スズカの犬になりました   作:あーふぁ

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3.ウマ娘同士でいちゃちゃしてください

 土曜日に、スズカの家族たちと一緒にやってきたのはウマ娘の子たちが走るクラブチームの練習場だ。

 クラブの名前は『にぶたにウマ娘クラブ』という。

 変わっている名前だと思ったが、どうやら北海道の地名から取ったと周辺の親たちが雑談していたのを聞いた。

 

 練習場のメインコースはウッドチップ。他にダートの練習場や屋内施設もある、そこそこ大きめな規模だと思う。

 今日、ここに来ている小学生ウマ娘は22人。他に家族の人たちが来て、まるで授業参観の雰囲気だ。

 これを見るとナリタトップロードが主人公のアニメ、Road to the Topを思い出す。

 子供時代のトプロは元気でかわいいが、背景で描かれていた競走馬を調教する施設そのままであることに驚いたものだ。

 

 今はスズカパパがリードを持ち、コーチをしている大人のウマ娘の人に先導されて施設見学をしている。

 ウォーキングマシンやトレッドミルなんてウマ娘ではどういう使い方をするかと思ったが、まぁ馬とやることはそう変わってはいない。

 スズカは他の小学生ウマ娘の集団へと行っており、準備運動をしながら雑談をしているがぼんやりと見える。

 耳と意識を向けると『今日の耳飾りはかわいいでしょ』といった友人同士の会話や『私、香水をつけてきたの!』と背伸びしているほほえましい会話が聞こえてきてとてもいい。

 まだ百合というレベルまでは行っていないが、女の子同士が楽しく会話をするのは実にいい。

 将来、中学生から大人へとなっていく過程でもっと仲良くなっていて欲しい。

 スズカたち小学生に期待を持ち、俺は角バ場といったトレーニング施設をスズカパパ、ママと一緒に見ていく。

 

 見学が終わったあとはレジャーシートを芝生の上に敷いて待機だ。俺はシートじゃなく、横の芝生の上で伏せ姿勢だが。

 ウマ娘が走るのはまだかとわくわくしつつ、スズカたちのほうへ顔を向けて音を聞く。

 少しして、スズカを先頭に赤いジャージを着たウマ娘の子供たち全員が俺へと小走りで向かってくる。

 その異様な光景、スズカを入れて22人も向かって来ている姿はかわいいを超えて怖い。

 

 いくらウマ娘が好きとはいえ、理由がわからず来られるのは怖い!

 よし、ひとまず逃げ……いや、パパさん? なんで俺のリードを離してくれないんだ!? 

 なに? 大丈夫だから安心しろだって? いや、あの、あれを見て大丈夫なのか!?

 4つの足で逃げようとしたものの、そう言うのなら我慢するかと恐怖心を抑えておすわりの姿勢で待つ。

 まぁ、怖くて尻尾は足の間に挟んでしまうし、耳もしょんぼりと垂れてしまっているが。

 すぐにスズカを先頭としたウマ娘集団がやってくると、スズカはパパからリードをもらって俺のまわりにはウマ娘たちが群がる。

 

「みんなアトラスをもふもふしたいって言うから、なでられてあげてね?」

 

 俺をもふもふだと? 全員が? 遠慮したい気持ちを伝える前にひとりずつ順番に俺の頭や体をさわってくるではないか!!

 あの、俺は女の子に何かされるよりも女の子同士がいちゃいちゃしているのを見たいんですが。そして、その間に挟まるのが特に好きです。

 だからこういうふうなのをされると反応に困る。

 なでられ続けるのを耐えるため、俺は目の前の黒髪ボーイッシュっぽい雰囲気な少女を見てから現実逃避をする。

 

「じゃあ、まずはあたしからね!」

 

 元気に声をあげている子から目をそらして雑になでられながら考えるのはウオッカの百合についてだ。

 アニメではダイワスカーレットとの仲良しな様子が最高だった。あのツンツンとしたふたりが仲良く言い争うのなんてかわいくてたまらない。

 ボーイッシュなウオッカと、ツンデレのダイワスカーレットのバランスはとてもいい。

 ゲームだとアストンマーチャンもいて、3人で楽しく話をする様子は面白かった。

 

 リアル馬での百合話だとウオッカが大好きであった牝馬のレッドディザイアだ。

 ウオッカが引退して寂しそうなレッドディザイアの馬房の向かい側。その扉にウオッカの顔写真を貼ると落ち着いたとある。

 だからウオッカのファンであるレッドディザイアのウマ娘化を願う声もあった。

 

 でも俺としてはウオッカにはユニラテラルのカップリングが一番いいと思う。異議は受け付ける。

 ユニラテラルは、ウオッカが繁殖牝馬としてアイルランドに行ったときに出会った栗毛のかわいい子。

 イケメンなウオッカとかわいくて優しい顔をしているユニラテラルが顔をくっつけている写真を見た時は、大きな声をあげて感激したくらいだ。

 それを見てからはウオッカ×ユニラテラル派になった。

 本に載っているウオッカの写真はどれもイケメンで素晴らしい!

 

 

 ……さて、そろそろ終わったか?

 カップリング妄想をして、ひたすら体や頭をなでられるのを耐えていると正気に戻った時には3人までに数が減っていた。

 もうすぐ終わるのに安心し、穏やかな顔で最後の1人を終えた。

 俺をなでたウマ娘たちは満足したらしく、コーチの方へと走っていった。

 いつの間にか近くに来ていたウマ娘の母親たちはスズカパパとママに挨拶をし、俺にごめんねとかありがとうって言葉を言っていなくなった。

 中には俺が言葉を理解すると聞いて、なんでか自分の子供自慢をする人もいたが。

 

 子供って元気だなぁ。ああいうのを見ると、子育てしている人はすげぇってなる。

 ああいう元気な子に振り回されても、育児は楽しいんだろうな。前世で俺に子供がいたら、子供がかわいいって思っていただろう。

 今の犬生だと、もしかしたら子供を作ることはあるかもしれないが。

 犬の体ながらも人間並みに大きくため息をついて、力なく伏せ状態になる。

 レースが始まるまでに体力と精神力を回復しておかないと……。

 

 ぼぅっとしながら、コースを走って準備運動をするウマ娘たちの姿を見ていく。

 視力が低いから、ぼやけてはっきりとは見えないが。

 真剣に、でも楽しそうな雰囲気と声が聞こえてくると、この頃は純粋に楽しめる子がいていいななんて思う。

 ウマ娘のアニメやゲームだと幽霊の影響で強迫観念を持って走る子、自分の代わりに犠牲となった妹のため、勝つために走るのに疑問を覚えるなんて子たちがいた。

 そういう子たちはそれぞれのトレーナーのおかげで解決していくが、中等部の頃から興行のために走ると考えればブラックだと思う。

 今の時代はメディアが発達して賞賛もあれば悪意にさらされる。

 URAや学園側による心のケアが追いついてないようなのを作品を見て感じた。

 

 だからこそ、犬のボディとゴールデンレトリーバー長毛とふわふわ感触を提供していきたい!

 そして癒しを与えて元気にさせるんだ!

 犬だからトレセン学園に行くのは難しそうだから、とりあえずはここのウマ娘からだな。

 そう決意したところで、最初のウマ娘たちがスタート位置に並ぶ。小学生のレースだからか、ゲートはない。

 スタート位置から前へ離れた位置には旗を持った人がいて、その人が旗を振ると一斉にスタートをした。

 

 初めて直接見たウマ娘のレース。かわいい子が走っていく音を聞き、テレビで見るのとは違う重低音な足音は心がおどる。

 体力がなく最終直線で落ちていく子、後方からまくって上がっていく子。

 その子たちの息遣いを聞くと、これこそウマ娘の躍動感だとテンションが上がっていく。

 ……息遣いを聞いて喜ぶのは変態だと思われそうだが、これには仕方がない理由があるんだ。

 だって犬の視力だとはっきり見えないから、音で楽しむのが一番なんだよ。

 

 そうしてレースを楽しんでいくと、4レース目遠くから聞こえるのはスズカの声。

 1番レーンにいるスズカは隣にいるレーンの子と雑談をしていて、少ししてからスタートの合図。

 スズカはスタートした瞬間に内側から先頭に立つ。あとはそのままマイペースといった感じで先頭を走り続け、ゴールするときには他を大きく離していた。

 その姿を見て、俺は最初から最後までスズカの走る姿に目をひきつけられた。

 他の子とは飛びぬけて違うレースの才能。そして何よりも走り終わったあとの最高に嬉しそうな声がいい。

 近くで見て、よりはっきりと見たかった。

 きっと後ろから見れば、風になびく髪と揺れる尻尾は心がときめくに違いない!

 別におしりが見たいというわけじゃないから。

 他の子を寄せ付けないスズカの走りに尻尾をぶんぶん振っていると、スズカが俺の方へとかけよってくる

 

「私の走り、見た? アトラスも早く大きくなって一緒に走ろうね!」

 

 もう最高だよスズカ! ああ、ウマ娘はやっぱり走ってこそだな!

 頑張って走る姿ってのはいいもんだと犬に転生してからやっとわかる。

 前世では駅伝で走る人の姿を見ても心はときめかなかったが、あれはテレビを通して見ていたからだったんだろうか。

 目に見えない何かの輝きを感じたね!

 

 俺は立ち上がるとスズカへと飛び掛かり、尻尾をぶんぶん振っては嬉しさを表現する。

 そんな俺をスズカはぎゅっと抱きしめ、喜んで俺の頭へとほおずりをしてくる。

 

「一緒に山の中を走るのが楽しみだね!」

 

 ……山? いや、あの、普通の平地じゃダメですかね。

 山だなんて危ないって。俺、アスファルトやウッドチップで舗装された走りやすい道がいいんだが?

 

「12月の今は霜が降った地面を走るのが楽しいのよ!

 1月はね、年が明けたばかりの新鮮な気分で走るのが気持ちいいいの。

 2月はひんやりとした空気でね、3月は段々と暖かくなっていく気温を肌で感じられるの!

 4月は桜を見ると心が嬉しくなって走り続けたくてね、5月は──」

 

 あの、ちょっと待ってくれません?

 そこまでわくわくと期待されても困るんですが?

 全部の季節に楽しい、気持ちいいの言葉が含まれていませんかね。スズカは一年中走っていたいのか。ゲームでは走るのが好きって見たけど、これほどまでかよ。

 んでこれってさ、俺が大人の体になったら散歩のたびに走りまくりそうだんだけど。

 大丈夫なの? ねぇスズカパパとママ!? と、勢いよく顔を向けるもふたりはにこにこと嬉しそうだ。

 味方はいないのか。

 

 もしかしてパパのスリッパをかんでボロボロにしたのを怒ってらっしゃる?

 またはママのエプロンを喜んで口の中に入れては家の中を走り回ったこと?

 あれは犬の本能として仕方がないんだって。だから、スズカをなんとかして? え、スズカのランニング相手ができて嬉しい?

 

 ……あの、スズカ? 俺の体を離してくれない? 俺の散歩は歩くだけでいいから。だからさ……離し、離せぇぇぇぇぇぇぇ!!

 犬に生まれて散歩が楽しいとはいえ、限度があるんだって! 犬種によっては長距離も大丈夫だけど、この体は猟犬の血なんだってば。

 川や湖の中を泳ぐ系でね!?

 いくらウマ娘のファンといえど、走るのを趣味にはしていないんだって!

 このクレイジーランナー!!

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