思ったよりずっと容易いな」
そもそもトリオン量など関係なしに訓練生の動きは単調で相手にならない。それはおそらく、いや、確実にアリスも同様だ。問題はB級になってから。レオの思考は既にこれから先のB級戦の事を考え始めていた。そんな時、再びランク戦を申し込まれた。
すぐに仮想空間へと転送される。
レオの眼前に立つのは銃を構えた男だった。見覚えのある姿に片眉を上げる。
「お前、調子に乗ってるらしいな」
「乗るだろ、強ぇんだから」
「うぜぇ。訓練でちょっと良いタイム出したからって天狗になりやがって……」
その相手は恐らくレオの訓練を見ていた男だ。スカウトを見下して馬鹿にした時にブーイングを飛ばしてきた連中のうちの1人にこんな奴がいた気もする。
「なんだよ、嫉妬してんのか。それならそうと言ってくれ、負け犬の遠吠えは気分がいいからな」
「舐めやがってクソ野郎がッ!!」
試合が始まると同時に互いが銃を向ける。
「メテオラッ!!」
相手の攻撃力を見たかったレオは仕掛けない。故に発砲したのは男が先だった。
その銃弾の攻撃範囲はアステロイドより遥かに上だ。咄嗟に後退したレオが先程までいた地面を容易く抉る。そのまま跳ねるように動くレオを男は撃ち倒そうと発砲を続けた。壁が抉れ、家が崩れ、瓦礫が飛び散る。
「メテオラはアステロイドより破壊力が上だ!お前のアステロイドなんざ木っ端微塵に粉砕できるぞ!」
「メテオラは炸裂するだけだ。不勉強だなお前。それに強気の割に、この程度の威力なのか?」
「ああ!?」
「メテオラ使ってようやく俺の足元とか、お前才能ねぇよ」
「なんだと!?」
レオは深い笑みを浮かべて相手を煽る。怒った男は歯を食いしばり、さらにメテオラを乱射する。リアルに作られたこの空間に粉塵が舞い、土煙が上がっていた。だが男の弾はいつまで経ってもレオに傷をつけられない。
「どうしたクソエイム、木っ端微塵に粉砕して見せろ」
「調子に乗りやがって、外人野郎がッ」
男は少し前までスコーピオンを使って戦っていた。だが気分転換にメテオラを使ってみたところ、その破壊力に驚き“こっちの方が楽じゃん”という単純な思考のもと武器を変更した。そしてアステロイドで調子に乗っているレオの事も、メテオラならぶちのめせるだろうと、これまた単純な思考で挑んできたのだ。
だが今までメテオラで倒してきたC級の訓練生よりレオは遥かに強い。全く通らない攻撃にイラつき、その照準はさらにブレ始めていた。
「もうお前の攻撃は見切ったよ」
レオは相手の銃口をしっかりと見て、銃弾の着弾地点を予測し、メテオラを回避しながら一気に距離を詰める。
「遊びに付き合ってやるのはここまでだ。俺は急いでるんだよ」
相手の銃を蹴り飛ばし、前髪を乱暴に掴むと額に銃口を突きつけた。
「次はもっとポイントの高い奴を呼んでくれ」
「テメーッ」
「じゃあな、弱虫」
それだけ言って、相手の頭をアステロイドで吹っ飛ばした。これでレオは三連勝だ。待合室に戻って腕に示されたポイントを確認する。ランク戦が始まる前は3590ポイントだった。そして三戦した今、レオの保有ポイントは3720。一戦目で18、二戦目で34、三戦目で78。
このままランク戦を繰り返せば、恐らくあと七、八戦もすれば4000に達してB級に上がれるだろう。
レオはそのまま連続してランク戦に挑んだ。そしてその全てを圧倒的な火力で打ちのめしていく。防御も策略もない。ただただ優れたトリオン量で上から叩き潰した。隠れようが、策を講じようが全て無駄だ。比較にならない火力で全て破壊した。
だが当然、それが気に食わない者も多くいる。
才能にものを言わせて傍若無人に振る舞う者が受け入れられないことは想像に容易いだろう。レオの悪評はあっという間に広がっていった。
トリオンだけのバカ
イキリ野郎
ちょっと才能があるからって調子に乗っている
誰か早く、あの男を派手に負かしてくれればいいのに。そんな思いがC級の訓練用ブースに広がっていた。そしてそれはある男の元に届いていた。男の名前は鈴木。B級の下位に所属する隊員だ。彼はレオが躍進する噂を聞き、悔しさで歯を噛み締めた。
(なんであの男が……)
苛立ちに目を吊り上げる。
男は恨みをしっかりと覚えていた。気まぐれでC級の訓練を見にいった時、才能のある新入隊員を発見した。たったの10秒で訓練用のものとはいえバムスターを倒して見せた。その身軽な動きを見て高い将来性を感じた。
何より、可愛かった。
金砂のような髪をふたつにまとめ、金髪の下には宝石のような青緑色の瞳があった。長いまつ毛に縁取られた形の良い瞳、彫刻のような鼻、桜色の唇。
彼女をチームメイトにしたいと思った。絶対強くなる。それに人気も集められる。そうすれば嵐山隊にも追いつけるかもしれないと、そう思った。故に声をかけた。後ろにいた顔のそっくりな兄弟も、実力はわからないがついでに引き入れようと思った。
だが結果は、
「クソッ」
彼らにかけられた侮辱の言葉を思い出し悪態をつく。タダでは済まさないぞ、俺に恥をかかせたんだ。絶対みんなの前で恥をかかせてやる。その一心でC級のブースに足を運んだ。
なんてついているんだろうと思った。やはりあのロクでなしは悪評が広がっていたようでヒソヒソと悪口が呟かれているのが聞こえた。絶好の舞台だ。一階の待合室にいる三条レオを呼び出した。レオは不遜にも腕を組み、その青緑色の目で鈴木を見下ろす。その様がさらに鈴木を苛立たせた。
「さっき振りだな三条レオ。雑魚狩りをして随分と調子に乗ってるみたいじゃねーの」
「はぁ?誰だよチビ」
「なんだと、テメーッ」
「はは、もうキレたのか?煽りたいならもっと上手くやれよ雑魚虫。それで、テメーも俺に貢ぎに来たのかよ」
「身の程教えてやりに来たんだよ。今から俺とソロでランク戦をしろ」
鈴木がレオに宣戦布告の言葉を投げかける。B級の隊員がC級の隊員にランク戦を申し込んだ。その光景にC級のロビーが騒めく。
「いいだろう。精々いい踏み台になってくれ」
「俺が勝ったら、侮辱した事泣いて謝らせてやる」
レオはその言葉を聞き、片眉を上げると舌を出して挑発をした。その様に鈴木は更に苛立ちを募らせてブースに入る。
操作パネルの一番下にある黒いボタンを押せば正隊員とも対戦できる。正隊員の方が拒絶したら戦えないし、正隊員は勝ってもポイントを奪えない。つまり正隊員にとっては訓練生と戦う事には何の意味もない。それでも勝負を挑むという事は、考えられるパターンは3つだけだ。1つは知り合いのパターン、2つは優れた訓練生の方が戦いに挑み、正隊員が承諾したパターン。そして3つ目は、正隊員が気に食わない訓練生を晒し者にしようとするパターンだ。
「上等だ」
レオは笑い、迷いなくボタンを押して対戦を挑んだ。
転送される。
場所は変わりなく住宅街。レオは建物の屋上に転送され、鈴木は小さな公園に転送された。レオはポケットに片方の手を突っ込んだまま屋上から飛び降りて鈴木の前に立つ。
鈴木は弧月を構えた。
「撃ってこい」
レオは命令された事に不快感を覚えながら銃を構えてアステロイドを放った。しかしそこは流石B級隊員、戦闘経験が訓練生とは比較にならないほどにある。軽やかな動きでアステロイドの銃撃を避けると一気にレオの間合いに滑り込んだ。
「こんだけ近けりゃ乱射できねぇだろ!」
光を帯びた弧月が振り下ろされる。だが、その刃がレオの身体に届く直前、銃身が素早く振り上げられた。金属同士が激しくぶつかり合い、火花が散る。
「斬撃も当たらなきゃ意味ねぇだろ」
「テメーッ」
「チャンバラごっこがしたいのか?付き合ってやってもいいぞ」
「舐めんなよッ」
鈴木の猛攻は、レオの冷静な防御によって阻まれた。確かに経験値はあるようだが、武器を振り回すだけの戦いなら負けない自信があった。刃を防ぐだけなら動体視力に任せるだけで問題ない。
「チッ」と鈴木が短く息を漏らし、弧月を引き戻す。そしてすぐさま再び斬撃が繰り出される。横薙ぎの一閃が、レオの腹を狙う。しかし、レオは一瞬も目を逸らさず、銃を反転させ、その銃身を柄の部分に当てて受け止める。重厚な音が響き、銃が微かに振動するが、レオの足元は一切動かない。
「遅いぜお前」
「クソッ」
鈴木は次々と攻撃を繰り出す。突き、斬り上げ、薙ぎ払い。だが、レオは動揺することなく、銃を駆使してその猛攻を受け流す。そして力づくで弧月を押し退けるとアステロイドを発砲した。
「弧月だけでいいのかい?イタチごっこになるぜ」
「は?何が言いたいんだよ」
「知ってるぜ、B級隊員になると使えるトリガーが増えるんだってな。使えよ全部。どんなもんなのか知っておきたい」
アステロイドを足元に撃ち、地面を破壊して鈴木を追い立てる。想定以上の破壊力に鈴木は焦りながら飛び退いて躱す。鈴木とてそこまで弱いわけではない。基礎はしっかりしているし、B級のランク戦でしっかり戦える力はある。だが、戦闘のセンスが違いすぎた。
「シールドとか、グラスホッパーとかあんだろ?見せてみろ、全身全霊で来い」
「断る」
「まだ実力差が分かんねーの?」
「確かにお前が俺より強いってことは理解したよ。だからと言って、トリガーが一つしかない訓練生を相手に、B級が全部のトリガーを使って挑むのは幾ら何でもみっともなすぎるだろ」
「あっそう、じゃあもういいや。さっさと終わらせる」
レオはアステロイドの発砲数を上げ、辺り一体を破壊していく。その手は食わないと鈴木は小刻みに動き回り、再び間合いに入り込み切り掛かる。
その攻撃を先ほどと同じように防ぎつつ、レオは銃身を押し退けると隙を作り出し、その足を振り払った。そして大きく態勢を崩した鈴木の顔面を殴りつける。
(トリオン体でパンチッ!?)
顔を殴られた事などなかった鈴木は動揺して身を竦ませてしまう。その瞬間、レオの回し蹴りが鈴木の弧月を握る手に炸裂する。痛みはないから弧月は手放せずに済んだ。だが手は大きく弾き飛ばされた。
(まずいッ!!)
鈴木がそう思った時には勝負は決していた。レオは銃身を真っ直ぐ鈴木に向ける。
「最後まで弧月以外を使わなかった心意気だけは認めてやる」
レオは無慈悲にアステロイドを連射し、鈴木を木っ端微塵に吹き飛ばした。
戦闘は終了だ。レオはブースに戻り自分のポイントを確認する。手の甲に表示されたポイントは4256ポイント。
「ふっ、余裕だったな」
そう言うと、前髪を撫で付けて待合室から出る。その手のひらからサラサラとした前髪がこぼれ落ちて行く姿は中々に様になっているが、その姿がまた傍観者たちの気に食わないと言う感情を引き立てる。
「……負けたよ」
そんな中、鈴木はブースから出てきたレオに声をかけた。
「強かった、それは認める。……でも、でもやっぱりこれだけは言わせてくれ。その態度はマジで良くないと思う」
「お前の態度だって褒められたもんじゃねーだろ」
「お前よりはマシだわ」
「はぁ……フランスには“人の価値は仕事の成果によって分かる”と言う諺がある。ソイツが今いる場所でどのような成果を出しているか、それがソイツの価値を示すという意味だ」
「え?」
「まともな成果を出せていない弱者には価値がない、価値がない人の言葉を聞く必要はないっつー意味だよ。文句があるなら俺に勝って言え。弱者の忠言に耳を貸す道理はないね」
「お前ッ、そう言うとこだぞ絶対!!」
拳を握り締め怒る鈴木を馬鹿にするように舌を出すと、レオはさっさとその場を離れた。