「逃がすわけねぇだろ」
低く響く男の声が背後から聞こえた瞬間、榎本は即座に思考を巡らせた。その声の主は間違いなくレオだ。そしてその一言だけで、彼は状況が最悪のものに変わったことを理解する。
(挟み撃ちか……!)
三条兄妹に挟まれた状態で、片腕を失った自分に勝機はない。0パーセント。この数字が頭の中で冷徹に弾き出される。ならばやるべきことはただ一つ、逃走だ。だが、この状況下でどうやって逃げ切るか?榎本は一瞬の間に全ての可能性を考え抜き、その中で最善の手を導き出した。
『瀬戸!頼んだぞ!』
『オッケー了解!』
スナイパーである瀬戸に通信を飛ばすと、間髪入れずに頼もしい返事が返ってきた。その返事に後押しされるように、榎本は即座にエスクードを足元に起動する。当然、彼は盾の上に陣取る事になる。
エスクードは勢いよく迫り上がり始る。それに合わせて榎本はそのエスクードの上で固定シールドを発動。
エスクードが完成する一瞬前、その瞬間だった。エスクードに向けて瀬戸の弾丸が放たれる。榎本が乗った盾が完全に出現しきる前に、瀬戸の狙撃が正確にその中央を撃ち抜いた。
「よし……!」
次の瞬間、エスクードが砕け散る。足元が崩壊したことで、固定シールドの特性である“動けない状態”が解除される。そして、勢いよく生成されていたエスクードの反動がそのまま榎本を跳ね上げる形となった。
榎本はエスクードを文字通り跳ね台として利用し、一気に高所へと飛び上がる。
「なるほど……そう来たか」
レオが低く呟く。榎本の動きを追う目にはわずかに感心した色が浮かんでいたが、それでも手を緩めるつもりはない。即座にバイパーで追撃を仕掛けるが、やはり固定シールドは固く、破壊する事が出来なかった。
そして次の瞬間、さらに狙撃による援護射撃が放たれた。弾丸は固定シールドの角を撃ち抜き、破壊すると同時に飛び上がった榎本の軌道を逸らした。
榎本は空中で瞬時に体勢を立て直すと、すぐさまグラスホッパーを起動し、地上へと戻ろうとした。空中にいてはスナイパーにとって格好の標的となるため、長居するべきではない。だが、榎本よりもとあるスナイパーの動きの方が速かった。
地上への加速を開始した直後、鋭い一撃が彼の右足首を吹き飛ばしたのだ。
「佐鳥か」
その光景を見てレオは呟く。
榎本を撃ったのは味方の加瀬ではない。当然榎本隊のスナイパーでもない。となれば、狙撃の主は嵐山隊の佐鳥以外に考えられない。
榎本が何とか地上に着地する一方で、レオは通信越しに綿貫の分析を受け、佐鳥が潜んでいると推測される位置へ即座にメテオラを放った。弾丸は鋭い軌跡を描きながら建物を撃ち抜き、爆発の衝撃で壁が崩れ、周囲の構造物が粉々に砕け散る。
しかし、その瞬間、爆煙の中から予期せぬ方向からベイルアウトの光が上がった。
「榎本隊のスナイパーが討ち取られたか」
レオが呟き、加瀬が通信越しに答える。
「やったのは春原隊の松浦だね。右下にいたのは松浦だ」
加瀬は榎本隊のスナイパーである瀬戸を討ち取った松浦へとすぐに狙撃を試みた。だが、命中したのは松浦の左手だけだった。敵の頭部を狙いたかったものの、即座に身を隠されてしまい、致命傷を与えることができなかったのだ。
加瀬はレーダーで逃げ去っていく松浦の反応を見て、小さく舌打ちしながら状況を報告する。
「松浦もモールの中に入ったみたい。モールの外に残っているのはスナイパーだけだね」
報告を受けたレオは短く指示を出す。
「了解だ。俺たちもモールに向かう」
通信を切ると、加瀬は静かにその場を離脱する。そして、レオとアリスも戦場の中心──ショッピングモールへ向けて駆け出していった。
外に残っているのはスナイパーだけ。その他の隊員たちは次々とモール内に集結し始めていた。というか、レオとアリス、そしてスナイパー達以外は皆モールの中に入っていた。レーダーを見ながら綿貫は腕を組む。
『これ纏めて吹っ飛ばせたら最高なんだろうなぁ〜』
なんて、通信越しに綿貫が呑気にぼやく声が聞こえる。
「出来ないことを思考するのは無意味だ。俺たちもモールに向かう」
冷たくそう返すと、レオはアリスと共にモールへ駆け出した。
モールの入口が近づき、二人は素早く建物の中へと足を踏み入れる。その瞬間、レオの全身が直感的な危機感に覆われた。
ゾッとする。
何かが足に触れた。
それは細い紐のような感触。しかし、レオの頭の中では瞬時にそれがワイヤーであり、さらにはトラップであると結論づけられた。
「アリス!」
叫びながら、レオは隣にいたアリスの肩を掴むと、力強く引き寄せ、自分の身体で庇うように固定シールドを起動させた。
その直後────
轟音がモール内を揺るがす。
爆発の衝撃があたりを包み込み、吹き飛ばされたガラス片が鋭い雨のように散る。商品棚が粉々に砕け、煙が視界を覆った。
「ぎゃーッ!?」
「クソッタレめ!」
レオはシールドで爆発の完璧に防いだものの、煙と破片の中で忌々しげに悪態を吐いた。しかし、その表情には薄い笑みが浮かんでいた。ようやく榎本隊の作戦を理解したのだ。
今の仕掛けに使用されていたのはスパイダーと呼ばれるトリガーだ。これは細いワイヤーを張ることができる。設置することで相手の動きを制限したり、トラップを仕掛ける用途に使われている事が多い。榎本隊はこれにメテオラを組み合わせ、ワイヤーをトリガーとして爆弾を炸裂させる罠を作り上げていたのだ。
嵐山隊や春原隊はこのような戦法を取らない。そもそもこの舞台が選ばれると知っていなければスパイダーを入れてこないだろう。
『兄妹共々無事、神回避だね』
そう言いつつ、綿貫はレーダーや画面に視線を向けて静かに思考を巡らせていた。
『最初にショッピングモールに転送された4人のうちの1人は榎本隊の誰かだったのかな。スナイパーの村木くんか、ガトリングの船津さん。外にバッグワームが揃ってるから中にいるのは船津さんかな?
1人だけやたらとモール内をうろちょろしてる人がいて、きっとその人が擬似トラッパーとして動き回っていたんだろうね』
レーダーの動きは敵を探しながら動き回っていると取れるような挙動だった。その様子から、綿貫は自身の考え通りであると勝手に決めつけてしまい、トラップの可能性に気がつけなかった。警告を怠ったのは綿貫の失態だった。
彼女はそのことをすぐに通信で謝罪し、気持ちを切り替えた。
(動き回っての接近戦が得意な嵐山隊と春原隊にとって、この状況はやりにくいよね。きっとトラップの存在には既に気づいているはず。それを警戒しながらの戦闘は、きっと相当なストレスだよね)
一方、レオも黙考していた。豪雪の中、外での動きを封じ、市街地Dのショッピングモールへと相手を誘導。その室内にはトラップを配置し、敵の自由を奪う。榎本隊の戦術は、理にかなっているように見えた。
しかし、それだけでは腑に落ちない。
(これだけか?)
レオは戦闘音が響く上階に視線を向けながら、眉間にしわを寄せる。榎本隊の意図が単なる動きの制限に留まらないと感じていたのだ。
と、同時に綿貫から忠告が入った。
『1人レーダーから消えたよ。バッグワーム着けたみたい。急な接敵に気をつけてね。ただでさえ付けたり消したりしてる2人が鬱陶しいのに……』
『了解だ』
綿貫からの忠告を受け、レオはレーダーを確認する。確かに、モール内にいたはずの1人が表示から消えていた。元から撹乱していた1人に加えて、2人目だ。オペレーターの処理能力に圧がかけられている。
1人目の意図は大凡読めるが2人目はなんだろうか?不意打ちを狙う意図があるのだろうか?彼はその可能性を念頭に置き、警戒しながら歩き始めた。
瓦礫がパラパラと音を立てて崩れ落ちる。背後に続くアリスが上を見上げながら呟いた。
「どこで戦ってるのかしら」
耳を澄ませば、微かな声や弾丸の音、そして建物が崩れる音が聞こえる。恐らく複数人が戦っているのだろう。
「もう合流してるのかしら?」
「流石にしてるだろ。時間はあったしな」
『レーダーの反応的に3対2かなぁ?多分嵐山隊と春原隊の戦いだね。どっちがどっちかは分からないや。加瀬君見える?』
『流石に中は見えない。けど、4階の窓ガラスがいくつも割れた、彼らは4階にいるんじゃないかな?』
「その可能性が高そうだ」
レオたちはモールの吹き抜け付近までやって来た。吹き抜けの近くに戦闘の気配は感じられないが、崩れ落ちてくる瓦礫の音が確かに近くで戦闘が行われていることを示している。
不意打ち出来るだろうか?そう考え、レオは
「嵐山隊と春原隊に戦わせておいて、榎本隊はまだチマチマと罠でも仕掛けてるのかしら?」
『漁夫の利を狙ってるんじゃないの?』
「罠仕掛けてるだけで終わっちゃうんじゃないの?そう言うのなんて言うんだっけ?水の泡?」
『そうなる前に流石に何か仕掛けるでしょ』
「これじゃあなんかする前に建物が崩れちゃいそうだわ」
テロよ、テロ。
アリスがそう呟く。その言葉にレオは一瞬キョトンと目を見開いた。何かに気づいたような様子でアリスをじっと見つめる。その視線に気づき、アリスは「なに?」と不思議そうに首を傾げた。
だが、
「アステロイド!」
「急に何!?」
油断していたアリスの背後に、レオはアステロイドをそのまま撃ち出した。驚いたアリスだったが、即座に状況を理解すると身を翻して兄の前に陣取る。そして次の瞬間、目の前の相手を見て驚愕する。
(船津じゃないわ!こいつ榎本隊のスナイパーじゃない!)
眼前に突如現れたのは榎本隊のスナイパー、村木だった。先程バッグワームで姿を消したのは、合流していない嵐山隊か春原隊の誰かだと思っていたが、それは読み違いだったようである。
(メテオラか──)
レオの攻撃を防ぎつつ、村木が反撃に選んだのはメテオラだった。
(今までのこいつのトリガー構成にメテオラは無かったはず。使うのはこの試合が初めてか)
だが、村木はその使い方を十分理解しているようだった。爆風の半分で周囲の壁や天井を破壊し、土煙で目眩ましを仕掛け、残りの半分でこちらを狙い撃つ。その攻撃をアリスが的確に防ぎ続ける。
『擬似トラッパーは船津じゃない。村木か』
『外でバッグワームを着た方が船津さんか!!あ゛ー!やってくれるね!?』
思いつかなかったことが悔しくて、綿貫はうがーと叫びながらピンクブロンドの髪をわしゃわしゃと乱す。
『つまりつまりは!自分たちの部隊以外には外でスナイパー達が狙っていると思わせておいて、実際はその片方はモール内で罠を仕掛けて回ってたワケだ!村木君のトリオン量は確かにスナイパーの中では突出してる。そういや入り口での爆破もかなり規模が大きかった!!』
「ガキみてぇな面して大胆な事するじゃねぇか」
「僕の発案じゃないですけどねッ!」
村木は再びメテオラを用いて目眩ましを行い、なんとか建物から逃げ出そうとする。
(つまり、タイムリミットが近いな)
レオは状況を即座に判断する。榎本隊の作戦を理解し、自分たちが戦局をリードしているこの瞬間を逃すわけにはいかない。
「
防御をアリスに任せ、レオは迅速に合成弾を作り出す。土煙の中、村木が建物の外へ脱出するまで残り9秒、8、7……
「ッフ、間に合うな。
5秒もかからず完成した合成弾は村木のシールドを粉々に砕くと同時に、彼が仕掛けたトラップにも命中する。
「その作戦貰うぜ。榎本隊」
「うわー、隊長ごめんなさーい!」
なんとかレオの攻撃を防いで振り向いた村木が最後に見たのは、己の首元に迫るアリスの旋空弧月だった。鋭い一閃で彼の首が落ちると、そこから黒い煙のようにトリオンが噴出する。
【戦闘体活動限界 緊急脱出】
そうして首からヒビが広がり、村木はこの試合から脱落した。彼がベイルアウトすると同時に、村木が仕掛けていたメテオラが連鎖的に爆発を始める。
『レオ君、アリスちゃん。マークつけた柱も全部壊しちゃって。加瀬君は指定の位置に移動してくれるかな?』
「「「了解」」」
3人は即座に行動を開始する。レオがメテオラで、アリスが旋空弧月で、それぞれ指定された柱を次々と破壊していく。トリオンのエネルギーが炸裂し、凄まじい轟音がモール内に反響した。
建物全体が震えるような爆発音が鳴り響き、次の瞬間、ショッピングモールは激しい閃光とともに一気に吹き飛んだ。柱が粉砕され、天井が爆発の衝撃で吹き飛び、壁や床が四方八方に飛散する。破壊された構造物が空中に舞い上がり、まるで巨大な花火のように火花と瓦礫が周囲に降り注いだ。
「ちょっとヤバくない!?」
アリスがその光景に思わず声を漏らすも、土煙が一気に彼女たちを覆い隠した。
吹き飛んだ建物の上階部分が崩壊の勢いで下層階に飲み込まれ、爆発の連鎖がさらに勢いを増す。ショッピングモールの中心部は完全に崩壊し、巨大な瓦礫の塊が連続して落下する。圧倒的なエネルギーが生み出したその光景は、凄まじいものだった。
加瀬はその様子を遠巻きに眺めていた。耳をつんざくような爆発音と目の前の大崩壊に、思わず呆然とした表情を浮かべる。
「トリオン兵より壊してない……? 訓練とはいえ、こんな破壊的でいいのかな……」
瓦礫の山が土煙を上げながら崩れ落ち続ける中、彼の呟きは通信を通して綿貫にも聞こえていた。
『それは言わないお約束よ、加瀬君』
彼が歩みを進める間も、モール全体が崩れ去る轟音が響き続けた。最後の爆発で吹き飛んだ瓦礫が、やがて静寂の中に収まり、現場にはただ巨大な瓦礫の山と、未だに立ち込める土煙だけが残されていた。
固定シールドを展開しながらその場に踏みとどまっていたレオとアリスは、煙の向こうに変わり果てたモールの姿を確認する。もはや建物の原形を留めておらず、ただ瓦礫と崩壊の跡だけが広がっている。
「……やりすぎだろ、引くわ榎本隊」
思っていた以上に大量のメテオラ爆弾を仕掛けていた様子で、ショッピングモールの半分以上が崩壊した。そんな様を見てレオは軽く呟く。
『瓦礫から出る瞬間が1番狙われるから気をつけてね。あの爆発では誰1人落ちてないから』
「了解だ」
固定シールドを解除すると同時に瓦礫を押し除けていく。
(気がかりなのは嵐山隊の現状だな)
試合の展開としては、現在三条隊が榎本隊の村木を落として一点。春原隊が榎本隊の瀬戸を落として一点。リーダーである榎本はレオと佐鳥の攻撃によってかなりのダメージを負っている。
(アイツがトリオン切れでベイルアウトした場合、俺と佐鳥のどちらの得点になるのか……)
嵐山隊はこの先の、A級昇格を賭けた試合でぶつかる可能性がある相手だ。出来れば点差を開いておきたい。三条隊が一番多くポイントを稼ぎ、嵐山隊が最少であるのが最も望ましい。
モール内での乱戦で誰も落ちていない。とはいえ、ノーダメージという事はあり得ない。どれくらいのダメージを負っているのかは分からないが、瓦礫から出て一番最初に狙いたいのは嵐山隊だ。
(誰かが春原の鉛弾喰らってたら最高だな)
そう考えながら瓦礫から這い出た瞬間、レオたちは弾丸の嵐に襲われた。しかし、既に予測していたレオとアリスは落ち着いた動きでその攻撃を防ぐ。
右側からの射撃にはレオのシールドが、左側からの射撃にはアリスのエスクードが。後方からの攻撃も、加瀬の狙撃が相手の動きを妨害してタイミングを狂わせたため、アリスが再び展開したエスクードで防ぐことができた。
すぐさま反撃の狙撃が加瀬を襲ったが、撃ってすぐに退避していたため弾は外れた。2人のスナイパーはその場を離れて移動を開始する。
レオたち兄妹に迫るのは、寸分の狂いもなくアサルトライフルから射出されるアステロイドの嵐だった。
「嵐山隊か」
その言葉と共に、レオは口角を上げる。
眼前には嵐山。そして時枝、柿崎を含めた3人が三条兄妹を完全に囲んでいる。
嵐山は切り傷が複数あり、トリオンがやや漏れているが、まだ戦闘に問題はなさそうだ。それに対し、時枝は左腕が欠損しており、トリオンが大量に漏れている状態。これでは派手な行動は難しいだろう。そして柿崎だが、右太ももに鉛弾を喰らっている様子だ。大きな鉄の塊が足に張り付いていて動きにくそうである。位置的に足を切り落とすわけにもいかず、春原隊との室内戦によるダメージが確実に残っている。
『柿崎を狙うぞ。次点で時枝。漁夫の利を狙う春原隊も出てくるだろう。乱戦になる』
『オッケー、了解』
佐鳥はまだ移動中のはず。そう判断したレオは両手にバイパーを構え、防御はアリスに任せフルアタックを仕掛ける。
「バイパー」
2つのキューブをそれぞれ64個に分割し、4個ずつをセットにして射出。合計32セットもの弾丸が放たれ、それぞれの軌道をリアルタイムで操作しながら嵐山隊を撹乱する。グラスホッパーを使用して即座に後退する嵐山隊だったが、バイパーは軌道を変えて追尾してきた。
「なるほど、すごいな。まるでハウンドだ……いや、それ以上か」
嵐山は感嘆の声を漏らす。これまで出会ったバイパー使いの中で、間違いなく最も卓越した使い手だとその一瞬で理解した。
時枝と合流した嵐山は固定シールドを展開し、バイパーを防ぐ。
「チッ、うぜぇな固定シールド」
攻撃が全て防がれたことを確認すると、レオは顔を顰めて悪態をついた。
「ありがとうございます、嵐山さん」
「気にするな。まずはこの弾幕を攻略しないと」
その時、嵐山は重大な失策に気がついた。同じようにシールドで防御していた柿崎の背後に、春原隊の3人が迫っていたのだ。
「柿崎!!」
嵐山の声に驚き、即座に柿崎はグラスホッパーで大きく後退。松浦の旋空をギリギリで回避したものの、肩を浅く切り裂かれた。だが、それだけでは終わらなかった。
途端に体が重く沈む感覚を覚える。
(鉛弾ッ!?)
右腕に黒い鉄の塊が張り付いていた。旋空を防ごうと咄嗟に展開したシールドを鉛弾がすり抜けたのだ。悪態を吐きながら、柿崎は尻餅をつく。
柿崎を狙う春原隊。さらに、そんな春原隊と三条隊にグラスホッパーで素早く移動しながら攻撃を仕掛ける嵐山隊。しかし、彼らの牽制攻撃はアリスのエスクードで防がれている。
「ゴチャついてきたな!まとめてぶっ殺してやる!!バイパーッ!!」
好戦的に笑みを浮かべるレオが両手に巨大なキューブを展開したその瞬間、彼の頭を狙った正確無比な狙撃が飛んできた──。