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その出会いは、まさに衝撃的だった。
「つまらない走り方だな」
「え…?」
ターフの上を駆けていたウマ娘―――サイレンススズカは、その言葉を確かに聞き取り、自身のチームのトレーナーである東条ハナの方へと目を向けた。
其処には東条だけではなく、もう一人のトレーナー―――トレセンで最も有名であろうトレーナー「沖野」が、スズカを見つめていた。
「なによ、こっちのチームの走り方にケチつける気?」
「チームじゃない、アイツの走り方にだ」
「アイツって…スズカの事?」
「サイレンススズカ。アイツの走り方は、まさしく枷を背負った走りだ。自分のやりたい走り方をやらせてもらえず、意思を封じ込めたつまらん走りだ」
その言葉は、的を射ていた。
後先考えず、全力で。最初から最高速で。
先頭の景色。最前を駆け抜けて、誰もいない自分だけの景色を見たい。
けれど、皆が別の走り方があると言う。自分の意見は、聞き入れてもらえない。
自分を抑え込み、縛り、枷を付ける。そんな彼女に―――沖野の言葉は深く刺さった。
「お前、あいつの意思をちゃんと聞いた上であの走り方をさせているのか?」
「…えぇ、そうよ。彼女がしたい走り方は、彼女自身に負荷を掛ける。何より、チームとしての問題点もあるわ」
「はぁ…やはりつまらんな」
「はぁ……言うと思ったわ、この馬鹿」
「負荷だのこうだの言い続けては、走れる奴も走れないだろ。
「その走りで、二度と走れなくなっても?」
「なったなら仕方ない。レースとはそういうもので、ウマ娘とはそういうものだ。自分のやりたい走りで命を終えられたなら本望だろ」
「貴方ねぇ…「そもそも」…何よ」
「走れなく
「―――ほんとう、そういう所よねぇ…」
ただの馬鹿ではない。ただの愚者ではない。
彼は確かなトレーナーだ。確かに考え馬鹿げてこそいるが、普通のトレーナーであれば持たない様な思考を持ってこそいるが、彼は優秀なトレーナーだ。
トレーナー免許取得の為の育成学校の主席。他の追随を許さない、常に1位の座に君臨し続けた稀代の天才。
彼の性格にこそ難があるが、しかしそれだけ。彼のトレーナーとしての腕は確かであり、もはや絶対的と言わざるを得ない。
レースに絶対はない。だが―――フロイトには絶対がある。
「枷ある獣は、枷を外された時が最も自由なんだ」
「俺はお前を待っているぞ、サイレンススズカ――――――お前と
あれから数日が過ぎた頃。
サイレンススズカは、チームリギルから離れた。
沖野の言葉。それをしっかりと聞いていた彼女は、沖野が担当するチームへと移籍する事となったのだ。
「ちょっとッ! たづなさんからまた注意する様に言われたんだけど!? アンタ何した訳?!」
「他の
「おしトレーナー、今からマグロ漁船乗ろうぜー!」
「マグロか。最近は食べてなかったな…よし、行こうか」
「トレーナー! 今度またトレーナーの相棒に乗せてってくれよ!」
「いいぞ。“ロックスミス”の調整も終わった所だ」
自由。そう例える以外に、彼らを示す言葉はなかった。
だが―――そこに、何か心地良さを感じたのだ。
立ち尽くすスズカの前に、沖野が立つ。
不敵な笑みと共に、肩に手が置かれ―――宣言される。
「ようこそ、サイレンススズカ。俺が率いるチーム―――『チーム
これが、サイレンススズカが『ヴェスパー』に加入した日の事である。
【チームヴェスパー】
トレセン学園に在職するトレーナーの一人、沖野が作ったチーム。
学園における最高峰にして絶対のチーム。最古参であるゴールドシップを始めとし、他メンバーも優秀な成績を収めている。
ヴェスパーとは、黄昏や宵の明星を意味する。フロイトはこう言った。
「不思議と、こっちの方がしっくり来る」