バカには読めない異世界ファンタジー ~別によくあるチートはない俺ですが、無能と蔑まれている可愛い妹を前世の知識でチートにします~ 作:神楽戯
……俺が異世界転生してから、三年が経った。
成長に伴い骨格や筋力も安定してきてからは父親にあたる人に家庭教師の類を付けられて色々なことを教わったが、そのお陰でこの世界についてある程度のことが理解できた。
まず、この世界には人間とモンスター、そして多数の『ヒト系』種族が存在する。海には人魚がいるし、陸にはエルフやドワーフ、オーガなどのファンタジーのテンプレのような種族が多く存在する。……ちなみに、俺に色々と教えてくれた家庭教師の先生の言葉と俺の前世の言語学・宗教学の知識を照らし合わせた限りでは『人間』という単語の成り立ちすらも大きく変わっている。
前世における『人間』という単語の由来は、『人々の間』。つまり人が住んでいる場所という意味合いだった。分からなければ『人』と『世間』が合体した結果『人間』という単語が生まれたと思ってくれればそんなに大きくは間違っていないだろう。
だが、この世界では『人間』という単語はまた別の形で成立している。この世界には
エルフほど長い寿命も、人魚種のような水中活動も、オーガのような怪力も、ドワーフのような器用さも種単位では持たない。他の種族のあらゆる性質から外れながら、それでいて同じ『ヒト種』として確かに他種族から認められるだけの力を示す存在。そしてその種としての底力を称え、『人の
そして、俺が今ここで暮らしている場所。人間種が人口の大半を占める、『人間公国ヒューミリア』の、山間部に位置する小規模市区『パルヴス』だ。どうやら今世の俺、『レクス・ボールドウィン』はその『パルヴス』を治めている『ボールドウィン家』の長男として生まれたらしい。
「レクス、勉強の調子はどうかな?」
「大丈夫です、お父様」
椅子に座り、家庭教師の先生に出された課題を終わらせたところで今世の俺の父親、ウィリアム・ボールドウィンが部屋に入って来て声をかけてくる。紫の髪、僅かに緑のメッシュを入れた長身の男性だ。……家庭教師によると、俺は学習速度が同年代の数倍早いってことで『神童』だの『天才』だの褒めそやしてるんだが……正直前世が学者だからな。新しいことを知るのは楽しいし、ぶっちゃけインチキ過ぎるから比較してはいけない気がする。ちなみに母は今妊娠しており、身体がさほど強くないらしく大事を取って魔法病院にて入院している。……中世レベルの技術だからな。病院との距離次第では、体調が崩れる度に時間をかけて馬車を飛ばすよりは入院させた方が確実で早い。
ま、前世の話なんて出来ないし複雑な気持ちを抱えながら褒めそやされるしかないか。正直文字覚えるのはちょっと不安だったが……考えてみれば発音や文法は同じで、文字が違うだけだからな。院生してた時に言語学教授の手伝いで古代遺跡から発掘された石版の楔形文字を解読してた時の方がずっと難しかった。そんなことを思い返してげんなりしていると、父が話を切り出してきた。
「レクスも三歳になったし、『適性』を測定しに行こうか」
「適性……ですか?」
「ああ、将来を決める大事な『魔法適性』だ」
……『魔法』。種族とかも色々と興味深かったが、個人的に一番興味があったものだ。家庭教師の先生に魔法について教えてくれと強請ったこともあったが、『適性』が分かってからにしましょうとはぐらかされた。正直めっちゃワクワクしてる。
「表に馬車を待たせてある。行こうか」
その言葉に従い、父と共に馬車に乗り何処かへと向かう。馬車の中で行き先を聞くと、測定のための施設がある最寄りの街へと向かうらしい。窓から景色を眺めながら一時間半ほど馬車に揺られ、その街『トランシトゥム』に到着。整備されただけの土砂と雑草の道はともかく、舗装された石畳は流石に馬の蹄にも悪いので街の入口で馬車を降りて測定施設へと向かう。施設に入り、父が受付で懐から出した書類のような紙束を渡すと、職員の方はそれを受け取って一礼。奥に引っ込んでいった。……多分、初めから今日連れてくつもりだったな。事前に申請の連絡とかしてたっぽい。見回すと、恐らく俺と同じように『適性』の測定に来たであろう親子が数組、席に座って待っていた。
「お待たせしました。レクス・ボールドウィン様、どうぞ」
「レクス、行ってきなさい。何、痛いことなどは何もないからね。すぐに終わるさ」
戻ってきた職員さんの言葉に、父がそう声をかけてくる。俺は内心の興奮を必死に抑え込みながら、職員さんの後について行くのだった。
数分通路を歩いて、俺はある部屋に案内された。その部屋には白衣を着た白の混じった緑の髪を持つ男性と、俺の背丈よりも僅かに小さい程度の水晶が存在していた。
「……ふむ、レクス・ボールドウィン君だね。ウィルの
「……父と知り合いなんですか?」
「昔、魔法学術学園の校医を……いや、君にはよく分からないか。ま、昔君のお父さんの面倒を見ていたのさ」
……なんか父が昔通ってた学校の校医を務めてたらしい。この口振りだと、若い頃の父は相当な問題児だったみたいだな。
「まあいい。今回、私は君の担当検査官を務める。レクス君、その水晶……『
……俺を見ただけで?となると……この髪か。ま、細かいことは独自に調べるなり聞くなりしよう。一先ず適性検査だ。俺は恐る恐る『魔導水晶』に近付き……そっと触れる。
「……おお、これは」
検査官が感嘆の声を漏らす。触れる前は無色透明、曇り一つなかった水晶が、俺が触れた途端に
「こりゃ随分な魔力保有量だ……ああ、レクス君。そのまま触れ続けていてくれ。細かい部分を計測する」
検査官はそう言って、懐からモノクルのような道具を取り出して片目に取り付けると水晶を注視しては何かをぶつぶつと呟いて手元にあった紙に書き込んでいく。それが丸々一分ほど続いたところで、一段落ついたのか俺に声をかけてきた。
「ああ、すまないね。もう離していいよ」
その言葉に従い水晶から手を離す。すると、水晶は時間を巻き戻したかのように
「……良し。レクス君、お疲れ様。職員に先導させるから、戻っていいよ」
そうして、俺は父のいる受付前まで戻るのだった。
再び職員の後を追って戻ると、父が待ち侘びていたかのように席を立つ。
「戻ったか、レクス。どうだった?」
……ある程度言葉は選ばないとな。表現次第では怪しまれる。
「凄かったです!何か綺麗な感じでした!」
「そうかそうか。……っと、検査結果が来たみたいだ」
父の言う通り、先程の検査官が一枚の紙を持って通路の奥からやってきた。その検査官の顔を見て、父は驚いたような顔をする。
「先生……ここで働いていらしたのですね」
「まあな。現役を退いた老体よ、こんなことにしか役に立たんわ。……して、ウィリアム」
「……どうか、なされましたか?」
「何、お前の息子はかなり優秀なようだぞ?ほれ」
そう言って検査官が渡した紙を見る父。その内容を見て、父は目を見開いた。
「……先生、これは本当ですか?」
「こんな嘘などつかんわ。……流石に初めて見たぞ、単一属性の五系統保有者など」
……何を言ってるのかはわかるが、意味がわからないので父の後ろでジャンプして何とか父が手に持っている紙の内容を視界に入れる。速読は得意だ……昔友達にライトノベルを1シリーズ全巻、計十五冊を三日で速読して返却して苦言を呈されたくらいには。あの時はごめんなマイフレンド。論文とか医学書とかそういうの読み込むと嫌でも身につくんだよ。
まあそれはそうとして。何とか視界にに入れた紙には、こう書いてあった。
……炎属性、見るからにエリートスペック、前に鏡見た限りでは割と正統派なイケメンフェイス。
……これ良くある踏み台系では?(戦慄)
主人公くんことレクス・ボールドウィン
チート転生者主人公の踏み台になるポジかもしれん。どうしよう。
父、ウィリアム・ボールドウィン
息子が賢い上につよつよ優秀性能でびっくり。